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DAY 6 (1)



 というわけで朗太の親と対面です!

 宜しくお願いします!






 突然だが、朗太の両親は至って普通の人間だ。

 父親の凛銅忠秀(ただひで)は大きくも小さくも無い会社で研究だが開発だかをしていて、朝早くからそのクマのような巨体をスーツに包み出勤していくしがないサラリーマン。

 母親の麻衣子(まいこ)は書道教室で講師をする傍らでパートなどを掛け持ちしていて、朝早く出ていき、夜遅く帰ってくる。

 そんな半ば子供を放任しているかのような勤務スタイルの二人だが、おそらく常識的な感性は持っていた。

 だから朗太が姫子たちを内緒で家に連れ込んでいたことに、彼らは憤ったのだろう。


「朗太、自分がしたことを分かっている?」

「はい……」

「女の子が男の子の家に来るってのは、簡単なことではないのよ? あなたと、その子たちの間でどのような信頼関係があるのかは知らないけど」

「はい……」

「今度、その子たちを連れて来なさい……」

「……わ、分かった……。相談してみる……」


 朗太を叱る麻衣子の、もとは美人であったらしい顔は非常に険しかった。

 また麻衣子が朗太へ説教している間、父忠秀も終始厳しい表情だったのだが、説教が終わるとパサリと近間にあった新聞を手に取っていた。


「全く、誰に似たんだか……」

「俺ではない……」


 父親がズズズッと緑茶を啜っていた。




「で、あなたたちが茜谷姫子さんに、白染風華さん?」

 

 といったわけで、大晦日の前日の12月30日。

 先日弥生から連絡の通り、姫子たちが朗太宅に呼び出されている。

 リビングではテーブルを挟み姫子、風華、纏の三人と、父親の忠秀に母親の麻衣子が対峙していた。朗太と弥生は立ちである。

 おしゃれをして来たのであろう姫子たちは、椅子の上で汗を流し、縮こまっていた。彼女たちとしてはこちらの親となれば、取り入りたいのかもしれないが、明らかに叱られる展開に彼女たちも怯えていた。

 また当事者である朗太も緊張していた。

 何を言われるか、分かったものではないからだ。

 家の外で集まった時は「ま、そういうことなら仕方ないわよ。というか叱られて当然だしね」「そうそ。謝って終わりよ。それにこれで凛銅君のお母さんとお父さんに挨拶できるね!」などと姫子や風華も殊勝なことを言っていたが、実際に会うとそういうわけにもいかなかった。


「は、はい、茜谷です……」

「白染です……」


 姫子と風華は小さくかしこまり緊張しつつ答えていた。姫子は黒のニットにチェック柄のスカート、風華はセーターとパンツを合わせている。風華が着ていたチェスターコートはコートハンガーにかかっていた。


「そう。私は凛銅麻衣子。で、こっちが父の忠秀」


 彼女たちの紹介を受け、父・忠秀がぺこりと軽く頭を下げる。

 そしてその強面のクマみたいな大男がお辞儀をしたことが恐縮だったようだ。


「宜しく。君たちの噂は朗太と弥生から聞いたよ。いつも朗太に良くしてくれているようだね。ありがとう」

「い、いえ、そんなこと! いつも私たちがお世話になっているくらいなので!」


 忠秀が言うや否や姫子がはじかれたようにへりくだり、風華がうんうんと大きく首を上下に振っていた。


「フッ」


 そんな挙動不審な彼女たちに忠秀は失笑する。だがその様子は――近しいものならば見間違えないのだが――冷笑しているようにも見え、姫子と風華は固まっていた。

 この忠秀という男、その大柄な体格にいかつい顔という組み合わせもあり、異様に迫力がある。平たくいうと、碇ゲンド〇的な迫力を示すこともしばしばである。今にも手を顔の前で組み『……出撃』とか言いそうなのだ

 だから固まる姫子たちの気持ちが朗太には良く分かった。


「纏君も。元気だったかい?」

「はい、叔父様ッ」


 一方で、ニットのトップスにハイウエストのパンツを合わせていた纏は、話を振られて嬉しそうに面はゆんでいた。これが付き合いの長さの差である。


「叔父様もまたダンディーになりました?」

「フっ」


 お世辞なんかも繰り出し、美少女からの誉め言葉で父親の頬を緩めさせていた。 そしてこんな状況を見せつけられ、「ムムム」と姫子と風華はむくれていて、勿論纏もそれが狙いだったのだろう、父の反応が良かったことにニヤリと笑い彼女たちを一瞥し、益々キラキラとした笑みを浮かべ「ビックリしちゃいました~」などと尻尾を振っていた。

