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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 5 -New Legend 《最強の脳筋》-
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 「俺が持ち得し魂ども! さあ蘇れえええええ!」


 邪神アガレスの奇跡を垣間見る。

 煌めく黒色、そこに弧状を描き一層輝くものが放たれる。

 火をつけるように簡単、闇より出でるは意思なき人形の山。


 「おうおう、こりゃスゴイ」

 「どうやら英雄や魔王の類まで混ざっているようですね」

 「操作、いや蘇生術に近いか」

 「……敵いっぱい」

 

 真魔王とアガレス自身を筆頭とし、後方から進撃してくる魑魅魍魎。

 中には教科書で見るような偉人悪人までいる始末。

 

 「こんなんよく倒したなエイラ」

 「うむ! 死にかけたがな!」

 「で、ちなみにそん時は何体だった?」

 「邪神含めて10前後だった気がする!」

 

 今はザックリ30体ぐらい。

 少なくも感じるが個々の技量が高いのだから、むしろ多い、反則的である。

 しかし3分の1の数でもエイラは独りで片付けてしまったという。

 頼りになる相棒、しかもだ。

 今はこんだけ頼れる面子が揃ってる、まさか蘇った奴等に遅れはとることはないだろう。


 「各人かくじん、作戦はひとつだけ————」


 エイラが口を開く。

 最後を予感、隊長から作戦命令下る。

 それは非常にシンプル、シングルから個々団体戦になっただけ。

 やはり目的一つ、既に存じている。

 そう、俺たちの大前提コンセプト————

 

 「叩き潰すぞ(・・・・・)!」

 「「「「「「「「了解」」」」」」」」


 ゴチャゴチャしないコソコソしない。

 ほこりを被ることになろうと、常に誇り高く絶対主義を実行する。

 即座に脳内エンジンが青煙を排出。

 シンクロ発動、大気と同調を開始、そして終了。

 ここら一帯を支配下へと置く。

 同じく右方左方で臨界点突破していく脳筋たち、テイク1(ワン)からテイク2(ツー)

 瞬間モーメント、最強を冠する部隊が今揃い立つ。


 「さあ行くぞ! 私についてこい!」

 「隊長が斬り込み役とはな」

 「……バカに言ってもしょうがない」

 「ドイツは最高!!」

 「とりあえずぶっ倒せばいいんだよ」


 電光の如く疾走、石火を散らす俺たち脳筋ランナウェイ。

 皆そんな傷を負っていてよく走れるもんだ、表情も苦悶どころか笑みすら浮かべている。

 だが分かる、鬱憤晴らし、自己顕示、累積暴露、溜まっていたモノを吐きだす。

 まるで幽霊、全身全霊が背中に張り付き、この身を前へ前へと押し出す。

 その中でも、やはり先陣きるは脳筋隊長のエイラである。


 「真開闢強化ラ・カルマ・ミラータ!」


 その手の聖剣に力を重ね掛け、黄金の嵐が巻き起こる。

 天上天下、万物薙ぎ払う力の化身、これは決して過信ではない。

 有言実行、真魔王までの道を阻む有象無象に黄金の旋風が襲い掛かる。


 「聖剣カリヴァーン!」

 「……ぐぉ」


 しかし聖剣を身体張って守る者出現。

 それはかつて壁王とまで呼ばれた魔王、アガレスに囚われる魂の1つである。

 壁王はその身を崩しながらも聖剣の勢いをなんとか削ぐ。


 「超爆発エクスプロージョン!」

 

 だが安心は束の間、後追いでクラークの爆破が炸裂。

 壁王、そして行く手を阻む者を粉砕する。

 だが黄泉より蘇った英傑たち、彼らは一枚岩ではない。


 『ユウ! 大規模な魔法攻撃が来るぞ!』

 「あいよ!」


 レネの勧告とほぼ同時、今度は違う魔王より無限とも思える魔弾の雨が降り注ぐ。

 それは雨の様でありながら太陽とも、魔法の輝きが辺り一帯を照らす。


 (だけど魔女王、師匠の魔法に比べりゃ大したことない……!)


