くじ引き操作(4)
時は同じくくじ引きの時だ。
「え、朗太お前何を言っているんだ」
朗太が出し抜けに言うとクラスがざわめき、それを代弁するように誠仁が尋ねた。
しかし朗太は動揺する彼らの反応は想定内。
「い、いやだって、多いんだもんよ、実際……」
自らの胸の内にあった謝意を消し去り、さも自分も驚きだと言わんばかりに瞠目して見せ、箱の中に手を滑らせ底にあったそれをむんずと取り出した。
そうして朗太の手に載っていたのは計11枚の紙片。
残す男子班は合計5班。
本来あるべきクジ数よりも明らかに多いそれにクラス中が息を飲んだ。
クラスが驚きに包まれる様を壇上で見守りながら、朗太はこれまでの経緯を思い出した。
事の発端は、当然、昨日の放課後のことである。
「はぁ!? 津軽がくじ引きでズルしようとしている可能性がある!?」
朗太の指摘に姫子は目を丸くした。
「ちょっとアンタそれどういう意味よ!?」
姫子は眉を吊り上げると朗太の肩をがっちり掴み上下に揺さぶり、揺さぶられながら朗太は言う。
「い、いや、つまりだな……。今回の班決めをくじにしようと言い出したのは津軽だ……! そしてくじ用の箱を作ると言い出したのも津軽だ……! だからだ……!」
「でもそんなの自分がくじにするって提案したからって可能性もあるでしょう!?」
「そりゃそうだ。当然その可能性もある……。でも茜谷、俺たちは言っていたよな。男女同じ番号を引くために『いかさま』するには、同じ番号を引きたい異性に『先に』くじを引かせて、事前にその番号情報を入手する必要があるって……! そしてその後自分たちのくじを引く段になったら、同性の中では真っ先にクジを引く必要があるって……! その際に自分の手の中のくじともともと箱の中に入っているくじを入れ換えるためにくじを入れる箱は外から見えない箱にする必要があるって…! で、俺たちは言っていた……! 男子から引くか女子から引くか鶴の一声で操作できるのは津軽のような中心人物で、さも当然のように真っ先にくじ引けるのも津軽のようなクラスで力のある人物だと……!」
そう、朗太たちは言っていた。
『男子から引くか女子から引くかなんてどうでも良いことだから鶴の一声で決まるけど、こういうのはクラスの話の流れを変えられるようなポジションの奴じゃないと段取りできないのよねぇ』
『そうそ、まさにあっさりとくじ引き制を導入した津軽のようにな』
と。
『そうだな、みんなの前で引くのにそんな暇はないし、そもそも群青が一番先に引けるかなんて分からない』
『津軽みたいにクラスの中心人物なら自分から引く流れも作れるでしょうけど、輝美にはそれは無理でしょうね』
と。
そして……
「くじを導入したのも、箱を作るって提案したのも『津軽』だ! だからこそ……」
朗太は息も絶え絶え言う。
「もしかするとこのくじ引きで津軽たちがなんかしてくる、かもしれない……!」
いまだ可能性の息を出ず言葉の後ろはあいまいだ。
「でもそれだけじゃ決め手に欠けるでしょ!?」
「そりゃそうだ」
間髪入れず姫子が指摘が飛び、朗太も同意する。
確かに姫子の言うことは最もだ。
この理論だけでは、決め手に欠ける。
「だが最もらしい話がある。なぜなら……」
朗太はこの問題の核心をつき、
「「……ッ」」
その当たり前すぎる考えに姫子も輝美も唖然とした。
そのようなことがあったのが昨日のことで
時は現在に戻る。
「え――」
「嘘でしょ」
朗太の取り出した無数の紙片の数々にクラスメイトは呆然としていた。
一方でようやく見つけた紙片に朗太は胸を撫でおろしていた。
正直なかなか取り出すのに手こずったのだ。
確かに最初段ボールの中には必要な分のクジしか無かった。
だが、ダンボールの二重底になっている部分にもう6枚の紙片があるのを発見したのだ。津軽は予め段ボール箱の二重底の上側を『上げておき』、自身が手を突っ込むと同時に『閉めた』のだ。
そうすれば、本来誠仁が入れた紙は二重底に挟まれ姿を消し、袖や手に潜ませ後から津軽がばら撒いたクジが他の男子が引くためのクジとして置き換わる。
二重底の左右の上面を長めに作っておけば問題ないし、クジも津軽が用意していたので筆跡も問題ない。
