沖縄修学旅行(9)
「どうだった、上手くいった?!」
国際通りに遅ればせながら到着すると目を爛々と輝かせる風華に出迎えられた。朗太が成功を伝えるとエッヘンと胸を張った。
「フフン、私だってたまには役に立つんだからね!」
「あ、ありがとう、風華」
「ありがとね風華」
朗太と姫子が礼を言うと「もっと、もっと誉めて!」と風華は顔を綻ばせていた。
それから朗太たちは沖縄の一大観光地で様々なお土産やさんや飲食店が軒を連ねる国際通りを散策する。
風華はパインスティックを食べたり服屋に突っ込んでいったりと大いに楽しんでいた。
「楽しそうね、アイツ」
「ホントだな……」
その様子に朗太たちは呆れつつも笑みを漏らしていた。
とあるお土産やさんでは「凛銅君も買っておいたら魔除け」とシーザーの置物を薦め「誰が魔物よアンタ」軽く魔物扱いされたことを察した姫子が顔をしかめていた。
「でも実際問題魔除けは必要だと思わない姫子」
「なんでよ」
「だって姫子に纏ちゃんに私でしょ。こんな気の強い女にばっか好かれる人他にいる? ちょっと異常よこれは」
「た、確かに……」
「これ以上おかしな女が寄ってこないように魔除けは絶対必要よ。ただでさえもう訳わかんないことなってんだから。あ、私も自分用に買っておこー」
「あ、私も買っておこ」
どういう意味だそれはと言いたかったが、何も言うことは出来なかった。纏も昨日の内に『申し訳ないんですが魔除けのお守り買ってきて下さい><』というメッセージを送ってきている。だからどういう意味だそれは。
またその日もホテルに着くと夕食までの合間の時間で生徒たちは浜辺まで出てきて遊んでいた。若者たちの喚声が浜辺に響き渡る。
その一方で朗太たちはホテル一階に併設されたゲームセンターにいて――
「負けないわよ姫子」
「私も負ける気は無いわ、風華」
運転席が再現された筐体型のレーシングゲームを興じていた。
朗太の横で姫子と風華が運転席に身を収めバチバチと火花を散らす。
「お、落ち着け……」
今にも筐体のハンドルを握りつぶしそうな彼女たちを朗太が諫める。
しかしそれは失言だった。
「凛銅君は黙ってて!」
「ていうか誰のせいでこうなっていると思ってんのよ?!」
「す、すいません……」
彼女たちはますますヒートアップし、朗太はしょぼくれた。
そしてレースが始まった瞬間、ブオオオオオン!! とエンジンを唸らせ彼女たちはスタートダッシュを切り、あっという間に朗太の視界から消えていく。
その後朗太がただ一人平和なドライブしていると、朗太の車を彼女たちの車が猛烈なスピードで後方から抜き去り朗太の車の前で「退きなさいよ!」「アンタが退きなさいよ!」とガッツンガッツンと姫子と風華が互いの車をぶつけあっていた。あれ、このゲームはベーゴマだったのかな? と朗太が錯覚していると、そのうちにゲームは終了した。
ゲームが終わると朗太たちはエアホッケー台にいた。
風華が「あ、こんなとこにエアホッケーあるじゃん」とエアホッケー台を発見したのだ。そして「あそうだ、凛銅君と姫子ってよくやってたんでしょ? 見せてよ」と言うので朗太と姫子は台に着いたのだ。
だが……
『だから朗太、私もアンタのこと好きよ』
『だから朗太、私と付き合ってくれない?』
『アンタと、……これからもずっと一緒にいたいから』
思い出されるのはいつぞやのエアホッケーからの一連の告白。
「…………………………!」
「…………………………!!」
それを思い出して二人して、顔を真っ赤にして固まってしまった。
朗太がその時を思い出し火を噴きそうなほど顔を赤くしていると「え、ウソ?! どうしたの二人とも!?」と風華は慌てだし「うっさいわよアンタ!! 墓穴ばっか掘って!!」と姫子に叱られていた。
そしてその夜のことだ。
姫子のルームメイトの女子から姫子が呼んでいるので部屋に来るように言われ、朗太は教師の目を盗んで一階上の姫子の部屋に向かいドアをノックすると、朗太は明らかに朗太が来ることを予期していない風の姫子に出迎えられた。
「え、アンタどうしてここに?」
「え、どういうこと」
そのきょとんとした表情に朗太は戸惑うが、詳しく確認する暇は無い。なぜならガチャッと廊下のはるか先から教師が出てきたからだ。
それを見た瞬間((マズイッ!!))と、とっさに姫子は朗太を自室に引きずりこみ、朗太は姫子の部屋に身を投げこみドアを閉める。
すると転がり込んだ先の部屋には姫子以外の女子の姿はなく
嵌められた――――!!
ことここに至って自分が何者かの策にハマったことを朗太は悟った。
姫子が朗太を呼んでいるなんていうのは真っ赤な嘘だったのだ。
「あ、アンタ、急にどうしたのよ……」
急な来訪者に姫子は顔を朱に染めていた。
次話投稿は5/10(金)を予定しています!
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