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沖縄修学旅行(6)



遅れましたすいません~。

理由は最近スマホで執筆していたのですがスマホの全データが消える事件が発生しましてね……。それで書き直していたんです。一応完成したんで投稿です!

よろしくお願いしますー















「よいしょっと」


 皆が部屋から出ていき、さぁどうしたものかと首をひねった矢先のことだ。

 半戸になっていたドアからひょっこりと風華が現れ朗太は身を強張らせた。


「な、なぜ……」

 その姿はホテル備え付けの萌葱(もえぎ)色の浴衣である。がちゃりとドアが閉まる。

「なぜって修学旅行の夜に気になる人の部屋に行くのはお決まりじゃない?」

 朗太の問いに風華は臆することなくさらりと答えた。

 そのさまはいっそ清々しい。

「だから来ました! ダメだった?」

「だ、ダメじゃないけど……」

 朗太の態度を窺うような上目遣いに朗太は赤面し視線を外した。

「やった!」

 たちまち風華は破顔した。

 そして正直朗太としてはこのような現状では風華がやって来ることは、喜びと緊張と罪悪感が入り交じる微妙な心境なのだが、風華は構いはしなかった。


「どこが凛銅君のベッドなの?」と朗太のベッドを聞き出すとそこに座り、「ホラ凛銅君も」とベッドをパンパンはたき朗太を隣へ誘う。結論からいえばそれに朗太が抗する術はなかった。


「いや……」と朗太は躊躇うが「ダメなの……」と目を潤ませる風華に負けた。その顔に勝てるわけもない。

 ため息を一つ吐き風華の隣に身を収める。すると風華は満足げな笑みを作った。

「フフ、座った」

「う、うん……」

「良い子。グッボーイ」

「い、犬か……」


 風華のたわごとに力なく返す。そしてこれから何をするかと思えば「今日色々あったから凛銅君と話したくてね!」と風華は言う。

「あぁそういう」

 朗太が安堵すると風華の瞳がキランと輝いた。

「フフ、凛銅君は何を期待しちゃったのかな?」

「あ、いや――」

 図星をつかれ言葉に詰まる朗太。

 だが風華はというとこのネタでいつまでも朗太をいたぶる気は無いらしい。

 ニシシと笑うと「とにかく安心して。凛銅君。皆、とーぶん帰ってこないから。今日は私と話し放題だぞ」

 私といっぱい喋ろう! とこぶしを握った。

「え、どういう……。皆帰ってこないの?」

 朗太が問い返すと風華はニヤリとずる賢い笑みを浮かべた。

「不思議に思わなかった。なんで宗谷君までいなくなっちゃうか?」

「ま、まぁ」

 まさか……。

 風華の回答に思い至ると風華は答えを披露した。

「今宗谷君はE組のクラス委員のところだよ。なんたって、()()そうするように仕向けたからね」

 つまりこの状況は――

「ふ、風華が……?」

「そ、そういうこと。舞鶴君も今頃E組のところ。高砂君と桑原君も当分帰ってこないことも分かっている。というわけで……」

 風華は頬をわずかに朱に染めつつ言った。

「逃がさないぞ、凛銅君」

「~~~~~~~!!」

「フフ、凛銅君、顔赤いよ」

「そ、そうか……」

「まるで首里城みたい」

「首里城て……」


 風華の自由な発想に朗太は呆れていた。

 相変わらず凄い発想をする。

「にしてもホントに真っ赤だったな……」

「ホント、ホント! 真っ赤で目がちかちかしちゃった!」

 気の効いた返事も思い付かずただの感想をのべると風華はあっさりと会話にのってきた。

 本当に会話することが目的だったらしい。その無邪気さにホッと胸をなでおろしつつ、朗太は今日の出来事を思い起こしていた。


「でも御嶽(うたき)は独特の雰囲気がったよね!」

「最終日行く斎場御嶽(せーふぁうたき)はもっと凄いらしいぞ……」

「へー!」

 朗太の耳より情報に風華は目を輝かせていた。


 思えば羽田空港に集まった時から風華は元気だった。なぜなら「私飛行機乗るの初めて!」だからである。

 空港の出発ロビーで風華は飛行場に目をキラキラさせていた。

「凛銅君は?」

「お、俺?」

 ざわざわと騒々しい人ごみの中で朗太はそれまでの自分の過去を振り返る。大きい荷物はすでに預けていた。

「飛行機は何回か乗ったことあるよ。九州と北海道旅行行ったことあるから」

「ほうほう、なんか注意しなきゃいけないこととかある?」

「さ、さぁ……。別にないんじゃない」

 と二人で会話していた時だ、アナウンスが流れてきた。

 それはスマホの充電器などはコンテナにいれず手荷物として持っておけというもので、それを何気なしに聞いているとみるみる風華の顔が青くなった。

「ど、どうした……」

 心配になり尋ねると風華は小さな声で言った。

「い、入れちゃった……」

「え」

「入れちゃったの、充電器を……」

「えぇ?!」

 朗太も小さな声で驚いた。

「あ、あんなにでっかく書かれてたじゃん! どうして!?」

「分かんないよ! 飛行機乗るの初めてだったもん! 浮かれてて分かんなかったのかも」

「そんな!」

「ど、どうしよ……凛銅君。どうしたら良いと思う……?」

「いや、俺に聞かれても……」

 さすがに朗太にもこの状況の打開方法など分かりやしない。

 すかさずスマホで調べると、実際には爆発の危険は低いというようなことも書かれていた。それを見て朗太は判断する。

「も、もう出発まで時間もないし仕方ないんじゃないか……」

「で、でもさ凛銅君……」

 風華は泣きそうになりながらこちらを向き小声で言った。

「爆発しちゃったらどうしよう……」

(……パワーワードが過ぎる)