こうして津軽は得たいくじを手に入れたのだ。
見ると「ク……ッ」髪を短髪に切りそろえた津軽は教室の端で小さく唇を噛んでいた。
きっと彼としてはいたずら程度の軽い気持ちでやったのだろう。
たかが遠足の班決めのくじ引きだ。大した悪事ではない。だが、皆が気が付かないうちに実は裏で自分が操作していたという事実は、実に面白いに違いない。
しかしクラスメイトの多くの反応は『大した悪事ではない』ことに対するものではなく、「どういうこと?」とこの奇妙な出来事にひそひそと囁き合っていた。
「まぁまぁ、すまん! もしかすると俺が多めに入れたかもしれん」
学級委員の誠仁も何か感じ取ったようだ。
クラスのどよめきを鎮めようと自ら泥をかぶる。
誠仁はこれまで何度も学級委員を務めていて、時に委員決めなどでのトラブルも解決していた。
その長年培った学級委員としての嗅覚が、この倍量くじに後ろ暗いものを感じ取ったらしい。即座に
「まぁまぁやり直せばいいじゃないか! すまんなお前ら!!ガハハッ」
と陽気に笑いながら場を抑えにかかっていた。
同じく平和主義者からは「まぁしゃーねー」と言う声が出始め、事態はくじの引き直しに向かおうとしだす。
「あー、でもそれさぁ」
だがそれでは困るのだ。
朗太は言った。
クラス中に響く声で。はっきりと。
「もうめんどくさいから好きな者同士で組めばいいんじゃないのか?」と。
姫子は言っていた。
どうでも良い内容の決め事ならば『力』を有する者の鶴の一声で決まる、と。
だがそれに対し朗太は思っていた。
朗太や輝美にはその『力』はないと。
だが今ここでは別だ。
朗太は今回の件の『発見第一人者』であり、今『壇上』にいる。
クラス中の注目を一身に浴び、発言するのに都合がいいこの場所に。
極めて都合の良い立ち位置で。
だから今この時に限り朗太の言葉には『力』が宿るのだ。
つまりこれは、言ってみれば剣道でいうところの後の先だ。
姫子は『もうくじ引きの流れになっているもの。他の女子をたきつけるにしても明日までには間に合わないわ』と言っていた。
それはすなわち相手に先を取られている状態。だから後の先。自分はそれを利用したのだ。
そして何より朗太は民衆を動かすネタを持っている。それは
「そもそもめんどくせーからクジだって言うが、くじの方がめんどくさくね?」
この当たり前すぎる論理だ。
それこそが今回朗太が津軽の策に気が付けた理由である。
そもそもこんなどうでも良い班決めなど、好きな者同士でさっさと決めた方が楽なのだ。
クジで決める方がよっぽど楽では『ない』のだ。
だから昨日、朗太は姫子と輝美に言っていた。
『そもそもくじ引きで班を決める意味が分からん』と。
その当たり前すぎる言葉を今更突きつけられて、姫子と輝美は言葉を失っていたのだ。
事の起こりからしておかしかったのだ。
『めんどくさいからくじ引きで決めね?』という言葉自体に矛盾があった。
朗太はその矛盾に気が付いたのだ。
実際のところ、津軽の言葉に明確な言語化が行われずとも仄かな違和感を覚えた者は他にも多くいただろう。
しかし朗太だけは偶然にも姫子に今回の題材を持ち掛けられたおかげで、奇遇にも今回のくじ引きに潜む不可解な点に唯一気が付けたのだ。
それが昨日、朗太が気が付いたことで、
多くの生徒にとって朗太の意見は全うだ。
「それもそうだな……」
クラスメイトは狐につままれたような顔でお互いに顔を見合わせ、班決めはくじ引きから好きな者同士で組むという流れに大きく変わる。
クジが何故か多く入っているという気味の悪い事態を前に多くの生徒が、より明確で分かりやすい方法を求めたからだ。
そして、好きな者同士となれば輝美は瀬戸と同じ班になれる。
なぜなら瀬戸と輝美は約束しているのだから。
そう思っていたのだが、
朗太が「(分かったらさっさと組めよ……!)」と輝美に目くばせし目が合った輝美が「(分かった……!)」と意を決しごくりと生唾を飲み込んだ瞬間だ。
「じゃぁ津軽! 私たちと一緒の班になりましょ~!!」
姫子を誘った柿渋が真っ先に声を上げ
「お、良いぜ!?」
津軽が即座に応じ、瀬戸擁す津軽班が姫子擁す柿渋班とくっついてしまった。
(くそぉぉぉぉぉ! やっぱお前たちか!!!!)
