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文化祭抗争(11)


赤い警告灯とサイレンの音が夜の街に鳴り渡る。

慌ただしい下界を見下ろしながら薄暗いビルの屋上にいる二人は泥棒だ。札束の入った風呂敷を背負い計画の成功をお互いに讃えあった。


「上手く行きましたね兄者(あにじゃ)

「ハハハ! 今頃警察の連中は我らを探し血眼よ!」 

「兄者、気持ちよく話すのは良いですが、足を滑らせないでくださいよ」

「分かっておる、弟者(おとうとじゃ)。それにしても心配性の弟だ。世紀の怪盗であるこの俺がビルの端から落ちるようなへまなどするわけないだろうって誰だこんな場所にバナナの皮捨てた馬鹿はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!」

「兄者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


マッハでフラグ回収。早速バナナの皮を踏んづけた兄は足を滑らし転落し、その兄を掴もうとした弟もまたそのまま転落し開幕速攻で二人は死亡した。


そして次に彼らが目を開くと


「どこだここは?」

「綺麗なところですね」


辺り一面に花が咲き誇る野原だった。

遠くでは牛が草を食っている。


「天界ですよ」


二人が混乱しているとどこからともなく羽衣を纏った美しい女が現れた。


「あなたは?」

「女神です」

「女神が何しに来たんですか? というか何で俺達が天界にいるんですか?」


聞くと女神は得意げな表情をした。


「あなた達を転生させにやってきたのです!! さぁ、望みを一つだけ言って下さい! あなた達の願いを一つだけ叶え、転生させてあげましょう!」


言われた二人は顔を見合わせた。

願うことなど、一つだけだった。


「「じゃぁ超大金持ちに転生させてくれ!!」」

「分かりました……」


女神は光の中に消えていった。

女神が消えると同時に視界は暗転した。


次に目が覚めた時は金銀財宝に覆われた空間だった。

黒っぽい岩屋の中に唸るような金銀財宝がひしめき合っている。

女神の提案は、本当だったのだ。


「あの女神のねーちゃんも良い仕事をするなぁ兄者」

「ホントだな弟よ」


二人は小判を持ち上げてはこぼれ落とさせながら満足げに頷き合った。

そしてお互いの姿を見て笑い合った。


「というか兄者、鬼に転生させられておるぞ」

「そういう弟も鬼になってるぞ」


二人はハハハと笑みを漏らした。

なんと、相手があろうことか鬼に生まれ変わっているのである。

雷柄のパンツに、上裸。もじゃもじゃの頭に二本の角が生えるその姿はまごうことなく鬼だった。

何コイツ鬼に転生させられてやんの。

そんな風に二人はハハハと目くそ鼻くそを笑いあったのだが、


「「え」」


しばらくして同時に事態の緊急性に気が付いた。

え、俺も鬼に転生させられてるの?と。


「「えええええええええええええええええええええええ!?!?!?!」」


二人は絶叫した。

二人は自身の頭部についている角を手で確かめ、身体を改め自身が鬼になっていることを確認した。胸にはでかでかと『鬼』と書かれていた。

二人は事態の緊急性を理解していた。


「や、やばいですよ兄者!? 鬼って大概殺される立ち位置ですよ!?!?」

