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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 4 -International Convention 2117《紅白に集いし者》-
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 『さあさあ遂に決勝戦! この戦いで今年最強の小隊が決まります!』


 国際選抜戦4日目。

 駿馬の如くあっという間に駆け上った。

 今日の戦いで今年最強、いやそれだけじゃない。

 暫定ながら、この世代の最強が決まるんだ。

 

 『改めてそれぞれの小隊の説明を致します! まずはアメリカ代表のカエサル小隊!』


 もう頭に穴が開くんじゃないかって。

 お馴染みの情報だ。

 曰く隊長はS級の『歩く核弾頭』クラーク・カヴィル。

 それに付き添うは同じくS級2人、『無拳銃ノー・リミット』のロビン・マズレール、そして『閃光フラッシュ』キャナリー・ホワイト。

 残るメンバーもAAA級と、まさにオールスター小隊となっている。


 『彼らに相対するはイタリア代表、フォード小隊!』


 移り変わる。

 これも何度目か、自分のことだ、わかりきっている。

 

 『よもやこの隊に常識の言葉無し! 『脳筋』エイラ・X・フォード! そして『変幻』四道 夕のたった2人のみ! まさに生きる伝説!』


 わかっているがそこまで持ち上げなくてもいい。

 確実に音は存在する。

 実況の甲高い声が、右から左へ吹き抜ける。

 それは心に貫通、俺たちを記憶へを収納する。


 『それでは入場です! 皆さま盛大な拍手をお願いします————!』















 「私たちを呼んでいる」

 「そうだな」

 「負ける気は毛頭ない」

 「当たり前」

 「掴むのは勝利。成るのは最強だ」

 「その通り」


 これは既に分かりきった問いかけである。

 ブルーライト照らせば既に回答欄に記入済み。

 それと同じで周知、もう脳裏には焼き付いている。

 

 「やっと、やっと『全力』を出せるな」 

 「本当はレネの力も使いまくりたかったんだが……」

 「なに大した問題ではない」

 「まあ無いもん気にしてもしょうがないか」


 身体は快調に。

 むしろいつもより調子がいいくらい。

 神刀レネは頼れないが、いよいよ強化同調、そして明日を考えなくていい解放感。

 もはやネタバレも消耗も恐れるに足らず。

 全力全開、全速力のパワーファイトが臨める。


 「にしても生きる伝説とは、随分カッコよく言ってくれるな」

 「うむ! 伝説として恥じぬ戦いをしないとな!」

 

 ハードル上げるなら飛び越える。

 下を潜るなんてトンチはしない。

 あくまで正攻法、あくまでこのスタンスで。

 この身をもって証明するのだ。


 「さあ行くぞ相棒ユウ!」

 

 輝きの入り口、その先に待つはアメリカ産の戦士たち。

 それをたいらげる。

 相棒エイラが手を差し伸べる。

 その手を取る。

 ほどけないよう、強く結ぶ————


 



 











 「————宜しく頼むぞ!」

 「————こちらこそ、いい試合をしよう!」


 隊長同士が手を交わす。

 そこに狂気的感情は一切なく、まさに純粋純白なトレード。

 

 「そして変幻ユウよ」

 「ん?」

 「昨日使った、いや神降ろしだが……」

 「それについてはノーコメントで」

 「はっはっは。それもそうだな。試合が終わったら聞くとしよう」


 クラークが相変わらず漢気な笑み。

 レネの詮索は止めたよう。


 (あんまり焦ってる様子はない。案外俺が使えないってことがバレてんのかもな)


 そりゃそう。

 神降ろしは、選ばれし者にしか出来ぬ大儀の法。 

 一回一回が重いのだ。

 更にはリスクも伴う。

 普通に考えれば昨日今日と連発できるとは到底考えられない。


 (まあ俺たちも初手で銀世界を使おうなんて思ってないけど————)


 「お喋りはここまでだな」

 「ああ! 本気で行くぞ爆弾男!」

 「こちらもそのつもりだ」


 背を翻す。

 相手に反発、己が足を決まりの場へと運ぶ。

 離れていく距離と距離、真ん中空白に、しかして流れるのは闘気が生み出す見えない電撃。

 高ぶる感情が生み出した無機質エネルギー。

 仮にいま試合開始してもすぐ動ける、そんな臨戦態勢な気の持ちよう。


 『それではこのカウントも最後の最後! 10カウントのスタートです!』


 10、9、8、7、6、観客の声も合わさった大音量ノック。

 乱れることない、心地よく刻まれる心拍数。

 血流は正常、相手を見据える。

 頭、腕、足、腹部、装備、その気概に至るまで、全てを睨むように。

 

 「ユウ」

 「わかってる。全力・・で飛ばす」

 「ふっふっふ。まさに原点回帰だな」

 

 カウントに挟み入るこれらの言葉たち。

 再確認する。

 俺たちは上へと登る、そして更に上へとも登る。

 

 「————ようやく暴れられる!」

 「————やり過ぎは、いや今回はやり過ぎるくらいが丁度いいか」


 3つ、2つ、1つ、嬉々として。

 観客が買い手なら俺たちは豪華な食事か食材か。

 立場は逆転だ。

 俺たちは見世物でもなんでもない。 

 むしろ人の性を飲み込むビッグ・イーター。

 最後の宴、開幕である。


 『怒涛の決勝戦! いざ開始です!!』


 ゼロカウントで流れ出す戦いの音楽。

 音程を無視した独奏曲、いやいやチーム戦だ。

 アメリカ漢たち、すぐさま動き出す。

 5人が5人全員特攻、俺たちが動く間も無く、しかして隙は一切ない。


 (やっぱ初接触での全力フルカウンター狙ってんな)

 

