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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 5 -New Legend 《最強の脳筋》-
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55

 とあるホテルの一室。

 もう少し具体的に説明するなら、東京某所の有名ホテル、そこのVIP仕様の会議室といったところか。

 用意されるは10の席。

 そしてそこに座すは国柄様々、しかして全員が天才、もしくは天災と称される強者つわものども。

 修羅の世代が一堂に会していた。


 「今日は口うるさいドリル頭がいなくて気が楽だ」

 「お嬢様の髪はドリルではない! 貴様調子に乗るのも大概にしろ」

 「僕は誇るべきドイツ国民、僕は誇るべきドイツ国民————」

 「ロシアって広い国土以外になにかあったかなー?」

 「……眼球抉ろうか?」

 「そういえばアメリカも近頃はドタバタしてたねえ」

 「ああ。つい先日には大企業のご息女が狙われてな、本当に物騒になった」


 十人十色という言葉がある。

 曰く人によって考え、性格、趣向が違うというもの。

 だがこの状況はちょっとヒドイ、皆クセがありすぎる。

 慣れた関係同士の罵詈雑言、なんかドイツの人は目が虚ろだし、普通に世間話をしているところも。

 かくいう俺はというと————


 「ユウ! このな、ナマヤツハシ? なるものメチャ美味だ! ほれソーダ味!」

 「八つ橋とかど定番すぎんだろ。しかもソーダ味かい」

 「やっぱり日本はいいなあ。この菓子も黒い服の奴に頼めばすぐ持ってきてくれるし」

 「まあお偉いさん扱いなのは間違いないな、こんないい部屋まで用意して貰えるし」

 

 エイラとなんかいろいろ食べている。

 どうやら昔懐かし黒服さんのお仲間に色々頼んだようでそれをつまんでるわけだ。

 座り心地最高のこの椅子に身を委ねる幸せ。

 当たり前、ここは東京にある、一度は名前を聞いたことあるくらい有名なところ、サービスは最高峰だ。

 はたして使用料が幾らかかることやら。

 そんな負担背負ってまで俺たちに貸すのは先日起きた、いや出現した魔王島のせいである。

 

 (他国のS級以上の殆どは自国防衛で動けない、それで唯一まともにやり合えるのがここに居る連中だけだって話だもんなあ……)


 海路や空路、場合によっては陸路も魔王や魔族によって邪魔されている。

 言うならば、日本は孤立してしまったのだ。

 そりゃ政府としては、この国で魔王と真向からやり合えるのは俺たちくらいなもんだし。

 例外として雷槍や僅かに他S級もいるが、その中で圧倒的割合を占めるは今いる面子だ。

 そんな訳で全員集合、はたやどうやって今後対応していくのか、そういう話し合いの場だったわけだが。

  

 「ユウ! 貴方からも言ってください、イギリスは飯マズ国だと!」

 「おい変幻に助けを求めるなよ。このダメイドが」

 「だ、ダメイド……!?」

 「フォードよ、それはなんだ?」

 「これはだな、ニャマ、エマ、いやえっと……ユウ!」

 「なま八つ橋だ」

 

 地獄絵図というかはこのグダグダ空間。

 部屋に言語翻訳結界という高価なものを使ってなお、ご覧のあり様。

 まあでもこの結界が無ければ対話は不可能、代わりに拳で語る肉体言語が登場するところだ。

 やる気ないわけじゃないが、この空気に馴染んでいるわけで、俺も目の前の9人の仲間。

 いや、9人じゃない、正確には8人、この場で真面目にやろうとしている者がただ1人————


 「いい加減にしてください!」


 そう一喝入れる人が円卓囲む席、俺の丁度真反対から。

 美しく伸びる黒髪、着物というある意味正服といえる格好をしている女性。

 巫女姫、星之宮 伊吹その人の憤慨が露わに。


 「人類の存亡がかかっているかもしれないですよ! ふざけている場合ではありません!」

 

