表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

殺すということ

 

 人生で初めて人を殺した。


 否、“人”ではなく“怪物”をか。


 あのろくでなしを人とは決して呼べない。だってその人の革を被った怪物は、私を騙したのだから。人として最低で人徳のかけらもないことをしてしまったから。


 考えてみれば分かる。

 誰だって嫌なこと面倒なことからは逃げたいし、

 目を背けたくはなる。


 けれども、すがり疲れたら助けを焦がれたら涙を浮かべまで訴えたら少しは心は揺れ動くはずだ。人の絶望を逆境を目の前にして心変わりしないなんて人としてすごく変だ。

 でもこれは私の願望。そう合ってほしいことだから。叶わなくても仕方がないのだ。


 けど、けれども、ほんの少しでもいいから、動いて揺れて欲しかった。助けて、欲しかったのだ。


 けど全部が全部駄目になって……………


「授業始めるぞー」


 普段通りのけだる気な先生の声が、教室の扉が開くと同時に聞こえた。

 ほらやっぱり違和感に気づかずにここまで来たのだ、この怪物は。


 所詮生徒のことなど無関心で、意識に止めようとしない適当なひとだ。だから、いつもなら話し声で賑わうはずの教室が静かなことに先生は違和感も疑問も抱かずに入った。


「……………………はへ?」


 先生の視界を跨いだのは残酷な光景だ。


 乱雑に並べられ倒れた机椅子、

 黒板床壁そこらじゅうには鮮血が。

 目線の下には、

 首から血を流す生徒達の屍が

 多い被さり、

 扉近くにも多くいた。

 汚れきった教室からは、

 生臭く備考をつく匂いが充満し、

 異臭を放っている。


 そして教室に一人たちづむ、異様で狂気的な笑みを浮かべる私。


 そんな絶望を目のあたりにして間抜けな声を出して、硬直した先生へとゆっくりと歩みをすすめる。首から溢れんばかりの血が血溜まり、歩くたびにシューズが汚れぺちゃリペチャリと音を鳴らす。

 先生の目の前に私が立つと、そこでようやく先生は気づいた。


 自分が死よりも恐ろしい存在に殺されることに。


「……ま、惑露味……俺、が……悪かった。これか、らは……お前の話も、聞くしいうことな、んでも聞くから……な?だから」


 恐怖に染める表情に震えとぎれとぎれの声。


 この怪物は何を言っているのだろう?

 私を騙しておいて、見てみぬふりして、

 逃げたくせに。


「だから?」


 殺さないでっていてるの?

 

 許せない、そんなことは絶対にありえない。私が殺人をしたのはこの怪物たちのせいなんだから。


 私は右手に持つ地濡れたカッターナイフを先生の首に当てつける。動けば切れて大量出血してしまう。ゴクリと喉を鳴らす先生。


「私はあなたが大嫌いよ。だからあなたはーーーーーー一瞬では殺さない。悶て藻掻いて荒ぶって発狂して壊れて壊して、その汚らわしい体に流れる血を見せてよ、先生」


 だってそんなの私が可愛そうじゃない?私だけが苦しくて辛くて寂しくて…………。報いを受けてもらわないと、私の気がすまないもの。


 私は棒立ちする先生を押し倒し、ズボンの股間へと目を向ける。そして思いっきり踏み潰した。


「ぁぁぁぁぁぁ!!」


 悲鳴を、絶望を叫ぶ先生。

 一回じゃ潰れないかなと思い、念の為何度も何度も踏み続ける。その度エビのように体を沿って全身で痛みを表している。


 次に私は先生の手首を掴んだ。片手では大きな手首周りは覆うことはできず、裏側が見えるようにそっと包んだ。そして動脈をカッターナイフで深くえぐった。心拍数上昇していたからか、勢いよく血が溢れ、顔の半分にもろついた。


 私は思わず歪んで、はにかんだ。

 先生の顔も更に青ざめて、恐怖が絡みついた深い絶望へと。そして全身の力を無くしてだらんとなる。失神、したのだろう。


「あ、はは………………あはは!」


 そんなことにも気が付かないまま、カッターナイフを首に3回切り裂き、お腹を何度も指した。


 血がたくさん溢れ出て、私は笑い狂った。


 笑っているけど無心に、

 只々赤の温かさだけを感じながら。


 切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。切って抉って刺して殺して、狂って。そして狂いに狂って、壊れて、間違えた。


 奪われたのは人間性、理性、喜の感情。

 残ったのは殺人衝動と負の感情。


 殺したいから殺して、意味なんかなくて。

 手に入れた暖かさも次第に冷たくなって。

 また欲しくなって。

 

 かくして、17歳の女子高校生は在学する学校全生徒及び全教員を殺戮し、殺人鬼として蹂躙したのだ。尚、その女子高生の行方は現在不明である。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