「お、落ち着け弟者!? 鬼と言っても殺されるとは限らん!! とにかく重要なのは今ここがどこかだ。どこの鬼かということだ。そうすれば色々と分かる……!」


兄鬼(あにき)がそう言った時だ、ちびっこい子供鬼がひょこひょこ現れ言った。


「あ、お兄さんたち。今日もこの()()()()良い天気ですね!」

「はい詰んだーーー!!!」


兄鬼は彼方を向きながら叫んだ。


「住居不定無職、高良美(たからみ)ラミヤ! 転生し鬼になるもまた死にましたよーー!!!」


やまびこでもするように手でメガホンを作り叫んだ。


「もうやだーーーーーーーーー!!!」


やけくそを起こし兄鬼が地面に身を投げ出した。

五体投地で完全に諦めモードである。

そんな兄鬼の肩を弟鬼は揺らした。

弟鬼はまだ希望を捨てていなかったのである。


「まだ諦める時じゃないですよ。ここにも親分がいるんでしょ。自分たちだけで抜け出せば良いじゃないですか」

「何話しているんですか親分たち」

「おいぃぃ!! 俺達が親分かよぉぉ!!!」


言ってるそばから一瞬で希望を打ち砕かれ弟鬼も叫んだ。


「何言ってるんですか、村を焼き、子供を攫い、金品を盗む。暴虐の限りを尽くした二人の大鬼と言ったら親分たちじゃないですか……!」

「おいぃ――! 過去の俺はなんて酷いことをやってるんだぁ――!!」

「人を攫っちゃいけませーん! 物も盗んじゃいけませーん! 村も焼いちゃいけませーん!!」


自分たちに待ち受ける未来を予期し絶叫する二人。

だが二人は諦めない。

はぁ、はぁ、と息を整えると


「じゃ、今日からお前が親分な」

「え」

「お前は青学の柱になれ」

「え」

「とにかくがんばれってことだ。よっ、未来の大将! かっこいい!」


そういって先ほどからいた小鬼に親分の権威を委譲した。

全ては生き残るためである。


「あぁそれとこれからは人殺しは無しだ。平和を目指しなさい」

「それと子供も攫うのは無しだ。盗みは……、ほどほどにしておきなさい」

「ぬ、盗みは良いんですか……?」

「人のこと言えた義理じゃないからな」


言って二人は小鬼の肩をポンポンと叩き岩屋を出て行こうとした。遠くない未来惨劇が繰り広げられるであろうこの地をさっさと去ろうという算段である。

すると騒ぎを聞きつけ多くの鬼が駆けつけてきて、「行っちゃうんですかぁ!?」「悲しいですぅ!」と口々に彼らを引き留めた。

そんな彼らに「自分探しの旅に」とか「俺より強い奴に会いに行くんだ」とか言いながらすごすご退散しようとする二人。

だがそこに


「行っちゃうのかい!?」


一人の女鬼が現れた。


「――『アンタ』!」

「アンタ?」


兄鬼と弟鬼が胡散臭そうにくるりと振り向いた。

すると先ほど親分に認定された小鬼が言う。


「何言ってんですか? 弟鬼さんの彼女じゃないですか!!」

「彼女、だと……!」


弟鬼は雷にでも打たれたかのように衝撃を受けた。

そしてしばらくすると無言ですたすた件の女鬼の下へ行くと


「じゃぁな兄者」

「おい!!!」


兄鬼は力の限り叫んだ。


「お前確かに生前彼女いない歴イコール年齢だったが、見境なしか!! お前鬼で良いんか!?」

「ふん、彼女いない歴年齢プラス転生後の年齢の兄者に言われたくはない。ここには真実の愛がある。なぁ鬼子(おにこ)

