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蛹の殻  作者: アラdeathM
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5 大変素晴らしいご提案ですが、お支払いがまだお済みではないようです。あなたのターンは停止されています。

 世界的な日本化現象は、頂上(契約上の限界)と踊り場(単なる技術的な問題)のどちらを意味するのだろう。頂上であれば、それはやり方の問題ではなく、今は誰が何をしても変えられない。これまでの政策が間違っていたのでも、他の政策なら回避できた訳でもない。踊り場であれば、AI革命という新たなシェアナイフで地球への異次元的取り分を獲得し繫栄は再開する。その場合に初めて誰が何をするかが問われる。


人類はまだ地球の表面を舐めた程度なのに、こんなところに比率の壁が現れるのは唐突過ぎるだろうか?最初は全て偶然の顔をしてやってくる。必然とは偶然の後ろ姿に過ぎない。頂上と踊り場は全く同じもののように見えて事前に識別することは出来ない。シュレディンガーの猫のように、観測するまで、振り返って後ろ姿を確認するまでは確定しない。


日本化現象の各要素はリンクしている。その行間を要約すれば「これ以上人口を増やしたくない」と言うことになろう。種の免疫作用、未来からの拒絶反応と言える。何もない(比率の壁がない)ところでこのような反応が現れるとは思えない。


少子高齢化には劇的に人口を減らす効果がある。生産性が上がればその分多くを養えるが、逆にこれを低く抑えれば人口を増やさずに済む。或いはこれ以上養う必要がないから生産性が上がらないとも言えよう。もちろん人口が減れば良いという訳ではない。待ち受けるのは収縮の門ではなく悲劇の門なのだ。悲劇は蛹の殻のように、既存の形を全て溶かす。


生産性の向上と人口増加は切り離せない、と言うより切り離してはならない。両者を切り離して考えることは人口爆発以上に危険だ。人口爆発が一番増しなリスクである。それすらも認めない理想、どこにもリスクが零れ落ちない、よけたリスクが他へ溢れ出さない理想なら理想それ自体がはみ出す。地球全部を占有してしまえば、もはやどこにもよけたリスクの行き場がない。


程々の人口を維持しながら生産性だけを向上させて行く、そんな良いとこ取りの契約は成立し得ない。AI革命により更に人口爆発を加速させる以外に成功への道は残されていない。例えそれが種の免疫機構を破壊することになるとしても。


 なぜインフレにならないのか?なぜ賃金が上がらないのか?フィリップス曲線が直線化しつつあると言うが、それは失業率に対して垂直的な直線と見るべきだ。その直線に触れた途端、例えば失業率が2%になった途端にいきなり発散的なインフレが起こる。尤も実際にはそこに到達することさえできない。仮に失業率に対して垂直的なフィリップス「直線」が2%の所にあるとしても、その前、2.5%の辺りに見えない壁、言うなれば破産事件を管轄する裁判所が債務者に行動制限を課しているかのような、支払いを約すまで決してそこに行かせない壁がある。あと少しで賃金は上がる筈、あと少し金融緩和をすれば、今度は財政出動をすればもう少しで到達できる筈なのに実現しない。やり方さえ正しければ変えられる(やり方が間違っているから変えられない)と言うのは、そもそも契約がなければ何もできない当事者乙に過ぎないという本質が見えていない。支払いが済むまでの間は、それがどんなに素敵なアイデアであったとしても、決して良い循環(生産性向上⇒賃金上昇⇒良いインフレ)には至らない。


 デフレとインフレの間、アメと鞭で御されたこの未来への道幅が自由の幅員でもある。コースを逸脱することなど許されない「幅員のある自由」なのだ。



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