 のだが……、母の麻衣子にはそういった手管は通じない。


「纏ちゃん」

「は、はい!」

「私は纏ちゃんは勝手によその家に上がり込む子じゃないと思っていたわ」

「……す、すいません……」


 忠秀に尻尾を振っていると瞬く間に先日の朗太同様しっかりと窘められ、しゅんと身をすくめていた。

 その様子に残りの二人は明らかに喜んでいた。明らかに愉悦や嘲笑の感情が彼女たちの顔に浮かんでいた。


「で、あなたたちね……」


 そして時間がかかったもののあらかたの顔合わせが済むと麻衣子は眉間にしわを寄せ額に手をやり言った。

「危機意識なさすぎよ。何歳?」

「じゅ、十七です……」

「だよね。その年ならもっとちゃんとしないと……。あなたたちを大事に出来るのはあなたたち自身なんだからね」

「は、はい……」


 とたんにより一層真面目なトーンになり、姫子や纏、風華も瞬時にしょげかえり、それぞれ、思い思いのタイミングで返事をしたり、頷いたりしていた。


「この家で何かあったら大変よ。あなたたちに落ち度が無くても、災害だってあるかもしれないんだし。あなたたちはもう大人だって思っているかもしれないけど、私たちからしたらまだ子供よ。まだまだ、対応できないことがある」

「は、はい……」

「何より何かあった時、悲しむのはあなたたちの家族よ。もう十七や十六なら、ちゃんとよく考えて行動なさい?」

「はい……」


 凄い。

 項垂れる三人を前にし朗太は、自分が叱られる可能性も忘れて驚嘆していた。

 こんな殊勝な三人を朗太はこれまで見たことが無い。

 これまで彼女たちはどれだけ横柄な態度を示してきたことか。

 いつぞやの遊園地の占いでは、出た結果に満足できずクレームを付けに行こうとしたのではなかったか。そんなヤンキーさながらのムーブをこれまで何度となく繰り返してきた彼女たちが、こんなにも大人しい。

 なんだこれは、史上最強は我が母の麻衣子なんじゃないか、もしかすると母に色々と教えを乞うべきところがあるかもしれないと朗太が思っていると


「あと朗太!」

「はい」

「アンタが一番悪いんだからね! アンタが隠してなければこうはならなかったのよ!」

「はい」

「全く……」


 案の定、麻衣子の叱責が飛んだ。

 ちなみにこんなにも厳しい、子供視点からすると口うるさい母親は、小学校時代、朗太の友人からは評判が良くなかった。

 朗太の母ちゃんはすぐ怒るからなー、とか、そんなことを頻繁に言われたものである。

 だがこの母親と父親があって、今の朗太があるわけで、


「ま、いくら言葉で言っても意味のないことだしこの辺にしておきましょうか」


 朗太が神妙な顔つきで黙っていると麻衣子はハァ~と大きなため息を吐いた。


「この話はもう終わり。姫子ちゃんに風華ちゃん。それに纏ちゃん。いつもうちの朗太と仲良くしてくれてありがとうね」


 麻衣子からそれまでの張り詰めていた雰囲気が消える。するとそれを敏感に感じ取ったらしい。


「おばさま~~~~~~~~~~~~~!!」


 風華は打って変わってそれまでの真面目腐った雰囲気を取り払い、涙ちょちょぎらせ「これはつまらないものですがーー!!」と言って紙袋に入った菓子を差し出していた。


「おばさまって……! アンタまたすぐそうやって取り入ろうとして!」

「そうですよ! そういうところがずる賢くて嫌なんです!」


 それを見て姫子と纏もこれまでの真面目な雰囲気はどこへやら、眉を吊り上げ言い合いを始めていて、


「げ、元気なのは良いけど、お、面白い子達ね……」


 風華からの菓子折りを受け取りつつ麻衣子はドンびいていた。


 それから朗太の友人なら、朗太の話も聞きたいしいくらでもゆっくりしていって良いと言われ、麻衣子が茶や菓子を振舞う中、姫子も風華同様菓子折りを渡し


「そういえばお仕事何されているんでしたっけ?」

「センサー関連の仕事、かな」

 一方で纏は忠秀と会話の華を咲かせ始めていた。

 