 彼女を真面目ちゃんなどと言う気はない。

 俺たちだって本気だ、この手で魔王たちを殺すつもりでいる。

 それは周りの同胞(S級)たちからも感じ取れている。

 ただ皆連携をするつもりはない、好き勝手やったろうって気概なんだ。


 「フォードさんも、隊長なのだからしっかり仕切ってください」

 「私か?」

 「あなたです!」

 「そう言われてもなあ————」


 『脳筋』『変幻』『冥土送り』『穢祓者』『歩く核弾頭』『鎖』『無敵艦隊』『赤眼の殺し屋』『死皇帝』『巫女姫』

 これらS級9人、SS級1人から構成される十人部隊。

 ちなみにアメリカ他S級2人はいない、隊長たるクラークが代表での参加だ。

 そして隊名をエイラ命名『最強の脳筋アルティメット・パワーズ』という。

 どうだ、なんとも恥ずかしい名前だろう。

 これは初め俺たちフォード小隊に名づけるはずだったが俺が断固拒否、流れに流れ今ここに落ち着いてしまった。

 

 (まあこの面子を考えれば、なんだか妥当な気がしてくる。不思議なもんだ)


 「私はリーダーじゃなくてもいいんだが……」

 「しかし私たちの上はフォード卿しかいませんし」

 「自分と同じランクの奴が隊長だなんて御免だねえ」


 シルヴィと死皇帝の言う通り、客観的に見ればエイラがSS級と飛びぬけている。

 個々で戦えば勝てないことを理解している。

 実力的にはトップ、大会優勝も相成ってこれは自然と決まった。

 強き者に一応ながら従う、そうでもなければ、そもそもこんなフザケタ隊名になどなっていない。


 (反対意見言えたの俺くらいだもんな……)


 無言は肯定、多数決の原理で悔しくも決定。

 開会式の雷槍の時みたいに、みんなもっと反論していいんだぞ。


 「それに巫女姫よ、フォードに作戦を立てさせることなど最初から不可能だぞ」


 (クラークさん、仰る通りでございます)


 エイラの考えることは作戦とは言わず、気合でゴリ押し?

 後先考えずの脳筋プレイがうりと言える。

 今までそのスタンスで来たわけだし、こういう展開にになったのは致し方ないし、もはや必然だったとさえ言える。


 「星之宮さんも一回落ち着いた方がいい」

 「四道 夕……」

 「こういうのは、案外いい加減にやった方が上手くいくもんだ」

 「そうだ! ユウの言う通り!」

 「し、しかし……」


 姫巫女さんも固くなり過ぎず無難にやった方がいい。

 見よ他の連中のくだけよう。

 服装からして皆そもそも私服、緊張感は皆無だ。

 タンクトップ、メイド服、ジャージ、アロハシャツ、俺なんかも半袖とジーパンで赴いた次第。

 

 (逆に良くこんなクソ暑い中で星之宮さんは着物着てきたよなあ)


 もしかして夏専用の着物があるのかもしれない。

 そうでもなければ、いや神力で何とかしている可能性があるくらいか。


 「せめてマルティネス様がいれば……」

 

 姫巫女は吐露する。

 この話を持ち掛けた張本人、国連代理人と言ってもいい、雷槍は今回の件で東京中を奔走しているそう。

 忙しくてこの場にはいない、ホントご苦労様です。


 「しかしエイラ、流石にザックリとは何か考えておくか?」

 「ザックリ、か……」

 「敵はいまだ島にいるのだろう?」

 「ああ。本命の魔王たちはそこで居座っているらしい」

 「そうか。まあ私も長を任されたし、少しは真面目に話すとしよう————」


 敵地を再確認する、東京をずっと東に、太平洋上、時と時の狭間はざまに奴らはいる。

 エイラが手を止め、気迫を変える。

 戦いを目の前にした戦士の闘気へと。

 周りは即座に察知、罵倒に自答、それぞれの会話を止めエイラへと視線を向ける。

 

 「そもそも私は、難しく考える必要は無いと思う」

 「難しくない?」

 「そうだ巫女の姫、これは非常に簡単で、ある1つの方法で解決できるのだ」

 「か、簡単に解決ができる……」

 

