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第10話 王立アリア騎士団

暗黒の森を出てゴルアナ火山へ向かうため、ローゼとフローラは暗黒の森の中をひたすら歩いていた。


「あ、見てよフローラ。この辺り凄い沢山花が咲いてる…!」


ローゼの目線の先には、色とりどりの様々な花が咲き乱れ、小さな昆虫達が嬉しそうに花の周りを飛び回っていた。


「ほんと…きっとミレーユ様の封印が解かれたから森に聖なる力が戻って来たのね…!これもあなたのおかげよ、きっと!」


「そっか、それならよかった。…それにしても、花々にまで影響を与えるんだとしたらその魔王ザグリフって奴の力は相当強いみたいだね…」


「えぇ…ロメウスって奴も相当…。賢者として覚醒してから相当時間が経ってるとはいえ、賢者様全員を封印できる程の闇の力…。油断は出来ないわ」


「あぁ、そうだね。取り返しがつかなくなる前に早く賢者様達を解放しよう!」


「えぇ、そうね!」


二人はコクリと頷くと、森の小道を駆け抜けて行った。


ーーーーーーーー


森を抜ける頃にはすっかり日は登り、世界は昼間を迎えていた。


「まだ日は高い…とりあえずこのままゴルアナ火山へ向かおう。今からなら日暮れ頃には着くはず!」


「そうね、とりあえずこのまま北へ向かいましょう!…待って、ローゼ、隠れて!」


「えっ?わ、分かった!」


突如フローラにそう言われ、ローゼは森の藪の中に身を沈める。


「あれ、見て!」


フローラの指さす方を見ると、そこには馬にまたがり平原を駆けているボアリン達の姿があった。


「あれは…ボアリン!数は…十体くらいか。それに、先頭にいる大きなやつは…!」


「あれはキングボアリン。ボアリンを率いる群れのボスよ!」


馬に乗るボアリン達を率い、先頭でボー!!と角笛を鳴らしているのはボアリンよりも一回りほど大きく、まるで牛のように巨大な角が二本頭部から生えた丸々とした体つきの豚鼻の魔物だった。


「キングボアリン…!普通のボアリンより一回りくらい大きいな…それに、普通のボアリンより人間に近い体つきをしてる…あれはなかなか強そうだ…っ!」


そんなボアリン達を観察していると、平原の反対側からブー!ブー!と人工的なラッパのような音が聞こえてきた。


「あ、あっちからも何かくるわよ!」


平原の先をよく見ると、それは銀色に輝く鎧を見に纏い、五角形の盾に両刃の剣が描かれた旗をかざした人間の兵隊達だった。


「あのマークは…王立アリア騎士団だ!」


「王立…アリア騎士団?」


「あぁ、白い盾に剣のマーク…あれはアリア王直属の騎士団…。"アリア騎士団物語"って絵本で見たから間違いない…!」


「まだ生き残ってる騎士さん達がいたのね…!」


「みたいだね…でもこのまま行くとボアリン達と鉢合わせる…まさか、戦うつもりなのかな…?」


「きっとそうよ!彼ら強そうだし、ボアリンぐらいなら大丈夫なはずよ!」


「そうだね…とりあえず、ここで様子を伺ってみよう…!」


ーーーーーーーー


「いいか、盟友達(ともら)よ!我々不甲斐なきせいで守るべき王の魂は闇の軍勢に奪われた…否!これで終わりではない!!我々の心に王は居る!!そして、守るべき物は他にもある!!愛すべき家族、友、故郷、自然、そしてこのアリア王国…全ての命運は我々に掛かっている!!命をかけて守り抜くぞ!!我々の魂は女神アルトシアと共に!!」


