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西暦2117年8月6日。
日本時間にして16時ちょうど。
北太平洋、経度180度、つまりは日付変更線上に『島』が出現した。
世界地図には記載されず、歴史も語らない謎の島だ。
これには非常に大きな地震を伴い、建造物の崩壊、それに巻き込まれ死者も多数発生した。
国際連盟緊急会議、早急に調査した結果、その島には住まう者がいると確認。
しかし衛星とらえるそれら住民は『人間』ではなかった。
角を生やす者、翼を靡かせる者、獣の皮を持つ者、中には魔女のトンガリ帽子、そして先月イタリアにて錬金術師を殺害した邪神までも。
さらに詳しく言うならばあの魔王の王の影をも僅かに捉えた。
この簡易調査結果を端的に表すならば。
それは『魔王連合の復活』である。
集結せしは魔王の中でもトップクラス、また封印されたはずの王でさえいる始末。
すぐにでも戦争が始まっておかしくない状況。
もっともその島に近い国、それは日本である。
国連は日本に、各国が誇るS級、SS級、およびSSS級の戦力を集めようとした。
しかし現実はそう甘くはなかった。
案の定魔王たち、そしてそれに率いられた魔族の襲撃が始まってしまったのだ。
しかも世界規模で、欧米アジア、各国能力者は釘づけとなり日本まで手が回らない。
海路も空路も落とされる。
いかせん魔族が多すぎるのだ、まるでこの時を待って力を溜めに溜めていたかのような爆発的スピードと質量。
頼るべきSSS級も動けない、すでに自国にて彼らは多対一の不利状況で魔王と戦っているのだ。
つまりは今この状況、まともに『島』と戦えるのは日本にいる能力者たちだけとなる。
そして世界中を包囲しているせいか、本拠地にもっとも近いここは襲撃手薄、自信の表れか、はたまた侮られているのか、それとも手数が足りないのか。
いずれの理由にしろ今動けるのは日本にいる能力者だけなのである。
ただ、この時の日本では国際選抜戦が行われていた。
そこに集うのは選ばれし若き猛者共、さらには黄金の世代ともまで呼ばれる力量の持ち主たち。
僥倖なことに、後者の彼らは学生ではあるが全員が実践を経ているいわばプロ、戦う力は十分持ち得ている。
迅速通達、魔王の進撃を阻め、そして出来うることなら撃破せよ。
こうしてSSS級『雷槍』のライザー・マルティネス主導のもと、一時的にではあるが魔王襲来に相対するS級筆頭部隊、連合小隊を結成することになる。
魔王連合を倒したあの10人以来となる面子の色濃さ。
黄金象った天災たちのみでの構成。
部隊名は大会優勝者エイラ・X・フォードが命名することに。
余談だが、その名はかつて自分の隊につけようとしたそうだが、相方たる四道 夕が却下したそう。
名づけられるは力の証、縦横無尽に、思考を超えて突っ走る、そのスタイルをそのまま名乗る。
歴史に刻む奇跡の小隊。
新たな伝説が極東にて誕生するのだった。
その部隊の名、人呼んで————
『最強の脳筋』