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神を喰らう者  作者: LonelyBell
人間不信な魔神の異世界転生
2/9

チュートリアル

  女神によって転生させられた場所は、のどかな草原だった。男は冷静に現状を分析し、まずは女神によって調整されたステータスのチェックから始めることにした。

「たしか、10段階って言ってたな。《ステータス》」

意識してそう呟くと、目の前に実体のないガラスのようなものが浮かび上がった。


-------------------------------------


 エイク・エイジ 【魔神】


 21歳


 Lv 1/10 (侵蝕率:1%)


 体力:100/100


 魔力:100/100


 筋力:10


 器用:10


 耐久:10


 知力:10


 敏捷:10


 幸運:10


 固有スキル:【喰】【錬成】【神眼】【魔力支配】


 スキル:【再生9】【武術8】【狙撃7】 

     【体術9】【回避9】【隠蔽8】


 魔法:【魔術6】


 装備:なし

-------------------------------------


「かなりステータス下がってるな。これ、一般人並みだぞ。」

転生される前の比べ、明らかに下がっているステータス値を見てエイクは驚愕していた。しかし、それよりも驚くべきことがあった。

「いつのまにか、人間辞めてるし。多分、あの時か... というか、俺が受け入れたとはいえ魔神に干渉して制限を掛けるとか、あの女神何者だよ。」

思い出したくない過去が想起されるステータスであることに憤りを感じ、自分を転生させた女神にうすら寒いものを感じながら、詳細を見ていく。

「制限っていうのはレベルのことか、数値はほぼリセットに近いな。横の侵蝕率ってのがよくわからんが、今のところ実害はなさそうだから無視でいいだろ。」

スキルと魔法は制限が掛けられていないようだ。固有スキルというのは、全人類が使える汎用スキルとは違い、その人物、その種族固有の能力である。汎用のスキルと違って、固有スキルはその能力の詳細が明らかになっていないものが多い。固有スキルとは、最早超能力に近しいものである。しかし、超能力とはいっても、そのスキルの大体の能力はその名前から連想できるものとなっている。


【喰】:対象(生物)の体を半分以上捕食すると対象のステータスの50%が自身のステータスに加算される。

【錬成】:物質や魔力の形状を自由に変化させることが出来る。

【神眼】:神の眼、鑑定の上位互換。すべてを見通す眼

【魔力支配】:すべての魔力を支配し操作することが出来る。


これが世間一般で認識されている固有スキルの能力だ。まだ誰にも認識されてはいないスキルの使い方もあるのだが、今はその説明は省かせてもらおう。

 とりあえず固有スキルの調子でも確かめようと思い、まずは右手を地面についた。地面に魔力を這うようにして流していく。

「【錬成】」

【錬成】を行使した地面が盛り上がって土の槍が出来上がる。エイクはいつもの感覚で行使しても問題はなさそうだと判断すると、次は魔力を【錬成】で物質化していく。

「やっぱりこれは、数をこなしただけあってかなり精密にできる。問題はステータス値、か。」

(次は【神眼】だな。これについてはあまり実験しなくても、鑑定の上位互換ってことで、【鑑定】を使うように使えばいいか。となると、【魔力支配】だな。これは魔力を直接操作できるから、魔法を使うのにとても重宝する。とりあえず《身体強化》などの基本的な魔法で実験してみるか。)

考えをまとめると、実際に行使してみる。身体全体に魔力を流していく。体内の太い血管に流すイメージで魔力を循環させる。

「いい感じだな。《ステータス》」


-------------------------------------


 エイク・エイジ 【魔神】


 21歳


 Lv 1/10 (侵蝕率:1%)


 体力:100/100


 魔力:80/100


 筋力:20


 器用:10


 耐久:20


 知力:10


 敏捷:20


 -------------------------------------


「筋力、耐久、敏捷のステータスが2倍か。まずまずだな。《身体強化》は体内で魔力を循環させてるから、魔力は消費しないはずだ。ってことは【錬成】を2回行使して、魔力が20減ったのか。1回で10ってところだな。」

