第7話 森の神殿へ
「神殿はこっちよ!」
フローラに先導され、ローゼは深い森の中を駆けていく。
すると、森の奥に苔むした大きな建物が見えてきた。
「あれが神殿?」
「そうよ!ミレーユ様はあの中に封印されてるわ!」
「そっか…それじゃあルイって子もあの中に?」
「おそらくね!あいつ、昔から正義感強くて…すぐ突っ走るのよね…」
「唸り声ってのも気になるし…無事だといいけど…」
「そうね…さ、着いたわよ!」
ローゼは神殿の前に立つと息を整え顔を上げる。
その神殿は無数の苔や蔓に覆われ、かなり古びているようだった。
「かなり古そうだね、この神殿…」
「えぇ、私たちが生まれるずっと前からあるって話よ。詳しくは分からないけど…」
「そうなんだ…」
そんな会話をしている時だった。
『ウォォォォォ…』
薄暗い神殿の奥から、不気味な唸り声のような音が聞こえてきた。
「フローラ、今の聞こえた?」
「えぇ、聞こえたわ…みんなが言ってたのはこの声ね…!」
「…よし、行こう!」
ローゼはふぅと一息つくと、薄暗い神殿の中へと歩を進めた。
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神殿の入り口は階段になっており、ローゼとフローラは周囲を警戒しながら慎重に階段を降りていく。
「中も植物だらけだな…」
「えぇ…あ、中は薄暗いから気をつけて…」
「あぁ…」
階段を降りると、広い空間に出る。
そこはさらに暗く、自分達の少し先がやっと見える程だった。
「暗いわね…本当だったら松明に火がついてる筈なんだけど…」
フローラがそう呟いた時だった。
「ゴゴゴゴ…」
後ろから唸るような低い音が聞こえてくる。
「なんだ?」
二人は振り返り後ろを見る。
すると、先程入ってきた空間の入り口が太い植物の蔓で塞がれてしまっていた。
「なっ…!入り口が塞がれてる…!!」
「なんでいきなり…っ!?」
それに続き、今度は壁沿いに置かれた松明が突然燃え始め空間を明るく照らしていく。
「松明が勝手に…!」
「一体なんなの…?」
二人は前を向き周囲を見渡す。
すると、神殿の奥に木で作られた小さな鳥籠のようなものが置かれているのが見えた。
「あれ、なんだ?」
「鳥籠…にしては小さいわね…」
二人はゆっくりその鳥籠のような物へと近づいていく。
「あっ、あれは…!!」
「ルイ…ルイだわ!」
その鳥籠のような物の中には、フローラと同じ羽を生やした黒髪の少年が入れられていた。
その少年はどうやら気絶しているようで、うつ伏せのまま動かない。
「ルイ、今助けるわよ!!」
フローラはルイの方へと飛んでいく。
その時だった。
『ウォォォォォ…!!!』
どこからか、先程聞いた唸り声が聞こえてきた。
「唸り声…!どこから…?」
フローラは辺りを見渡す。
その時、二人の頭の中に声が響いた。
『後ろです…気をつけて…!!』
その声を聞きローゼは咄嗟に振り返る。
するとそこには二足歩行の白い狼が鋭い爪を出し、ローゼに向け腕を振り上げていた。
「グルガァ!!」
狼はローゼに向け勢いよく腕を振り下ろす。
「うわぁ!?」
ローゼは横に転がりなんとか狼の攻撃を避けた。
「ローゼ、大丈夫!?」
「あぁ、なんとか…!」
『ローゼ…フローラ…聞こえますか…?』
先程の声が、再び頭に響いてくる。
『私は…ミレーユです…。その魔物について…簡単に話します…!その魔物はウルファル…見た目通り…オオカミの魔物です…!ルイを閉じ込めたのも…その魔物です…。ウルファルはとにかく素早い…動きをよく見て戦うのです…!詳しい話はまた後ほど…今は…その魔物を倒すことに集中して下さい…!』
「ミレーユ様…!」
「任せてください、ミレーユ様…俺がこいつを倒して、ミレーユ様とルイ君を救って見せます…!!」
そう呟くとローゼは剣を抜く。
そしてウルファルの方を睨みつけた。
続く。
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