第一話 勇者は辛いよ#0
第三章開始です!
今回は二話投稿となっています。
そもそも『勇者』と『魔王』なる存在がどのようなものであるのか。
根本的な解明は、未だに成されていない。
魔族の頂点である『魔王』のことがわからないのはまだしも、人族の内にある『勇者』のことが何一つ解明されていないというのは、無知蒙昧の誹りを受けても已むなしと言える怠慢だろう。
人族の中に突然変異的に生まれたのが『勇者』である。基本的には血統による継承が行われるものの、『勇者が堕落する』と突然その力は失われ、新たに別の『勇者』が誕生することはわかっている。
何を持って『堕落』したと判断されるのか、そのシステムは全くの謎である。
ただヒントはある。それは勇者の『所属』だ。
厳然たる歴史的事実として、所謂『聖職者』から『勇者』が出現したことは一度もない。
そう、ただの一度も存在しない。少なくとも記録が残っている範囲では間違いなく。
『勇者』となった者が後に『教会』に所属したことがあるが、その場合数年を待たずして『勇者』の力を失っている。これもまた例外は存在しない。
故に私は敢えて断言する。『勇者』とは『教会』とは無縁――あるいは相反する存在であり、『教会』が定義している『敵』と戦う存在ではないのだと。
『教会』の権威とやらは『勇者』の存在に何一つ寄与しないばかりか、むしろ悪影響しか及ばさない。
そのような組織が唱える『勇者』論など一考する余地もないし、その口から吐き出される妄言に耳を貸す必要もない。
事実、連中が言うところの『敵』――魔族との戦いが終結して百余年が過ぎるが、『勇者』は依然として存在するし、この先も存在し続けるであろう。
つまるところ『勇者』が立ち向かうべき宿敵は他に存在し、我々は未だにそれが何であるのかを知ることが出来ていないのである。
必要なのは過去の歴史や伝承を紐解き、『勇者』がなんのために生まれ存在しているのかを突き止めることであり、くだらない権力争いの駒として弄ぶことではない。
愚かにも『教会』が隠蔽し閲覧を厳しく制限している各種記録・関連書物の中には、その事実の一端が記されているかもしれないのだから、『叡智の探求者』たるアカデミーはその開放を強く求めるべきであろう。
さもなくば、人族はどこかで取り返しの付かない過ちを犯す可能性があるだろう。
執筆:特別研究員 レティシア・レレイ・アティシア
※当論文には一定の妥当性があり、その信憑性も極めて高い。非常に興味深い内容である。
ただしこの内容は、権威者及び既得権益受者を著しく刺激するだろう。これはアカデミーへの寄付金にも大きく影響が及ぶ可能性が高い。
よって当論文は一級機密文書として指定され、アカデミー長の許可無き者には一切の閲覧を許可しない物とする。
追記:アカデミー大書庫司書長
もう一話ありますので、よろしくお願いします。