 自分のステータスについての分析をしていた途中、ふと気づく。

――俺はこの世界で何を為せばいいのか。第一、戦う必要があるのか。静かにひっそりと隠居でもしていればいいのではないか。――

そんな思考に取りつかれていると、何やら近くが騒がしくなってきた。

「なんだよ、うるせぇな。」

 後ろを振り返ってみると、街道らしき場所で戦闘が起きていた。馬車を護衛しているように見える武装した集団とそれを取り囲んでいる身なりの汚い武装した集団が戦闘をしていた。明らかに護衛側の戦力が足りない。状況はとても分かりやすく、進んでいた。

「んー、介入するか。丁度いいチュートリアルになりそうだ。」

そう言って、軽い足取りで歩を進めた。


▽▲▽


 (くそっ、まずいな。このままじゃやられる。そうなれば依頼は失敗で違約金を払わなきゃならないし、まず、その報告に行けるかも怪しい。なにか、起死回生の一手は無いものか!!)

護衛の男はこの状況を打破できないものかと考えをめぐらす。

「おい、お前ら!! 意地でも依頼主は守るぞ! 荷物は最悪放棄でも構わねー!」

(依頼は失敗になるかもしれねーが、死ぬよりはましだ。さっさと荷物を捨てて、街に戻りたいもんだ。)

完全に依頼主だけを守るような方針に切り替えようとしたが、その判断を下すには、状況が悪すぎた。

「え! それは困ります! 荷物もちゃんと守ってください! 何のためにあなた達を雇ったんだと思ってるんですか!」

依頼主は自分と馬車の積み荷を死守するように護衛に懇願する。

(あぁ、くそっ! この依頼主は俺らを使い捨てるつもりだ! なにか、なにか手はないのか!!)

パニック寸前の頭でこの状況を覆せる策は無いものかと考える。するとそこに一人の男がふらりと現れた。

「おーい、どっちに加勢すればいい?」

(なんだ? ひどく場違いな、緊張感のない男の声が聞こえる。)

声のした方を見ると、ふらふらと歩いてくる青年がいた。その男は、真っ白な髪をミディアム程度の長さに切りそろえ、ボロボロの黒ローブを纏っていた。その目は死んだ魚のような眼をしている。加勢すると言っておきながら、武器や防具を身に着けている様子はない。だが一応、護衛の男はそいつに声を掛けてみた。

「こっちだ! こっちを助けてくれ! 報酬は払う!」

するとその男は数秒思案し

「了解した。」

と軽い調子で返事をした。その直後、盗賊たちの体のあちこちに黒い針が刺さっていた。そしてその針によって12人いた盗賊のうち9人は即死した。

「ぐっ、いてぇ! くそっ、なにが起きてやがる!」

生き残った盗賊たちは自分たちに何が起こったのか理解できず、混乱した。

「うわ、結構外したな。やっぱりもうちょっと練習する必要があるようだ。」

この惨事を引き起こした張本人は首をかしげながらなにやら独り言を呟いていた。

「あとは自分たちで何とかしろよ。」

黒衣の男はそう言うと、その場にしゃがみこんでしまった。そしてその光景を見ていた護衛の男は、目の前で何が起きたのか理解することより仲間に指示を出すことを優先した。

「おい、お前ら! 相手は残り4人だ! しかも負傷している! 今がチャンスだ!」

そこから先は、あっさりと勝負がついた。


▽▲▽


エイクは成り行きで馬車を襲っていた盗賊達を撃破した。

(一応【魔術】を待機させとくか。)

それでも助けた連中が必ずしも自分の味方になりうるとは思えなかった。盗賊達に使った【魔術】を即時に発動できるように準備しながら、護衛連中の後始末を眺めていた。あの護衛は人数は5人と少ないが、実力はそこそこのようだ。5分ほどで盗賊を無力化すると、エイクに声を掛けてきた。

「やぁ、どうも、助かりましたよ。僕はこのパーティーのリーダーをやってる、クレムです。」

護衛のリーダーらしい赤い髪をショートカットにしている男が、ほっとしたような顔でそう言った。だがエイクはそっけない態度でを取った。

「あぁ、そういうのいいから、はやく報酬をくれ。」

(どうせこいつも...)

