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文化祭抗争(9)


物語は二人のコソドロが足を滑らせビルから転落死するところから始まる。

死んだ二人は女神の下へ向かった。

現れた羽衣を纏う女神は言う。


「あなた達を転生させましょう!!」


男達は願った。


「「じゃぁ死ぬほど金持ちに転生させてくれ!!」」


その結果目が覚めたときは手に大判小判が。周囲を見渡すと金銀財宝が。


「あの女神のねーちゃんも良い仕事をするなぁ兄者」

「ホントだな弟よ」


二人は満足げに頷き合い、そしてお互いの姿を見て笑い合った。


「というか兄者、鬼に転生させられておるぞ」

「そういう弟も鬼になってるぞ」


二人はハハハと笑みを漏らす。

まさか鬼に転生させられるとは運のない兄だ、弟だ、と。

しかししばらくすると


「「え?」」


事の重大さに気がつく。

え、これやばくない?と。

鬼はいくら何でもやばくない?と。

まさかの鬼転生に唖然とする二人だが状況を確認しようとする。

生き残るためには現状を確認することが大切だと。

そして議題は当然今自分たちがどこにいるかということに及ぶのだが、時を同じくして小鬼がやってきて言うのだ。


「今日も鬼ヶ島は良い天気ですね」と。


二人はあらんかぎりの力で絶叫した。

自分たちに待ち受ける死という未来を予期したのだ。

だが二人は諦めない。生き残るために桃太郎が生まれる前に始末をつけようと動き出す。

だがとっくに生まれていた桃太郎が鬼ヶ島に乗り込んできてしまいゴタゴタする物語である。




「そこそこね」


翌日の放課後、姫子に原稿を見せると、原稿を読み終わった姫子は小さく息をついた。


「そこそこ、か……」

「でも想像以上のものが来たわ。もっと酷いものが来ると思ったから。及第点よ」

「そうか……」


朗太は胸を撫で降ろした。

台本を読まれている時は生きた心地がしなかった。

及第点というのならば、面目が保たれるというものである。


「これをブラッシュアップしてけば大丈夫よ。アンタのが選ばれるわ。で朗太、早速いくつか指摘して良い?」


朗太がほっとしていると姫子はトントンと台本を整え難しい顔をした。


「まず第一だけど、もう少しギャグを入れた方が良いわね」

「あ。あぁ、文化祭だからな。笑える奴のが良いよな」


その点においてシリアス調の前台本『荒野のガンマン』は問題を抱えていた。


「良く分かってるじゃない。それと朗太は嫌かもしれないけど、入れるのは今流行の芸人のギャグの方が良いわ」

「何で?」

「笑い方が分かるからよ。幅広い客が来るんだから笑い方が分かるネタは強いわよ」

「なるほど……」


文化祭という場ではシュールネタよりも馬鹿笑いできるコテコテのネタの方が良い。

言われてみれば確かにその通りかもしれない。


「分かった。お決まりのネタを入れられるよう変更するわ」

「お願いね。それと二つ目、出来る限り劇の時間は短くして」

「別に良いけど、なんで?」

「回転数上げた方が客が入るからよ」

「あー確かに」


回転数の多い劇の方が最終的な動員数が増えるのは当然だろう。それほど毎回客を捌けるわけで、見た人が多ければ多いほど口コミは広がりやすい。逆に拘束時間の長い劇はそれだけで避けられる原因になりかねない。