「(な、なんとか上手くいったみたいで良かったね……。一時はどうなるかと思ったけど)」

「(あ、あぁ……、上手くまとまって良かった……)」

「(というか私たち、どこに座ればいいの……?)」

「(確かに……。向こうのTVの前のソファは? てゆうか弥生は二階に戻っても良いんだぞ……?)」

「(いや、おにぃがおかしなこと言わないか心配だからサポートのために残っておく……。あとこの調子だと纏さんたちも何かやらかしそう……)」

「(……そうか)」

 

 苦労の絶えない我が妹である。

 そんな弥生に朗太が申し訳なく思っていると、姫子と風華、麻衣子の会話は朗太と彼女たちの馴れ初めの話になっていたらしく声を潜めて話す朗太に「アンタ、そんなことしていたの?!」と母から声がかかった。


「何の話?」

「姫子ちゃんとの活動の話よ! お悩み相談みたいなの!」

「あぁ……」

「あぁじゃないわよ! アンタもまた変わったことすんのねぇ」

「変わったこと……」

 麻衣子の表現に姫子が頭上に金ダライでも落ちてきたかのようにズガンと落ち込むのが見えた。

 だが悪いが、客観的に見て『変わったこと』ではあるだろう。

「ま、まぁ」

 落ち込む姫子を他所に朗太が控えめに返すと「ふ~ん」とこれまで見せていなかった息子の一面に麻衣子は興味深そうに頷いていた。


「ま、アンタがそれで良いならそれで良いんだけど」


 そうして麻衣子の視線は姫子に移る。


「にしても姫子ちゃんも面白いことしてんのね? どうしてそんなことを?」

「ひ、人の悩みを解決するのが好きだから、です。やっぱり、そうして感謝されると、やってよかったなぁって思えるし……」

「はぁ~~、殊勝な心掛けだね~~。凄いよね~パパ~?」

「あぁ、姫子君の行いは素晴らしいことだな」

「いえいえ! そんなそんな! 自分が好きでしているだけなんで!」


 そんな褒められることじゃないです! と姫子は手をバタバタふり恐縮していた。扇風機の送風能力に勝てそうなくらい手をバタバタさせている。凄い。

 そんな恥ずかしそうにしている姫子を風華と纏の二人はニコニコと眺めていた。勿論その目は欠片も笑っていない。ふざけんなよとか今にも言いそうな感じであった。


「で、風華ちゃんはバスケ部のエースなんだっけ?」

「は、はい!!」


 姫子から自分に話が移ると風華は目をキラキラさせてビシッと姿勢を正した。


「ということは中学とか小学校の時から?」

「いえ、高校で始めました!」

「それでエース!? 凄いわね~! 最近の戦績は?」

「この前の大会でも勝ち抜けました! まだ試合あります!」

「この前? この前って、朗太が世田谷の体育館に行った時のこと?」


 麻衣子の推理は正しい。

 この前朗太が風華の応援に行ったのは世田谷の体育館であった。

「はい、それです!」

「は~それでこの子体育館まで行ってたの?! 珍しいとは思ったのよねぇ。で、どうだったのよ朗太。風華ちゃんのパフォーマンスは?」

「そ、そりゃ凄かったよ……」

「いやも~~ちょっとやだ~~~!!!」


 朗太の言葉に風華は顔を真っ赤にし身をよじり悶えていた。両頬に手を当て歓声を上げとても嬉しそうで、その様子を姫子と纏は胡乱とした瞳で見ていた。

 それからも麻衣子と風華の楽しそうな会話は続き、最後に麻衣子は「全く、この運動神経はうちの男衆にも見習わせたいわ」とぼやき、「え?」、と、その凛銅家の事情を知らないものには意味不明なセリフに風華だけではなく、姫子や纏も不思議そうな顔をしていた。


「凛銅君たちのおうち、何かあるんですか?」

 風華が大きな目をくりくりさせながら尋ねる。

「それがあるのよ~。実は凛銅家の男児は代々運動神経がからきしでね。ホラ、球技ってまさしく運動神経が重要になるじゃない? パパも朗太も、パパのお父さんも球技は全然なのよ~!」