 「魔法同調マジック・シンクロ!」

 

 シンクロ領域を侵す魔弾に介入、魔法を解析分解再構築。

 更に重ね掛け、貰った分を倍返し。


 「刻印ルーン! 風を起こせ!」


 刻まれた印に神力を回す。

 魔風を追い風、魔弾と共に打ち返す。

 まさに天災乱舞、黄金と爆音、黒風が入り乱れる。

 

 「……さっきの魔王の方が強かった」

 「数だけだねえ。ネタ切れかなあ?」

 「無駄口叩かず働いてください」

 「そ、そうです! ってスサノオ助けてえ!」

 『かっかっか! 楽しくなってきたね!』

 

 魔法を能力を掌握、銀眼を輝かせ乗っ取る。

 どんどん詰まっていく距離感、瞬く間にエイラが先行、そこに流れ込む俺たち。

 ウイルスと一緒、一片の傷口から侵入、中から浸食。

 それも凶悪ウイルス、抗生物質存在なしの、一方的蹂躙に等しい。


 「くそが! もっと働け魂ども!」

 「醜いものだなアガレス」

 「なんだと……!」

 「最初は奇抜な能力と楽しめたが、いかせん飽きた」

 「飽きた、だと……!?」

 「退屈なのだよ。私にとって貴様はただの人形遣いと同義、邪神とはこの程度なのか?」

 

 真魔王は動作不調、今も強力な魔法を放ってはいるが十分見極められるスピード。 

 エイラの言う通り、あいつらは弱い。

 俺たちのゴリ押しがバンバン決まってく、蘇った者たちが地に伏せる。

 綱は俺たちが引くのみ、既に奴等はズルズルと引きずられるのみだ。


 「鎖よ時を縛れ!」

 「流転スキップ

 

 時には鎖が時を止め、時には事象を飛ばし。

 このシンクロも空間支配、敵方から放たれる攻撃を撃退。

 戦場を殺戮へと変化、立場逆転虐げる。

 ここが地獄だとするなら、俺たちは鬼、ひたすらに奈落落とし、パワーとパワーで粉砕する。

 

 「いいぜ! わかった! わかったよおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 邪神アガレスが叫ぶ、声量でないナニカが大気に響く。

 その狂気はおそらくエイラに一点集中、挑発に応えるのだろう。

 その怒りの如くグラグラと揺れる大地、震源は目の前から。

 

 「こいつはアレ(・・)用に取っておくつもりだったんだがなあ————!」

 

 憂さ晴らし人形となった魂群はほとんど壊滅状態。

 しかし邪神はこれをピンチと捉えないよう、その瞳には敗北の色は宿っていない。

 

 『……そうか、そういうことじゃったか!』

 「どうしたレネ」

 『この島が、ここ(・・)に創られた意味じゃよ……!』

 「意味?」

 『時と時の狭間! これは次元転移じゃ! 聖剣使いが飲み込まれるぞ!』


 この島の現在地、それは日付変更線、人間にとってレネの言う通り時と時の中間点。

 そこから起こる事象は『次元転移』

 危険信号が高鳴る、ここから先は神域と化してしまう。

 

 「聖剣使いだけはこの手で潰す! 真魔王! てめえの魂を対価にするぜ!」

 「GYUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO」

 

 真魔王の身体が粒子と変わる、黒く莫大な魔力がアガレスへと吸い込まれる。

 未体験なる奇跡が発動。

 

 「エイラ!」


 未体験が飲み込むは相棒。

 アガレスの奴エイラを仕留める気、歪む空間、狂ったベクトルが黄金を上から食う。

 

 (このままじゃエイラだけ何処かに飛ばされちまう……! シンクロも効かねえ……!)


 次元転移という大技に同調は出来そうもない。

 ならば走る、走って走って、前へ突き進む。

 いかせん奇跡の進行速度は速い、飲み込まれるのはエイラだけ。

 相棒が消える、この脚は途中挫折、間に合わな————


 「超爆破(エクスプロ―ジョン)!」


 諦め刹那の瞬間、クラークの起こす爆風が近くで発生。

 俺を異次元へと吹き飛ばす。

 

 (クラーク……!)


 「吹き飛ばされる過程を飛ばします! 流転スキップ!」


 今度はシルヴィから。

 この空飛ぶ身体を更に先へと飛ばす。

  

 「鎖よ! 奇跡を縛れ!」

 「神の技まで縛るつもりか! 不届きもんがああああああ!」

 「不届き者で結構! 僕はドイツ人そして、ユウの友達なんでね!」

 

 次元転移が一旦停止、活路は開く。 

 だがそう甘くはない、神速の身、それを襲う魂の残党たち。

 移動に一点集中、防御できるような余力は————


 「Ⅳ・棺」

 「スサノオ!」

 「死者よ出でよ!」

 「……反射反撃」


 みんなが襲い来る脅威を撃退。

 シンクロ全開、全力疾走、前進するのみ。

 

 「ユウ!」

 「エイラ!」

 

 一方的からの状況転覆。

 やっと目前にエイラが迫ったとき、ついにヨーゼフの鎖も限界を迎える。

 再び動きだす時間、現実に奇跡が行われる。

 ギリギリで伸ばすこの手。

 関節が外れるくらいに無我夢中、そして指先がなんとか交差、握ったその時。

 真っ白な光が俺とエイラを包み込んだ。 

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