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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 5 -New Legend 《最強の脳筋》-
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 「四重強化クアトロ・ミラータ!」

 「亡霊ども! 食いつくせ!」


 張り廻る筋肉を強化。

 皮膚表面の硬度を強化。

 視力、気合、反射速度、神経節もまとめて強化。

 最後にこの手に握る聖剣を強化する。


 「まずはゾンビ退治か」


 邪神より召喚されるは死した生物たち。

 それは人間にとどまらず、魔物、中にはエルフまでいる始末。

 神に操られしマリオネット、軍勢が津波のように迫り来る。

 だがいくら来ようと真向から粉砕、バイオレットが弾ける液体色、敵を肉塊へと変える。


 「相変わらずデタラメな力だねえ!」

 「誉め言葉と受け取ろう!」

 「あの怪力女と戦った時を思い出すよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 地面が変容、踏み込む足が地盤を砕く。

 大地震発生、万物を揺るがす純粋なるパワー。

 あらゆる敵を淘汰する。


 「更に四重強化クアトロ・ミラータ!」

 

 体感をもっと早く、もっと先へ、この剣を神の世界へと侵入させる。

 ハイスピードを体現、肺活量はフルスロットル、後退という概念を捨てる脳内ハックを実行する。


 「速い! 速すぎるぞ!」

 「避けておいて良く言う」

 「そりゃ俺は神様だからさ!」


 邪神の震脚、ボディーに一発叩きこまれる。

 だが腹部への攻撃は察知、瞬間で腹部を三重強化、この身をダイヤモンド並みの硬度へと。

 硬化で効果なし、お返しのカウンター交差する。


 「聖剣よ! 我が声を聞け!」

 

 聖剣によくわからん力、ユウが良く言う神力なるものを流し込む。

 瞬間リミテッド、私の本能に剣が呼応する。


 「光の十字剣、いま解き放つ!」


 太陽の神与えし力を今解放。

 魂燃える、生み出す数億気合エネルギーを滾らせる。

 踏みしめる、握りしめる、黄金粒子が私を抱きしめる。

 天高く飛び立つ常識、最低限さえ必要なし、咲いて一華、金のスターダストこの身を通過する。


 「冗談抜きで、お前は強いぜ」

 「ほほう。邪神であろうと、神に認められるとは、私も出世したな」

 「これは笑い事じゃねえ。その上でだ、聖剣使いを殺れんのは神《俺たち》しかいねえ————」


 邪神は気色悪い笑みをひっこめる、いかせん真面目な口調。

 ただ、やはり口角は上がり気味、しかして油断も隙も見せるわけにはいかないこの空気。

 

 (どうやら神は本気を出すようだ。なに問題は無い、ただぶつかればいいだけのこと)


 本能察知、これより戦うはフザケなし、真剣の殺し合いになる。

 力を全身に回す、強化に強化を重ね少しでも高みへと近づける。

 感じるのだ、この戦い、エレネーガ様以来の死闘になると。

 

 「我が名はアガレス! ソロモン王に仕えし大悪魔! この彷徨う全ての魂を喰らいうものだぜええええええええええええええええええええ!」


 邪神か魔人か、なんてドス黒い力を纏うことか。

 叫びに共鳴、彼の神の周囲には半透明な、叫びを伴った怨霊が這い出る。


 「なあ聖剣使い! アイザックにもう一度会いたいか!?」

 「学園長のことか? 無論会いたい、なにせ御礼の1つも言えなかったからな」

 「そうかそうか」


 構えた剣先向こうに向ける。

 周りの環境大破壊、しかしまだまだ序盤、ここまでは手合わせレベル。

 これより先が真剣勝負。

 ずっと青だった脳内信号、もはや撤去、真っすぐ伸びた下降線の一本道に。


 「なら会わせてやるよお!」

 「……っ!」


 ナニカが接近する気配、気付けば刹那、地中より鉄の槍が生えてくる。

 反射が若干遅い、頬に一筋、掠って一槍、久しぶりに流れる赤い血だ。


 「学園長……」

  

 邪神の影より現るはアイザック・ヒューリマン。

 何度か会った学園長その人。

 ただ見た目ともかく、能力ともかく、その目は死人そのもの。

 なにも見通すことが出来ない抜けた瞳である。


 「これで終わりじゃああああああああない! 今回は特別大サービスだああああああああああ!」


 先ほどまでの真面目は何処に行った。

 発狂一周回って大発狂。

 初手と同じようにゾンビを大量生産、だがそのゾンビはただのゾンビでは無さそうだ。


 「これは……」

 「こいつらは俺のコレクション! その中でも選りすぐりの怪物たちだ!」


 なんだか見たことあるような顔ぶればかり。

 それはあの英雄であったり、過去にいた魔王であったり。

 気で分かる、目の前に生み出された十人あまり、彼らは『とてつもなく強い』

 

 「……ふふ」

 「なんだ笑ってんのか? 絶望で気が狂っちまったかあ?」


 つい笑いの思いが漏れ出す。

 無意識行為、こんなことで笑うのは初めてだ。 


 「邪神よ、私には2つ夢がある」


 私が抱く夢は2つだ。

 この話はユウにしかしていなかったんだが、いい機会だ。

 ああ、こんなにいい機会は滅多にないのだから。

 