 剣道とか、長距離とか、球技じゃない場合はそこそこやるようなんだけどね、と楽しそうに話す麻衣子に姫子たち三人は「へぇ~」と興味深そうな声を上げていた。


「フッ、ようやく時代が凛銅家に追いついただけだ」

「な、今は頭脳だからな」

「朗太、別にアンタ図抜けて頭良いわけじゃないでしょ」


 強がる旦那と息子に麻衣子がぴしゃりと言い、その様子に三人はぎこちなく笑っていた。

 そして話題は纏へ移り――


「纏ちゃんはもう朗太とは3年近い付き合いよね」

「はい、そうですね。ま、先輩が青陽に行ってからは会えていなかったんで1年くらいのブランクがありますが」

「あ、そういえばそうだよね。別に家に来てくれても良かったのに~」

「いえいえ、私も受験なんかで大変だったので」

「そうよね~。まさか纏ちゃんも同じ高校に入るなんてね。妙な縁よね~。ねぇパパ」

「だな。纏君のような綺麗な子と縁があって朗太は良いな」

「ちょ……」


 父親が余計すぎる発言に狼狽する朗太。美人と褒められた纏は「へへへ」と顔を赤らめていて、姫子と風華は青筋を立てていた。


「纏ちゃんと初めて会ったのって中学の合宿の時だっけ?」

「はい、私が中学一年生の時ですね」

「その時はえらい別嬪さんがいるとは思ったけど、まさかここまでの縁になるとなね~」

「はい、私も父母に混ざって綺麗な方がいるとは思いましたが、それがまさか先輩のお母さんだとは思いませんでした」

「なぁに。褒めてくれちゃって~~。何も出ないわよ~~」


 麻衣子は纏からのお世辞に頬を染めて、にこやかに笑っていた。


 それからも纏と麻衣子を中心に会話に華が咲き

「というか冬季講座中お弁当作らせちゃってごめんなさいね。これせめてものお礼。受け取って?」などと言いながら麻衣子は麻衣子が愛飲している高級緑茶の入った贈り物を差し出し「いえいえいえいえ! 私が作りたくて作っていただけなんで」贈り物を押し合うシーンが発生する。その上

「良いのよ~。というか纏ちゃん本当に料理上手なのね。朗太と弥生からも聞いたわ。今度教えて頂戴?」

「え、いえいえ、そんな私なんて本当にまだ全然なんで」

「フフ、そんな謙遜しちゃって~~」


 なんて会話が交わされるので風華と姫子は面白くないことこの上ない。

 時折姫子と風華は耐えきれず剣呑な眼差しを纏に送っていた。

 だがいつまでも苛立っていても仕方ないと判断したらしい


「そういえばお父様は――」


 纏に負けまいと風華は忠秀に水を向け始めた。

 一方で中央の席に座っていた姫子は、このままではいけないと「ま、纏は昔どんな人だったんですか……?」と纏と麻衣子の話に混ざっていた。 

 そうしてリビングの二か所で会話が発生し始め、たちまちリビングは賑やかになり、数分もすると


「ハッハッハ! なんだ朗太、この子面白いなぁ!」


 父、忠秀がガハハと大笑いしつつ満足げに顔を綻ばせていた。

 相当、風華のメンタリティーがお気に召したようだ。

 というより、このような状況、楽しくないわけがないと朗太は思う。

 姫子も纏も風華という絶世の美女三人が、父忠秀を立てようとしてくれるのだ。

 三人揃って忠秀の気を良くしようとおべっかを使う。

 実質キャバクラのような様相を呈しているので、そのような環境が楽しくないわけがない。

 しかも風華のノリの良さと、要領の良さだ。的確に父・忠秀の性格を把握しつつ、的確に押すべき会話のツボを押していっているはずで、実際に押していた。


「お父様~~~」とハートマークでもついていそうな声音で父忠秀を呼び、父はだらしなく口元を緩めていた。酒も飲んでいないのにその顔は赤らんでいて、酔っているようにしか見えない。


 そしてその様子が面白くなかったのが姫子と纏と、なんなら未だに風華が憧れの女性であることに変わりはない朗太で、その光景にそれぞれ冷たい目線を向けていると、散々それまで接待を受けていた麻衣子は、たった今まで過剰とまで言える接待を受けていたからこそ、はたとこの状況を正確に理解した。


