沖縄修学旅行(7)
本日2話連続更新します。こちらは1話目です。
2日目。
この日、朗太たちは平和祈念公園に、ひめゆりの塔などに訪れる予定になっていた。それら施設では皆、ガイドや係員の話を聞きながらぺちゃくちゃとおしゃべりをしながら歩くわけだが、流石にふざけるものをおらず、ガイドの声がよく響く。このあたり流石高校生である。
また、バスに戻るころには皆の顔にも笑みが戻りはじめていた。
これから向かう場所が楽しみにしていた場所の一つだからである。
バスが出発してしばらくすると車内には活気が満ちていた。
「うまくいきつつあるわね」
「だな」
喧騒を取り戻しつつあるバスの中で姫子の言葉に朗太は頷いていた。
姫子と朗太の席は隣である。
2Fの男女の会話にも改善の兆しがさしつつあるのだ。
姫子の、『相手をよく見ろ』というアドバイスは生きているらしい。
今日七浦は、木々の生い茂る場所を通った際背中にデカい蜘蛛が背中につき、ギャースカ東雲グループの女子が騒いでいると、ひょいと蜘蛛を取り逃がしたりしていたりしていた。
「あ、ありがと……」
「別にいい」
助けられた女子はというと狐につままれたような表情で礼を言っていた。
そうそう、そういうのでいいんだよ。
自分の手柄ではないのに朗太はうんうんと頷いていた。
「この調子で行くと良いんだけどな」
「ホントね」
朗太の言葉に姫子が頷いていた。
それからしばらくして朗太たちはおきなわワールドという観光地に訪れていた。
やしの木などが生える広大な敷地面積にいくつもの建物を持つ観光施設である。
「「ハイサーイ!!」」
楽しみにしていた観光地に、入口で男子達が大いに盛り上がる。
おきなわワールドでは沖縄や奄美大島の伝統舞踊であるエイサーを見ることができたり琉球ガラスや藍染め体験、その他様々な沖縄の文化を一か所で体験できるのだ。
スーパーエイサーというエイサーショーでは、カラフルな法被をきた若い男女が太鼓を持ちながらグルグルと舞台を飛び回り、生徒たちは拍手や歓声を送っていた。
それが終わると朗太達は玉泉洞というこの施設に併設してある地下に広がる鍾乳洞に訪れたのだが、――結論からいえばここから朗太の不幸は始まったのだった。
「国内随一の広さらしいぜ」「めっちゃ綺麗らしいな」と生徒たちは期待に目を輝かせるが、当然姫子は薄ぐらい地下というだけでアウト。
「だだだだ、だからこういう場所はダメだって言ったでしょ……!」
いくらライトアップされていようと姫子は怖いらしく、姫子は朗太の腕を握りつぶさんとばかり鷲掴みにし、「痛っつ!!」朗太の顔は苦悶に歪み
「ハハッ、姫子怖がりすぎよ!」
その様子を見て風華は他人事のようにケラケラ笑うわけだが
「じゃ、ハブ触ってみたい人~~! じゃぁ白染さんどう?!」
「え、うそ」
その後のハブショーで自分を指名され自らを指差しきょとんとしていた。
風華は大の蛇嫌いである。
どうするんだろうとE組に交じる風華を遠目に見ていたのだが、
「行ってきなさいよ風華! 良い機会でしょ!」
「ちょ、アンタ、私が蛇苦手って知ってるでしょ?! こんなの酷いわよ!」
周囲の女子に、――普段の行いが悪いのだろうか?――、押し出されてしまい、もはや逃げ場はない。
風華はハブに触れ「ギャアアアアア!!」とらしくない悲鳴を上げていた。
風華のハブとの接触体験は約5分に及んだ。戻ってきた風華はすっかり気分の悪そうな真っ白な顔になっていて、そんな風華を朗太が心配していると纏からメッセージが届く。
『なんか姫子さんと風華さんが不幸なことになっている電波をキャッチしました』『気分が良いです^^』
「………………」
それを受けて、だからなんでこいつは分かるんだと、やはり良い性格しているとも呆れていると数秒後
『箪笥に足の小指ぶつけました……orz』というメッセージが届いた。
「…………うそだろ?」
なぜか自分を含め自分の周囲の人物のみ不幸に見舞われていて朗太は青ざめた。
本格的にお祓いが必要かもしれない。
このようにおきなわワールドの観光は一難さってまた一難の災難続きだったのだが、それを終えると今度向かうのは国際通り、様々なお土産屋さんが並ぶ観光地である。
おきなわワールドを出ると彼の地へ向かうべく皆バスへ歩いていたのだが、その時東雲グループの女子が呟いた。
「あれ、恵、パーカーはどうしたの?」
と。