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第一話

書き方分からん

 「おいレックス、大丈夫か?」


 「ああ、大丈夫だ……」


 ……レックスは特に目立った怪我も無いし問題無さそうだな。ただ緊張の糸が切れたのか地面に力なく座り込んでいるが。

 にしてもまさか魔物を見つけたらいきなり突撃するとは……、そのあまりの出来事に俺の思考が置いていかれてしまった。人間、目の前でとんでもないことが起こると固まっちまうんだな。突撃のこともだがその後の戦闘のこともだ。


「大丈夫ならさっさと剣拾ってこい」


「分かった……」


 レックスはゆっくりと立ち上がると剣が吹っ飛んでいったと思わしき方向に肩を落としながらとぼとぼと歩いていった、……あ、こけた。

 まぁ、いくら剣術を習ってるからって戦いを生業にしている者たちほどの練度ではないはずだ。それに実戦と模擬戦は違う、実際に自分の命が天秤にかけられ敵から殺意を向けられると身体が緊張して思うように動かないし、混乱して冷静になどなれない。こればかりは場数を踏むしかないだろう。

 だが悪いことばかりじゃない。

 レックスはよくある自分の家柄や血筋を鼻にかけるような王族や貴族の坊っちゃんではない。俺のような冒険者にも偉そうにしないしこっちの指示にも従ってくれる。……今回は暴走したが。あと敬語で接しなくても気にしないのも助かる、そんなことしてたら息が詰まって仕方ないしコミュニケーションも取りづらい。それになんだか従者っぽくて嫌だ。


「ありがとう、助かった……」


 そんなことを言いながら剣を無事回収してきたレックスが戻ってきた。

 随分気が滅入ってるようだな、本当なら何か気のきいた言葉でもかけてやれれば良いんだが、俺は口が上手くないし下手に気遣うようなことを言ってさらに落ち込まれても厄介だな。

 こういうときは気を使って声をかけたり、逆に腫れ物を触るような扱いをしては駄目だ、あくまで自然な態度で接するんだ。そう、あくまで自然だ。 

 もしこれで心が折れてもう旅には出ないとか言われたらクビになりかねない、職的な意味でも物理的な意味でもな。

 そもそもこの王族の成人の儀ってのは、国内を見てまわることで実際に守るべき国民をその目で見せ、自身が上に立つ者であることを自覚させる為だったはず。……他にも何か意味があると思うが俺は王族じゃないし興味は無いから知らん。


 「なぁ、ラインハルト……」


 「ど、どうした……」


 ……俺はレックスに話の続きを促す。できればいきなり帰るとか言い出さないで欲しい。

 あくまで目的は国内をまわることで魔物退治じゃないから、戦闘に加わらせなければいい、なんとか説得できるはずだ。


 「……僕は悔しい、生まれて初めて自分の力を実戦で試せると思ったんだ、だけど一人で突っ走っていざ戦ってみると結果はこのザマだ、本当はラインハルトだって内心じゃ笑ってるんだろ?何の力も持ってないのに馬鹿な奴って……」


 「それに分かってるんだ僕が名ばかり勇者だってことを、父上は僕が成人の儀式を終えた後に大々的に発表するつもりなんだ。久々に聖剣を使える勇者が現れたと、しかもそれが王族の中から現れたって。……けど聖剣の力を引き出せるだけで僕は勇者じゃない。」


 「……」


 す、すごいネガティブ!それになんか語りだした!初めて会ったときのハイテンションぶりが嘘のようだ……。

 だがきちんと理解してたんだな、自分が国内外にアピールするためのお飾りの勇者だってことに……。


 「お前は今回が初めての実戦だった。経験の無い駆け出しの冒険者や新兵ならよくある事だ、それになまじ剣術や魔術を習っていればなおさらだ、お前だけじゃない」


 「こればかりは慣れるしかないと思うぞ、俺は。いくら他人から技術を学ぼうと経験ばかりはどうしようもないしな。まぁ、初陣がトラウマになって戦えなくなる奴もいるがな。お前はどっちだ?」


 別に意識して自然体でいることなんて無かった。よくいる実戦を経験して腰抜かしてる駆け出しの冒険者と対応は似たようなものだな。


 「僕は……、強くなりたい、魔王を倒した伝説の勇者にはなれないだろうけどせめてこの聖剣を持つ者として恥ずかしくないくらいにはなりたい」


 ……なるほど、そこはえらく現実的だな。伝説の勇者になりたいくらい言うかと思ったが。

 だがよかった。やる気を取り戻してくれたようだな。これで俺の首も繋がるというものだ。

 まぁ、よほどのことがない限り物理的に首が飛ぶことはないと思うが……、それでも冒険者としては生き難くなるのは目に見えてる。何とか無事に終わらせなければ、やっとスタートラインに立ったばかりだからな。


 「……ラインハルト教えてくれ!どうしたら強くなれるかを!」


 「分かった、けど俺の言うことにはしっかり従ってくれよな?何の考えもなしに魔物と対峙するのがどれほど危険か分かっただろ?」


 「ああ、もちろんラインハルトの指示従うよ、何でも言ってくれ!」


 「……」


 ん?今、何でもするって言ったよな?って言葉が条件反射的に口から出そうになった。

 おっと危ない、危ない。俺は空気が読める男だ。そんな場違いなことは言わないのさ。

 ……そんなことよりここから早く離れないとな、今いる所は街道からかなり離れてる。街道の近くには魔物もあまり寄り付かないが街道から離れれば離れるほど魔物と出会いやすくなる。つまり危険が増すと言うことだ。


 「よし、レックスお前のやる気は分かった。だが今日の所はひとまず王都に戻るぞ、日が暮れてくると依頼を終えた冒険者や商人で王都を出入りする門は混むからな。それに明日の明朝に出発したいから旅の準備もしたいしな。分かったかレックス?」


「分かった!」


 ……、よしよし、レックスも完全に元気を取り戻した。この先もなるべくこのままで頼むぞ、ネガティブなコイツを相手するのは面倒だからな。

 あと、早く戻るのは別にいろいろアクシデントがあって疲れたし面倒臭くなったわけじゃないからな。




 ◇◇◇◇◇◇




 それから街道に戻り王都にたどり着くまでにいくつかのことを話した。

 冒険者のことだ、レックスは普段俺が冒険者としてどのような仕事をするのか知りたいようだった。冒険者がやる仕事なんて大抵決まってるし、珍しい事なんて無いんじゃ無いかなと思ったが、まぁ、レックスは王子だし冒険者と接する機会なんてまずないから冒険者から直接聴けるなんて滅多にないんだろうな。だから俺は冒険者協会が出してる魔物の討伐依頼を主に受けていると答えた。

冒険者がやる仕事ってのは本当多岐にわたる。ほとんど便利屋みたいなもんだ。そのなかでも俺は報酬の多い魔物の討伐をしている。討伐依頼は危険な魔物ほど報酬も多くなるハイリスクハイリターンな仕事だ。だが冒険者は依頼遂行中に怪我を負ったり、最悪死亡しても全て自己責任だ。だから冒険者は自分の力量と依頼の難易度を見極めて選ぶ。じゃないと死ぬからな、だから生存率を上げるためにパーティを組んで複数で討伐依頼を受ける。貰える報酬は減るが命には変えられない、まぁ、イレギュラーが起きてパーティが全滅何てことも無いことはない。それは運が無かったって事だな。ちなみに俺はソロでやってるパーティを組むと他の連中に合わせないと駄目だからな、俺は好きな時に自分のペースでやりたいんだ。

何か一ページ多いな

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