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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 4 -International Convention 2117《紅白に集いし者》-
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 一線上に炸裂する力の息吹、この場を戦場へと変える。

 更に変わるはこの身体、戦火に飲まれより燃える。

 最終ラウンドと決め込んだ今現在。

 剣戟は熾烈を極め、ここを激戦の死地へと向かわせている。


 「————聖剣カリヴァーン!」

 「————四段起爆!」


 光が襲えば破裂が迎える。

 クラークは空間を爆破、エイラの剣閃を右へ左へ流していく。

 そこで間に合わねば仲間がカバーする。

 まさに小隊制の鏡と言える連携、そしてそれに見合った速度で体現している。


 (十字聖剣はあとどれくらいかかる!?)

 (あと7分、いや5分くれ!)

 (ならそれまでは……)

 (ああ! この距離での殴り合いだ!)


 本能に従いこの体を動かす。

 目を合わせずとも次の行動を伝達する。

 ミクロレベルに最深部へ、連携を超えた神的しんてきなまでの一体化。

 生命の神秘へと近づく、2つを宿す魂の誕生を祝おうか。


 「強化ミラータ!」

 「まったく、変幻君まで強化使えるのは反則だよね!」

 「あんたこそ、そのピカピカかなり目障りだ」

 「キャナリーって呼んでくれていいよ!」


 キャナリー・ホワイトの閃光能力、これは光に関する力は他の群を抜いている。

 目を眩ます方、光を打ち出す方、他を飲み込む方、1人で十色。

 だがその中でも、大本命ともいえる使い方が————


 「黄閃光イエロー!」

 「それも十分反則だっての……!」


 キャナリーの身体は変色する。

 正確に言うならば光と成っていくのだ。

 己が体を文字通り『閃光』とし、光の速度を体現、そして一時的な不死身を得るのである。


 「形作れ閃光! 剣をこの手に!」

 「魔槍テンペスト! 嵐を起こせ!」


 不死身は当然。

 光に攻撃することは不可能、剣も銃弾も通り抜ける。

 閃光になるということはそういうこと。

 

 (ただ部分的縛り、時間の縛り、弱点は多い————)


 全てを全て、永久に不死にはもちろん出来ない。

 どうしたって斑模様、成りきれない、制約が発生する。

 そこを一点に狙う。


 「無弾バレッド……!」

 「あ! ローちゃん!」

 「ローちゃんは辞めろ」

 「……っ、俺大人気かよ」

 

 尽きることのない薬莢、撃鉄落としその砲身から放つ。

 拳銃スタイルでありながら連射速度はMGマシンガンに匹敵するだろうか。

 弾数は尽きず、空間を縫っての射撃可能、不可能な連射速度、常識の範疇をとうに超えた原理不明の拳銃。

 そんな現代兵器の見た目をした謎兵器、俺に向けて放つ万単位の赤い弾道、この身を削る。


 「大気同調アトモス・シンクロ!」

 「速度強化ミラータ!」

 「サンキュー、エイラ!」


 少しでも隙があれば俺の大気はエイラと相対するクラークへ。

 そしてまるでお返しの如くエイラからの強化のまじない。

 無限弾数と閃光の化身に対応するための速度をくれる。

 

 『鉄砲は頭上からじゃ! 閃光の方は左上腕を狙えい!』


 ただ俺とエイラの関係性には、もう1人、いやもう1柱頼れるやつがいる。

 レネだ。不可視の弾道を察知、閃光化出来ていない部分を即座判別、やることなすこと神がかり的に。


 「右はキツイ、なら左に回りこ……」

 『ユウ! 足元爆弾じゃ!』

 「っしま! まじで————」


 音ならない地雷がここに、踏んでカチリと言わず無言の爆発起こる。

 その仕掛け人はクラーク・カヴィルしかいない。

 完全に虚を突かれた、いつ仕掛けられたのかもわからない。

 いくら皮膚硬度、速度を強化していても、この四肢は耐えきれない程の熱量を発生させている。

 腕は伸ばせない、手は届かない、この両脚は宙を舞う、リタイヤまでの一方通行ルール。

 

 「————銀世界シルバー・レイ!」


 限定解除、爆発地点Xを銀世界へと革命変化。

 決められたルールを粉砕する。

 不発で終了、足本半径数メートル円であらゆる外的能力を封じ込める。


 「ったく、普通はあれを回避できるはずはねーんだが」

 「脳筋エイラさんの相棒なんだし、普通なんて言葉は存在しないでしょ」

 「お前らのチートぶりも大概だぞ」


 (銀世界を使っちまった、小規模範囲であと使えて……)

