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沖縄修学旅行(1)

お久しぶりです!

修学旅行編始めます! 舞台は沖縄!

また例によって名前がゴロゴロ出てきますが『七浦』と『東雲』だけ何となく覚えて貰えれば大丈夫な構成になっています! 宜しくお願いします!







 




 

 凛銅朗太は、こと学校行事において良い記憶があまりない。

 運動神経も球技に関してはからきしで球技大会はもってのほか。

 球技のない体育祭や運動会でさえも、人前に出るのが好きではない性根のせいでクラスのゼッケンに袖を通すのが嫌だった。

 絵心も特段無いので展覧会も辟易していたし、学芸会も同様。朗太は裏方に徹したし、だがそれでいてクラスメイトにただライトを当てるだけの裏方が楽しいわけも無かった。

 そんな朗太の、華のない、荒涼とした学校生活で唯一楽しいものと記憶されている行事がある。

 それが宿泊行事だ。

 生来、旅が好き、ということもあるのだろう。

 加えてこれまで友人に恵まれてきた。だから彼らと普段とは違う地で数日寝食を共にした記憶は、そこに夾雑物があろうとも宝物入れに入れて棚の奥にしまっておきたいと思える大切な記憶だった。


 たとえ一かきすればクラゲに触れそうになるほどクラゲが大量発生した海で遠泳する羽目になろうとも(臨海学校)、風呂もついていない山奥のバンガローで数日生活する羽目になろうとも(林間学校)、流されるまま入った部活の練習でへとへとになったとしても(合宿)、たとえ多くの男子たちが女子部屋に向かい自分たちだけが取り残されようとも(修学旅行)、それらは朗太にとって大切な思い出だった。

 

 だから朗太は今年行われる修学旅行も密かに心待ちにしていたのだ。

 自分には様々な問題が山積していて、学校行事にうつつを抜かしている場合じゃないことも重々承知しているが、友人たちと数日行動を共にする宿泊行事を心待ちにしてしまう自分の気持ちを止めることは出来なかった。

 それだから、時にツンドラのような冷たさを示すようになったクラスに、その原因となった男子たちに、少なからず憤りを覚えつつ、もう自分は仲間たちと仲良くしていれば良いやと投げやりに考えていたのだが――


 修学旅行を目前に迫った放課後のことだ。

 姫子に呼び出され例によってがらんとした教室にいくと、今回問題になった比井埼(ひいさき)グループに所属している七浦(ななうら)幸田(こうだ)渡瀬(わたせ)の、クラスで陽キャラに属する生徒が3名ほどいて

 


「俺たちが悪かった。女子たちの関係を修復したい」


 そう、気まずそうに切り出してきたのだ。

 修学旅行、数日前のことである。


 ◆◆◆


「……」


 それを聞いて朗太は固まっていた。

 

 言いたいことは、多々あった。

 いやそもお前たちが原因じゃん、とか。

 こうなることなんて目に見えていたじゃん? とか。

 修学旅行で仲良くしたいなら最初から練習にちゃんと参加すれば良かったじゃん、とか。

 なんならお前たち、俺のことぼろくそに言ってたじゃん、とか。

 そんな当たり前な感想があぶくのように湧いては消える。

 

「いや……」


 それらをないまぜにし出てきたのは短い言葉だった。


「お前が言いたいことは分かっている!」


 すると七浦が朗太の手を広げ制止した。


「俺たちが原因だって言いたいんだろ……! それは十分に分かっている! だが、お願いだ、頼む」

 朗太は返す言葉が無かった。ただただ唖然とし見つめていると男子たちは言葉を続けた。

「身勝手なのは分かっている。だがどうか、茜谷さんと、凛銅。力を貸してほしい」

 最後の『凛銅』は言わされている感が半端ではなかった。

 姫子に視線を移すと姫子は肩をすくめた。

「と、いうわけなのよ朗太……」

「……蒼桃は?」

「修学旅行までもう時間ないでしょ。瞳はお留守番よ。修学旅行が舞台、というか問題解決の場所になるだろうし。……それに今回の件はあの子も原因だしいない方が楽、でしょ……。問題が問題なんだし……。」

 確かにそれはそうかもしれない。

 恐らく男女の不仲は蒼桃がまいた種なので、蒼桃はいない方が話が纏まりやすいという判断なのだろう。それに修学旅行ほど仲の修復に適すイベントもない。

 姫子の説明を受け朗太はフムと考え込んでいた。

 

 朗太としても、なんとかしてやりたいという思いもある。なぜなら2年の中で一番荒れたのは2年F組で、なんとなくではあるが、2Fが、より荒れた原因が自分にあることも察してはいるのだ。このような渦中の人物が混乱を齎さないわけがない。

