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神よ僕にささやいて  作者: 堀野 うち
2/2

少しの事実、嘘

5





泣き声がする。


それも女の子の声。女の子?いや、女性?


『ああ、なぜ、なぜ、何度も、同じことになってしまうのですか。我が君。私は、私は………、あなたがいなければ……、お願いです。もう、殺してください。私を。この因果から、解き放って……』


ううん……。ん?どこかで聞いたことのある声な気がする。もしかして……、あなたは。いや、違う?

真っ暗闇では、何もわからない。





はっ、と眼を覚ます。

夢だと理解して起き上がる。いつもの自分の部屋、ベッドの上。

昨日の事もあって、浅い眠りだったようだ。

今日は休日。静かな家が物語っている。

携帯電話で時間を確認して、ベッドから降りた。障子の戸を開ければ、朝の日差しが飛び込んでくる。

『明日、ゆっくり話しましょう』

あれ、があってすぐ家に帰ったのだが返されたのは八凪さんの落ち着いた声だけだった。確かに疲れていた。色々なことに説明がほしい。

休日の朝は、必ず巴との、例の稽古が入る。というか、叩き起こされる。それが無いという異常。

廊下を歩いて行き、居間へと進む。

台所から八凪さんがご飯を作っている……音がする。いつも通りの包丁のリズム。

「おはよーございまーす……」

ボソッと誰もいない居間に声を出した瞬間、とん!と膝を叩かれた。

「う!」

「お早う」

巴だった。こんな静かなお早う、彼女にはありえん…、失礼か。

「おつかれだったみたいじゃん」

「え、あ、そう、うん、そうかも」

「ま、ごはんごはん!」

昨日の事もあってか、巴はそれ以上何も言わなかった。これから説明する、と分かっているのかもしれない。付けたテレビから天気予報士の声がする。今日は晴れのち曇りです。

「巴ー、ご飯運んでちょうだい」

「りょー」

八凪さんに呼ばれ、巴が立つ。僕もいることに気付いて無いのかも。いつも通り手伝おう。




対して変わらずの食事を終え、皿洗いをする。これはいつも僕の担当だ。

「お皿拭くね」

「ありがとう」

横にお菊が立つ。これもいつも通り。何か話そうか、いやむり。先のことが気になる。

これから分かるんだ。




6




お茶を準備し、朝ご飯を食べた円卓を囲み僕等は静かになる。

やはり最初に口を開いたのは八凪さんだった。

「昨日の事だけど…驚いたでしょう?」

「えっはい!そりゃあもう」

「どこから話しましょうかね、とても長くなってしまうから……」

「そりゃ、最初から」

巴も感情的にならない。最初から、出来れば僕にも理解出来る感じでお願いしたい。

「私達は、長年戦い続けているものがあります」

「はあ」

「時に国を亡ぼし、時に戦争を起こし、時に人間を栄させ、時にまた亡ぼす……。それらは全て、あるもの達によるもの。そうですね……、私達は{ジン}と呼びます」

「じ、……じん」

「ええ。ジンは人に乗り移ったり、人に知恵を与えたり、万能に近い力を持ち、幾度なく世界を亡ぼして来ました。我等一族は、それらに対抗する為に存在しているのです」

この宿木家の存在理由としては納得出来たが、僕が何故狙われたのか。

そんな顔をしていたのだろう。すぐ答えてくれた。

「我等一族は、自身では力を全て行使出来ないのです。誰かが私達を[仕って]下さらないと」

そういえば……。昨日の時もそうだ。巴の力も、僕の危機に答えてくれた。

「私達を力を、あなた……大和さんを通して仕い、ジンと戦う。申し訳ないけれど、これは宿命なのです」

「宿命……」

「ええ。太古からの」


なんだ漫画みたいじゃん。

そう笑えばよかった。

だって、大事なことは、まだ全然話してくれなかったのだから。

後になってもっと沢山の事を知ることになる。


あの人が死ぬまで、僕は戦い続けるのだ。

八凪さんが言う、宿命だったのだろう。








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