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旅行5日目(2)


建仁寺を後にすると朗太たちは高台寺に訪れていた。


「高台寺、秀吉の奥さんのねねが創建したお寺ですね!」


ここも好きな場所なのか、門の前で纏が意気揚々説明する。

そしてその何と言っても見どころは国から名勝指定されている庭園で、つつじなどが植えられたその景色はこの世とは思えないほど綺麗であった。


「凄いな……」

「そうね」

「原罪の汚れなき浄化された世界だな……」

「…………」


朗太の自分に酔ったような台詞に姫子は閉口した。

だが朗太たちの高台寺観光において特筆すべき点はもう一つあり


「え?! なにここ! 座禅体験出来るの?!していこうよ!」

「だめよ風華。ここ10人から参加可能だから」

「風華さん、そんなに座禅体験したいのなら近くで飛び入りでも出来るお寺ありますからそこに行きましょう」


と座禅体験をすることが決まったことであろう。

これにより朗太たちはのちに地獄を見ることになる。


高台寺の拝観を終えた朗太たちが次に向かったのは湯豆腐の食べられる食事処である。

東山区にある完全予約制のその店の前では店内に入りきれない予約客があふれかえっていた。

仕方なく時間が来るまで立って待つ。

そうしているといやがおうに八坂の塔が視界に入った。


「それにしてもでっかいな」

「そうね~」


朗太は背の低い屋奥の先に立つ五重塔を仰ぎ見ながら呟くと姫子も呆れながら頷いた。

京都東山区におけるランドマークであるそれは、均整の取れた黒色の塔で、何とも言えない存在感を放っていた。


「日によっては中を見学できるそうよ」

「マジか?!」


朗太が驚いていると、店先に店員が出て来て朗太たちを呼んだ。予約時間がやってきたのだ。


「行きましょ!」

姫子は話を切り上げスタスタと店へ向かっていた。


そうして朗太たちが通されたのは座敷の窓辺の席だった。

窓の先には池でコイが泳ぐ庭園が見え、隣のテーブルでは妙齢の女性たちが大阪弁で楽しそうに話していた。


「で、ここは名店なんだっけか?」

「そ! 奮発して予約したんだから!」

「昔ながらのお豆腐が食べれて美味しいってよく言われてますよ。値段もまぁそこまで、ですし」


朗太が外の景観を見ながら尋ねると、風華は興奮ぎみに答えた。

それほど美味しいと有名なのだろう。

しばらくすると山菜のてんぷらとともに茶色い豆腐が出てきた。


「なにこれ」

「ゴマの豆腐ですよ」


茶色い豆腐を見て朗太が尋ねると割り箸を割りながら纏が答える。

どうやらこの茶色はゴマの色素らしい。

そして朗太はというと所詮は豆腐だろと舐めていたのだが

「うまくねぇかこれ?!」

一口それを口にいれた瞬間、その濃厚な味わいに目を丸くしていた。

舌の上で濃厚なうま味が広がる。

とても豆腐とは思えないほどのしっかりとした味であった。


「美味しいですよね。だから名店なんです!」


その後出てきたのは、湯豆腐や田楽などの、低カロリーなものばかりだったのだが味付けがしっかりしており、朗太はすっかり満足してしてしまっていた。


腹を満たした朗太たちは八坂神社へ向かう。

どうしても彼女たちが寄ってきたいと場所があるらしいのである。

それは


「ここなん?」

「そ、ここよ!」


八坂神社の中にある美御前社(うつくしごぜんしゃ)という場所であった。

黒い屋根に朱色の柱が本殿の神社である。

で、何が有名かというと


「ここはね、美容水がでるのよ!」


という点であり、本殿の前にある水瓶の水をせっせと肌につけていた。

いわく


「肌だけじゃなく心も綺麗になるのよ」


とのことであり


「アンタも浸けといたほうがいいわね」

「どういう意味?!」


朗太は思わず問い返していた。


「そのままの意味ですよ先輩。 心根の汚い先輩はしっかり塗り込んでいたほうがいいです!」

「そうだよ、凜銅くん! ぬっておかなきゃ!」

「皆酷くないか?!」


酷いことを言われ憤慨する朗太。

だがそこまで拒否することでもないので塗っていると


「アンタ、それなに……?」


じとっとした口調で姫子が風華に尋ねていた。目を上げるとそこには2Lペットボトルをもつ風華がいた。


「あ、これ!? どうせだから家に持って帰ろうと思って!」


「「「………………………」」」


しこたま御神水をかっさらおうとする風華にみな閉口していた。


「なぁ、これ本当に心綺麗にする効能あるの?」

「わ、私も分からなくなってきました……」


朗太がポツリと尋ねると纏は眉を下げた。


「風華、さすがにそれはやめなさい……」

「え!? なんでよ!」


