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合唱コンクール(2)

本日2話投稿しています!

こちらは二話目です! 宜しくお願います!







「いやいや……」


『どうしたら良いと思う?』と問う藤黄に朗太は思わず苦言を呈していた


「まずそのつっけんどんな態度を治したら?」

「なんで?」


 噛みつくように言い返された。


「悪いのは、男子たちだよね?」

「まぁ、そうだが……」


 校内行事は部活などよりも優先だ。

 確かにこれに関しては、参加していない者が100%悪い。


「でも、どこの部活もそこまで守られていないのが実情だし……」

「うん、そうだよね。守れている部活もあるにはあるけど、守れていないとこが多いよね? でもなんでそれで私が折れないとならないの?」

「まぁ、そうだが……」


 これまでの男子たちへの怒りをぶつけてくるかのような藤黄のいいっぷりに言葉が出なかった。

 確かに藤黄が苛立つのは分からないでもないのだ。


「12月から練習は始めてる。確かにその時は参加率が悪いのも仕方が無いと思った。まだまだ先だしね。でも一月に入ってからも練習に来ないのはダメじゃん。なのになんで私が折れないとならないの?」

「……」


 朗太は返す言葉も無い。

 確かにその通りで12月から練習は開始されている。その時から男子の参加率はあまり褒められたものではなかった。

 だが朗太に言わせてみれば、その当時から藤黄は不参加だったり練習にやる気のない自分たちを悪辣に言っていたような気はするのだが……。

 

藤黄楓(とうおうかえで)


 かつてE組とのバスケで起きたいざこざで涙を流した遠州(えんしゅう)の親友であり、普段から誰にも距離感なくずばずば物を言う性格で、その強烈な性格から男子から煙たがられていたボブカットの少女だ。

 ちなみに、朗太の友人である桑原春馬が恋心を寄せる人物であるが、その恋路は一向に進んでいないとみえる。春馬がそろりそろりとソフトタッチ気味の会話をしに行くもバッサリ切られるシーンを何度となく目撃している。

 そしてこの度、藤黄楓は合唱コンクールのクラス委員を拝命するに至り、やるきを漲らせ、冬休みが明けるや否や本格練習でやる気が無かったりサボりがいる男子たちにブチ切れ中といったところだ。


 しかしこの彼女の態度に男子たちが反発を強めているのも事実なのだ。

 朗太は行く先々で男子たちが愚痴を言うのを聞いている。

 このままではさらに男子たちのやる気が下がりかねない。


「まぁ確かにその通りだけど、怒っても仕方ないよ藤黄。北風と太陽じゃないが、強く言っても人はそうそう変わらない。むしろ優しくすることで好転することもある」


 男子たちの藤黄への反発を知る朗太はとりあえずはまず現状に問題意識のある藤黄を大人しくするところから始める。双方でやっかんでいたら問題は収束しないだろう。


「そうよ、(かえで)。私も思っていたけど、もう少し大人にならないと」


 姫子も同意見だったようだ。藤黄を連れて来たきり黙っていた姫子が口を開いた。

 しかし言われた藤黄はというと姫子を一睨みし友人特有のそっけなさで言う。

「フン、どうせ姫子が男子に甘いのは凛銅君がいるからでしょ!」

「か、楓アンタなんてこというのよ?!」

 姫子は顔を真っ赤にし憤慨した。図星だったのだろうか。

 姫子は藤黄をズビシと指さした。

「か、楓! アンタそんなこというならこの話は無しよ!」

「え、ちょっと! そんな!」

「あったりまえでしょ! まずはその態度を改めなさい! 話はそこからよ!」

「分かったわよ……」


 姫子にばっさり切られると、藤黄は仕方なさそうに頷いた。


「たくっ……」


 しょんぼりする藤黄に姫子は悪態をつきつつ腕を組む。その顔はまるで夕焼けのように真っ赤だった。

 

「何よ!」

 

 朗太は何ともいえない面持ちで佇んでいるとやけっぱちになりながら姫子がすごんだ。


「な、なんでもないけど……!」


 朗太はとりあえず否定するよりなかった。


 その翌日のことだ。

 昨日の姫子の指摘は一定の効果を生んだらしい。

 放課後、早々に教室を引き上げよとする比井埼はじめ合唱コンクール不真面目グループに藤黄は声をかける。


「あれ、比井埼君帰るの? 今日は練習だけど……」


 その顔面に張り付けられたニコニコとした笑みは努力の跡が感じられた。彼女も努力しているのだ。

 しかし結論から言えば、男子たちは彼女の努力など一顧だにしなかった。


「え、でも他のクラスの奴も普通に帰ってんじゃん? なんで俺だけ残らないといけないわけ? んじゃ。行こうぜ、井関」


 比井埼はにべもなくスタスタと部活へ去って行った。

 しかも今日にいたっては珍しく「(あんな調子じゃ俺もパスだわ、悪いけど陸上部行くぜ)」と高砂日十時なども部活へ。

「(ちょ、おい、日十時(ひととき)?! お前それでいいのかよ?!)」

「(良い? まぁちょっとくらい良いだろ。じゃ、春馬、部活で待ってるぞ)」と親友の春馬が青い顔をしているのをよそに教室をこっそり後にし、男子の欠員は20名中6名。

 自分が愛想を良くしても参加者が15名を割り込んだことに藤黄は憤慨した。

 

 比井埼たちが去ると他にもクラスメイトがいるというのに頭を掻き「もおおおおおおおおおお!」と唸った。


 そして遠州はじめ「まぁまぁ……」と宥められ落ち着きを取り戻している藤黄に、いつしかその怒りが涙に変わり、話が決定的にこじれることを予感したのだろう。


「し、仕方ないわね。男子たちも含めて何とかするわよ」

「お、おう……」


 放課後、朗太を呼びつけると姫子はそういった。

 こうして朗太たちの活動は始動したのだった。










というわけでようやく本格的に活動開始ですー。

ようやく軌道に乗った。

次話は3/12(火)に投稿予定です。

宜しくお願いします。



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