 『あと2回じゃ』

 (少ないなあ……)

 『まあ神力を回復にも回しておるからのう、仕方あるまいよ』


 多勢に無勢とまでは言わないが、相手が人数で有利なことは間違いない。

 向かってくるすべてを捌き切れるわけではないのだ。

 首を下せば無数の傷と流れ出る赤いもの。

 強化を使ってなおこのダメージ、逆にエイラは俺のシンクロで調子良さそうだし、むしろ傷を負ってもそのまま突き進んでるかんじ。


 「爆ぜろ! 連鎖起爆!」

 「ユウ!」

 「わかってる! 能力同調アビリティ・シンクロ!」


 更なる大規模テロリズム、繋がった炎が辺りを飲み込む。

 クラークの仲間たちは発動前に即座理解、死角へと回避している。


 (お、重すぎんだろこの能力……!)


 まさにメガトン級、見たまんまの威力を持った能力的な重さ。

 エイラが弾いたらむしろ隙を生むほどに。

 ならばこそ俺が根こそぎ掻っ攫う、同調シンクロはなにもの消滅させるだけではない、同調した能力を操ることも可能なのだ。


 「お返しだ! 連鎖起爆!」

 

 クラークの連鎖、そのまんまにどんでん返し。

 空に翻る真っ赤な印、その旗のように翻るこの大地、アメリカへの逆襲熱風波。


 「五段起爆……! マイク! グレイ!」

 「応よ!」

 「了解っすわ!」


 この猛威の逆襲に向かうは3人の勇者たち。

 爆破漢とその他2人の付添人。

 相殺の爆発、飛び散った火線を後が抑える、その動きのまあ上手いことよ。

 一定を空けさせたこの距離感の丁度よさ。

 俺とエイラ、それに相対する敵のポジション、まさに俺たちにとっての黄金比率だ。

 ここが見せ場であり決め場、滅びの黄金剣を使える絶好にして唯一かもしれないタイミングだ。


 「エイラ!」

 「ああ!」

 「「解放! 十字聖剣クロス・カリヴァーン!!」」


 否応なく空気を変革する超絶なる波動が解放される。

 力、力、力。

 パワー、パワー、パワー。

 純粋までの強さ、イングリッシュでストロング。

 封じられられしエイラの聖剣能力、その力の権化が今解き放たれる。


 「神よ! この声が届くならば、この願いが届くならば! 私たちに力を!」


 エイラの強化は最高潮、その祝詞は天へと昇華していく。

 フルで滑動するはシンクロの真価発揮への回転機関、暴走この手に収めんと奮起する。

 

 「クラーク!」

 「はっはっは! 面白い! なんて高密度のエネルギー! お前たちは人の道をとうに外れたな!」

 「笑ってる場合じゃねえぞ! 今は隙が多い、すぐにでも————」

 「つまらん!」

 「は……?」


 俺たちはパワーを溜めに溜める、起動したものにガソリンを注ぐように。

 1回転、2回転、3回転、グルグルと回る。

 十字聖剣への抑えで僅かな隙は生まれてしまう、しかしそこを突かれようものなら————


 「突っ込んだところで、どうせ銀の世界で封じられるだろうさ」

 「そ、それでもよ……」

 「それにだ! もし仮に隙を突き勝ったとしても、それは俺たちが臨む完全勝利ではないだろう————?」


 俺は攻めて来ない理由が分かるきがする。

 これに正解もなにもないけれど、思うのだ、小賢しい手ではない、見栄えある最高の力で完封しなければ真の最強は名乗れないと。


 「また、俺は我儘わがままを言っているか?」

 「はあ隊長クラークが言うんじゃが仕方ねえな……」

 「うんうん。私もクー君の意見に賛成」

 「俺もっすわ! やるんならとことんバカみたいにやりましょう!」

 「こりゃ思った以上の大仕事だなあ」


 相手に異変あり。

 既に固まっていた絆と連携、さらに凝固する。

 力の奔流、アメリカから吹くは一撃の新風。

 

 『どうやら、あやつらも一発で決めるそうじゃな』

 「ありがたいことだよ。ホントにクラークは漢らしいわ」

 「ならば全力でぶつかるのが私たちの使命というものだな!」


 合成能力ってのは非常に難易度が高い。

 そもそも個性あるオンリーワンを合わせるなんてのが無茶な話なんだ。

 水と油、そういう関係性を理解したうえで、人は切磋琢磨、汗水流してようやく完成するかというもの。

 個々の能力が強ければ強いほど、その合体は不可能の事象を多く含むのだ。


 (S級が3人もいる中、それで5人で能力を合わせるなんてこと、不可能に近い、でももし可能にしたとしたら————)