鬼美(おにみ)よ」

「だそうだ。兄者、俺は鬼美(おにみ)と一緒に生きていく」

「……」


弟鬼の調子の良い態度にいたたまれない間が生まれた。

兄は頭を掻きむしると叫んだ。


「ちくしょぉぉぉぉぉ!! 弟は置いていけねー!!」


こうして兄鬼と弟鬼は生き残るために策を巡らせることになり、そこからは場面が目まぐるしく変化していく。

辺りは真っ暗になり、喋る者のみにスポットライトが当たる。


「というか何で鬼ヶ島から出て行くと言い出したんだい?」


スポットライトを当てられた鬼美が尋ねた。


「桃太郎とかいうヤベー奴が来るからだよぉ!!」


兄鬼が叫んだ。


「そんなヤバい人なんですか?」


先ほどからいる小鬼が興味津々に尋ねる。


「洗脳団子を腰からぶら下げた猿と犬と雉引きつれたエグいおかっぱ野郎なんだよー」

「噂だと俺達はそいつらに殺されちゃうんだよー」


兄と弟で答える。


「じゃぁなんとかしないと不味いじゃない!」


鬼美はヒステリックな声をあげた。


「兄者……」

「弟者……」


暗闇の中スポットライトが二人の姿のみ浮き彫りになる。


「兄者、俺は鬼美を救いたい……」


弟鬼の悲痛な訴えに兄鬼は力強く頷いた。

そしてポツリと言った。


「方法は、一つある」

「な、なんですか兄者」

「桃太郎は桃から生まれるんだろ? なら日本中の桃の木という木を切り倒せば良い。生まれる前に息の根を止めるしかない」

「兄者、なかなかクレイジーなこと考えますね」


「親分~~~~~~~~!!!」


そこに先程の小鬼が駆けてきた。

伴って舞台は一面明るくなる。


「本当に桃太郎とか名乗る奴がやってきました~~~!!!」

「早くない!?」

「時間がないから巻きで生まれてきたとか言ってました!」

「巻きってなんだよ!!」


『たのもーーーー!!!』


桃太郎の伸びの良い声が聞こえてきた。


場面は移り変わる。


場面は移行しそこは岩がちな鬼ヶ島の浜辺だった。

黒い岩岩が屹立し、波が打ち寄せ飛沫をあげる。


そこに立つのはヤバイおかっぱこと陣羽織に袖を通した桃太郎とその子分の犬猿雉。配役が女であるもののおかっぱの凛々しい男・桃太郎に、ハロウィンの仮装かという格好の犬、猿、雉が居並ぶ。

雉はバレエの衣装のような格好だった。

より分かりやすくいうのならバロックワークスのナンバーツーにような格好だった。

股間から鳥類の首が伸びる。


「貴様が鬼ヶ島の大鬼か!! いざ成敗いたす!! 覚悟!!」


桃太郎は鬼達が出て来るや否や、天高らかに叫び抜刀した。白日のもとギラリとその刀身が輝く。だが


「すいませんしたーーーーー!!!!」

「お命だけはどうかお助けをーーー!!!」


プライドなんてものはない。

二人は即座に頭を深々と下げ命をこうた。

そんな自身の上司の情けない姿を見て


「親分……」

「あんた……」


と背後の仲間たちがドンびくのが聞こえてきたがそんなことどうでもいい。


「命だけはどうか」

「鬼美だけはどうか…!」


二人は揃って何万分かの一つの可能性にかけたのだ。するとそれは通じたらしい。


「なるほど、命だけは、か。その気持ち、分からんでもない。良いだろう」


桃太郎は納刀し頷いた。


「村人から奪った金品全てを返すなら見逃してやっても良い…」

「本当ですか!?」

「あぁ、本当だ。ただ…」

「ただ?」

「私の従える犬、猿、雉の三本勝負に勝てたらだ」


言われて兄鬼と弟鬼はマジマジと桃太郎とその背後に佇む犬猿雉を見た。

色物の混ざるその姿は全体的にひょろいものの、脳裏には生前聞いた桃太郎の物語がある。

物語通り進んだら、自分達は殺されてしまうのだ。

弟と顔を見合わせた。

答えは一つしかなかった。


「受けて立とう……」

「フン、良い決断だ」


兄鬼の男らしい立ち振舞いに桃太郎はキザな笑みを漏らした。


「では早速勝負を始めよう。雉、例のものをこちらへ」

「ハイキジ」


言われて雉がそそくさと舞台裏へ消えていく。一方で鬼達の方では「語尾キジなのかよ…」「キャラ付け適当すぎんだろ…」とその安易なキャラ設定に密やかな驚きが広がっていた。

だが一方で桃太郎はそのような反応は気にもせず、戻ってきた雉が目当てのものをゴトンと中央の机の上に置くと


「では第一試合を始める。お題は…」


ざわざわと不安がる鬼たちを見てにやりと笑いながら喋り始めた。


「あつあつおでん対決だ」


「おいテメーも転生者だろ!!」


鬼はそれまでの緊張感などをかなぐり捨てて叫んだ。

桃太郎の発想がどう考えても現代バラエティに毒され過ぎている。


「女神さーん!! ここにも転生者がいるんですけどーーー!!!」


「な、何を急にたわけたことを言い出したんだ。そ、そんな私が転生者なわけないだろ。そ、そんな、お、鬼をぶち殺したら褒められる世界に転生したいとか言ったわけないだろ……!」

