文芸部編(1)
プール開き、その翌日のことだ。
「はぁ…」
ここ最近、良い目に合わない。
放課後、朗太は教室でため息をついていた。
ガランとした教室には朗太だけがいて、高度の低い日差しが教室に投げかけられていた。
「全くどうなってるんだ……」
信じられない。
朗太はここ最近の出来事を思い出していた。
すぐに思いつくのは藍坂穂香の一件だ。
藍坂が部活を辞めるというのでその真相を突き止めたら、藍坂が風華にネット小説を書いていることをばらしてしまった。
またその後も新聞部からの依頼の際、良かれと思って依頼を受けたら酷い目にあった。
先日のバスケットボールの一件でももとはと言えば自分自身の運動神経の無さが事の発端だった。
そして昨日のプールだ。
筋トレ部に入り毎日のように筋トレをしていたのに朗太の肉体を笑われてしまった。
「はぁ~~~~~~」
思いっきりため息をつく。
「俺、何かしたのかな……?」
どう考えてもめぐりが悪い。
だからこそ
「朗太! 依頼よ!!」
今日の姫子の依頼もあまり乗り気ではなかったのだが――
「文芸部の人が自作のレベルアップをお願いしたいんだって!!」
「ついにこの時が来たか……!!」
朗太はグッと握りこぶしを作りながら立ち上がった。
それはネット小説投稿者である朗太の本領を発揮できる願ってもいない依頼である。
自然と朗太は前のめりになった。
◆◆◆
「きゅ、急にやる気出したわね朗太……」
朗太の様変わりに姫子は思わず半眼になった。
「え、どうしたの……?」
だが朗太の内面に気が付いていない姫子に朗太は熱く主張する。
「いやだって姫子! 文芸部の作品のブラッシュアップでしょ!? まさに俺にネットに小説書いている俺にうってつけの課題じゃん!?」
「え、あっ、そういう!? いやでも朗太相手は文芸部よ!? 大丈夫なの??」
どうやら姫子は文芸に関する朗太の実力を文芸部より低く見積もっていたようだ。
だが舐めて貰っては困る。
朗太は鼻で笑った。
朗太にはうまく行く確信があった。
なぜなら自分はネット上にブクマ200近く有する実力派なのだから、と。
だから朗太は
「行ってみれば彼らは部活でバスケをやってるバスケ部。俺は」
「あんたは?」
「ストリート育ちのバスケッターだ……」
「……」
完全に姫子は言葉を失っていた。
「とにかくまぁ、ここは俺に任せて欲しい」
「まぁ、いいけど……。今回の依頼者、私苦手だし……」
こうして朗太は文芸部からの依頼を受けることになったのだ。
それにしても姫子が苦手な依頼者って一体どんな人物だ?
不思議に思いながら朗太はその足で文芸部の部室に向かったのだった。




