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進路相談と球技大会(1)




お久しぶりです!

本日より最新章、『進路相談と球技大会』編、開始します!


時系列は、姫子たちとディズネイパークに行った数日後のことです。


あらすじ


姫子の『アンタが欲しい』というセリフや、周囲の雰囲気から、保留にしている返事の期日がホワイトデーまでだと自覚した朗太。

彼は今日も悩んでいて……

 


















「はぁ」


 深夜、朗太はベッドに横たわり考え込んでいた。

 ディズネイパークに行った日から数日経っていた。

 無論、頭の中を占めるのは姫子・風華・纏において自分が抱えた問題である。

 12月からこっち、あり続ける悩みである。時間があるたびに考えているが未だ明確な答えは得られていない。

 自分の脳内は真っ暗だ。

 悩みだした当初は水面が陽光を跳ね返し時折光るように一瞬きらめきが見えるような気もしたが、今はそれもない。まさか考えれば考えるほど像が浮き彫りになるどころか、闇が深まるとは思いもしなかった。


 とはいえ、こんなにもふざけた、贅沢な、クラスの男子にフルボッコにされてもおかしくない、悩みもそうそうないだろう。

 朗太は水を求めてベッドを抜け出した。



「凛銅、お前、いい加減進路希望調査票を出せ」

「え」


 その翌日のことだった。

 エアコンがゴーゴーと暖気を吐き出す教室で、クラスメイトの前で朗太は教師から注意を受けていた。

 6限。偶然最終授業の教師が生徒の進路を纏めている男勝りで有名な女教師で、出し抜けにその教師が授業の終わり間際に言ったのだ。

 気だるげな教室の生徒の視線が一気に朗太に向く。


「いやこれはですね」

「何だ? 言い訳でもあるのか?」

「無いですけど」

「そうか。ならせめて理系か文系かどうかだけでも早急に決めてくれ。クラス分けに影響するんだ」

「は、はい……」

「決まっていないのか?」

 朗太が頷くと教師は溜息を吐いた。

「未だに文系か理系かで悩んでいるのはお前くらいなもんだぞ」

「……」

 朗太が黙り込むと、距離感を誤ったことを察した教師は物憂げな表情で朗太から視線を外した。

「……悪かったな。よく考えろ」

「はい……」

 

 時間が動き出す。終業のベルが鳴り、教師が授業の終わりを宣告し生徒が帰り支度をし始める。

 だが朗太だけがその流れに取り残されていた。

 理系か、文系か。

 それはずっと前からある問題だった。

 だが、明確に急かされたため新たな問題として再浮上する。

 ……このタイミングで、である。


 帰りだす生徒を他所に、朗太の思考は自身の内面世界へ向いていた。


 ……才能があるのは間違いなく理系なのだ。

 しかし……朗太が嗜好する学部は文系。

 文系、中でも『文学部』だ。

 理由は単純で、というかもはや自明だろう、自分が物語を作ることを仕事にしたかったからである。

 未だ自分の実力不足を自覚しているので小説賞への応募はしたことがなかったが、自分は物語を作る仕事をしたい。小説家になりたい。それは明確なことだった。

 だから朗太は文学部に行きたい、のだが、朗太の文系に関する適性はというと、校内でもまぁ一応上位という程度で、理系ほどの適性を示してはいないという訳である。理系では学内トップクラスである。

 自分は文系と理系、どちらに進むべきなのだろう。

 朗太はずっと考え続けていた。

 物書きになれる人間なんてごく一握りだ。だとしたら文系の才能を示さない自分は果たして、いつか物書きに、小説家に成れるのだろうか。もし成れなかったら場合はどうだ。理系に比べれば文系は就職に不利とも聞く。その時自分はどうなるのだろうか。自分はどうなってしまうのだろうか。もし『間違った』選択をしてしまったと未来の自分が『判断した場合』、その時自分は過去の自分を許せるのだろうか。


 朗太は自身の才能と嗜好の矛盾に悩んでいたのである。


 人生成功するか、否かの分水嶺にいるような気分だった。


 と、いつのまにか悩んでいるうちに教室から人が消えていて、目の前に姫子が立っていた。


「ひ、姫子?」

「な、何よ大げさな反応ね」


 姫子の存在に気が付き朗太がびっくりしていると逆にその反応に姫子が驚いていた。だが顔を赤くしつつも落ち着くという。


「こんな状況で悪いのだけど、じ、実はアンタに振りたい案件があるのよ。良いかしら」

「案件……?」

「そ、か、活動のことでね。アンタが適任だと思うのよ」

 どうやら姫子は普段しているお悩み相談を朗太に引き継ぎたいらしい。そして朗太が何か言う前に姫子は言ってしまう。


「た、多分、アンタにとっても良い刺激になるとも思うから……! それに、無理だと思ったら返して貰って良いわ」

 

 姫子としても無暗に朗太に仕事を振るのではなく、朗太の事情を察しての話。

 そこまで言われてしまっては受けないわけもいかない。

「わ、分かった、けど……」

 朗太は話だけは聞いてみることになり、翌日の放課後約束の場所に向かったのだが、そこにいたのは朗太も見覚えのある少女だった。

 それはかつて文化祭の際に2Cの劇のパンフレットを書いてもらった少女だった。


「あ、凛銅君。久しぶり」


 桔梗(ききょう)美波(みなみ)。かつて抜きんでた画力を朗太に買われた少女で

「あ、私のこと知っているなら話が早いね」


 手の先まで伸びる茶色のセーターを着たメガネをかけた可愛らしい少女は言う。


「単刀直入に言うね。私、実は漫画家を目指すか美大に行くかで悩んでいるの……アドバイス、貰えるかな?」


 朗太の前に現れた少女は、朗太とよく似た境遇の少女だった。


 そして後に朗太は思う。

 この状況下で依頼を受け入れるのは、まるでテスト勉強前に部屋の掃除を始めるのと同じではないか、と。

 朗太は大切であるからこそ問題の先延ばしをしようといている自分の意識に気が付いていた。











 というわけで、『進路相談と球技大会』編、第一話でした。


 桔梗って誰よ? という方に一応補足しますと、文化祭編でちょろっと出てきた少女のことです。彼女はもとよりこの章で使う、朗太を最終局面へ連れていく水先案内人でした。文化祭編で登場したのは、事前の顔見せですね。

 明日も更新します! 


 それと9/24に本作の漫画第1巻が発売になります!

 表紙がめちゃくちゃ可愛いのでお勧めです!

 まじで可愛い。

 そんな可愛い表紙はページ下部にあります。

 それと購入されると特典で1ページに収められた漫画が付いてくる書店がございます。

 それがとても面白いです。

 私は(当然)これまで自分が動かす朗太と姫子しか知らなかったのですが、特典ではGUNP様が動かす朗太&姫子に会えます! とはいえキャラクターは同じです! 同じものでもスポットライトの当て方でちょっと見え方変わるよねーみたいな感じです! 

 とても新鮮に感じると思います! 私は感じた(原作提供者だから?)

 是非!

 明日の後書きではこの特典について語ろうと思います。

 宜しくお願いします!




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1巻と2巻の表紙です!
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