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第8話 草の賢者ミレーユ

ウルファルはグルル…と唸り声を上げながらローゼの周りをゆっくりと歩き始める。


(様子を伺ってるな…ゆっくりと距離を詰めるか…)


ローゼは剣を構えながらゆっくりと距離を詰めていく。

その間もウルファルはウロウロと落ち着きなく動き回っていた。


(くっ…あぁも動かれるとタイミングが測りづらいな…。いつ踏み込むか…)


そんな事を考えている時だった。

先程まで動き回っていたウルファルは突如動きを止め、ローゼの方を睨みつけた。

次の瞬間、ウルファルは素早く動きローゼの方へ駆け出してきた。


「き、来たわよ、ローゼ!」


突然のことに、フローラは声を荒げる。


「あぁ、分かってるよ!」


真っ向から向かってくるウルファルに向け、ローゼはタイミングを測り剣を振る。

ウルファルはローゼの前で飛び上がり、剣を飛び越えるようにしてローゼの攻撃を避けた。


「くっ…!」


ウルファルはローゼの背後に着地すると、鋭い爪を繰り出し腕を振り上げた。


『ローゼ、後ろです!』


「任せて下さい!うぉぉお!!」


ローゼはその場で素早く振り返り、ウルファルの攻撃を弾き返した。


「グルァ!?」


攻撃を弾かれたウルファルはその場で体勢を崩しふらりとよろける。ローゼはその隙を見逃さず、ウルファルの懐へ潜り込んだ。


「これで終わりだ!!」


ローゼはそのまま剣を振り切り、ウルファルの腹部を切り裂いた。


「グルァァァァア…!!」


切り裂かれたウルファルはその場に倒れ、黒い煙となり消え去った。


「ふー、なんとか倒せた…」


ローゼは剣を鞘に戻すと大きくため息をつく。

そこへフローラが近寄ってきた。


「大丈夫?怪我はない?」


「あぁ、大丈夫!」


「…あんた、なかなかやるわね!見直しちゃったわ!」


「そう言われると照れるな…あ、それよりルイ君を…!!」


ローゼはルイの入れられたカゴに近寄ると、カゴを壊し倒れているルイを手のひらに乗せた。


「ルイ、大丈夫!?ルイ!!」


フローラはルイの体を揺らし、声を上げる。

それを何度か繰り返していると、ルイの目がゆっくりと開いた。


「フ…ローラ…?」


「ルイ!よかった、生きたたのね!!」


「えっと…僕は…一体…」


ルイと呼ばれる黒髪の妖精族の少年は辺りを見渡し、驚いた顔を浮かべた。


「うわ!?に、人間…!?」


「おっと、驚かしちゃったね…」


「大丈夫よ、ルイ。彼はローゼ。女神様に選ばれた勇者よ!!」


「ゆ、勇者!?あなたが…!?」


「ま、まぁ…」


ルイはフラフラと飛び上がると、神殿の中をぐるぐると飛び回る。


「あれ…?ここにいた魔物は…?」


「彼が倒してくれたわよ!だからもう安心して!」


「そ、そうだったのか…。助けてくれてありがとうございます!僕、ミレーユ様の神殿に魔物が現れたって聞いていても立ってもいられなくって…神殿に来たはいたものの魔物に捕まりこのザマ…。ローゼさんが来てくれなかったら、僕もミレーユ様もどうなっていたか…」


「いいんだよ!お礼なんて…」


「全く、無茶しすぎよ!…ミレーユ様を助けたい気持ちは分かるけど、もっと考えて行動しないと命がいくつあっても足りないわよ」


「ご、ごめん、フローラ…」


「ま、まぁわかればいいのよ。…それより、ミレーユ様は…!」


『勇者ローゼよ。あなたの戦い、見せて頂きました。流石女神に選ばれるだけはある…あなたのその剣の腕ならザグリフ達魔物とも戦っていけるでしょう…』


「ミレーユ様…ありがとうございます!」


『勇者ローゼ、神殿の奥に泉があるのが分かるでしょう?そこへ手をかざして下さい…』


ミレーユにそう言われ、ローゼは神殿の奥を見る。

すると、そこには美しいエメラルドグリーンに輝く小さな泉と、その上に光る鉱石の結晶のような物が浮かんでいるのが見えた。


『その結晶こそ私を封じている魔石…ローゼよ、その石に手をかざし邪悪なる者の封印を解いて下さい…』


「こ、こうですか…?」


ローゼは泉に近づき、言われた通り結晶に手をかざす。

その瞬間、ローゼの手の甲の紋章が眩く光り始めた。


「紋章が…!」


そのまま光は強まり、光に包まれた結晶にはパキパキとヒビが入っていく。

そして、そのまま結晶は割れ粉々に弾け飛んでしまった。


「結晶が…!」


「ローゼ、あんた何したの…!?」


フローラ達は驚きの表情を浮かべながらローザに問いかける。


「わ、分からない…紋章が勝手に光り初めて…っ!?」


そんな事を話していると、ローゼの前に眩く光る緑色のモヤが現れた。


「これは…」


緑色のモヤは徐々に形を変え、ついには大きな人間の女性の様な姿へと変化した。

その女性は長い緑髪に、フローラ達と同じような羽を背中に携えたとても不思議で美しい姿をしていた。


『勇者ローゼよ、また会えましたね。私はミレーユ、草の賢者です』


突然の事に、ローゼはポカンと口を開けたままミレーユの方を見上げている。

それに気づいたフローラはローゼの肩をグラグラと揺らした。


「ちょっと!何ぼーっとしてるの!ミレーユ様に話しかけられてるのよ?返事返事!!」


フローラにそう言われ、ローゼははっと意識を取り戻した。


「あ、あぁ…!あなたがミレーユ様…伝説の勇者と共に戦った草の賢者様…」


『えぇ、いかにも。…まぁ、今では時が立ちすぎて賢者としての力は弱まっていますが…。ローゼ、ここ数日様々なことが一気に起こり理解できていない事もあるでしょう。今から私が今までの状況を説明します。しかと耳に入れて下さい』


「は、はい、よろしくお願いします。」


『では話しましょう。この世界で今何が起こっているのかを…』


続く

投稿は不定期で行います。

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