プロローグ
「昔々、世界は闇に包まれました。
そして、闇の世界から王を名乗る者が現れたのです。
闇の世界から現れた王の名はザグリフ。
闇を統べる王は魔物を放ち、世界を我が物にしようと企みました。
しかし、魔王ザグリフの計画は上手くは行きませんでした。
光の勇者と呼ばれるひとりの少年と7人の賢者達が魔王を倒すべく立ち上がったのです。
少年は試練を乗り越え、7人の賢者と共に魔王ザグリフを封印の剣の中に封印しました。
剣は森の奥深くの神殿で今もなお厳重に保管されているそうです…」
「ねーねー、これって本当の話なのー?」
ベッドに横たわる少年は不思議そうな顔で問う。
「えぇ、本当の話じゃよ…まぁ、今から何百年も前の話だけどねぇ…」
ベッドの横に座る老婆は本を閉じ、優しい声で答えた。
「へー、魔王を倒しちゃうなんて凄いね!僕もいつか勇者さんみたいに強くなりたいな!」
「そうじゃな…お前も勇者様みたいに立派な大人になれるとええのぉ」
「うん、僕頑張るよ!」
「うむうむ。さ、こんな時間だ。もう寝なさい」
「はーい」
少年はベッドに潜り込む。
その姿を見つめながら、老婆はどこか寂しげな顔を浮かべた。
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薄暗い森の奥深く。
苔や蔦に覆われ、崩れかけた神殿。
その前に、一つの人影があった。
「ここが封印の神殿か…ククク、魔王復活まであと少しだ」
鋭い眼光、そして長く尖った耳を持つその男は不敵な笑みを浮かべ、頭の長い金髪を耳にかけた。
そして、ゆっくりと神殿の入り口に近づいていく。
男が入り口の前まで近づいた時だった。
「何やつ」
低い声と共に、神殿の前に二つの人影が現れた。
真っ白なお面とローブをまとった二人は、男に向け槍を構えた。
「ふん、守護者どもか…。封印の剣を渡しなさい。素直に渡せば命まではとりませんよ?」
「得体のしれん奴に渡すことなど言語道断…。不可能だ」
「この魔軍宰相ロメウスを知らないとは…。まぁいいでしょう。それなら…力づくで奪うのみです」
ロメウスは左手を前に突き出す。
それを見た守護者達は、さらに身構えた。
「死ね…!」
そう呟いたロメウスの掌に、黒い翼を持った悪魔のような模様の描かれた丸い紋章が現れる。
「…!!」
白い仮面の男達は危険を察知しロメウスの方へ素早く向かっていく。
その瞬間、ロメウスの掌から黒い波動が放たれた。
ロメウスの左手から放たれた波動は神殿に直撃する。
その瞬間、静かな森に大きな爆発音が響き渡った。
少し経ち、辺りを包んでいた煙が晴れていく。
「ふぅ、少しやりすぎましたかね…」
ロメウスの前に先程まで建っていた神殿は崩れ去り、辺りの木々も消え去っていた。
崩れ去った神殿の前には、割れた純白のお面が二つ虚しく転がってる。
それを横目に、ロメウスは神殿の瓦礫に登り、大きな岩をどかしていった。
「あったあった…」
ロメウスが瓦礫の中から取り出したもの。
それは茶色く錆びた一つの剣だった。
「さぁ、あとは魔王様の封印を解けば…今度こそ世界は"闇の民"の物へと変わるだろう…フフフ、ハッハッハ!!」
ロメウスの奇妙な笑い声は、静寂な森の中に響き渡った。
投稿は不定期で行います。