「何こいつ、ちょっと強いからって調子に乗んじゃねーよ。」

そんな態度で接していると、茶髪の頭の悪そうな短剣使いが、エイクに突っかかった。それを慌ててクレムが止める。

「おい、ライル! やめろよ! 助けてもらったのに失礼だろ!」

クレムがライルと呼ばれる茶髪の男を窘めていると、ライルはさらに顔を赤くして吠えた。

「だってこいつ、加勢するとか言って途中から見てるだけだったじゃねーか。やるって言ったんなら最後までやれよって思わねーか?」

(いやいや、最後までやったら加勢じゃなくて救出になっちゃうだろ。それでも良かったのかよ。こいつ馬鹿だな。やっぱ殺そうかな。)

エイクは、そんなやり取りを冷めた態度で見ていた。

「手助けしてくれたんだから、それでいいだろ! しかも、それがなかったら俺達やられてたかもしれないぞ!」

流石にしびれを切らしたエイクが2人に注意をした。

「おい、喧嘩なら他所でやれ。俺は早く報酬を渡せって言ってんだよ。」

(いい加減、こいつらほんとに殺そうか。)

「あっ、すみません! うちの馬鹿が失礼をして... 報酬なんですけど、大銅貨5枚でどうでしょうか?」

確か… この世界の貨幣価値は、銅貨10枚で大銅貨1枚、大銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で大銀貨1枚、大銀貨10枚で金貨1枚で、銀貨1枚が日本円で一万円くらいの価値があるはずだ。そうすると、報酬は5千円くらいになる。命を救った代償としてはあまりに安すぎる。

(こいつら舐めてるのか…。)

「ってことは、お前らの命の価値は銀貨5枚っていうことか?ずいぶん安いもんだな。」

「で、ですが、今の手持ちはこれぐらいしか...」

クレムは申し訳なさそうにそう言う。

「それなら、お前らを殺して装備を売った方が儲かりそうだな。」

実際、護衛のパーティーが装備している装備を剥いで売った方がこちらに利益は出そうだ。

「おい! それはないだろ! Dランク冒険者の報酬ではこれが相場なはずだ!」

また茶髪が食って掛かってくる。

(こいつらからはあまり金を巻き上げられそうにないな。そうすると、これは時間の無駄か。)

エイクは、もうもらえるなら何でもいいや、と妥協しその報酬額で納得した。

「あぁ、わかったわかった。もうそれでいいからキャンキャン喚くな。あと俺は、そのDランク冒険者ってもんじゃないぞ。」

「え、もっとランクが高いのか?! でもお前みたいな冒険者聞いたことがないぞ...」

「お前、ほんとに頭悪いな。俺は冒険者じゃないって言ってるだろ。」

「えー! じゃあなんでそん「おい、ライル。その辺にしておけ。すみません...これが報酬の銀貨5枚です。では、ありがとうございました。」

エイクは、袋にも入っていないでそのまま渡された銀貨をポケットに突っ込んだ。

「確かに受け取った。じゃあな。」

(リーダーが話の分かるやつでよかった。報酬ももらったし、なんとなく自分の強さも分かったし、次はさっき見えた街にでも行ってみようか。)

報酬もとても少ないが、やることは終わったし、さっさと街へ行こうと歩き出したところへ、声が掛けられた。

「あの~、そこの白髪の人~。ちょっといいですか~?」

護衛の集団に背を向けて、歩き出そうとしたタイミングで声を掛けてきた。

「今度は一体何の用だ。」

振り返るとそこには壊れかけた馬車から走ってきた、商人のような恰好をしている男がいた。その男はやけに興奮したような顔でエイクに迫った。

「あなたに護衛の依頼をしたい!!」

そう叫びながら。

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