 固唾を飲むように、なかなかのリアクションをする星之宮さん。

 俺はもう分かっている。

 それに彼女以外は大体察しているだろう。

 クラークはうんうんと頷いているし、他の連中もそれぞれ反応を示している。


 「奴等を倒してしまえばいいのだ」

 「へ?」

 「此方こちらから仕掛ける。そうすれば防衛だのという後手を考える必要はなかろう」

 「……本気で言っているのですか?」


 この会議のコンセプトは、魔王が日本を襲撃してきた時にどう対処、どう動くかということだった。

 だが良く考えれば、そんなことはそもそも不可能。

 魔王たちが何処を攻めるなど分からないからだ。

 もしかしたら北海道から、もしかした沖縄から、もしくは全国一斉か、人数少ないS級を防衛のため全国に分散させては、戦力低下どころの話ではない。

 それこそ負け試合確定だ。


 「しかし万が一入れ違いにでもなれば、誰が国民を守るのですか……?」

 「その辺はユウの索敵もある。それにこの国にも軍がいるだろう」

 「それでは絶対とは————」

 「俺は賛成だ!」


 ここでクラークが賛成の意を唱える。

 エイラに続く、漢の一声だ。


 「防衛に回るだけではいつか必ず潰される、そもそも攻めてこないというのも可笑しな話だ」

 「……めちゃ不自然」

 「なにか大きな仕掛けをしているかもねえ」

 「さっさと叩いた方が賢明だ」

 「私も迅速に動いた方がいいかと」


 皆の意見がほとんど一致する。

 こんな緩い空気でいるが、日本以外は現在進行形で魔族との戦争中だ。

 だというのに、ここにだけはてんで来ない、そこが一番引っかかる。

 べリンダ・ドレイクが言うように、何かを創る、蓄えている可能性は十二分にある。

 星之宮の国民を守りたいという心持もわからないでもないが————


 「巫女の姫、これは戦争だ」

 

 そして俺たちは戦う生物である。

 理性という仮面を被っちゃいるが、尽きない欲望を内包した自分勝手な種なんだ。

 生きるために沢山の生命を奪っていく。

 

 『そんなに姫をイジメんでくれよお』

 

 無言の空気に26点打ち。

 内内が広がる、神がその御代を現世へと顕す。


 「スサノオ……」

 『姫は意外と常識的でな、ちと頭が固いんだ』

 

 薄白黒の衣をまとう。

 長く伸びた白い髭、ただよう偉大性。

 

 (これが日本の大神の姿か、やっぱ神力の量がすげえな)


 『こいつらに付いていってみな。これは俺のありがたーいお告げだぜ』

 「未来は視えません……」

 『なに聖剣使いが言うようになんとかなる』

 「なんとか、なる……」

 『そうだ、お節介な神様の助言だぜ』

 

 重い一言残していく。

 パッと顕れたと思ったらパッと消える。

 感慨に浸る。

 俺たちは既にそこに至っている。

 星之宮さんも流石にスサノオからの言葉、少し間を置き、渋々かもしれないがここの空気を飲み込む。

 

 「では、決まりだな」

 

 今度こそ全員で円卓を囲む。

 大雑把おおざっぱでありながらも、大本命の決定だ。

 設定される1つの方針。

 最強の脳筋アルティメット・パワーズの理念は最も強くあること。

 力ですべてを勝ち取ること。


 「やはり力で語るのみだな」

 「……然り」

 「ドイツも僕に戦えと言っているよ」

 「最善でしょう」

 「これで女王にも働いたって言えるな」

 「いやあ僕の兵士たちがようやく本気で使える」

 「歴史が呼んでるねえ」

 「俺はエイラについて行くさ」


 ほぼすべてが肯定を上げる。

 残る者に集中。

 言葉を待つ、口を開くは美しき巫女から。


 「私は神のお告げに、いえ、私も戦います」

 「良し! これで揃ったな!」


 エイラが満面の笑みを浮かべている。

 それに感化される俺たち、自然と笑みを浮かべてしまう。

 苦笑であったり、大笑いだったり、これまた十人十色に。

 ただこの場にいる誰もがこの輪に意味を見出した。

 

 「さあ! 戦いを始めよう————!」

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