思考の踊り場~浜ちゃんがつかみきれない。
さて。
めでたくOKが出ましたし、『逆光のフォトグラフ』は、物語として生きて動き始めました。
ただ……作者、つまりこの作品の脚本・演出・監督として、気になることがなくもありません。
この幕あいの章では、作品を書く上での創作上の悩みなどについて、少し書こうかと思います。
砂臥様よりいただいたストーリーの骨格は、『逆光のフォトグラフ』というタイトルがついた段階で急激に、私の中で物語として動き始めました。
今まで複数のお話を書き上げてこられた作者様なら、なんとなくわかって下さると思うのですが。
物語を組み立てる時、『ネタ』『腹案』『お話のかけら』と呼んでいる段階のものは無機物に近く、結構好きなように切り貼り?出来ます。
だけどそれらがとある瞬間、意思と命を持つモノになります。
そうなると物語は、作者だからと言っても好きには出来ないモノへと変化、もしくは進化します。
『逆光のフォトグラフ』は、タイトルを持った瞬間に突然、その段階へと至りました。
そもそも、砂臥様の設定していた『浜 武志』と私が『逆光のフォトグラフ』の主人公として召喚?した『浜 武志』は、かなり違います。
OKが出たとはいえ、それは原案者の砂臥様が想定しない『浜 武志』だからこそ、見てみたい、という形での『OK』だったのです。
その後もメッセージのやり取りをして、本来の『浜 武志』のひととなりをうかがってみましたが、正直に申し上げてよくわかりませんでした。
漠然と、私の手には負えない、少なくとも短編の主人公に据えるには(一人称にせよ三人称にせよ)私の力量を超えるキャラではないか……とは、思いました。
その後、砂臥様はこの原案を、ご自身で小説『長い秘密』として執筆されることになりました。
半分は私がお願いしたようなものです。
本来の『浜 武志』のキャラが、やはり気になりましたので。
そちらを拝読し、今までのメッセージを読み直し、砂臥様の設定していた『浜 武志』は、私が召喚した『浜 武志』より、上手く言えませんが、闇をまとった男だなという印象を持ちました。
闇と言っても暗黒の闇ではなく、薄闇。
しかしその薄闇は、おそらく彼が死ぬまで晴れることのない闇だろうとも。
執着心が薄い、からこそ誰とも上手くやっていける。
自分に対する興味すら薄い、からこそ誰とも深く関わってゆかない。
どうも彼はそんな人のようです。
深く関わろうとする者というのは、場合によっては鬱陶しい存在になります。だから彼の『薄さ』にホッとする人も多いでしょう。
彼に恋をすると、いつまで経っても愛されている実感が持てなくて、蟻地獄へ引きずり込まれるように執着してしまう、かもしれません。
もちろん人間ですから、彼にも喜怒哀楽はありますし、好きな女性にも気の置けない友人にも、それ相応の親しみや愛着、大切だと思う気持ちはあるでしょう。
でも、自分の全存在をかけて愛したり憎んだりするほどの執着は、誰に対しても、おそらく自分に対しても、持たないし持てない人だろうな……、と。
この(私の感覚では)特殊なメンタルのキャラクターに、非常に興味をそそられます。
でも、私の書く『逆光のフォトグラフ』の主人公ではありません。
それだけはわかります。
悔しい気分もありますし、原案者に申し訳ないような気分もあります。
ですが。
私は、私が手さぐりで見つけた(あるいは寄ってきた)『逆光のフォトグラフ』が、かわいいです。
召喚した(組み上がってきた)主人公・真面目で律儀、ちょっとビビリで無意識の気配り上手(これは後に書く予定の脳内ミーティングで、彼の友人たちがそう言っていました)である浜ちゃんこと『浜 武志』に、大いに演じてもらいたいと思いましたし、実際演じてもらいました。
まあ、彼に対しても『つかめない』は出てきますけど……それはまた、別の機会に書きましょう。