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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 5 -New Legend 《最強の脳筋》-
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63.5 with Tempest

 我が名はテンペスト。

 羅刹王バルハラが生み出した神を穿つ魔槍である。

 このように意思を持ち、そして魔風を操る。

 長き時を王と過ごし、幾戦もの戦いを刻んできた。

 だがそれもある時、終わりを告げた。

 あるじである羅刹王バルハラの死である。


 その最期の内容と言えば、羅刹に見合わぬ陳腐な戦い。

 衰えはあった、神との相打ち、共に朽ち果てる。

 神を穿つ者としては、内容的に無残な死合であったのは認めなければならない。


 敵方は消え、王の身体も粒子となり消えかかる。

 羅刹王は、神と相対する者としての役目を終えようとしていた。 

 ならばこそ我もここまで、共に現世より去るのみと悟った。


 しかし王は我に命じた、いや願ったとも言える。

 曰くあそこにいる少年の武具となれと、曰くまだ生きろと。

 

 我は武器、創造主がそう言うならば従うのみ。

 だが問おう、なぜ人間にこの魔槍を渡すのか。

 人に渡ったところで王に得することはないだろうに。

 消えゆく身体、だが相変わらずの豪胆な笑みを浮かべて言う。

 

 『少年は王の器を持つ。この羅刹王の意思を継ぐに相応しい程のな』


 傍若無人の羅刹王バルハラが人を認めた。

 少年は王の器、しかしそれは単純に力が大きいというわけではない。

 周りを惹きつける、ある種カリスマともいえる異質な器。

 人も、魔族も、神も、そして王自身も引き寄せられた。


 『というわけだ。頼んだぞテンペスト』


 羅刹の称号を少年へと明け渡す。

 我は王の真意を理解できない、だが命じられれば従う。

 それから二言三言を少年へと残し、この世を去った。





 『バルハラの奴、随分大きな遺品を残してくれたな』


 新たな主がこの槍身を掴む。

 そし電流のように青い粒子が駆け巡る。

 これは少年の能力。

 なるほど、同調とはこのような感覚かと感慨入る。

 

 『あれ!? もしかして意思・・があるのか!?』


 同調したおかげで存在が伝播する。

 肯定する、我には意思がある。

 神滅武具の名は伊達ではない、感情の上下はともかく、戦況の良し悪しを判断するぐらいは当たり前に出来る。

 

 『なるほどなあ、じゃあ自己紹介からか。俺はゆう、よろしくなテンペスト』


 自己紹介、それは意味あることだろうか?

 武具は振り回せばいいだけのこと。

 それに我の真の主は羅刹王バルハラのみ、これは仮初の契約に等しい。

 

 『それでもだ。俺は名乗っとくよ』


 その行為を止めることは我に出来ない。

 兎にも角にも亡き王の言葉に従い、少年を新たな担い手とする。


 今思えば、この時既に我も巻き込まれていたのかもしれない。

 四道 夕という人間、バルハラが認めし巨器の持ち主に。















 『くっそ! なんて魔法の量だよ!』


 月日は流れ魔女王との戦いにまで辿り着く。

 思い返せば早いものだった。

 王の死を経て、聖剣使いとの邂逅、銀神との契約、挙句魔女王と戦闘。

 亡き創造主が知れば、きっと何時ものように豪胆に笑われることだろう。


 『テンペスト!』


 風の力を所望する。

 望みに応え、世界に干渉、神を殺戮する魔風を放つ。

 しかし相手は魔女の王、近接戦にはなかなか持ち込めん。

 ひたすらに中距離遠距離、これでは勝利に届きはしまい。

 打破するためには一撃・・が必要である。


 『神力はまだ足りない……! 最強の魔法使い、ここまで強いとはな……!』


 段々と押される、同調の精度も少しずつ低下している。

 潰さるのも時間の問題だ。

 の銀神も魔法を弾くのになかなか必至な様子、もはや余力はないと言える。


 『どうすっかなこれ!』


 そうこうしている間に魔法は増加、辺り一面を飲み込む。

 嵐を起こす、少しでも勢いを殺す。

 それでも全ては流しきれない、抜けた魔法がこの槍身を震わせる。

 更には担い手たる身体にも被弾、鮮血を走らせる。

 このままいけば敗北は必須。


 『テンペスト……?』


 羅刹王の真意、それはようやく理解をし始めた。

 この者の気概、傲慢さ、万人を引き寄せる魔訶不思議な出立。

 これらを形成する四道 夕という人間の真価を。

 新たな担い手、いやユウよ。

 問う、この戦に勝ちたいか? 

 そして、人を捨て神を穿つ者となる覚悟はあるか?

 

 『テンペストには、まだナニカ(・・・)があるわけね……』


 肯定する。

 正直、我はバルハラ以外を真の主とは認めなかった、それ故与えし能力も魔風だけにした。

 だがその考え、そろそろ改めなければなるまい。

 我は神滅武具テンペスト、持ち得し事象は『神殺し』

 起こすものは神の殺害、そしてもう1つ、それが『天衣無縫への昇華』である。

 ただ、これを使えば羅刹の戴冠、新たな羅刹王となる。

 

 『俺が王になる、だから覚悟が必要ってか!?』


 脳裏に言葉落としながらも戦闘は苛烈を極める。

 しかしこの状況だからこそ、軌跡を共に見たからこそ、言わねばなるまい。

 風だけではない我の本領、それを受け取るか否か。


 『ははは、そりゃ心配し過ぎってもんだテンペスト』


 しかし問いかけに対する答えは、どこか懐かしい豪胆な笑みであった。

 口で吹く風で一蹴、なんともないと傷だらけの身体で強気張る。

 しかしその気概、見せかけでもなんでもない、真の者が放つ気風である。


 『エイラと出会って人間ふつうは辞めた! 俺は脳筋ばかだ!』


 そうか、主には頼れる聖剣使いがいたな。

 同調で繋がる中で見た主の闇、それを晴らす一筋の光明。

 ならばこそ感化され、とうに人間という概念は飛び越えたのだろう。


 『いっちょよろしくなテンペスト!』


 原点回帰する、初めに言われた言葉。

 ああ、なるほど、これは引き込まれる。

 王よ、あの時認められた少年、我はようやく認めましたぞ。 

 そして新たな羅刹の王に応えよう。

 これが神を畏怖させる魔槍、その真の力を与える。


 『こ、こいつは……!』

 

 天衣無縫となれ。

 誰にも囚われることなく、風のように舞うのだ。

 近づくものは全て滅ぼす、それが例え神であったとしても。

 更なる高みへ王を連れていく。


 羅刹門、発動————

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