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蛹の殻  作者: アラdeathM
16/116

16 1万年の波

 宇宙が引力から逃れるために膨張し、その努力がいつか引力を引きちぎることができるのかどうか分からないが、膨張する宇宙と理想郷まで発展し続ける人類だけは、最後まで一方向を持ち続けるのだろうか?しかし拡大する宇宙がどんどん薄く寒くなって行くように、いずれ脱皮する余地もない程やせ細ってしまうだろう。それはもはや進化する化石だ。


 これまでは、ジャングルの綱渡りのように次々と新しい覇権というロープが現れたし、次のロープを掴めればそれで良かった。だが今は次のロープが現れてこない。それは変化の制限を意味するから、短期的な急変よりも危険だ。地球は人間に都合の良い環境を保つためにあるのではない。世界を書き換えない人類など用済みとなろう。変化は未来へ捧げられる贄であり、現在人にとってのそれは、少なくとも部分的な死だというのに、時間はカッコウのように我々(現在)へと托卵し続ける。


 核は、使われるか廃絶されるか、睨みあったまま保たれるかになるが、保ち続けるという選択肢はありえない。変化の拒否という神に対するスト権は認められていない。現代は全面戦争が出来なくなっているのではなく最後の1回しかできないと言う方が正しい。もったいぶってタイミングを見計らっているのと同じだ。


 産業革命以降の発展は、1万年の縮尺で見ると時間軸に対して垂直に近づき時間停止を予感させる。目的地を見つけたレミングの行進のように急角度でどこかへ向かい始めたようにも、文字通り時間を止めようと足搔いているようにも見える。希薄化していく存在価値を絞り出す必要にかられて、慌てて箱をひっくり返したのだ。


 流れは壁に近づくと圧力に変わる。老いとは一種の圧力であり、それは個にも種にも作用する。終端の近さ、終端との間の圧力の高まりが老化だ。この繫栄の角度は、その圧力から逃れようとしたか、その老化圧に曲げられてしまったのだ。


 歴史が波を喪失すると未来へは進めなくなる。波という未来へのドリルを失うからだ。波しか時間を透過できない。発展は、似たようなことを繰り返しながら螺旋状に回転するドリルである。そのドリルは徐々に広がって馬鹿になってしまう。そこが発展の限界だ。進化(進歩)は馬鹿になったドリルの交換サービスであるが、通常は有償で保証期間の定めがある。

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