その予想はしていたが実現はして欲しくなかった展開に朗太は気色ばんだ。
今回のくじ操作には女子に先にくじを引かせる必要がある。
男女同時間帯に引くのでは成立しない。
この男女の中で女子からくじを引くという流れを作ったのも、女子が引き終わった後男子が引くという流れを作ったのも、
『じゃぁアタシから引こうかな?』
最初にクジを引いこの黒ギャル女・柿渋だ。
その場でくじの番号を言わない流れを作ったのもより自然な印象にするためであろう。
柿渋は誰にも番号を明かさない振りを装ってEポストで津軽に自分の引いた番号を送っていたのだ。
全ては、瀬戸擁する津軽班と同じ班になるために。
こうして津軽と柿渋が裏で組んでいたことが判明したことで、もう一つの謎が解ける。
なぜ津軽はこのようなことをしたのかという問題だ。
つまり今回の件の真犯人は、柿渋だったのだ。
恐らく柿渋も瀬戸のことが好きだったのだ。
話によると輝美の瀬戸好きは有名らしい。
昨日も『てかなんで津軽はこんなことしようとしてるんだろうな?』と議題に上がったのだが、その際姫子は言っていたのだ。
「まぁ確かに輝美が瀬戸のこと好きなのは意外と知っている人多いからね」
「うそ!?」
「そうよ? だから何かの拍子で輝美が瀬戸と同じ班になる約束をしたことをしった女子が輝美の恋路を阻んでいるのかもね?」と。
つまり、まさに姫子の言う通りだったのだ。
群青輝美が瀬戸と同じ班になる予定だと風の噂で知った黒ギャル柿渋は津軽に今回のくじ引き操作を依頼したのだ。
くじ引きを導入してしまえばそれは阻止されるし、それどころか一見ランダムに見えるくじ引きを操作すれば自分が瀬戸と同じ班になれるからだ。
そうすれば輝美の約束を自分の影を見せることなく握り潰すことが出来るからだ。
だから柿渋は気心の知れた津軽を頼ったのだ。
群青輝美が姫子を頼ったのと同じように。
しかし彼女、彼ら彼女の策は、姫子と朗太の手によって瓦解。
班決めは『好きな者同士で組む』という真っ向勝負に移行し
「じゃぁ津軽! 私たちと一緒の班になりましょ~!!」
「お、良いぜ!?」
柿渋は強硬手段に出たのだ。
自ら悪事を働いたのだ。
もう前提すら無視して彼女が輝美の約束を知りながらも力で潰しにかかったのだ。
朗太はくそっ、と心中で吐き捨てていた。
真っ向勝負になれば既に約束済みの輝美に軍配が上がる。
そう思っていた。
しかし朗太の予想を上回る柿渋のバイタリティに朗太は面食らっていた。
輝美も同様である。
自身を裏で嵌めた柿渋という存在が完全に明るみに出て、その彼女が目の前で油揚げをかっ攫って行った事に輝美は唇を噛んでいた。
一方で柿渋に誘われ彼女と同じ班の姫子は
「(え、私が何か瀬戸と同じ班に成っちゃったんだけど!?)」
と言わんばかりの表情で自分を指さし目の前で朗太を呆然と眺めていた。
『あ』かねや姫子の席は教卓の目の前である。
おいーーーー!!