 乱れないその連鎖、天才集まったこの世代最強の小隊連中だ。

 迷うことない一直線上、当たれば爆破喰らうは免れない。

 それを例え避けられたところで他4人の追撃が来る。

 まさに袋のネズミ。

 俺たちは2人、これを打開するには強化同調ミラータ・シンクロしかない。

 そこに至るまの時間は、『空』で稼ぐ。


 「ユウ! もう爆弾が来るぞ!」

 「わかってる————」

 

 目前に勝つには個ではなく2つで、編み出した究極体、強化同調へとなるのみ。

 その時間が地上で稼げぬというのなら、遥か空、その向こうで。


 「大気同調アトモス・シンクロ! 最高の嵐を呼び起こせ!」


 風は世界を周る。

 周るべきその全体性がここに集約していく。

 タイフーン、鋼色の切り裂く嵐が俺たちを渦巻く。


 「ロビン!」

 「おう! 無弾バレッド!」


 無拳銃ノー・リミットから放たれる無限弾数。

 ジャムることもなく千火舞う。

 嵐が防ぎきれなかった弾が頬を掠る。


 「魔槍テンペスト! 最凶の嵐を呼び起こせ!」


 それでもこの言葉は止まらない。

 ひたすらに届ける。

 そして嵐は鋼より黒き姿へと進化する。

 足元集中、まさに足元に爆弾、溜めに溜められた風の装置がいまここに。


 「クラーク! 風が強すぎて弾が曲がっちまうぞ!」

 「しかも神性まで混じってるよこれ!」

 「……わかっているとも! しかし例えハリケーンだろうと爆発で————」


 安全装置は無し。

 かつてはこの身一つでやり遂げた。

 そして今回も己が力で解決する。


 「飛ぶぞユウ!」

 「ああ! 今回限り! ぶっ飛び装置発動だ————!」


 轟轟轟。

 ここに人間ロケットが。

 足元、狭い範囲にとてつもない風の爆弾が爆発する。

 強化材質が砕け散る、大気を切り裂く、風が俺たちを天へと押し上げる。


 「おい飛んだぞ!」 

 「く、クラーク」

 「あの2人、一体何をするつもり————」


 途絶え気味に流れてくる言葉の音たち。

 骨身に染みる風の抵抗。

 GGG。


 (シンクロしててもかなりキツイぞ……)


 俺たちは空を飛ぶ、正確には一直線に上昇している。

 雲上へ、空へと到達する。

 見下ろす先には人は米つぶ、照り輝く小さな会場の姿。

 

 「これぞ妙案! 第2回バンジーで特攻大作戦!」

 「前は逃亡だったけどな! もう落下が始まるぞ!」

 「やっぱり空は気持ちいいなあ」

 「俺は最悪だ! ていうかほら身体が落ち始め————」


 シンクロで繋ぐはエイラとの会話だ。

 相変わらず呑気なことで。

 ここ高度は数千、天高くに飛翔した。

 そして待ち受けるのは落下、重力の概念が存在を現す。


 「————私の能力はあらゆるモノを強くする!」


 別にただバンジーをしに来たわけではない。

 そもそも俺たちが完成された5人に挑むにはそれを超える力が必要だ。

 ならばこそ、この力で。

 エイラは堂々と、風にその叫びを散らす。

 狼煙が弾ける。

 

 「————俺の能力は万物の真価を発揮させる!」


 それに続く俺の人生観、魂の声を。

 落ちゆくは流星の輝きの如く。

 俺たちを包む黄金と青き粒子たち。

 それらは互いに干渉、そして混じっていく。

 新たな色彩を放ち始める。

 

 「————決めるのは力だ! 私は物理攻撃が大好きだ!」

 「————俺はそんなエイラを肯定する! 信じた新たな道を征く!」


 ここに実証する。

 相棒と生み出した。

 俺たち2人の王道にして奥義、その名も————


 「「強化同調ミラータ・シンクロ!!」」


 稲妻走る。

 嵐の雷の如きスピード降下、すぐに迫ってくる。

 鮮明に、段々と拡大化していく、下界のものたちが。

 弾けるマッハの衝撃波。

 落下にかかる衝撃の重さ、しかしこの足は耐えきる、着地点は月面クレーター状に。

 偉い物理学者が考えただろう法則を完全淘汰。

 異常にして異形、異端極めし究極体なのだ。

 その完成した、その真価をいま世界に顕現す。


 「————ほら成功しただろう?」

 「————でもミスったらミンチだからな。俺はやりたくなかった」

 「————もしの話は無しだ! それに」

 「————カッコよく再登場できたからオッケーてか?」

 「————その通り!」


 アイコンタクトはどこかに去った。

 脳と脳の接続、エイラの感情、そして力が俺の全身を駆け巡る。

 衝撃生み出した砂塵が散り終わる。

 生み出したデカい穴から原線へと立つ。


 「俺の隊はどこよりも強い自信があったんだがな————」


 クラークの嘆きめいた声明がどこかへ消える。

 彼らは数秒上を見上げているだけだったのだ。

 太陽でよく見えやしないだろうに。

 安心してくれ、この姿隠すことなし。

 嫌というほどその身に刻んでやろう。


 「ロビン、キャナリー、グレイ、マイク」

 「わかってるつーの」

 「うんうんうん」

 「こりゃ試合ってか怪物退治ですね」

 「笑えないジョークだぜグレイ」

 

 クラークは伝達、注意せよ災害の接近である。

 クサいアメリカンジョーク、あながち間違いでもない。

 

 「————これが私たちの全力! さあ戦いを始めよう!」


 はたから見れば俺たちは災いか。

 それでも結構。

 俺たちは突然降って来た強い奴、それで十分だ。

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