 「エイラ」

 「感じているとも、ただそれすら超えればいいだけの話だ」

 「ごもっともで……!」

 『強い収束反応、死ぬでないぞ! 打ち勝ってみせい!』

 

 アメリカ勢はクラークを中心に、並び立った5人の姿で反り立つ。

 思い返せば刻まれた無数の傷痕のぶり返し、今更気付くは荒れ狂った会場と観客たち。

 そんなものは捨てる、再び奈落の底、思考の外に弾き飛ばす。

 熱狂乱舞、俺たち踊らされはしない、ひたすらに勝利を求めた過程とその先へ進む。

 

 「————俺は別に神様に運命どうこう願うわけじゃない。むしろ願望は自分で叶えるつもりだ」

 

 エイラは神への祈りを捧げるが、俺は心を露わに、不信を聖剣へ、天へ吐露する。

 近頃の神様は実体ある、すごい力を持ってる、だがさっきも言った、踊らされはしないと。

 神様の手の平で幸福へ向かってだけのダンスは御免被る、手の平じゃない、あんたたちの目の前を躍ってやる。

 求めるのは力だ、あくまで手段、あくまで武具、もしくはレネとのような友情の力。

 レネの手の平にはいない、しっかりと隣に立っている、そういうビジョンを目指す。

 

 「————だからさ聖剣の神様、アンタの力俺にもくれよ」


 人が持ち得し尽きることのない無限の欲望を。

 いろいろ持っていながらまだ欲す。

 聖剣とつながった時に感じた、この剣の真価、本気はこんなもんじゃないと。

 もっと、もっと上へ昇れるとわかっている。

 エイラ1人じゃ完全発揮は出来ない、ならばこそ、俺は此処に立ったのだ。


 「ゆ、ユウ……」

 『ほほう! 光神シルバめ認めよったな!』


 俺から迸る新たな光、それはエイラの放つ黄金色と同じだ。

 黄金の煌めきが内底から溢れ出る。

 新たな聖剣の担い手の誕生。

 聖剣は生まれ変わる、俺を含めた更なる高みへと。


 「なんだユウも結局ここに来てしまったな」

 「気持ちは既に来てたさ。それに力が伴っただけのこと」

 「やはりお前はバカだ」

 「バカって言ったやつがバカなんだ、知ってたか?」

 

 無駄口叩く。 

 その無駄1つ1つは此処まで重ねてきた絆の確固たる証。

 形無き証拠に他ならない。

 消滅の聖剣、淀みは無い、一点集中の溜めがついに終わりを迎える。


 「頼むぞ相棒ユウ!」

 「相棒エイラこそ腰浮かせんなよ!」


 2人して担う聖剣の柄、周りからは輝く粒子が嵐のごとく渦巻く。

 溜めに溜めた、ミリ単位のズレも無し、満を持して強く踏み出す。

 天高く光の剣を掲げ、勝利をいま仰ぐ。


 「————真十字聖剣ラ・クロス・カリヴァーン!」


 放つは絶対の一振り。

 これより後は存在しない、触れるものすべてを滅ぼす破滅の導き。

 それに相対する、燃えるが如くの反発数。

 

 「行くぞ!」

 「「「「イエッサー!」」」」

 

 俺たちが敵にして、立ったライバルのような存在。

 その幾つもの手に手を重ねる。

 急上昇する熱量、歩く核弾頭は連鎖する。

 その5人が勇者は決める、その完成ちからで。

 

 「「「「「核爆発エクスプロージョン」」」」」」

 

 真向激突、真向衝突する。

 相反する、まさに龍と虎の如く。

 贈る言葉は必要なし、この剣にすべて乗せた。

 それこそ俺たちが勝つという脳筋たらしい単純な思いのみで。


 「爆ぜろ! 脳筋共!」

 

 クラーク吠えた先、爆破の勢いで押される?

 いやいや盛り返す、それこそ何十倍返しで。

 拮抗に拮抗、一刀を一投、ただ我武者羅に、ただひたすらに。


 「「うおおおおおおおおおおおお」」


 光の剣は真価を見出した。

 青と銀混じった天上座す黄金のともしび

 螺旋描き全てを飲み込み、消滅させる。

 俺たちの一直線は熱を穿ち、この戦いに誇り高き終止符をさした。

 








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