 つまりこの混乱の一部は朗太にも責任があるわけで、朗太も手伝うことはやぶさかではなかったのだが


「もうこんな状況は嫌なんだ……。すまん、頼む……」


 彼らの痛切な表情を見ていて気持ちは決まった。


「そ、そうか……。良いのか俺で……」

「やってくれるのか?!」

「ま、まぁ……。力になれるか分からない、けど……」

「いや良いんだそれでも! ありがとう凛銅!」


 朗太が受け入れると七浦は手を掴みブンブン振ってきた。

 その光景に姫子の唇もゆるく弧を描いていた。



「で、男子たちと女子の仲を取り持つことになったわけか」


 翌日の昼休み。朗太は大地と駄弁っていた。場所は屋外テラスである。手すりの先からは真冬だというのに子供は風の子と主張せんばかりに校庭やテニスコートにまばらにいる生徒たちの声が聞こえてくる。テニスコートには女子も少なからずいるようだった。


「そういうこと。なら最初から練習なんてサボらなきゃいいのにな」

「ここまで女子が烈火のごとく怒るとは思わなかったんじゃないか」

「らしい。昨日、そんなことも言っていた」


 朗太は昨日の話を思い出しつつ頷いた。彼らはここまで女子が怒るとは思わなかったとも言っていた。どうしようもない想像力の欠如である。

 しかし仲直りがしたいと素直に言える彼らの姿勢は美徳のようにも思え何とも憎めない。

 フンスと朗太は憤りと諦念の混じる息を吐いた。


 空を見上げるとクラスの現状を示すかのように曇天がある。


「もしかすると七浦たちは土方(ひじかた)のことを心配したのかもしれないな」

土方(ひじかた)?」


 だしぬけに出てきたクラスメイトの名前に朗太は目をしばたかせた。

 土方は今回問題になった比井埼グループに所属する男子である。そういえば彼は比井埼グループの中でも比較的ちゃんと練習には参加していた気はするが……


「知らないのか? 土方、同じクラスの桜木のこと好きなんだぞ?」

「え゛」


 朗太はクラスメイトの知られざる恋愛模様に泡を喰っていた。


「それはマジなのか」

「マジだよマジ。ていうか見てれば分かるだろ」

「そ、そうか……?」


 分からない気もするが。

 しかしその事実を加味すると彼らの態度の変化も分からないでもない。


 土方が所属するのは比井埼組とでも呼ぶべきだいたい七人組のグループだ。

 そして今回比井埼が蒼桃に引っ張られて練習をサボり、それが彼らのグループを中心に伝播した。比井埼グループは合唱コンクールが荒れた原因のグループである。


 対し女子グループはというと、朗太の体感では、トップというかカーストの外に瀬戸組とつるむ柿渋(かきしぶ)薔薇坂(ばらざか)というギャルグループがいて、彼女たちを除いたトップカーストに桜木蜜柑(さくらぎみかん)擁する東雲(しののめ)という少女が中心になるグループがある。

 その下? にザ・女子グループ、藤黄や遠州などが所属する6人組。ちなみに姫子がよく所属しているのがこの6人組だ。

 そして温和組、紫崎、水方、群青、緑野の4人組がいて、さらにその他という感じだ。


 これら多くの女子グループが男子に対し反感を持ったからクラスが荒れたのだ。中でも東雲組と藤黄組が結託して男子たち、中でも比井埼組にノーを突き付けたのが大きい。

 クラスの中心グループたる比井埼グループと東雲グループの対立はそのまま男女間の対立になりえる。

 だからこそ逆説的に比井埼組と東雲組の和解はクラスの和解にも繋がる。

 こんな男女が対立した状態は、東雲組に所属する桜木に恋心を抱く土方としては弱り果てるものだろう。

 今回依頼してきた幸田、渡瀬、七浦の比井埼グループに所属する三名はそれを申し訳なく思い、プライドをかなぐり捨てて、これまで数々の依頼を解決してきたという姫子に頼ったのだろう。

 友人に対し申し訳なく思う彼らの気持ちは分からないでもなかった。


 それに――


「いつまでも不仲じゃ嫌なのは当然だろ……」


 この気持ちは誰にでもあるのだろう。

 彼ら曰く、申し訳なく思っているのは比井埼たちも同じであるらしい。


「まぁ、そりゃそうか」


 朗太はぼやいた。

 どこまでいっても自業自得だがこのクラスの雰囲気を改善したいという気持ちは分からないでもない。

 だが朗太もまた女子たちが怒っている様を目の当たりにしている。

 上手く行くのかな。

 朗太はため息を吐いた。

 男女の仲直りは修学旅行を舞台に行われるように話は纏まっていた。


 行先は沖縄である。


 廊下からは生徒達の期待を体現するかのような喧騒が響いてきていた。








次話は明日投稿します!

宜しくお願いします!



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1巻と2巻の表紙です!
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