「それと──」


その後も姫子の添削は続いた。

時には二人してああでもない、こうでもないと言い合う。

だがそれもあり、帰る頃には台本の大まかな流れは完成していて、その後それを朗太が文章化したことで台本は完成した。

なかなか良い台本だと思う。

最優秀賞を取りに行く、それに特化した台本だ。

そして――


 ◆◆◆


「大丈夫かな……」

「大丈夫よ。私を信じなさい」


それから数日後の放課後。

朗太と姫子はがらんとした教室で結果を待っていた。

今まさにC組では文化祭の台本の投票を行われているのだ。

背中が粟立ち居ても立っても居られなかった。

そわそわする朗太を姫子が窘めたが、姫子も幾分緊張しているようである。

出された台本案は計3本。

朗太と祭と、とある女生徒が出したものだ。

その頃には文化祭の演劇をより良いものにするために祭が姫子に頼んだという体で朗太と姫子は公に2年C組の演劇に関わっていた。

これまでの経緯もありC組の生徒には快く受け入れられた。

朗太達の台本は朗太と姫子の合作という形で提出されている。


「採用されるかな……」

「台本はまっちがいなく面白く出来ているから大丈夫なはずよ。面白ければ裏切られないわ……」


言葉の内容とは裏腹に、それはまるで自分に言い聞かせているようだった。

生きた心地のしない時間がしばらく過ぎた。

そして気を紛らわすために朗太がトイレに行こうとした時だ、姫子のスマホが突然唸った。

結果が出たのだ。


「来たわよ……!」


弾かれたように姫子はスマホに飛びつき、朗太もごくりと生唾を飲んだ。

心臓は今にも喉から飛び出しそうだった。

そして朗太が身を固くしていると


「採用よ……!」


高々と姫子は手を掲げた。


「私たちの台本が採用よ、朗太……!!」

「やったーーーーーー!!!!」


朗太はガッツポーズをした。


こうして朗太たちの台本は採用されたのだ。


――その後話を聞いたところ、投票の結果は圧倒的だったらしい。


朗太たちの台本の得票率は六割を超えた。

中でも男子からの支持が圧倒的で、二十票中十九票が朗太の作品へ投票されていたらしい。

笑いに重点を置いたのが良かったようだ。

これには同じく台本を提出していた祭も脱帽で


「いやー凄いね。あんなん書かれたら私の台本じゃ勝てないよー。演劇部でも別に台本書いてなかったし。やるねー茜谷さんと凛銅君」


とあきれ返っていた。

いずれにせよ朗太たちの台本が採用されたのだ。


「やったわね」

「あぁ」


朗太と姫子は破顔した。



これにより朗太たちが演劇へ介入するのもずっと容易になった。


「ちょっとそこ、もっと恥ずかしさを捨てて」


姫子は、キャストが決まり次第さっそく始まった練習で演技指導も始めていた。

実際に時間はあまり残されていないのである。

期末テストの答案が返却されたのがシルバーウィーク後のことだ。

今回朗太たちが動き出したのは9月末のことで、今はもうとっくに10月に突入している。

つまり例年通りで今回が特別という訳ではないのだが、今回も例に漏れず時間はあまり残されていないのだ。

配役が決まり次第、即座に劇の練習は始まり、ブラッシュアップのために姫子は即演技指導に入った。刻限まであと二週間もない。

だが姫子、そして祭の演技指導は的確でキャストの生徒たちの演技はめきめきと上達していった。


そんな全てが軌道に乗り出した際、その報せはやってきたのだ。


借りる機材の申請をしに行っていた少女は血相をかいて教室に戻ってくると叫んだ。


「私たち、機材借りられないって!!」








いつもありがとうございます。作者の玖太です。

本編が何やら不穏な感じで終わってますが、なんとかなるのでご安心ください。

では早速本題です!

実は本編が文化祭編で軽く一区切りつくのですが、それもあり次章が始まるまでの間、夏休みifを書かせて欲しいです!

内容は朗太、姫子、風華、纏の四人で京都まで自転車旅行!というストーリーです!

次章を始めるにあたって少し準備期間が欲しいので、その間書くような感じですね。

私も埼玉⇒兵庫間を友人たちと自転車旅したことがあるので、それをもとに書くような感じになりますね。

出来る限り面白い話にしようと思っています!

宜しくお願いします!



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1巻と2巻の表紙です!
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