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生徒会役員選挙(2)




「という依頼を受けたんだが、大地、この話は本当か?」


 今回の依頼を受け、朗太がまずしたことは情報の真偽の確認だった。

 彼女たちから得た田子浦たちの動機、生徒会活動への参加の理由がデマだったら話にならない。

 朗太が頼ったのは親友の大地で、放課後の2Fの教室には大地が窓辺に腰かけていた。

 最近可愛い彼女を捕まえた眼鏡金髪の雰囲気イケメンの憎き親友である。


「あぁ~、田子(たご)っちゃんと氷見(ひみ)珠洲(すず)かぁ」


 朗太が尋ねると大地は天井を見上げながら思案する。


「確かにそんな話は聞いたね」

「そうか」

「あぁ、確かこの前友達に受験のためにも生徒会入るから投票頼むわ、みたいなこと言ってたわ」

「マジか……」


 生徒会業務のような雑務を率先してやるような人種の中には本当に学園を良くしたいという徳の高い者もいるだろう。だが同時にこのような利己的な動機で入る者がいてもおかしくはない。

 しかし、それをこうも隠しもしないとは……。

 

「それで周囲は?」

「不純な動機だって笑ってたよ」

「だろうな」


 そして蘇るのはクラスで津軽の皆に投票を促す話である。

 既に田子浦たちは支援者を集め始めているのだ。


 朗太は顎に手を置き考え込んでいた。


「また茜谷さんからの厄介ごとか」


 大地は薄く笑った。


「無理すんなよ朗太」


 ◆◆◆


「え? 田子浦? 確かに俺も同じような話を聞いたよ?」


 その後、廊下で偶然出会った桑原春馬に尋ねても同じ答えが返ってきた。

 どうやら朗太が知らなかっただけで田子浦たちの生徒会選挙出馬は既に有名な話らしい。


「で、朗太、どうする??」


 そのまま生徒会室に行くと、入るや否や既に部屋にいた姫子に尋ねられた。


「一日考えて、案は出た?」


 既に生徒会室には先日の五名が集まっていて、皆が朗太を見据えていた。

机の上には何枚もの書きかけの原稿用紙が散らかっている。


「その様子だと姫子たちもすでに何か計画は進めてたんだろ? そっちはどうする気だったんだ?」

「えぇ、そうね。私たちがやろうとしていたのは下駄箱前での街頭演説よ」

「街頭演説、ね」


 多くの政治家がやっている奴である。


「許されてるのか?」

「えぇ。生徒会選挙で出来ることは街頭演説と、生徒会役員選挙本番でのスピーチくらいだけど、逆に言えば街頭演説は許されてるから」

「ならしない手はないな」


 街頭演説のような力の入った選挙活動に拒否反応を示すものもいるだろうが、悪名は無名に勝る、相手に負けないためにもこちらの街頭演説は必要だろう。


「となると、次に考えないといけないのは演説の中身だな。といってもそこまで派手な内容じゃなくて良いと思うが、……見たところそれを考えてたってわけか」

「はい、演説の内容はもうだいぶ詰めています!」

「これまで彼女たちがしてきたことを踏まえて今後に生かす内容にする予定だ」


 朗太が散らかった紙を指差しながら尋ねると純恋川と東雲が自信ありげにぐっと握りこぶしを作った。

 それなりの自信作らしい。

 そして実際に彼女達が作った演説の中身も無難なものであった。

 出来上がった内容を練習がてら読み上げる。

 今回、副会長・書記・庶務の席を争っている三人の少女の名は杜若(かきつばた)露草(つゆくさ)瑠璃崎(るりざき)というらしく、副会長に立候補している杜若(かきつばた)という目が大きく、大人しそうな少女はわたわたとしながら


「私はこの学園をもっと良くしたいと思い前々から生徒会活動に有志で参加していました……!」


と原稿を持ちながらスピーチを読み上げる。


 内容はこれまでも生徒会活動に参加していたことと、参加していて思ったこと、そして今後どのようにしていきたいか述べ


「どうか清き一票をお願いします!」


 の一言で終わる。

 いかにもオーソドックスな内容で終わっていた。

 特に問題のなさそうな内容である。

 となると後は朗太の案であり


「で、アンタはなにを考えてきたわけ?」

「俺は壁新聞に頼るのが良いと思う」


姫子に問われると朗太は壁に寄りかかりながら答えていた。


「壁新聞?」

「そ、壁新聞。文化祭の時と同じように壁新聞サークルを利用するんだ。ポスターは禁止だけど、校内新聞へのインタビューは禁止じゃないだろ? そこに顔写真入りで記事を載せるのが一番だと思う」


朗太は校内新聞サークルの部長である秘色奏(ひそくかなで)と繋がりがある。

朗太が頼めば簡単に記事にしてくれるはずであった。

それに文化祭の際に活発に活動していたことで壁新聞への注目はこれまでよりも高まっていた。そこにデカデカと名前を掲載すれば注目度は高いと予想された。


「なにより、選挙は受験のためとか公言しちゃっている連中だろ」


 あまり賢いとは思えない。

 だからこそ、このくらいの手の打ち方で問題ないと朗太は思っていたのだが――


「見て!」


 生徒会志望の3人のうち一人。

 名を瑠璃崎(るりざき)という文学少女然とした少女がトイレに行き戻ってきた時、手に持たれていたのは一枚の壁新聞であった。


 そこには田子浦の写真と


≪≪生徒会選挙出馬は腐敗是正のため?!≫≫


 という大きい見出しが載っていた。


 そう、彼らも壁新聞という宣伝手法をとってきたのだ。





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