 「夢だと?」

 「そうだ。まず1つは毎日ユウと楽しく過ごすことだ」

 「……惚気のろけ話なら死んだ後にやってくれねえか?」

 「まあ最後まで聞け。これともう1つ、私が抱く夢がある。それは————」


 実は最初に言ったユウとの楽しい生活、これはユウと出会ってから抱いたものである。

 今から宣言する夢、これは私が最初に想い、私が立てた1つの終着地。


 「それは、私がこの世界で最強となることだ!」

 

 人も神も魔族も、全てをひっくるめて淘汰、この世界の頂点に立つ。

 この剣と、この拳と、この力でだ。


 「つまりは好都合なのだ」

 「何を言ってやがる……?」

 「お前が生み出した過去の英傑たち、それは2度と戦えぬ相手だった」


 いくら現実今この時で無双しようとも、死んだ豪傑たちとは戦えない。

 しかしそれがどうだ、善くも悪くも歴史に名を刻んだ者がズラリと目の前に。


 (まさかこんなにも強い連中と戦える日が来るとはな!)

 

 豪華料理ののフルコース。

 何度も言う、こんな機会は生きていて滅多にない。

 ならばこそ、このエイラ・X・フォードが片っ端からたいらげてやろう。


 「燃えてきたぞ……!」


 強化、強化、強化、強化、強化、強化、強化、強化。

 頭を目まぐるしく、脳内爆破、振り切ったメーターゲージ。

 大気をブチ抜くぐらい凄惨に、美しさも騎士道もそこらに捨てる。

 私はまっすぐ進むのみだ。


 「なんつーオーラ! 化物かよ!」

 「化物! 化物か! よく言われた! だが私のことをバカと呼ぶ相棒を見つけた! そいつがいれば十分!」

 「こりゃ変幻も手を焼くだろうなあ!」


 目の前打って変わって10数人。

 放たれ迫りくる幾数の攻撃の嵐。

 仇うちついでの証明だったが、見せつけよう。

 嵐はこの碗力で晴らしてみせる————












 



 『外は随分派手にやっているようだ』

 「そうですね。特にフォードさんは……」

 『ああ、能力と神力がグチャグチャに混ざって、一種の暴走だぞこれ?』

 「……きっとなんとかなります」


 スサノオが危惧するのも分かる。

 なにせ私は巫女、エレネーガ様程ではないけれど、一通りの察知は可能。

 だからこそ、先ほどから頭の中で非常音が鳴り響いている。


 (フォードさんが放つ力の大きさ、もはや並みの魔王では相手になりはしないでしょう)


 だがその量、バーサークに相応しい暴君ぶり。

 遠くに居ても身の毛がよだってしまう。

 

 (自分の意識だけは、手放さないでください————)


 これより上はおそらく人類未到達地、フォードさんについてはあの英雄を越したと思ってしまう。

 そこから行きつく先は、いや、そんなことを考えている場合では無い。

 まずは自分に課せられた役目を果たさなくては。


 『姫、もう少し先に洞窟がある』

 「洞窟ですか……」

 

 意外にも巨大なサイズの大地、木々も生い茂っている、これを誰かが創り出したのだから恐ろしい。

 そして戦闘開始からそこそこ、力の衝突により島は着々と面積を減らしているわけだが。


 (それでも広すぎる、一体誰が、なんの目的で————)


 疑問は解決されず、辺りを彷徨う。

 エレネーガ様に言われて調査、しかし一向に不自然なところを見つからない。

 強いて言えば、先ほどスサノオが見つけた洞窟ぐらい。

 ここがハズレだとしたら、本当に魔王たちに隠し玉は無いのかもしれない。


 『こいつは……!』

 「スサノオ?」

 『姫、今なら引き返せる』

 「一体どうしたのです……?」

 『別にどうしたもこうしたも無い、ただ予感がする、ここから先は絶対領域だ』

 

 絶対領域、それは数十年前の解釈とは少し異なる。

 曰く神、もしくは神に等しい存在が住まう場所のこと。

 その領域は絶対不可侵、侵入に待つのは審判。

 そもそも領域が現世にあること自体が稀だ。

 稀と言うか見つけられないのが正確。

 それがこの生み出されたばかりの島にポツンと存在するなんて。

 

 『ナニガいるのかはわからん。神力もするし魔力の反応もある、ただこいつは普通・・じゃない』

 「……それでも、私は進みたいです」

 『死ぬかもしれんぞ?』

 「確かに。ですがこれは私の使命、それにここから逃げたところで周りは魔王と脳筋だらけの戦場ですから」

 

 皆さんは今も血を流し戦っている。

 そんな彼らが私を仲間とし、送り出してくれた。

 それを無下にするのは友として、最強の脳筋アルティメット・パワーズとしてあり得ないことです。

 

 『……頑固なこって、だがこの素戔嗚尊スサノオノミコト、姫に付き合うぜ」

 「ありがとうございます!」


 洞窟前までたどり着く。

 それは隠れているようで堂々と、しかし隠蔽、防衛のために魔力でエフェクトが掛かっている。

 その魔法はまさに完成品、凄まじい技量によって生み出された結界だと、人間たる私が見てもわかる。

 普通は絶対に破れない、それが人間や魔物であったとするなら。


 『蛇を滅ぼす覇者の剣、魔に連なる法を切り裂け』


 スサノオの神剣を顕現。

 これを創ったのがどんな優れた魔法使いであったとしても、流石に本気の神剣は防げまい。

 しかし意外と拮抗。

 だがそれもつかの間で入口の門を開ける。


 『さて行こうか姫』

 「はい……!」


 向かう先は真っ暗な先見えぬ道のり。

 その先、いやその奥底に住まうのは果たして何者か————

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