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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 5 -New Legend 《最強の脳筋》-
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 鎖を数百と打ち込む。

 呪縛を相打ち、浮き沈みの激しい中距離戦。


 (気を抜くと死角から魔法が来る、それでも手数では僕の方が上だ!)


 呪縛王ルーツが迫る。

 全方位集約、思考と鎖を張り巡らせる。

 

 「そんな女みたいな見た目で良くやるなあ!」

 「これでも僕は男なんでね!」


 この容姿、女みたいだと何度言われたか。

 願うならばもっと男らしく生まれたかった。

 クラーク・カヴィルみたいにゴリマッチョとまでとは言わない。

 

 (せめてユウぐらいには成りたかったね)


 悩むこともあった、今だって気にしてないと言えば嘘になる。

 でもそんなことよりも、S級という称号、僕は祖国を背負って立ってる。

 こんな容姿のことなど二の次。

 すべての行動心理はドイツを基準とする。


 「鎖よ大地を縛れ!」

 「呪縛線!」

 

 ある一定の距離を保っての戦闘、ここまで大きな動きは無い。

 こちらも、そして相手もまだ本気ではない。

 負ったのもまだ掠り傷程度、向こうも同じ状況。


 (攻めるのは簡単だ。ただタイミングを見誤れば一気に持ってかれそうだ)


 一応最強の脳筋アルティメット・パワーズの一員であるが、僕は脳筋でもなんでもない。

 深く解析、戦況を把握、冷静に判断を下す。

 勝利に最も近い道へ、僕は私情で動いたりしない。


 「そういえやお嬢ちゃんはドイツ人か?」

 「僕は男だ! ドイツ人! 良く分かったな!」

 「やっぱりな。そのダッサイ、国旗って言うのか? なんか三色のダサいやつ」

 「ど、ドイツ国旗がダサい……?」


 鎖操作に集中していた思考が乱れる。

 なんだ、なんだ、なんだ。

 この魔王は何を言ってるんだ。

 おそらく指摘したのは今着る軍服に刺繍された三色旗。

 そしてこの男、ドイツをバカにしたのか?


 「前に戦った人間、『独弾独砲アリア』と呼ばれた男、そいつも同じものを付けてたもんでな」

 「確かにそれは、誇り高きドイツ軍人だ……」

 

 の英雄10人、その内に1人ドイツ軍人が。

 既に死したが、百発百中の銃能力を使う者、『独弾独砲アリア』フレイド・イェンセンガ。

 この方を知らないドイツ国民は皆無、それほど有名なお人だ。


 「そいつは戦闘中も『ドイツがードイツがー』って、いやホント気色悪かったわ」

 「……」

 「それで思ったよ、ドイツって絶対気持ち悪い国なんだろうなって」

 「…………」

 「お前も女みたいで男だし、やっぱ国柄故に変わり者しかいないんかねえ」


 英雄殿が気色悪い?

 ドイツが気持ち悪い国?

 ドイツが変わり者しかいない国?

 奥歯を強く締める、手を震わす、この魔王は祖国ドイツを、ドイツ国民を愚弄している。

 