朗太は心の中で叫ぶ。
しかしそんな朗太をよそに周囲の生徒たちは「ねぇ、良かったら俺達と……」「え、良いよ」と班を作り始める。
見ると「なぁ君たちもし良かったら」と親友の舞鶴大地が女子に声を掛け始めていた。
まずい。
それを見ながら朗太は考える。
どうやって群青輝美と瀬戸達を同じ班にするかを。
あわあわと慌てる輝美を見ると哀れになる。
完全に柿渋の表立った悪意にあてられている。
この状態で自身が先客だと主張するのは酷だろう。
だから朗太は、この状態の輝美をどうやって瀬戸と同じ班にするか必死に考え込んだのだが
(あ――)
瞬間、閃く。
唯一、今回の件の全容を把握しているからこそ分かる方法を。
気が付くや否や朗太は壇上で声を張り上げた。
「よし、群青! 俺達と一緒の班に成ろう!!」
「えー」
「おいマジか……」
それを聞いてクラスがざわついた。
仮にも群青輝美は舞鶴大地曰く、クラス4番人気。
そこそこ以上の美少女らしい。
だからこそ朗太が堂々と輝美が属する班を招待するとクラスの多くの生徒が目を剥いた。
一方で朗太の言葉に何らかの意思を感じた輝美は周囲の友人と確認すると
「うん……良い、良いけど……」
どうするの? と言わんばかりに懐疑的な目を向けながら朗太と班を組むことを了承する。
これで準備は完了だ。次に朗太は、突然の朗太の暴走に言葉を失っている姫子を見る。
姫子は朗太の意図が分からず面食らっていた。
姫子の表情は明朗に語る。
アンタが輝美と組んだら、輝美が瀬戸と一緒になれないじゃない、と。
しかし、違うのだ。
当り前だが、なれる。
何故なら姫子は朗太たちの協力者なのだから……!
もうこんなもの姫子と輝美を入れ替えて終わりなのである。
そうすれば輝美は晴れて瀬戸と同じ班に成れる。
朗太は言っていた。
形はどうあれ瀬戸と同じ班に出来る、と。
まさにその言葉通りで、あと少し。
姫子の後ほんの少しの気づきで、非常に歪な形で輝美との約束は果されようとしていたのだが……
気が付かない、だと……!?
朗太はただただ朗太を信じられないものを見るように眺める目の前の姫子に愕然としていた。
姫子は目を丸くして朗太を見るばかりで何も言わない。
『あ、やっぱ私あっち(輝美の班)と組みたいわ~』とか言えばすぐにでも朗太たちへの依頼は達成されるというのに。
呆然とした姫子は雄弁に語る。
え、アンタ何考えてるの? と。
そんな姫子に朗太は瞳で(分かれ……ッ!!)とばかり眼力を込め訴えるが
「…………ハ?」
姫子は目を点にしたまま。
この馬鹿ーーーーーーーーー!!
朗太はそんな鈍感なパートナーに心中で涙を流した。
だがもう時間も残されていなかった。
南無三。
朗太は意を決し、――強硬手段に出ることにした。
朗太は俯いた。
これをクラスメイト全員が見守る、その目の前で言うなんて罰ゲームでしかない。
だがもう言うしかない。視野狭窄を起こしながら朗太は決意した。
青筋を立てつつ朗太はゆっくりと口を開いた。
「で、茜谷。お前も俺と同じ班になれ……!」と。
朗太の宣言にクラス中が息を飲んだ。
何故なら仮にも茜谷姫子はクラス、いや学年、いや学『園』のアイドル。
多くの男子を虜のする圧倒的な美貌を有す。
その誰もが同じ班に成りたい美貌の少女を、ある意味既定路線、瀬戸というクラスの中心人物たちと一緒になった彼女を奪い去るような朗太の不用意な発言に皆、驚嘆していたのだ。
事情を知らないものからすれば、一種に告白のようにすら聞こえる朗太のセリフにクラス中の生徒は驚き呆れていたのだ。
加えて言われた当の姫子も
「え、わ、私……!? た、たたた確かに去年大量に告白されたけどこんなクラス中の前で告白されるのははははは、初めて驚くっていうか……。りり、凛銅意外と大胆な性格しているのね……!」
と、顔を赤く染めていて、未だ朗太の意図を把握している様子はない。
「……」
いや違うからーーーーーー!!!!