「あれ、ていうかこれって、皆、朗太のことを……」


 まさか、そんなわけね……、と恐る恐る口にする麻衣子。

 対し覚悟を既に決めていた纏はと言うと、真実を突かれ恥ずかしそうに顔をうつむける姫子とは対照的に、麻衣子を真正面からとらえると、スッと目を細め


「はい、多分想像通りだと思います」と打ち明けていた。


「はぁ~~~~~~~~~」


 それを聞いた麻衣子は頭を抱えて「最悪だわ……」と麻衣子は呟いていた。


「全く、誰に似たのから……」

「お、俺ではない……」


 悩まし気なセリフに忠秀はたどたどしく否定していた。

 だがそのぎこちない声音は、明白に彼に後ろめたいものがあることを朗太たちに感じさせ


「なにかあったんですか?」

 皆を代表して纏が切り込んだ。すると麻衣子は「あ~、言いたくもない……。思い出したくもない……」と顔を歪めると


「実はパパ、私と付き合う前一人ライバルがいてね」

 

 衝撃的な事実を明らかにしてきた。

 

「はぁ?!」

「マジでお父さん!?」

 その今まで隠匿されていた事実に朗太と弥生が目を見開いていた。

 そもそも父・忠秀と母・麻衣子の馴れ初めなど詳しく聞いたことが無かった。

 しかもそこに知られざるライバルがいたことなど知る由も無かった。


「マジよマジ。あまり言いたくなかったから黙っていたのだけど、あの時パパはモテててね~。しかもその子かなりの美人でね~~」

「で、どうしたんですか?!」


 恋話に目のない女子たちは物凄くよく食いついていた。

 纏と風華はせっつかんばかり身を寄せ尋ね、姫子も姿勢こそ変えないがとても集中して麻衣子の次の言葉を待っているようだった。


「そりゃバトルよバトル。あなたたちのように学生で出会ったわけでもないから、もう本当に容赦なんてないわよ。あっちの子が告白して保留にされている間に、私が告白して、攻めて攻めて奪い取ってやったわ」

「「「おおお~~~~~~!!」」」


 麻衣子の武勇伝に三人が感嘆の声をあげていた。


「ですよね。あの時はたいそうモテて、優柔不断してましたよね、パパ」

「そ、そうだな……」


 背後に阿修羅の相を幻視させながらニコニコとしている麻衣子に忠秀は挙動不審になりながら頷いていた。


「最低じゃん、親父」

「うん、そんな話聞きたくなかった……」

「少なくとも、お前ほどではない。朗太……」


 また彼の血を引く息子娘からするとその話はたまったものではなく口々に父を罵り、朗太は忠秀にじろりと見られて言い返されていた。

 確かに、その通りなので何も言い返せない。

 朗太が黙っていると、姫子、風華、纏、そして朗太をちろりと見て、麻衣子はにんまりと笑い言った。


「ま、確かに私含めて姫子ちゃん達より美人だったってことは無いし、ここまで酷い状況にはなっていなかったから、これは明確に朗太だから起きたことなんでしょうけど……我が息子ながら不甲斐ないわ。でも……」


 その口調はまるで鳥の歌声のように軽い。


「誰が朗太のお嫁さんになるのか、今から楽しみね」

「かあさん?!」


 麻衣子がふふんと笑いながらそう言って実母のとんでもない発言に朗太が叫ぶ。


 こうして凛銅家にまつわる衝撃の事実が明らかになりつつも、冬休みの一日は過ぎていったのだった。


「私に任せてください叔母様!」

「宜しくお願いします! 叔母様!」

「わ、私も……」


 麻衣子の言葉に纏・風華が元気よく返事をし、姫子がおずおずと挙手し、その様子に麻衣子は「まぁ良いわ! アンタたち、初詣楽しんできなさい!」と言いながら豪快に笑っていた。


 DAY6 終











というわけで次話は初詣回で、冬休み編最終話になります! 


……なのですが、少々お時間頂いて良いですか?汗 少し書き直したいところがありまして……。一週間以内くらいには上げられると思います。冬休み最終話なので、今後への接続でちょっと手こずっている。

完成品は皆様に納得していただける雰囲気になると思うので、皆様に彼らの冬休み最終話を楽しんでいただけたらと思います。

投稿が遅れぎみでごめんなさい。

宜しくお願い致します。


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1巻と2巻の表紙です!
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