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別荘編(6)


歯みがきをし五人揃って男用の寝室に入る。

だがすぐに寝るということはなかった。

皆が春馬の写真に群がっていたのだ。

デジカメに映るは人類の至宝。宝石の数々。

それにみな額を寄せ興奮していた。


「すげーな」

「おいおいおい、マジでやばいな……」


きめ細かい砂で満たされた浜辺に、打ち寄せては砕ける白波。

雲一つないどこまでも澄んだ青空に、降り注ぐ夏の日差し。

そして白波立つ海辺に佇む、美女。

風華に姫子、纏に翠。加えて、外見は良いらしい弥生。

彼女たちがビーチで戯れる様子は神の造形物と言われても信じられる神々しさであった。


「す、すげー……」


大地は口を半開きにして呆けていた。

姫子のその細見からは想像できないほど大きい胸。

風華のしなやかな体躯に抜けるような白い肌。

纏のきめ細やかな肌に華奢な体躯。

そして緑野の周囲とは違ったどこか大人びた美貌。

加えて妹の弥生。何というか、やはりただの妹なのだが、客観的に見てそのあどけない肉体は肉親でない異性からするとエロく感じるだろう。


それだけのものを見せつけられた男たちはというと


「うわーこれマジでエロイな」

「やべー良いもんみたな」

「ホントにな日十時。マジで茜谷さんエロすぎだって」


と姫子のきわどい写真に鼻の下を伸ばしたりしていた。

まぁ確かにエロくは撮れている。

朗太は背後から見上げるような角度でビーチボールをする姫子を見て首肯した。

ちなみに『うわーこれマジでエロイな』は誠仁の言葉である。

その後も写真展は続く。


「ほーこれはなかなか……」


誠仁は鑑定士のように眼鏡をかけ直ししげしげと見た。

緑野の写真が表示されていた。

大きな胸が揺れている。


「すごいなマジでこれは」

「一体何カップあるんだろうね日十時」

「Eは固いんじゃねーのか。どう思う朗太」

「いややっぱEくらいなんじゃねーのか大地……」


五人揃って緑野の推定カップ数談義を繰り広げる。

その後出てきたのが


「本当に金糸雀さん華奢だよな」


纏の写真だった。

纏がビーチボールをレシーブしている瞬間を切り取った写真であった。


「身長ってどのくらいなん朗太」

「確か150無いはず」

「それでこのおっぱいだろ?! 凄くね?!」

「いやでも確かBとか言ってた気がするけど……」

「「言ってた?! どういうこと?!」」


男たちが一斉に反応した。

だが朗太としてはどういうこともできない。

本当に言っていたのだ。そう。

朗太がそう伝えると「相変わらずスゲー会話してんな……」と日十時は呆れていた。

その次に出てきたのが弥生の写真で、


「「「「…………」」」」


皆の視線がこちらへ向く。


「ま、まぁ弥生の写真を眺めるのなら俺がいないところでにしてくれ」

「りょーかい」


そして次に満を持して出てきたのが


「やはり白染 is 神」


風華の写真だった。風華がしぶきを上げ海岸を走ったり、ダイブしながらボールを拾おうとはしゃいでいる姿が映し出されていた。

どれも朗太からすると18禁指定確定のエロ画像。もうこれただの春画じゃんという感じである。

そして多くの男子にとってもそれは同じだけの魅力を有しているようだった。


「すげー……」

「基本茜谷さん派の俺すら貫通する魅力があるから朗太の言う気持ちも分かるわ」

「ホントにね。白染さんは本当に凄いよ」

「コイツ普通にアイドルで通用しそうだよな……」

「お、宗旨替えか? いつでも歓迎だぞ」


と皆口々に風華の美貌をほめたたえていた。

そしてその後、写真を全員に送信する約束をし三々五々、ベットに入っていったのだが、光源を消ししばらく。

朗太がうとうとし出したころ、興奮で眠れなかったのだろう


「で、実際のところ春馬は誰狙ってるんだよ?」


ふと大地がお決まりの話を春馬に尋ね始めたのだ。

確かに旅の定番だが急に何を言い出すんじゃと思わないこともない。

朗太を始め、きっと誠仁も呆れていたはずだが、春馬はこういった話の経験値が高いらしい。


「うーん、そうだな……」


こなれた調子で頭と枕の間に手を突っ込み考え込むと


「まぁ実際のところは藤黄(とうおう)さんかな」

「「藤黄?!」」


自分の想いの人を白状しその予想外の人物の登場に皆が驚いた。


「藤黄?!」


朗太もガバッと起き上がっていた。

藤黄というのは先日のバスケ事件の際の被害者、遠州(えんしゅう)の友人であり、何かと男子に突っかかってくる少女である。

どちらかと言えば、男子人気は高くない。


「お前マジで言ってんのか?!」

「何だよ日十時。悪い?」

「いや悪くはないが、意外だったかな……」