「ヤベー奴が転生しちゃってるじゃねーか!!」

「普通にシリアルキラーじゃねーか!!」

「シリアルキラーだと!? お前殺されたいのか!?」


躊躇いなく桃太郎の手が日本刀に伸びる。


「おいおいコイツやべーぞ! どっちが鬼かわかんねーぞ!?」

「なんだと!? とにかく勝負だ。大鬼!! 負けたら命はないと思え!! さっさと勝負を始めるぞ! 先に食い切った方が勝ちだ! 早く誰が出るか決めろ!!」


ズビシと桃太郎が指さす。


そう言われて慌てたのは鬼達だ。

「マジで熱そうだぞアレ」「ヤバイぞあれマジで」とその机の上で湯気をたてる凶器に顔面蒼白になる。

誰も火傷のリスクがあるこのような勝負には出たくなかったのである。

そして始まったのは仁義ない譲り合いで「お前がやれよ」「いやお前がやれよ」と汚れ仕事を押し付け合っていたのだがそんな中、状況を悟った兄鬼がスッと手を高々と上げた。

そして言う。


「じゃぁ俺がやるよ」


「……!?」


それを見て流れを合点した聡い者たちはすぐさまそれに続いた。


「じゃぁ俺がやるよ」「じゃぁ俺がやるよ」と打って変わって一斉に挙手し始める。

そしてその流れを見て最後に弟鬼が「じゃ、じゃぁ俺がやるよ」と言い出した瞬間だ


「どうぞどうぞどうぞ」と一気に譲り


「おいぃ────!!!!」


弟鬼は叫んだ。

某天才お笑いトリオの鉄板ネタである。


一方で桃太郎サイドでも誰が行くかで揉めていて犬猿雉間で仁義なき譲り合いが発生していたのだが


「猿、お前が行け」

「え、でも」

「分かったな?」

「はい……」


桃太郎に威圧され泣く泣く猿がステージの上へ。

その悲壮な姿に


「かわいそう」「どっちが鬼かわかんねーな」「おい猿、辛いことあったら相談しな」と鬼サイドから心配そうな声が飛ぶ。

そして舞台は整い弟鬼と猿が席につく。その横におでんを食わせる係でそれぞれ兄鬼と桃太郎が付き、ピストルの合図でスタート。


結果散々の醜態をさらしつつ弟鬼が勝利する。

桃太郎サイドは桃太郎が苦しむ猿に喜々として熱い食べ物を差し出し猿が撃沈していた。


「くそ、なんて酷い奴らだ!」

「いや猿を潰したのはお前だから!」

「この仇は必ず取る! 次はゴムパッチン対決だ」


それもまた言わずも知れたバラエティで使い古されたネタである。

ゴムを両サイドで噛んで伸ばし、どちらかが口を緩めた瞬間、それが鋭敏な凶器となりもう一方の顔面に突き刺さるあれである。


「当然、先に離した方が負けだ。犬ゥ!!」

「はい!」

「貴様の出番だ! きっちり勝ち星を稼いで来い!!」

「は、はい……」

「ひ、ひでぇ……」


今にも泣きだしそうな犬を鬼たちが哀れむ。

一方で鬼サイドはまたしても鉄板ネタで代表を決めていて


「じゃ、じゃぁ頑張るっす」


先ほどから出張っている小鬼が代表になる。

かくして戦いは執り行われ両者の間でゴムははち切れんばかりに伸びたのだが、その凶悪な様相に恐怖を抱いたのだろう、小鬼が口を離すとバチンッ!と痛快な音を出し犬の顔面にゴムは直撃。