 そして実際にそう問われると何とも言えない。

 

「しゃーない。言いに行くか風華。俺も一緒に行ってやるよ」

「ほ、ホント! ありがとう凛銅君!」

 

 全ての判断を空港職員に委ねるべく動き出す朗太たち。だが念のためもう一度確認と風華がバックを確認するとそれは入っていて


「入ってましたー! ご迷惑をおかけましたー!」

 風華は朗太に頭を下げていた。

「アンタたち何やってんのよ……」

 トイレから帰ってきてその様子を見た姫子は苦言を呈していた。



 機内でも風華は元気だった。

 朗太がトイレ待ちをしていると偶然にも風華が後ろに並んできて、小窓を指さし興奮気味に囁く。

「海、海! 綺麗だよ凛銅君!」

「だな。キラキラ輝いて」

「凛銅君は海外には行ったことないの?」

「ないね」

「そっか! なら一緒に行きたいね!」

 などと言っていると姫子に割って入られていた。

 

 そして沖縄についてからも天真爛漫な風華の様子は見られていて、そのような魅力的な美少女がそばにいるのだ。緊張しないわけにはいかなかった。

 まるで横には小さな太陽がいるようだった。もしくは何が飛び出すか分からない宝石箱である。

 ほどなくして会話は再び御嶽(うたき)の話に戻っていた。御嶽とは祭祀などを行う、琉球の信仰における神聖な場所である。御嶽の多くは森や林、川そのものだったりし、国や県に保護されているのだ。首里城にも首里森御嶽(すいむいうたき)と呼ばれる場所があり、そこではガジュマルの木が石壁のなかで茂っていた。


「なんか、The・パワースポットって感じだったな」

「うん、何か感じ入っちゃったなぁ」

 朗太が言うと風華は目をキラキラさせながら天井を見上げていた。

 その様子に風華は御嶽に相当インスピレーションを受けたようだ、と朗太が思っていると

「ところでさ」

 風華がいつのまにかこちらを見ていた。

「凛銅君って輪廻転生って信じている?」

「急にどうした」

「宗教的なあれか?」出し抜けな質問に半笑いで聞くと違う違うと風華も笑いながら手を振った。

「今日、御嶽とか、ほら、色々な場所に行ったからふと思ってね。凛銅君はどうなのかなって」

「そうか、俺は信じてないな」

「そっか。でも実は私は輪廻転生って信じてるんだ」

「そ、そうなのか」

 どう答えたものか朗太が探りつつ返しているとそんな朗太の反応も気にせず風華は頷いていた。

「うん、でも普通の奴じゃなくてね、私流の奴。人は皆死んじゃうと車の中にいるの」

「車のなか?」

 面白い考え方に朗太は身を乗り出した。

 こういう変わった話には前のめりになりがちである。

「そ。で、運転席にはお父さんがいて、助手席にはお母さんがいるのよ。で、後部座席には私と、姉と、妹たちがいるの」

「大所帯だな」

「そ、大所帯。でね、昼下がりの海沿いの道をずぅっと走っているの。音楽のかかった車内で、時々笑い合ったりして、いつまでも、いつまでもね。でね、順番が着たら、じゃあね、ばいばいって一人また一人って車から降りていくの。でも悲しくない。それはまた新しい家族のところにいったってことだから。でね、最後に自分の順番が着たら、自分も消えるの」

 いつのまにかしんみりとした空気になっていた。

「私はそう思っているんだー」

 ポツリという風華に朗太が黙っていると、風華は恥ずかしそうに頭を掻いた。

「ハハ、変な話しちゃったね」

 今日色んな話聞いたから変な話しちゃった

 風華はそう言い添えていた。


 対し朗太は何も言うべき言葉が思い浮かばなかった。

 だが少なくとも朗太はこの風華の発想を下らないと一蹴する気にはなれず――


「そんな変じゃないんじゃないか」と返すと「そっか!」と風華は嬉しそうにニシシと笑っていた。


「凛銅君も同じ車に乗るんだぞ!」

「お、重くないかそれは……」

「ドアは開いているよ凛銅君!」

 早く乗車するんだ! と風華はお道化た。

 

 それから少しすると、風華のスマホに通知が入る。

 それは有力な情報筋からのものだったようで

「あ、やば、先生が見回り始めたって。帰らなきゃ凛銅君!」

 風華は目を丸くしベッドから飛び起き手を振り振り部屋から去って行った。

「じゃぁね凛銅君! ばいばいき~ん」


「悪役の自覚はあったのか……」


 一人残された部屋で朗太は呟いた。


 

 修学旅行一日目、終。





 


 転生の下りを入れましたがこれで良かったのか自分でも微妙です……。

 何かあったらコメントお願いします。修正もありかと思っています。

 次話投稿予定は4/30(火)、だったのですが、前書きに書いた通りで書き置きがもうない……。今から書きますね。

 できれば5月5日に二話連続更新できればと思っています!(切れ目が微妙な関係で2話同時更新の方が好ましい……) 

 宜しくお願いします!



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