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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 5 -New Legend 《最強の脳筋》-
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 「我の相手は汝か」

 「……そう」


 相手を解析。

 名は武天王、武装は二刀持ちで日本刀タイプ形状、左右キッチリ揃った筋肉体形。

 歩幅から計算するに、身長は約2メートルと推測する。


 (身長差は約50センチ以上、上からの攻撃に注意しつつまずは下から崩す)

 

 「我は武天王イシュガー、戦を究めし魔王なり」

 「……知ってる、ちょっと前に死んだ奴」

 「言ってくれるな小娘」


 記憶より呼び起こす。

 戦闘に特化した阿修羅系統の魔族、生前は人間魔族問わず殺戮を繰り返した。

 編み出したのは幾数もの『剣技』

 変わっているのはその技が魔術無しの、己の身体と二刀のみで生み出した、純粋なる技術の結晶というところか。


 「汝の名を聞こうか」

 「……ユリア・クライネ」

 

 私は殺し屋。

 これまで色んな奴から依頼を受け、人間に魔族、いろんな首を狩ってきた。

 今回の相手は魔王なだけ、やることになんら変わりは無い。

 

 「武器創造、暗器ナイフ

 

 能力を発動、コンパクトに、刃渡りは15程度、重量は若干重め。

 漆黒に染まる疑似武具、この手より展開し握りしめる。

 意識の冷化をより加速、適切判断、適切行動、適切感情、この身を一本のナイフへと変える。


 「まさかそんなチンケな武器で戦おうというのか……?」

 「……これがベスト」

 「我も侮られたものだな————!」

 

 言葉はここまで。

 やはり武天を名乗るだけはある。

 一瞬にして、一気に目の前まで詰め寄って来た。


 「……反射ハイ

 

 振りかぶって第一刀。

 一考する暇も与えぬ光の速度、この首へと到達、宙へ飛ばさんと凄まじい勢い。

 このパターン、一体どれほど経験したものか。


 「……反撃カウンター

 「なに!」

 

 首元に刹那の時、傷痕を生まないミクロの単位で皮膚に触れた瞬間にカウンターを発動。

 迫った一刀を倍返し、ナイフに武天の力を上乗せ。

 彼の王の胸元に逆さ十文字を刻む。


 「っく! 秘技、五段崩し!」

 「……反射ハイ


 十文字を刻んでやり、鮮血を湯水のように流しながらも動きは鮮明、むしろ研ぎ澄まされたともいえる。

 放たれるのは武天王が編み出した技が1つ。

 1秒が5当分されるような感覚、これは普通避けられない。

 それこそ反射などという能力がない限りは。


 「これを避けるか!」

 「……遅い」

 「小娘と侮ったが、いやはや面白い」


 私の能力『反射反撃』

 世界に公開しているのは、相手の攻撃を跳ね返すカウンターだけ。

 あとは武器創造。

 大会ではその2つしか使わなかった。

 能ある鷹は爪の隠し方を、使うべきタイミングを心得ている。

 そして今こそ使う時、自分の反射神経を異常なほど高める『反射ハイ』の能力を。


 「……速い」


 目まぐるしい剣風の鳴り、武天王が放つ一撃一撃を避けてるたびに大気が削られる。

 まともに打ち合えばこのナイフは簡単に折れるだろう。

 更に体格差、種族差から力では絶対に劣る。

 自分がとるべき行動は、相手の攻撃を倍返し、もしくは一瞬の隙をつく暗殺技で仕留めるか。

 

 (隙は全然無い、剣も段々と加速している。これ凄いめんどい奴)


 運で決まった相手とはいえ、いかせん面倒。

 出来るものなら後輩ユウに全投げしてやりたい。

 だがアイツもアイツで魔女王が相手、むしろ私は恵まれている方か。


 「……意外とキツイ」


 暗器を大量生産、手数を増やす。

 それでも捌くのが困難へと向かい始める。

 普段はこんな真向から戦うなど論外だが、今回ばかりは致し方ない。

 不利ではないが、時間の問題、この状況を打開しなければ。

 アレ(・・)を使うか、政府から小言を言われるかもしれないけれど。

 だがそれでも、この思考は、その行為は適切であると判断する。


 「……赤眼レッド・アイズ、解放」


 能力2つ持ち(ダブルホルダー)と世間からはもてはやされているが、この赤眼はその事象を打ち砕く。

 私は反射反撃、武器創造、そしてもう1つ、赤い瞳に眠った能力がある。

 いわば能力3つ持ち(トリプル・ホルダー)、それをここで晒す。

 

 「————召喚憑依インストール七つの大罪・怠惰(セブンス・レジネス)

 

 赤を強く、もっと強く。

 禁じられし怠惰の呪い、いまこの身に宿す。













 

 「ボクは影王シャドラ! よろしくねメイドさん!」

 

 私の相手は影王に決まった。

 かつては覇剣使いに葬られた魔王である。


 「シルヴィ・ベルンクール、参ります」


 その内より短刀を出し構える。

 歴史に忠実であるならば影を変幻自在に操る。

 時には武器とし、時には盾とし、時には回復剤にもするらしい。

 影魔法という魔法の中でも稀有な魔法を極めし者だ。


 (問題は間合いをどうするかですね)


 ここまで距離はそこそこ。

 中距離戦、それとも一気に詰めて近接戦か。

 

 (どちらにせよ、武器は限られる、ならば————)


 「流転スキップ


 影王シャドラまでの移動工程を飛ばす。

 更には武器を振りかぶる動作、身体を捻る動作、脳内の情報処理に必要な工程を全飛ばし。

 聖剣使い(エイラ・X・フォード)のおかげで霞んでいるかもしれないが、私が最も得意するのは『超近接戦』である。


 「影囲い《フィールド》」

 「後退バック

 「あれ? 発動しない……」

 

