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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 6 -Disturbance of New York 《突風のアルマゲドン》-
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 「そろそろ出番か」

 「ええ」


 開会式は既に体感を通過、1回戦はそのスタートを切った。

 これといってアクシデントもなく流水のようなスムーズさ。

 客が多いこともあって、盛り上がりと声援の数は相当。

 そんなホットな空間に、いよいよシャーロットたちが挑む番が来た。


 「あんだけ死にそうな思いして1回戦負けはないね!」

 「油断してると足をすくわれるよリサ」

 「初戦で負けたらユウのお仕置き貰いそうだ……」

 「それ試合より怖いよね」

 

 ショーロット隊はスピード寄りのバランスタイプ。

 迅速に決めるチームってのは、いかせん心情に急かされて墓穴掘ることが多いが、減らない減らず口からリラックスできてるのは伝わる。

 良くも悪くもマイペースな小隊なのだ。


 「ちなみにユウ、試合前のアドバイスとかってあるの?」

 「アドバイス? うーん……」

 

 他のスポーツじゃ選手送り出す前にナニカ喝入れるんだろう。

 しかし俺の脳裏にコレと言ってものは思い浮かばず。

 ただ頑張れって言うのも味気ないことこの上なし。

 せめてもう少し実践的な言葉の方がいいだろう。


 「これは、もし自分たちの連携がまったく効かなかった場合の戦法だ」

 「「「「「おお」」」」」

 「ズバリだ。気合で捻じ伏せろ」

 「「「「「お、おお?」」」」」

 「本当に連携が効かなかったらの話、泥試合にしてスタミナ勝負だ」

 「「「「「…………」」」」」


 これは俺がエイラと何時もやるスタンス。

 可愛い後輩たちに特別に伝授する。

 しかしそれを聞いた彼女らはなんとも呆れ顔。

 喜んでいる表情とは伺えない。


 「それさ、今までの練習否定してない?」

 「だから言ったろ、その練習が何も役立たなくなった時、つまりは最終手段(・・・・)だ」

 「……」

 「下手に動いてもボロが出るだけ、安い連携なんてどうせすぐ潰される」

 

 まあ俺とエイラは安かろうが高かろうが潰すだけだけど。

 正直このスタイルは正規の小隊制には愚策の愚策。

 だからこそ練習で今回みたいなことは1度だって言わなかった。

 しかし絶対な差がある敵と相対したとき、頭の中はホワイトアウト、大抵の奴の連携と関係はボロボロと崩れ落ちる。

 そこで生きるのは『本能』

 つまりは生存競争を生き抜こうとする身体の根底を担うものである。

 DNAレベルでチームメイトと絆が無い限り、根底を連携で表すのは難しいのだ。


 (まあそんな強い相手が、この1年にいるかも分からないんだけど)


 「まあいいわ。最終手段ね」

 「そうだ。極力使うなよ」

 「使う気は全然無いわ。むしろそんなバカげたことできるの貴方たちくらいでしょ」

 「……」


 これは手痛いカウンターを頂戴してしまった。

 どうやら俺のアドバイスはまともに聞いてもらえなった様子。

 それでいいとも、お前たちには1ヵ月近くシゴイてやった、いつも通りを出せれば、新人戦くらい余裕で通用する。


 「じゃあ、行ってくるわ」

 「ああ、勝ってこい」

 「「「「「イエッサー!」」」」」


 守護者ついでにと思った監督仕事。

 ゲートに向かう彼女らの背中はなんとも清々しく悠然たるもの。

 初めて教えた時は別物、その急成長に正直驚いた、そして嬉しくもある。


 (後輩に色々教えるのは面倒と思ったが、これはこれで良いもんだな————)


 送り出す俺が僅かに育てし生意気な後輩たち。

 戦いに絶対は無いが、俺は彼女たちの勝利を誰よりも信じている。















 『良い動きをするようになったのう』

 「レネが誉めるなんて珍しいな」

 『我だって成長した者には祝送るぞ。まあ実力的にはまだまだヒヨッコじゃがな』


 大歓声が会場を支配する中、俺は観客席ではなくゲート近くのセコンド的エリアで見守る。

 目下シャーロット達が試合中。

 スピーディーな脚運び、目まぐるしく移り変わる構図、敵対する小隊は圧倒されている。

 特訓の成果は十分表れているようだ。

  

 『ただこれといって派手な奴がおらんからのう、少々退屈じゃ』

 「まあ1年で流石にS級はいないだろうし、仕方ないな」

 『おぬしも参加すれば良かったじゃろうに』

 「俺が参加したら新人戦の意味なくね?」

 『はっはっは、それもそうか』


 実のところ担任からは参加してもいいと言われた。

 しかし俺が例え独りで出ても結果は大体見えている。

 ハンデにハンデ、なんてことしても意味無いって。

 守護者ということもあるが、ここから育つ若人、もし来るとしても俺は来年の本選で待っているとしよう。


 『しかし何のリアクションも無いとは』

 「確かに敵さん来ねえな。この調子だと午前中は平和に終わるってとこか」

 

 警戒裏腹に音沙汰無い現状。

 俺とレネは全く感じ取れていない。

 時刻を確認、シャーロットのトーナメント割り当てはケツの方、もう少しすれば1日のターニングポイントだ。

 あとは午後に仕掛けてくるかどうか。

 

 (もしくは相手が相当上手(うわて)、神レベルに隠密に特化した能力者がいて既に潜伏されているかもしれない)


 ただそれは円周率計算を最後まで解き明かすぐらいに無理な話。

 どんなに数字が並んだところで核心には辿り着くはずもないのだ。


 『む、どうやら決着ついたようじゃ』


 レネの確信から数十秒後、シャーロットが大将をノックアウト。

 ノックダウンの暇なくトップダウン。

 

 『勝者! シャーロット小隊!』

 『『『『『おおおおおおおおおおおおおおお』』』』』


 小隊長を討ち取ったことにより試合は終了。

 アナウンスが告げる通り勝ったのはシャーロット小隊だ。

 湧き上がる観衆、それに応えるように彼女たちの片腕が高く上がる。

 だまくらかすものなんてない、張られるタグは完全勝利である。


 「っあ! 勝ったわよユウ!」

 「見てたよ。いい試合だった」

 「ふふん! 楽勝よ楽勝!」

 「余韻に浸るのはいいが溺れるなよ。まだ試合は残ってる」

 「「「「「イエッサー!」」」」」


 喜びの帰路、良い顔で了解を表す目の前5人。

 いつの間にか応える言葉もイエッサーで固定されるし、傍から見たら軍隊とも。

 しかし思えば、こいつらは秀才ども、平均してランクも高い方なのだ。

 だからこそ1回戦は勝ち上がって当然、しかも俺が面倒見たのだ、そんじょそこらの奴等には負けないだろう。


 (もしかしたら1年後、いや2年後かも。何時かは、こいつらと国際戦の舞台で戦うこともあり得るかもな————)


 「とりあえずクールダウン、各自2人1組でストレッチだ」

 

 どんな試合であれ、万全の体勢をキープしたい。

 舞台裏に退いてヒートアップした身体を整える。


 「リサ、お前は特別に俺がストレッチしてやろう」

 「っげ……!」

 「なに1人余るからな、仕方ない」

 「い、いや先輩の手を煩わせるわけには! ひ、ひとりでだいじょ……」

 「なに遠慮するな」

 「ぎゃ、ぎゃああああああああああああああああああああ」


 壁を越え侵入してくる大歓声。

 だがそれに負けず劣らず。

 少女らしからぬ絶叫が空へと響いた。



 


 

 

 

  

 

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