阿呆過ぎる反応に朗太は脳内で叫ぶ。
少なくとも自分は自作の小説をボロクソにダメ出ししてきた人間に好意など抱くような酔狂な人間ではない。
時間がたてば多少なりとも感謝こそすれ好意は抱かない。
だから朗太は余りの悔しさに歯を食いしばり、言わずにはいられなかった。
自棄を起こして叫んだ。
「ちっげーよ! アホか!! 誰がお前に惚れるか!」
「アンタやっぱ最低ね!!」
「ブヘェ!!」
瞬間、顔を赤くした姫子が教卓に接地した机を喰らえとばかり揺らし、それが教卓に伝播し教卓が朗太に腰に直撃する。
朗太が腰を折り顔をしかめていると周囲は「なんだなんだ……」「なにこれ……」と二人の謎の関係性に眉を顰めていた。だがややこしい事情をいちいち説明する気など、朗太にも姫子にも毛頭なく姫子は「ハァ」とため息を吐くと
「ま、まぁ良いけど……。ご、強引なのね……」
顔を赤く染めつつ朗太と同じ班になることを了承。
そうなると問題になるのが姫子が抜けた柿渋班で
「女子二人に成っちまったぞ?」
「どうする?」と自然に柿渋班に対し疑義が生じる。
すると自然な流れで姫子合わせた群青輝美班から誰か一人を柿渋班に派遣することが決定し、柿渋班に出向となったのは、当然、群青輝美。
「(頑張ってきなよ……)」
「(良いよ私たちのことは気にしなくて……)」
輝美の友人たちは当然、輝美の恋心を知っていたのだ。
輝美はこうして柿渋班に合流。
「よ、よろしく瀬戸君……」
「あぁ、何が何だか分からなかったが同じ班だな輝美。宜しく」
群青輝美は瀬戸基龍と同じ班に成ることに成功したのだった。
「あとよろしくね柿渋さん……ッ」
「あぁこちらこそよろしく群青さん……ッ」
二人の間で火花が散っているように見えることは言及しておきたい。
ともあれこうして
「てゆうかアレはなんだったんだよ……」
「どういうことだよ」
「何でくじが倍入ってたんだよ?」
「さぁな」
様々な謎を残しながら問題は解決し
「じゃぁ今回はこれで解決だな」
「えぇ、まぁ、色々あったけどね……」
朗太と姫子は輝美からの依頼を達成したのだ。
放課後、誰もいない教室で落ち合うと姫子は赤い顔をしていた。
「言っとくが、マジで勘違いだぞ……」
「知ってるわよそんなこと!! ちょっと勘違いしちゃった私が恥ずかしいでしょ!!」
朗太がため息交じりに言うと姫子は地団駄を踏んだ。
「本当に今回の件はありがとう。姫子。そして凛銅君……!」
そんな二人を見て輝美は笑うのだった。
◆◆◆
だが、今回の件は、これで終わりではなかったのだ。
数日後の深夜。
明日は東京遠足だな、と荷物を纏めている中で朗太は気が付いたのだ。
「……アレ?」
今回の事件に、いまだ不可解なことが残っていることに。
そうして朗太同じ班の誠仁にEポストで連絡。
『明日は大通りで行くよね?』と。
しかし朗太の気づきなど関係なく時は進み
「ようおはよう朗太」
「誠仁、やっぱ一番乗りか」
東京遠足開催の日になっていた。