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蛹の殻  作者: アラdeathM
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9 満遍なく馬券を購入するための細分化(チェンジ)

 民主主義は究極の封建主義でもある。誰もが殿様級の消費と、小さいながらも領地を所有できるまでになった。それはもちろん「良い方向」へ進んでいるに違いないが、「より良い」という理由で認められている訳ではなく、地球に対するそれだけのシェアが可能としているに過ぎない。テクノロジーというナイフで削り取った大量の地球ケバブが裏付けだ。王権は目に見えないため、民主的な立法府という新しい権威にすげ替えても支障はなかったが、エゴが消えた訳ではなく、貴族から市民へ移転したに過ぎない。


 都合が良い方向へ進むのが当然であり(逆は間違いであり)、しかもそれが維持されなければならないとする法則は発見されていない(神との賃貸契約書に記載されていない)。生命は、表面的な厳しさとは裏腹な30億年の善意により育まれてきたと言う訳ではない。人間が天国を作り上げることが神のゴールなら、ビックバン以降随分と手間取っているものだ。


 あらゆるものが細分化して行く過程にある。それが良い方向だからと言うより、拡大が不可能になったための逃げ道である。逃げ惑う細分化だ。


 民主主義、つまり権威の細分化の場合には、脆弱な裸の王様だらけとは言わないまでも、細分化前の比率自体はどこかで維持されている。先進国内部から弾き飛ばされた比率が、人口的には圧倒的な途上国との間の比率に置き換わっているし、一部は先進国内部における格差にも変質しているだろう。裸の王様(細分化された権力)でも集まれば強大だし、正しいこともあれば間違うこともあるのは変わらない。細分化が権力の本質自体を変えてしまう訳ではないのだ。むしろ希薄化し、より曖昧で心もとないものにしているかもしれない。


 民主主義が剝落してきたのは、それ自体の耐用年数ではなく、その裏付けが劣化したからだ。何かで支えていなければ保てない「不自然な理想」という意味では、奴隷制で成り立っていた古代ギリシャの民主主義と、メカニズム的には同一である。奴隷がいない民主主義と奴隷がいる民主主義との差はごく僅かだ。


 民主主義(権威)だけでなく、覇権(力)も通貨(信用)も細分化して行く。細分化すること自体に何か重大な理由(方向)があるらしいことが分かる。


 通貨の信用は、希少性だけでなく覇権を裏付けとしていた。いざという時に頼れる親分の強制力に対する信頼に他ならない。それが細分化するということは、「親分がいらない世界」という、なんだか耳触りの良い新世界になることを意味するのだろうか。


細分化は、粒子の自由運動が活発化すること、つまり温度の上昇と似ている。まさに種が熱を出しているのだ。人類は初めて、種の声(悲鳴)を聞いているのかもしれない。それが断末魔であるのか、1万年後のその時のための、最初の伏線であるのかは分からない。


細分化の向こう側に何があるのか、人類はアンカーであり、目指すべきゴール(良い方向)が存在するのか、それともバトンタッチが待っているだけなのかは分からないが、苦し紛れにも見える細分化現象の全てが、神から法則の所有権奪取を試みる、一連の革命のように思える。


覇権の細分化は、核の存在が覇権の交代を拒否しているために生じているが、それは原因・根拠ではあっても、決して理由ではない。(同様に、グローバル化やAI等の技術革新、高齢化などは、賃金・物価が中々上がらないことの原因ではあっても、それらがなぜこの時代に編み込まれているかの理由とはならない。)個別の原因は、理由を分解したもの、辻褄を合わせるためのエビデンスに過ぎず、別にそれでなくても(他の原因でも)構わないのだ。仮にその原因がなかったとしたら、直ちに代わりの原因が生じて同じように辻褄を合わせる。


人類は、テクノロジーの生みの親ではなく育ての親に過ぎない。いつかそれが巣立つのは当然のことだ。暗号通貨が交換の死(信用の失踪)に至ることなく、軍事力を背景にした強制力とは異なる新たな信用を獲得したとしても不思議ではない。そしていつか、核のボタンまでもが細分化されてしまうのだろうか。


細分化は、外部に対しては有効だったが、内部に対してはまだ力を持ち得ていない。外部との戦いに勝ち地球を占有することはできても、内部の問題もより良い方向へと導けるのかどうか、その証明はこれからになる。外と内の両面に対して効果的な方法であれば何とも都合の良い話だが、我々にとっての外部とは、もはや宇宙以外にはないのだ。

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