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蛹の殻  作者: アラdeathM
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1 甲と乙の世界(プロローグ)

 この世界は甲乙2当事者の契約で成り立つ。借方と貸方、肉体と精神、0と1の二進数。核も米ソ2当事者の存在が必要ないし適合的であったし、民主主義の存続にも敵が不可欠であった。悪のないところに神のアリバイはなく、推理小説であれば同一人物の自作自演を疑うところだが「神の狂言」は言い過ぎになる。

人と神(世界)の関係も契約だ。進化(進歩)のテロメアという回数券があるかどうかはともかく、不連続なブレイクスルーの度に繰り返されてきた契約更新(悲劇と言う更新料の支払い)に嫌気がさした人類は、ついに契約破棄或いは契約内容(権利範囲)を変更するための革命を起こそうとしている。例えそれが神の目論見通りであったとしても。

これまでの革命は、所有に関する組み換えを伴っていた。この組み換えをやり尽した時、所有権組み換えパターンが出尽くした時に文明は終焉を迎える。今回のロボット・AI革命は、法則の使用権ではなく所有権を神から奪取しようとする試みである。貸家を検索するように、既にある法則を発見するだけの借主の立場に飽き足らず、何より今回の更新料は支払えそうにないという危機感からしがみついた乱取り的革命だ。

宇宙進出という新たなパイを手にしてさらなる人口爆発を迎える以外に、未曾有の法外な通行料を支払わずに新時代へと進む方法はない。これは無償契約ではないのだ。人類が地球を自由に使用できる(所有権限)なら、資源配分と生産性の問題だけを考えれば良いが、地球の使用範囲が契約上の禁止条項に抵触すると、そこで生産性の向上は止まる。しかし宇宙進出(地球外への人類の移民)という新契約締結への道は未だ遠く、AI移民の地球への受け入れだけでは、見せかけの分母が増えるだけで実質的には支えるべき分子が増えてしまう。

AIは、その脆弱性と引き換えに、神の手を取らずとも自立することができる。宇宙進出の難しさは、宇宙に神の手を引っ張って行くことでもあるから、AIは人間よりも宇宙向きではある。しかし、見えない命綱に縛られていないAIは種族とは言えない。命は、群れから逸れることはあっても種から離れることはできない。人類とAIのマッチングにより宇宙に行けるかどうかは未知数だ。

天秤は「甲乙」二つの関係を計る。自由と公平、幸せと犠牲、同時に双方を満たすことはできない。常に消去法で選び続けているだけだ。「もうこれ以上愛せない」と歌われるように、この世界に対して、それ以上の愛し方などできない。

甲と乙が誰であるかは問題にならない。重要なのは役であって役者ではない。この世界には、何丁目の公園にもジャイアン・スネ夫・のび太の比率になるように配役する、配役がうまくいかなければ演技指導してでもそれを演じさせようとする作用がある。そして、のび太のままジャイアンのメリットを享受することはできず、ジャイアンのメリットを享受するためにはジャイアンに変わらなければならない、そんなトレードオフの一種の保存則がある。


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