文化祭抗争(21)
文化祭二日目、一般公開一日目を終えグループトーク『三年会』は荒れていた。
輝一:おいおい、マジで2Cの劇の集客がやばかったぞ!!!
K:超満員連発だってな
シューマッハ:客にも2Cの劇の話してる人かなりいたわ
卑弥呼:どんなん?
シューマッハ:めっちゃ面白かったって
卑弥呼:うわぁ……
卑弥呼:え、やばくない……。うちの店、そんなんじゃなかったんだけど……
ベルサ541:俺のクラスも2Cほどじゃなかったな
シューマッハ:てかどこも勝ててねーからあんなん、回転率高すぎ
Mnou:しかもギャグメインでしょ……。そりゃ客来るって
OLO:おいおい、結局ダメなのかよ……
このようにグループトークは騒然としていて
666:おいまじでどうするんだよ??
Mnou:暗幕壊しても意味なかったんだろ? どうする
今後の策をあれやこれやと練っていた。
そしてそこに
クジラ:じゃぁやるしかねーな
このグループトークの纏め役であるアカウントが現れ
クジラ:俺達で人の流れ変えよう
こうして議論の大方の方向性は決まった。
その後は具体的にどのように人を誘導するかが話し合われていた。
そうして訪れた文化祭三日目、一般公開二日目だが
「なんかおかしくない?」
開始三十分。
生徒たちは早々に異変に気が付いていた。
下階からは一般来場者の騒がしい声が聞こえてくるのに、自分たちがいる上階まで上がってくる客数が昨日より明らかに少ないのである。
窓から見える校庭脇を通りこちらへ向かってくる来場者の客足は昨日並みか、それ以上だ。
だというのにこの閑散とした状況。
これは一体どういうことなのだろうと下階へ生徒たちが下っていった。
そしてその後数分後にはその少年は血相をかいて帰ってきた。
「おい、ヤバいぞ!!」
「どうしたんだ!?」
「あいつら……! 大人数で人を誘導してやがる……!」
少年の返事にクラス内は騒然とした。
朗太と姫子もお互いに顔を見合わせていた。
実際に現地に赴くと、想像以上だった。
彼らは昨日よりも多くの人員を動員し、玄関から入ってきた入場者を自分たちのいる階へ誘導していた。
その接客も熱心で、下駄箱を抜けて辺りを見回す人を見つけると瞬く間に声を掛け自分たちの階へ誘導していく。
階段前にも複数の人を配置していて上階へ行こうとする人の多くに声を掛けてしまい多くを一階へ誘導していた。
上階へあがってくる客は彼らの勧誘を全て断った人のみで鮭の遡上のようにその数は少ない。
また三年生間でも来場者をシェアしているようで、一つの劇が終わり次第隣のクラスの劇へ、という風に誘導していた。
このような手法を取られて客が上階まで登ってくるわけがない。
「どうする朗太!?」
事態を確認するや否や姫子はすがるように尋ねてきた。
「もう教師に頼るしかないだろ。こちらから人員を送り込むのにも限界がある」
3年生に対抗するようにこちらも誘導に人員を割く手はあるが、メイン階が1階と3階。自室への行き来がしやすい分彼らの方が誘導において有利だろう。
そうでなくとも、このような露骨な小競り合いを来場者に直接見せることは得策ではない、そう感じた。
それは文化祭を楽しみにきた彼らの気持ちに水を差すことになりかねない。
朗太たちが教師に事情を説明に行くと彼らは迅速に動いてくれた。
彼らがクラスを変更したことなどの情報は入っており、彼らも察するところがあったのだろう。
「何をやっているんだお前たち!」
教師たちは迅速に無茶な声掛けをしている生徒たちを注意し問題を解決させた。
だがおかげで明確に客足に影響が出た。
開幕から一時間、上階への客足は劇的に減り、その後も影響を受け続ける。
昨日ほどは賑わわなかった。
「どうするの?」
まばらな客足を見ながら姫子は眉を曇らせた。
「これからゴールデンタイムよ……。あいつら何か仕掛けて来るんじゃ……」
ゴールデンタイム。
文化祭3日目、一般公開2日目の午後1時から3時までの間の時間である。
一般公開二日目、日曜日のお昼時ということもあって、この時間帯は劇的に来場者数が例年伸びるのだ。
それによりこの時間帯をゴールデンタイムとここの学園の生徒たちは呼んでいた。
「確かに、ゴールデンタイムを彼らが逃すわけがないな」
姫子に言われ朗太は顎を擦りながら呟いていた。
「あいつら何か仕掛けて来るかもしれない」
朗太は顔をしかめた。




