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ディズネイパーク編(8)








 風華が用事で席を外した。

 それと時を同じくしてスマホに通知が届いた。


『蒼桃が消えた』


 それは津軽からのもので、当然朗太にとっても驚くべきものだった。


「はぁ?!」


 意味不明すぎて目を見開く。なぜ風華が消えたと思ったら蒼桃まで姿をくらますのだ。とにかく確認をしなければならない。すぐに津軽に電話をかけた。津軽も即電話に出た。


「どういうこと?!」

「分からん。気が付いたら消えていて……!」

「Eポストは?!」

「既読もつかん……」

「マジかよ……」


 信じられなかった。

 津軽に愛想を尽かせて帰ったのだろうか?

 いや、それならまだ良い。

 何か事件にでも巻き込まれた可能性だってある。

 それとも――


「体調崩したとか?」

「それも聞いたが既読が付かん」

「だろうな」

 既読がつかないのだから連絡を入れても分からないのは自明だろう。

 となれば一つ一つ可能性を潰していくしかない。

 まず始めに、事件に巻き込まれるという可能性はどうだろうか。

 少し考えて、違うと思う。

 蒼桃はもう15か16だ。いわゆる連れ去れるような誘拐には引っかからないだろう。それにここは夢の国である。犯罪に巻き込まれる可能性はとても低いように思われた。となると気になるのが体調不良か、もしかすると津軽がお気に召さず帰ったという可能性だ。

 断然後者の方が可能性が高いように思う。デート中であるということを考慮すればなおさらだ。

 そして考えていると今更ながら、スマホを落とした、という可能性も思いついた。スマホに何らかのトラブルがあり津軽と連絡が取れないという可能性である。とはいえ、それは津軽にも落ち度はなく、蒼桃も無事な、考えうる最善の可能性で、集合場所に蒼桃が見当たらないことが判明し間もない今なら別の可能性を考慮すべきだろう。


「医務室に行って確認するしかないか、医務室どこだっけ?」

「何、津軽達なんかあったの?」

 横で聞いていた姫子が口を挟んできた。

「蒼桃が消えた」

「え、ホントに?」

 蒼桃の不在に姫子はビックリしているようだった。

 そして辺りをチラチラ見回して予想外の情報を寄こしてきた。

「瞳ならさっき一人でウェスターランドの方へ歩いて行ってたわよ」

「は?」

 びっくりして目を見開く。

 朗太は電話から耳を離す。

 蒼桃がウェスターランドに行った。

 と、いうことはだ。

 朗太は考えを巡らせる。

 今朗太たちがいる場所から見てウェスターランドは入園ゲートの反対方向だ。で、姫子が蒼桃を目撃した時間が――

「さっきって?」

「もうホント今さっきよ」

 ――このように、つい先ほど、ということは、蒼桃はデートに嫌気が差して帰ったわけではないのだろうか?  帰るのならパークの奥には行かないだろう。いや、依然その可能性はある。朗太は考え直す。もしかしたらウェスターランドにある御土産屋に用があったのかもしれない。

 しかし、これで体調不良の線は消えた。そして多分、事件の線も。


 それを伝えると津軽はほっとしているようだった。

「良かった……。何かあったわけじゃないんだな……」

「ほんとだよ……」

 朗太もホッと胸を撫で下ろした。

 何か悪いことが起きたわけじゃないのなら僥倖だ。

 だがこうなってくると残っている可能性は2つだ。

 スマホにトラブルがあったのか、津軽がお気に召さず津軽から離れたのか、だ。

 となれば後は蒼桃に直接確認するしかない。


「蒼桃に直接確認するか?」

 聞くのは酷く躊躇われた。なぜならこれでデートの成否が確定してしまうかもしれないからだ。しかし津軽も頷く。仕方ないと思ったのだろう。

 そして姫子に蒼桃に適当な用事で連絡をして貰ったのだが


「おかしいわね、既読つかないわ。電話も鳴ってるけど出ないし」

 と電話をすると呼び出しメッセージは流れるが電話には出ず、Eポストを送っても既読が付かない状態で姫子は顔を曇らせた。

 意味が分からない。

「じゃぁスマホ落としたのか?」

 朗太が状況から推察すると姫子は首を傾げた。

「どうかしら。さっき見たときはスマホ手に持ってた気がするけど……。それに落としたなら悠長にディズネイ楽しんでなくない?」

 確かにそれもそうだ。言われて朗太は納得した。

 既読はつかないとはいえ、電話は鳴るので故障はしてない。バッテリー切れで電源が落ちているわけでもない。だがスマホを落としたにしては確かにのんきすぎる。

 一体蒼桃は何をしているのだろうか。


「とにかく向かうわ」

 津軽に状況を伝えると津軽は直ちに動き始めた。ウェスターランドに向かうという。

「うん、それが良い」

 朗太も頷く。これしか手はないだろう。

 そして朗太も「自分も向かう」と告げた直後だ

「ん、なんだお前ら……?!」と電話の向こうが慌ただしくなり始めた。

「どうした?」

「や、なんか変なガキに絡まれて……」

 電話の向こうから子供特有のきんきん声が聞こえてくる。

 子供に絡まれているのは本当のようだ。そして――

「ごめん、良く分からんが、切る。すまん!」とあっという間に電話は切れる。

 通話が切れると朗太は自分の手に収まる通話が切れた音声を流すスマホをまじまじと見ていた。


 ……一体何が起きているんだ。

 意味が分からなかった。


 風華が消えて、蒼桃も消えて、津軽は謎の子供に絡まれている。


 一体何が起きているんだ。


 どうやら津軽がいる場所は朗太が今いる場所から程近いらしい。

 朗太は津軽がいると聞いた場所へ向かい始めた。

 そしてそこへ行き実際に津軽を見つけると、朗太は目を丸くした。

 なぜなら――

「え、あれって……」


 津軽が現在進行形で絡んでいる少女、それが風華の実妹である()()()()()だったからだ。


 なぜここに風華の妹の華鈴と華蓮がいるんだ??

 朗太は混乱しつつも頭を回転させる。

 いるわけがない二人組がここにいる。

 今現在、『いない』風華の実妹の二人が。

 そして姫子は言っていたのではなかったか。

 風華は『用事があるから』抜けた、と。

 なら、その用事とは、一体なんだ?

 

 そこに至り、ようやく今回の事件の全貌が、その外観が、うっすらと見えてきた。


 驚く朗太に「そ、華鈴と華蓮ね」と訳知り顔で頷く姫子に朗太は問う。


「どういうこと??」

「言ったでしょ、依頼があるって」


 すると姫子は津軽と華鈴、華蓮の三人組を顎しゃくって言った。


「性格悪いことして悪かったわね朗太。でもあれが『依頼』よ」







次話投稿は7/30(火)を予定しています

宜しくお願いします!

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1巻と2巻の表紙です!
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