「そお? 藤黄意外と良い奴だぞ? 何より話が合うんだよね」

「話が合うかー。まさかそんな逸材がいるとは」


皆がまさかの春馬の好意に仰天していた。


「日十時は群青さんだろ? 最近どうなの?」

「この前ようやくEポストのアドレスゲットしたわ」

「おー進展してんじゃん。どっか行ったりするの?」

「いやまだだな。というかいまだに瀬戸のこと引きづってる可能性もあって」

「あぁそっか。前は群青さん基龍(きりゅう)のこと好きだったんだっけ? でももう結構日経ったんじゃない?」

「とはいえ引きづってたら爆死確定だろ」

「日十時なら行けそうな気がしてならないんだけど……」

「そうか? 嬉しい事言ってくれるな? 俺も春馬なら藤黄さんワンチャンあると思うぜ?」

「ワンチャンかよ!!」

「ハハハ、冗談さ。春馬なら出来る。二人一緒に彼女もちになろうな」

「あぁそうだね」


二人で固い約束をする二人。

なかなか青春な会話である。


「にしても春馬は茜谷狙いだと思ってたよ」

「いやそれは無理でしょ。茜谷さん凄いモテるし。それになんたって……」


大地の言葉にちらりと春馬がこちらを見た。

それで春馬が何を言いたいのかはすぐに分かった。


「またその話か」


朗太は溜息をついた。

多くの生徒が春馬と同じように姫子の好意がこちらに向いていると勘違いしているのだ。これまでも幾度かそんな話をしたことがあった。


「残念ながら俺と姫子は友人だよ。ひょんなことがあって縁が出来ただけ」

「ひょんって?」

「い、いやそれはだな……」


自分というのは躊躇われた。

しかし、そうして思い出されるのはこれまで姫子に言われた暴言の数々だ。


『はああああ!? アンタが『言葉の裏庭』なの!? キモ!!』

『まったくあんたの話読んだせいで今日の朝から気分最悪なのよ!』

『ほほほ、本当に同じ遺伝子流れてんの?!』

『……紙ごみの日っていつなの朗太?』


これだけではない。

この場で上げきれないくらいその他様々な暴言を貰ってきた。

こんな酷いことを言ってくる女性が自分に好意を向けているわけがない。

白染や纏たちもだ


『ビーナス姫子のファッキ〇アシスタントがまさか先輩だなんて……!』

『プライドないんですか先輩』

纏からはこのように様々な手酷い言葉を纏からは頂いているし、風華からは


『凛銅君モテるの!? 信じらんない!?』


何ていう核爆弾級の言葉を貰っている。

そんな彼女たちが自分に好意を向けているなど考えられないし、あり得ない。

加えて――


朗太の言葉に大地が

「まあま、朗太は前からこんな奴だから」

と言葉を重ねることで会話は次に動いていた。


「てゆーか白染って今年何回告白されてんだよ」

「新入生がくるシーズンだからな。俺が聞いただけでも30回くらいは」

「金糸雀さんは?」

「既に30は余裕で超すらしいぞ。ま、新入したてだからな、茜谷さんと白染さんでやられた男たちの票が入るからな」

「すげーなマジでモテすぎだろ……」


こんなにもモテる少女たちがまさか特別秀でたところのない自分なんかに好意を向けるわけがないという当たり前の思考である。

満足に小説を書く才能すらないのだ。


と、朗太が呆れていると


「てか当り前だが茜谷もモテるよな。結局津軽も振られたんだろ?」


なんていうとんでもない言葉が聞こえてきた。

思わず朗太は目を丸くした。


「え、姫子の奴未だに告白されてるの?!」


朗太が声を荒らげると周囲の男子たちは何を当り前なことを言ってるんだと眉を下げた。


「そりゃそうだよろーちゃん、知らなかったの?」

「あ、あぁ……。結構一緒にいたけど全然そんな話してなかったし」

「そりゃわざわざそんな話するわけないでしょー」

「そ、そうなのか……」

「そうだよ。ま、ろーちゃんの中では違うようだからこれ以上は何も言わないけど、茜谷さんは未だに普通に告白されまくってるよ?」

「マジか……」

「うん、一学期だけで白染さん同様30人近くは」

「30……」


それを聞いてなぜ心がざわめいたのかは分からない。

しかしこの姫子や風華、纏の人気武勇伝を聞き、やはりそこまでモテる女性たちが自分に好意を向けているわけがないという認識を強くし、姫子がモテるという今更過ぎる事実を朗太は再認識したのだった。



「はぁ……」


それからしばらく。

皆が寝静まった寝室に、朗太の溜息が漏れた。




私事ですが、ようやく引っ越し(東北地方→東海地方)が終わりました! 

次話は4/11(水)です!

宜しくお願い致します!

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1巻と2巻の表紙です!
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