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五月五日の少女
五月五日。ゴールデンウイーク最終日。少年はビルの屋上にいた。
自分の人生を終わらせる為に。
クソみたいな現実を終わらせる為に。
蔑んだ奴らの心に染みをつける為に。
暗い未来をこれ以上見ない為に。
「僕の人生最後の日は雨か。。。」
本当に酷い生涯だ。最後の最後まで。本当に。。。
無念。
無意味。
無価値。
無常。
――バリケードから手を離そうとしたその時
「あなた、雨は嫌い?」
無視だ無視。こんな知らん奴。
飛び降りるぞ。
。。。。
「どうせ死ぬなら最後に一つくらい質問に答えてくれてもいいじゃない」
「。。。」
言葉にならない感情が渦巻く。なにかがグルグルと頭のなかを駆け巡る。
――少年は立ちすくんでいた。半端な覚悟だったのだ。否、まだ絶望が足りていなかった。
「雨でいいじゃない。別に」
「みんなが大好きな、絶対に正義な、そして何よりも噓くさい晴れよりも。」
「夕立に濡れるのを恐れて生きていくより、雨の中で踊っている方がいいじゃない。」
「ねえ、一緒に踊ろう?」
――それが奴との出会いだった。