 影王はなにか魔法を使おうとしたが、それは能力で巻き戻す。

 魔法は不発、正確にはズラされた半端なタイミングでの発動に。

 

 「弱すぎますね」

 「もう後ろに!?」


 完全に背後を取る。

 ナイフ逆手に首を刈っきる。

 スルリと弧状線を描き、一刀両断、呆気なく影王の頭を文字通り地に落とす。

 しかし不自然、その首元からは一滴も血が流れない。

 切り口真っ黒、ブラックホールのように染まっている。


 「やるねえ……」


 すると地に転がっていた首が砂塵のように散り消滅。

 新たな頭部が、突っ立った首元から生えてくる。


 「再生の能力……」

 「うーん、まあ当たらずと雖も遠からずかなあ」

 「以前はどのように死んだのです?」

 「はっはっは。攻略法を教えるわけにはいかないねえ。まあ覇剣使いは大分狂ったやつだったけど」

 

 四肢ならともかく、切り落とした頭部まで再生するとは。

 死した英雄はどうやって倒したのか、気になるところです。

 まずは小手調べと行きましょう。


 「流転スキップ

 「あらら」

 

 今度は魔王の両腕を斬り飛ばす。

 隙がありすぎ、いとも簡単に成し得てしまう。

 だが結果は頭部と同じ、元通りに再生。

 まさに道理無しのデタラメさ。

 

 「影斬スライ


 ハッと気付く、鋭利に伸びた影が両脇を通過。

 寸でで反応、なんとか回避行動、しかして軽く削られる。


 「ほらほら考え事してちゃ死んじゃうよ?」

 「……そうですね」

 「君は狂気が足りないんだよ、それと一発技が無い」

 

 確かに目の前の王の言う通り、ユウのように多彩でも、聖剣使いのような思考回路も持ち合わせていない。

 私の持ち得る能力は1つだけ。

 方向を、世界の時間という概念に干渉するこの力のみ。

 だがしかし、1つだけだとしても、未だ奥底を見せたつもりは更々ない。


 「私に一発技がない、それは大きな勘違いですよ」

 「ほう、何かあるんだね」

 「使うのは久方ぶりです————」


 本当は大会で使おうとも考えていた。

 あいにく銀世界のおかげでご破算となったわけですが。

 ようやく使いどころでしょう。

 

 「全ての方向を掌握します。四次元方向フォー・ディメンショナル展開」


 点と線と縦と時間軸。

 高次元領域の到達。

 この現世うつしよを冥土へと変える。












 

 「拙者は笑王しょうおうセフス!」

 「アーサー・グリン……」

 「ひいはっはっはっはっは!」

 「……」


 (なんで俺がこんな変態の相手をしなければいけない……)


 当初は、正直相手は誰でもよかった、結果は同じだからだ。

 だからこそクジ引きと言われても、別に反対もしなかった。

 それで引いてみれば、未確認の新魔王が相手となる。

 他の魔王のように復活したのではなく、何処からか来た、しかし何故か情報は一切なし。

 いざ名前を名乗ろうとも、俺の名前は笑い声で掻き消される。


 (しかも笑王とはなんだ、笑わせる魔法でも使うのか?)


 「拙者は無名でしょう?」

 「ああ、聞いたことも無い」

 「ですよねーはっはっはっはっは」

 

 結局最終的には笑って締めくくり。

 殺気もまったく感じない、一体何をしたいんだコイツは。


 「戦う気がないなら、他を当たるが」

 「あれれ、それっていいのですかな? 拙者を倒しに来たんでしょうが、それとも戦意の無い者は殺せない??」

 「……」


 別に殺しに躊躇は無い。

 だが戦う気も無く、何をするでもないなら、無視して他の魔王を早く始末したいところ。

 

 「君に良いことを教えてあげよう」

 「なんだ」

 「海にいーっぱい魔物がいるだろう? あれは拙者の仕業」

 「……魔物は、貴様が元凶か」

 「そうですそうです。はーっはっは————」


 (Ⅲ・フライ、Ⅴ・ソード、展開)


 速度を上げる、この手に剣を生み出す。

 瞬間で駆ける。

 一点集中、炎を吹き消すように、陽炎の如く剣戟放つ。


 「笑う門に魔物あり!」

 「なんだと……」


 俺の剣は確かに肉を刻んだ。

 しかしそれは笑王の肉体では無く、突如現れた魔物の肉、紫の鮮血飛び散らす。

 命を絶つ、しかして距離を取られる。

 ならば追撃と、電光石火で接近するが————


 「これは、一体どういう魔法だ?」

 

 行く手を阻むのは魔物の波。

 ヤツが笑えば笑うほどその数は増していく。

 それが果たして魔法なのか、こいつらは召喚されているのか、生み出されているのか。


 (厄介な相手に当たったな)


 未知とは恐怖。

 相手が誰でも変わらないと思っていたが己を戒めよう。

 この笑う魔王、強い。


 「天より祝福を、Ⅰ・エンジェル


 天界より天使を召喚。

 この身に重ねる。

 頭上に現れる光のサークル。


 「くくく、凄い、凄い」

 「行くぞ……」


 天使を持ってしても目の前の王は笑う。

 その目には希望も絶望も何もない、単純なる面白さ故、そう感じる。


 (これは四大天使・・・・まで使うことになりそうだな————)


 まずはスタンダートでフォーマットに。

 相変わらず殺気は無いが、魔族に囲まれ、更には海の魔物の親元を見つけた。

 ならばこそ刈り取るしかあるまい。

 その笑み、俺が消してやる。

 

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