「おぉー!!!」


先頭の兵士の掛け声と共に、後ろにいた十人程の騎士は声を上げる。


「目標、前方に見えるボアリン共だ!一匹残らず駆逐せよ!!」


先頭の男がブー!ブー!とラッパを吹くと、騎士達は勢いよく馬を走らせ前方に見えるボアリン達の方へ向かっていく。

それに気づいたのか、キングボアリンはボー!ボー!と角笛を鳴らしボアリン達に指示を出す。

角笛の音を聞いたボアリン達もまた、向かってくる騎士達の方へ馬を走らせる。

瞬く間に、平原は戦場へと姿を変えた。


「くらえ、豚野郎!!」


腰につけた剣を抜いた騎士はボアリンの方へ向かっていく。ボアリンも棍棒を抜き戦闘の姿勢を取るが、一瞬の隙を突かれ騎士の剣に体を切り裂かれた。


「ブルァ…!!」


馬から落ちたボアリンは煙となり消え、ボアリンに操られていた馬はそのまま平原の先へと走り去っていった。


「どんなもんだ…っ!?」


後ろを向いていた騎士は前に視線を戻す。

すると、ボアリンの棍棒が目の前まで迫ってきていた。


「なっ…!?」


棍棒は騎士の腹部にぶつかり、騎士は馬から突き落とされてしまった。


「くそっ…っ!!」


騎士が顔を上げると、目の前には筋骨隆々とした馬の足がドスンと置かれる。

血走った目、筋骨隆々とした足、そして大柄な体…。

それが通常の馬ではない事は一目で分かった。

そんな大柄な馬にまたがるキングボアリンが手綱を引くと、馬は前足を大きく上に上げる。


「や、やめろ…!やめろぉぉお!!!」


騎士の声は虚しく、馬は前足を騎士の頭部に振り落とす。

騎士の兜はグシャっと潰れ、兜の中からは赤い鮮血が漏れ出した。


「くそっ!怯むな!行けー!!」


「ブルァァア!!!」


騎士とブルリン達の戦闘は数分で決着が着いた。


「はぁ、はぁ、あとは親玉の奴だけだ!皆無事か!?」


「おー!!」


それから騎士達は一人も欠ける事無く、ボアリン達を斬り倒して行った。そして、残ったキングボアリンを取り囲み、タイミングを見計らう。

そんな時、キングボアリンは黒い角笛を取り出し、勢いよく音を鳴らした。


「ボボーッ!!ボボーッ!!」


角笛の音は平原に響き渡る。

その時だった。

平原の奥から、キングボアリンの馬と同じ大柄な馬が数頭勢いよく走ってくるのが見えた。


「ローゼ、見て!また何か来たわ!」


「あれは…黒い甲冑…?人間の騎士かな…?」


馬に跨っていたのは、黒い甲冑に身を包み、大きな黒い両刃の剣と黒い盾を携えた騎士のような者達だった。


「な、なんだコイツらは…!騎士…人間か!?」


「い、いや!よく見ろ!奴らの鎧兜の中を…!あれは魔物だ!!」


騎士の一人が鎧兜の中をよーく見ると、鎧兜の隙間から見える顔面は真っ黒な煙の様なモヤに覆われており、赤く鋭い目だけが不気味に光を放っていた。


「あれは…ソウルナット…!」


「ソウル…ナット?」


「えぇ、私の村の図書館に魔物図鑑って本があってね…その本で見たの。あれは人間じゃなくて悪しき魂の宿った甲冑…。志半ばで死んだ、騎士の魂の成れの果てなんて書いてあったわ…」


「魔物図鑑か…だから君は魔物に詳しかったんだね!…騎士の成れの果て、か…。あれはボアリンみたいに簡単には倒せなさそうだぞ…!!」


三体やってきたソウルナット達は剣を構えると、勢いよく馬を走らせる。


「く、くそ!くるぞ!!」


「迎えうて!!」


突然の事に動揺しながらも、騎士達は再び馬を走らせる。

騎士の剣が先頭のソウルナットへ向かっていく。

そして、剣がソウルナットの鎧へぶつかった瞬間、騎士の剣はポキっと簡単に折れてしまった。


「なっ!?剣が…っ!!」


そして、その隙をつかれソウルナットの剣に騎士の体は斬り裂かれた。


「ぐぁぁぁあ!!!」


騎士は馬から落ち、手を伸ばしたがそのまま息絶えてしまった。


「鎧が簡単に…!」


「なんて威力なの…!!」


ローゼとフローラは壮絶な戦闘の様子を、ただ見守る事しか出来なかった。


ーーーーーーーー


それから数分後、血に染まった平原に立っていたのは三体のソウルナットとキングボアリンだけだった。

キングボアリンが角笛を吹くと、キングボアリンとソウルナットは暗雲に覆われるアリア城の方へと馬を走らせて行った。


「くっ…なんて強さなんだ、ソウルナット…!」


一部始終を見て、絶望的な気持ちになりながらローゼはフラフラと立ち上がる。


「騎士団の人があんなにあっさりと…あんな奴らに、俺たちは勝てるのか…?」


今までどこか心の中にあった勇者としての自信が削がれ、ローゼは俯きながら拳を強く握る。

そんなローゼを見て、フローラはローゼの肩に座り込んだ。


「…ローゼ、気持ちは分かるわ。でも、今はこんな所で俯いている場合じゃない。この世界を救えるのは今あなただけなの。あなたが賢者様達を解放しないと、世界はもっと酷いことになるわ。…分かるでしょ?」


「…うん、そうだね!こんな所で俯いている場合じゃない…!これ以上犠牲を増やさないためにも、俺たちは先に進まなきゃいけない…!よし、行こう!ゴルアナ火山へ!!」


ローゼはそう声をあげると、騎士達の亡骸を横目に平原を歩き始めた。


続く。

投稿は不定期で行っています。

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