グフッと犬は倒れ、桃太郎が慌てて駆け寄り助け起こす。


「くっ、負けても相手を負傷させられるゲームを選ぶとは卑怯な!! 許せん!!」

「だからそれ言い出したのお前だろうが!!」

「黙れ! 次の勝負で必ずや貴様を倒す!! 最後はクイズ対決だ!! いけ雉!! 君に決めた!!」

「キジーーーーー」


鳴き声なのだろうか。

ポケモンっぽい声を出しながら雉が前に出てくる。

一方で鬼たちはというと


「仕方ねー、俺が出る!」


最後の戦いとあり、兄鬼が前に出た。


「兄者……」

「任せろ……! お前たちを救ってみせる!」 


そして兄鬼は皆を守るためにステージに上がったのだが


「第一問、モンゴルの首都は!?」

「むずすぎんだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


開幕速攻で頭を抱えた。一方で雉は余裕綽々で手を上げ


「ウランバートル」と明朗に回答する。

その様子に「もうキジってつけないのかよ……」「キャラ造形雑すぎんだろ」と周囲の鬼はざわつくが、勝負中の兄鬼はそれどころではない。

その後も雉はつぎつぎと問題を解いていく。時には現代で流行っていたお笑いネタも答えるのだ。

そんな超人ぶりに兄鬼は目を剥いた。


「なんでそんなに解けるんだ?」


驚く兄鬼に雉は手に収めていたものを見せつけた。それは――


「スマホ?」


なんと雉の手にはスマートフォンが収められていたのだ。


「なぜスマホが?」

「知らないのか鬼よ。転生特典で携帯も貰えるという事実を。それは私が雉に貸し与えたスマートフォンだ」

「なに!? てことはずっとカンニングしていたってことじゃねーか!」

「だから何だ。勝てばいいんだよ勝てば」

「この野郎!! てゆうか俺はスマホ貰ってねーぞ!! 女神さーん!! ちょっと来てくれー!!」


兄鬼は力の限り叫んだ。すると


「なんですか」


いつぞやの女神が現れる。


「女神様、私は携帯を貸し与えられていません。なぜですか?」

「携帯? 渡してありますよ?」

「どこに?」

「ポケットの中に入れています」


慌てて腿の辺りを触る鬼。

確かに触ると固い感触が確かにある。

つまりこれはスマホが入っているということだ。


「ありがとうございます! 女神様!」

「では」


そういって女神は去る。

そしてスマホが手に入ったのなら勝負はまだ分からない。


「ふ、勝負はこれからだぜ!」


兄鬼は意気揚々ポケットの入ったそれを取り出したのだが


「ってガラケーかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


兄鬼はあらん限りの力で叫んだ。

だが起きたのはそれだけではない。

とある事実に気が付いた弟鬼は叫んだ。


「兄者、しかもそのガラケー、ただのガラケーじゃないですぞ! それは」

「ハッ」


兄鬼はそれを見て息を飲んだ。


「Jフォンかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!! いくらなんでも古過ぎんだろ!!」


スパァン!と往年の名機を放り投げる。


「いって」


それは運悪く桃太郎に直撃し


「無礼者!! やっぱり殺す!!」


桃太郎は抜刀。即座に鬼を倒しにかかり、兄鬼たちは溜まらず逃げ出す。

そして舞台の裏に行くと叫ぶのだ。


「なんでこんな目に合うんだー」と。


一方で表舞台は天界になっていて、テラスでお茶をしていた女神は呟く。


「泥棒が転生で良い目を見れるわけがないじゃない」と。




以上が朗太、姫子、歩の作った文化祭優勝を狙いに行ったコメディ特化の台本の大まかな流れである。


「完成、かな……」


放課後、歩はゆっくりと机から顔を上げた。

その額にはじっとりとした汗が伝っていた。


「あぁ、大体大丈夫なはずだ。もし微妙シーンがあったらその場の演者同士で決めさせよう」

「そうね。どうせ文化祭の劇だし、多少の矛盾もあって良いしね。それともしネタが少なくなり過ぎるようだったらクイズのところでかさまししましょう。あそこなら今流行のネタ、いくらでも入れられるし」

「確かに」


序盤のネタで場を温めて、分かりやすい芸人のネタで持っていく。

それが朗太たちの台本の狙いである。


そして現場にはその場の雰囲気、というものもある。

役者ごとに映えるネタ・演技はそれぞれ違う。

今ほど出来上がった台本を下敷きにおのおの面白いと思うようにアレンジしていくのだ。そのまま行くもよし。アレンジするもよし。

その方が役者たちの意気も上がりやすくて良いだろう。

そう考えての判断だった。


そして朗太たちの目算は当たった。

歩の助けもあり修正原稿の出来はさらに良くなっていて、多くの生徒に受け入れられた。


「面白いじゃん!」

「前より良い感じじゃん!」

「というか歩もこういうの書けるんだ。びっくりしたよ」

「へへへ、ありがとう」


称賛され歩は頭を掻き


「じゃぁな兄者」

「うおい!!!」


役者の生徒たちも楽しそうに演技をし、大道具の生徒たちも気合いを入れて段ボールやらを切り分ける。

そんな生徒たちに朗太はうまく行くことを確信していた。

そうして朗太が満足げに教室に戻った時だ。


「ろーちゃんお願いがあるんだよ」


陸上部の友人、一緒に別荘にも行ったことのある桑原春馬に呼び止められた。

春馬はロボ研のメガネ男子、蝦夷池(えぞいけ)を連れていて、蝦夷池は困ったように眼鏡の奥で眉を顰めると朗太に頼んだ。


「凛銅、なんとか姫子にコスプレをさせてくれ」

「え゛」


その頼みを聞いて朗太は目を丸くした。


朗太のクラスはコスプレ喫茶だ。

ホールは当然コスプレをする必要がある。

姫子はホールだったはずである。

その姫子がコスプレをしないなど初耳である。

一体どういうことだ。


朗太は眉を顰めた。






jフォンネタは自分が高校時代の観客で見たものです。


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