また姫子は風華を制止し、自らの行いを理解していない風華は目を丸くして驚いていた。



それから朗太たちは座禅体験に来たのだが


「最初に座布団を二つ織りにして足を組んでください」


お坊さんの指導のもと、外国人を含め他数名の参加者と座禅を組む。

朗太たちは本堂の一室で足と手を言われたように組み、半眼になり


「では心を落ち着けてください」


朗太は雑念を捨て去り心を無にしにかかった、のだが──


「イタイ!!」


開始早々風華が警策でぶっ叩かれていた。

その後も指導官による熱の入った指導は続き


「イタイ!」「イタ!?」「イタイ!」


風華の悲鳴は続き


「ちょっとアンタやるっているの?!」


あろうことはわざわざ指導してくれているお坊さんに噛みついていた。


「雑念を捨て去ってください。私もしたくてしているわけではないです」


対し相手はとりつく島もない。

当然である。彼とて好きでしてるわけでもない。風華を思ってのことだ。

その後も「いたい!」「イッタ?!」などという風華の悲鳴は続く。

それを薄目で見ながら朗太は口を動かさず囁いた。


「(にしても何であんな叩かれてんだ……)」

「(見たでしょ風華の京都での行動を。アイツは基本欲の塊よ……。雑念なんて消し去れるわけ無いでしょ……)」

「(そうですよ……! 風華さんが心を無に出来るわけ無いじゃないですか…!)」

「(確かに……)」


酷い言われようだが確かにその通りである。

この度のあちこちでみた彼女の行動を見ればこの結果はさもありなんという感じであり、だがそんな痛がる不憫な風華もまた可愛いと朗太が思った瞬間


「いっっった!?」


バシンッ!とめざとく朗太の雑念を見抜いたお坊さんに警策でぶっ叩かれてしまった。

確かに雑念でしかない考えだったが、心の機微を悟る力がプロ過ぎる。

と、朗太がお坊さんのポテンシャルに驚きいっていると


「(アンタ、なにやってるの) て、イッタ!?」


瞬く間に姫子も警策に叩かれ


「(何やってんですかせんぱ)イターーイ!!」


と纏まで餌食になっていた。


プロの仕事過ぎる……。


座禅体験を終えると、指導官をしていたお坊さんは一仕事終えた後のようにふぅっと大きく息をついていた。


「こんなに指導しないといけない人たちは久々ですよ……」


お坊さんは去り際にぽつりとそういっていた。

正直申し訳なさしかない。


そのあと、朗太たちは知恩寺にやってきていた。

知恩院、日本の三大門の一つに数えられる超名『門』である。



「でかぁーーーー?!?!」


三門の前まで来ると朗太は叫ぶように言っていた。


知恩寺の三門、知ってはいたが何といってもとてつもなく大きいのである。

高さ24m、横幅50m。使用されている屋根瓦は、なんと約7万枚。

日本最大級の木造建築の楼門で、門の上段に掲げられた金色の文字で『華頂山』と書かれた額はなんと畳二畳分もある。

だが門全体にしてみればそれもほんの一部分に見えるのだ。

畳二畳分の額縁が、門のちょっとした部品に見えるほど全体は大きいのだ。

それを視界に収めようと見上げると、頭が上がり過ぎりて、そのまま仰け反り倒れそうになるくらいデカい。加えて階段の上にあるため迫力は満点だ。

見ているだけで今にも空が降ってくるというのだろうか、平衡感覚を狂わされるような奇妙な迫力があるほど大きいのだがこれを江戸時代の職人が作ったというのだから驚きである。

大きいもの好きの朗太としては興奮せざるを得ない。

カシャカシャッと忙しなくシャッターを切っていた。


「そんなに好きなの朗太」

「あぁ、凄くデカい建造物の中でもアンバランスで今にも倒れてきそうなものほど良い!」

「うわぁ……、変態チック……」

「コルコバートのキリスト像とか凄いテンションあがりそうね」

「でなかったらロシアの『母なる祖国の像』とかですね……。いっちゃ悪いですが失禁しながら写真撮りまくってそうです」

「纏ーー!! なんか言ったか―!?」

「うわぁこういうときだけ地獄耳……。風華さん行きますよ……!」


遠くでスマホで写真を撮りまくる朗太に呆れつつも纏と風華は駆け出した。

こうして京都旅行は続いていく。










庭園を見て碇ゲンド〇化する朗太に、坐禅体験でぶったたかれる風華。

坐禅体験はしたことがないのですが、きっとこんな風ではないのでしょうね。

次話投稿は8/29(水)を予定しています!

宜しくお願い致します!


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1巻と2巻の表紙です!
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