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【急募】異世界チートの倒し方  作者: 蓮名カム
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ヒーローvs.魔法使い

 俺は真っ赤な炎に正面から突っ込んだ。熱は感じないし、体のどこかが溶けた様子もなし。“ありとあらゆる環境で生存可能”だとか“傷1つ付かない”とかいう設定もちゃんと引き継いでいるな。

炎を突破して七海さんを見ると、彼は既に次の魔法を待機させていた。



「“ストーンガトリング”!」


「うおっ!?」



虚空から、名前の通りガトリングのように撃ち出された拳大の石が俺の全身に叩きつけられた。相変わらず痛みは感じないが、激突の衝撃は容赦なく俺に襲い掛かってきた。無痛の衝撃という初めての感覚に混乱した俺は思わず足を止めてしまった。駄目押しと言わんばかりに石の弾丸は間髪なく数秒間撃ち込まれ続け、止まった。



「この魔法を受けて無傷とは驚いたぜ、大した防御力だ」


「……今のはちっと響きましたよ。でも、効果はいまひとつみたいですよ?」



今の攻撃を受けたおかげで、俺の体には痛覚は無いが、衝撃は伝わることが分かった。ストーンガトリングのような攻撃を急所に食らいすぎたらダメージを受けてしまいそうだ。余裕ぶっこいて頭やボディーを晒すのは下策だ、覚えないとな。そして、物理的に干渉してくる攻撃が()()一方で、炎のように()()()のない攻撃は全然効かないことも最初の攻撃で学んだ。この収穫はデカいぞ。



起動(ブート)、“ストーンガトリング”」


「ハアッ!」



俺は即座に、左腕を薄く広い板状に変形させることで応じた。体の大部分を守れる即席の大盾だ。再び襲ってくる石弾の衝撃は全て左腕で受ける。これで今度こそノーダメージだ!

俺は防御姿勢のまま突っ走り、七海さんとの距離を一気に詰めた。七海さんの得意な間合いは中距離、そこを詰めてしまえば今度は俺が有利! だが彼が浮かべた表情は――



「ダアアアアアアアッ!」


「甘いな!」



俺の全力の右ストレートは、片手で易々と止められた。



「俺自身にかける”エンチャント”は無詠唱で発動できる。もっとも、お前の拳は防御エンチャントを使うまでもない威力だったがな」


「くっそ……余裕綽々って顔じゃないっすか。正直、自分の攻撃力がこんなショボいのは予想外ですよ…………でも俺の攻撃は、まだ終わっていない!」


「なに……!?」


「”ヒート”ッ!!」



俺の”能力”は、金属の体の「形状」「硬度」「色彩」「湿度」そして「温度」を自在に操ること。



「熱ッ……!」



七海さんはたまらず俺の手を放した。その隙さえ作ればこっちのものだ。今度はこっちの大技を食らえ!



「メ タ ル パ ァ ァ ァ ン チ ! !」



極限まで熱した右拳を、捻りを付けて思い切り七海さんに叩き込む!――



起動(ブート)、”トルネードブラスト”!」


「ほわああああああああっ!?」



―― 寸前で、俺は魔法の暴風に吹き飛ばされた。おい、意味もなく技名叫んでこれかよ! 他人事だったら爆笑ものの茶番だわ! 俺は数メートル飛ばされ、受け身も取れずに荒れ地に叩きつけられた。



「そしてフィニッシュだ、コウキ! お前の弱点は見切った。起動(ブート)、”ヴァインチェーン”」



七海さんの詠唱で現れた植物のツルは、まるで縄のように俺の全身をがんじがらめに縛りつけてきた。これが決定打になった。



「うぎぎ……ッ! フン! ぬぐぐぐッッ! 動けない!」


「勝負ありだな。まだ続けるか?」


「…………いや、参りました」



 こうして、俺は魔法使いの青年に負けた。

七海さんは拘束魔法を解くと、今の戦闘を簡単に解説してくれた。

まず第一に、彼は元の小説の中ではレベル999、全ステータス4桁という圧倒的な()()を持つタイプの魔法使いだったらしい。なので自慢の攻撃魔法で俺に傷1つ付けられなかった時は、内心かなり凹んでいたそうだ。

七海さんの見立てでは、俺の単純な防御力は記号化すると「(無限)」、何なら数値化できないくらい高水準だという話だ。一方の攻撃力に関しては論外。一般人の数倍の腕力はあるが、異世界転生者ばかりのこの世界では最底辺なのだと言われた。だから俺はレベル999の力で拘束された時に全く抵抗できなかったのだ。


 別れ際に七海さんは、俺の左手に1つの魔法をかけた。彼と俺の距離が一定以上近付いたら、さっきの拘束魔法、”ヴァインチェーン”が再び発動するという()()だ。俺が条件を破った時の保険になるものだった。

魔法は俺が七海さんから100メートル離れた瞬間から発動し、解除されるのは3日後。それよりも早く刻印が消えたとしたら彼が元の世界に帰ったか、それとも力及ばず破れて闘技大会から脱落したかのどちらかだということだ。


俺は魔法使いの七海恭弥と別れ、街があると教わった方向に歩き始めた。




俺の左手から刻印が消えたのは、別れの翌日のことだった。


 ■■■■



『ま……何もかも予想通りの茶番だったわ。結果は目に見えていたもの』



 ジェペットは作ったばかりの箱庭を覗きながら呟いた。彼女が起こした最初のイベントは、()()()()()()()という形で幕を閉じた。面白味の欠片もなかったし、そもそも闘技大会を開いた意図はそこにはなかったのだから。



『このイベントに呼んだ言霊の傀儡は、全て最初の誘いに激しく抵抗した子たち……。良かったわね、もう元の世界を心配する必要は無いのよ。ふふ、くふふふふふ……!』



箱庭の住人にはなるべく平等に接しようとはしている。個人を過度に優遇したり、逆につらく当たりすぎるのはジェペット自身の楽しみを短くするだけの愚かな行為なのだから。だが、何を以って平等と言うのかは所詮彼女のさじ加減。明確なルールなどないのだ。

結局今回は、可愛げのない子たちの目の前に魅力的な()()をぶら下げて共食いをさせる、趣味と実益を兼ねた遊びを実行するに至った。



『最後に誘った子は素直で可愛かったわ……。確か、コウキといったっけ』



ジェペットの思い通りに死んでいった異世界転生者の1人と戦い、敗れる様はしっかりと見ていた。コウキの異常に低い攻撃力は無敵の防御力との釣り合いをとるために自分が設定したモノだが、それが祟ってお気に入りが、よりにもよって()()()()()()風情に土を付けられるのは面白くない光景だった。



『うーん……強くしてあげたいけど、前に個人に肩入れしすぎて箱庭を1つ駄目にしてしまったし……』



 ああ、そうだ。良いことを思いついた。チャンスをあげれば良いんだ。



『コウキは転生直後に”プラチナムスライム”に飲み込まれたけれど、逆にそのモンスターを食らって”能力”を手に入れた。そういえば、その設定の調整を忘れていたわね……くふふふふふ』

ジェペットは自分には甘い

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