 「ドイツ最高、ドイツ最高、ドイツ最高、ドイツ最高」

 「お、おいおい……」

 「ドイツ万歳、ドイツ万歳、ドイツ万歳、ドイツ万歳」

 「その沈んだ目、どうやらお前さんもアイツと同じ————」


 相手の解析を放棄、思考はドイツに染め上げる、外から来る情報をシャットアウト。

 冷静な判断をする必要も無し、こいつは迅速に、かつ凄惨に血祭りにしてくれる。

 全鎖を起動、躊躇なく仕掛けよう。


 「呪縛の魔王ルーツ、君にドイツの素晴らしさを叩きこんであげるよ」

 「なんつー禍々しい気だよ、こりゃどっちが魔王かわからねえな……」

 「最後に言い残す言葉は、それだけかい?」


 まあこれ以上ドイツの悪口を言わせる気もないけど。

 ああ総統よ、ああ愛すべき友たちよ、僕はここにもまた祖国に反する者を見つけました。

 僕の鎖をもって正しましょう。

 ドイツは最高であると。














 「さあさあ、どんどん死んでくれ!」


 広い大地、それを埋め付くすは死体の波。

 蓄えに蓄えた貯蔵庫、そこから土砂崩れのように流れだす。


 「もっとだ、もっと出てこい!」

 「気持ち悪い能力だな」

 「っは! なんとでも言えばいい!」


 僕は数十年後には中国の頂点に立つ。

 こんなところで躓くはずも無し。

 能力『死体貯蔵』より、死した人間、死した魔物、仕舞った箱より解き放つ。

 そんな未来の大英雄に仇名すのは『点王ピリウガ』

 まったくもって聞いたことのない魔王、ようは無名で、ぽっと出の魔族にしか過ぎない。


 「僕はもっと強い魔王とやりたかったよ」

 「よく回る口だ。だがそう言う割には攻めきれていないな」

 「そりゃ手加減してあげてるんだ、早く終わったら暇なんでね」

 「本当にお喋りが好きなようだ……!」


 未知の魔法を体感、点と点が結ぶ、大地に駆け巡る点の星。

 いったいどういう魔法なのか。

 気付けば発光、解き放った死体たちは切り裂かれ、また魔王の身体も瞬間移動のように消えたりする。


 (魔王の死体が手に入るのなら、今回の戦いにも意味があるというものだね)


 別に世界平和なんてどうでもいい。

 ただ僕は死体を集めるのが好きなんだ。

 戦力になると言う意味でも、その腐った死臭を嗅ぐのも、落ちた肉片を眺めるのも。

 それらひっくるめて一興、一趣向、しかも今回は魔王の死体、極上も極上だ。


 「点魔法、星を結べ」

 「ん、これは世界浸食……」

 「死の皇帝、お前を無際限なる世界に連れて行こう」

 「ほう、面白い————」















 「爆! 爆! 爆!」

 「応! 応! 応!」


 ひたすら拳で語り合う。

 爆破の衝撃、切り裂く大気、荒れた暴風が身体を通る。


 「やるではないか人間!」

 「貴様こそ!」


 拳に混ぜ込んだ爆破の能力。

 爆発でブースト、超加速で振りかぶる、爆風を散らす。

 普通の魔族だったら熱だけで、焼け焦げるところだが————


 (さすが獣の魔王、腕力、反応、耐久、全てが超一級品で間違いない!)


 交差するは獣系魔族の頂点に位置した魔王。

 『獣王』ビースト。

 スタイルはフォードに近い、身体強化魔法をメインとする。

 

 「獣脚『轟』!」

 「空間爆破!」


 轟脚が大気を抉る。

 全てを粉砕するような威力、大気を爆破し方向をずらす。

 

 (強力なのは身体能力だけではない、その戦闘技術、なんと完成されたものか!)


 賞賛の一言、凄まじい戦闘の技。

 その部厚い毛皮に覆われた心臓は歴史を刻んでいる。

 あらゆる生物種族と戦ってきた、血の行いが。


 「ぬらああああああああ!」

 「とてつもない闘気! 人間にしておくには勿体ないな!」


 俺は歩く核弾頭と呼ばれる。

 これは伊達でも見せかけでもなんでもない。

 相手が強力な能力、身体を持つとする、しかしそれすら吹き飛ばせばいいだけこと。

 ひたすらに直進、前向く身体、踏み出すこの足、障害となるならばこの手で崩そう。

 

 「俺は負けん……!」


 ブレることのない絶対の精神、簡単に揺れる者どもとは違う。

 征して制す、歩く、壁があるなら壊す。

 この固く握った拳を突き出す、そして身体にも重い拳が突き刺さる。

 血反吐が飛び散る、臓器が圧縮、身体を支えるナニカが震える。


 「よく耐える、そして持ち得し強い拳、強い精神、あの女に似ている」

 「シズハ・ニシミヤ、か……」

 「そのような名だったか、いやはや恐ろしい人間だったのは確か」


 歴史が真実ならばこの獣王を倒したのは『剛腕』シズハ・ニシミヤ、最強の力系能力者。

 一体どうやって倒したのか、生きているのならご教授願いたいものだ。


 「しかし、いま(・・)の我に敵わないとは、人類もいよいよここまでか」

 「ここまで……?」

 

 獣王は俺より2倍はあろうかという巨体。 

 その体格から想像外の、どこか遠くを向くような声。

 何かを危惧?

 いや、何かを悟るようなセリフだった、そんな気がする。


 「さて、回復したか?」

 「……わざとだったか」

 「はっはっは! 我ももう少し楽しみたいのでな」

 「そうか、ならば全力でぶつからなければ————」


 獣王は余裕あり、俺もまだ余力はあるがダメージもそこそこ。

 これは短期戦に絞った方がいい。


 (火力を一点集中、勝負をかける!)


 エンジンがフル稼働。

 全力で回す、心臓タービンがオーバーヒートする。

 毛穴から蒸気が噴出するように、四肢を熱気が包む。

 身体も心もホットにキメる。

 この身を爆発に変える、人間核弾頭、後先考えずの一発勝負で。


 「疑似モデル核弾頭ウォー・ヘッド!」


 打ち上がって、撃ち抜く爆弾。

 俺は歩いた道を真っ赤に染める。

 

 

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