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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 5 -New Legend 《最強の脳筋》-
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 「痛ってえ……」


 ボロボロからズタボロに。

 使い古した雑巾のように酷い恰好。

 アチコチ骨が折れ、火傷多数、無数の傷口から血が落ちる。

 俺は天を仰ぐ、仰向けの心は完敗を実感する。


 「まだまだね」

 「あんた、いや、師匠が強すぎるんだ」

 

 教授から実践へ、一線を飛び越えた先の戦い。

 この左半身に刻まれた刻印、確かにテンペストの性能は上がった。

 シンクロも山ほど使ったし、数少ない銀世界で仕掛けもした。


 (まさかここまで差があるとは、いやはや現実を思い知らされるな)

 

 戦いの後半はもはやイジメ、一方的に攻撃喰らうだけだった。

 魔法自体の強さ、バリエーションもあるが、第一に敵わなかったのが『経験値の差』

 まさに百戦錬磨、意識読みの魔法はレネが弾いているはずなのに、行動を読まれてしまう。

 行動を読まれ繰り出さるクロスカウンター。

 結局のところ、俺の攻撃は2、3発しか入らかなった、しかも与えたのは掠り傷程度、そんなものはすぐに回復魔法で治ってしまった。

 こんなボロボロな姿になっても、見える戦果は得られなかった。

 

 (でも体感した伝説級との格差、この経験は黄金よりも価値がある)


 「トドメは刺さない、より精進を重ねなさい」

 「頑張りますよ、それで師匠はこれからどうするんだ?」

 「私はもう行くわ、この島もどうやらハズレのようだし」

 「ハズレ……?」


 どうやら師匠はこの島から去るようだ。

 俺を仕留めないのは弟子という身分があるというのもあるが、もとより誰が相手でも殺す気は無かったそう。

 曰く誰の味方でもないから。

 しかしハズレとは、どういう意味なのか、まあ師匠にそんな問いかけしたところで教えてくれるはずもない。

 なにせ名前すら教えてくれない、謎だらけの人なのだから。


 「だけど醜い贋作は出来上がったようね」

 「贋作がんさく、偽物か……」

 「そう、でも意外とその偽物は強い、気を抜くんじゃないわよ」

 「気を抜くって、俺もう起き上がれないくらい重体なんですが……」


 全身を支配する痛みと痛み、呼吸するだけでも内臓が軋む。

 神力も刻印に現在進行形で持ってかれており、回復に回すような精神的余裕も無い。


 「ふふふ、これじゃあ彼とは戦えそうにないわね」

 「彼と戦うって、その偽物って奴とだよな?」

 「まあそれは自分の眼で確かめなさい、もう目覚めるようだし、直ぐに戦うことになるわ」

 「ここからまだ戦うのか……」


 要は偽物とかいうラスボスがこの島にいるんだろう。

 師匠にしてはだいぶネタバレしてくれた方。

 しかしてキツイ、もう疲労でへとへと、まだ戦いとか苦行以外のなんでもない。

 精神面については気合に気合を重ねればなんとか、しかし身体的には限界、ホントに無理なやつで間違いない。

 

 (そういや他の連中はどうなったんだか……)


 俺がこの調子だと皆もだいぶ堪えてるんじゃないか?

 いやでも俺は魔王連合で一番強い魔女王が相手だったからで、他の戦いついては幾分マシだろう。

 船でのレネの話を合わせると、どうやら他の魔王も偽物・・のようだし。


 「まったく、世話の焼ける弟子だこと」

 「おお……!」

 「感謝なさい。私の回復魔法を受けれるなんて一国の王でも無理なんだから」


 身体を包む緑色の魔法。

 優しく、温かく、ジワジワと浸透していく。

 みるみる内に傷が治る、折れていた骨が再生する、臓器も正しい姿へ、これが魔女王の回復魔法。

 浴びて実感、この魔法はチート以外の何でもない。

 

 (こいつを常時展開出来てきるなんて反則だろ……)


 たった数秒、それで俺の受けたダメージは何処かへ飛び去った。

 むき出しの刻印皮膚、流石に服までは治っていないが、神業と言える回復技。

 身体は大体復活、疲労感は残っているがそこは気合で押し切れる。


 「これで戦えるでしょう」

 「十分いける。でもその回復魔法っていうのデタラメすぎるぞ」

 「今度機会があれば教えてあげるわ」

 「まじで!?」

 「機会があれば、ね」


 軽くウインク、本気かどうかは、やはり分かりづらい。

 しかし理論的には可能、俺の血液には師匠の魔力(・・・・・)が流れているから。

 それは刻印を刻む際に流入したもの、しかし師匠の魔力はかなり濃いらしく、鍛錬を積めば俺の持つ魔力量でもそれなりの魔法を使えるようだ。

 いやはや是非ともご教授願いたい。

 

 「無駄話はここまで、少しの別れといきましょう」

 「そうだな、今度会ったら魔法を教えてもらうからな」

 「ふふふ、分かったわ。なにせ可愛い弟子の願いだもの」

 「じゃあな師匠」

 「ええ、また会いましょう」


 間を駆け抜ける一迅の風。

 瞬きする瞬間、瞬く間に白色陣が発動発光。

 気付いた時には師匠の姿は消えていた。


 『ユウは変わった奴ばかりに気に入られるのう』

 「それ自虐と思っていいか?」

 『どういう意味じゃ?』

 「レネも十分変わり者って意味だ」

 『な、なんじゃと!?』


 確かに俺には不思議な巡り合わせが多い。

 エイラと出会ってからはその運命、縁も加速している気がする。

 脳筋、神、魔女王、これ以上のものなんているかと疑問を持つ。

 はてさて未来のことなど俺には分からない、やるべきは目の前の障害を打ち砕くこと。


 『ぬ! どうやら魔女が言うところの偽物・・が出てくるようじゃ!』

 「嫌でも感じてる、師匠、これ滅茶苦茶ヤバい奴ですって……」


 少し遠方、レネが言うには島の中心から莫大な魔力の放出を察知。

 俺ですらシンクロ使わずとも感じ取れる量、その禍々しさといったら、魔女王の魔力色が芸術的だとすれば、偽物野郎の魔力色は暴力性の塊といったところか。

 近づく者すべてを叩き潰す、そういう殺気がビンビン出てる。


 『なるほどのう、やはり真魔王にしては魔力が薄い』


 レネは師匠の話で大体の事を理解したようだ。

 スサノオと共に疑問視した問題の回答は得たらしい。

 得たというより裏付け、やはり真魔王は誰かによって創造、もしくは意図的に復活させられたものであると。

 

 『じゃが真魔王であることは変わらん。油断すれば死ぬぞ』

 「気を許すつもりは無いさ」

 『ならば良し! では魔王退治と行こうか!』

 

 授かりし新たな力、生き返ったこの身体。

 巨大な魔力渦巻く島の中心点へと向かう。

 果たしてそこに辿り着くのは何人か。

 

 (どうせ皆いるんだろうけど)


 なんだかんだと頼れる仲間たち。

 これでも最強の脳筋を名乗っている連中だ。

 そこらの贋作魔王に負けるなんて恥ずかしいことはするまい。

 これより大本命、『真魔王アレクセレス』討伐戦の始まりである。

 

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