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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 4 -International Convention 2117《紅白に集いし者》-
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49.5 with God Power

 私は私を疑う。

 この身を神に捧げて十数年。

 ようやく掴むは素戔嗚スサノオとの絆。

 曇ることなかった眼差しに現れるのは嵐の予兆。

 いや、銀を纏った暴風の片鱗である。


 「彼は、四道 夕は何をしているのですか……!」


 イタリア対フランス。

 突如会場に、四道 夕を中心として銀の旋風巻き起こる。

 感じ取る、彼は『神降ろし』を行おうとしているのだ。

 その名の通り、神をこの現実に顕現させる技。

 荒れ狂うは莫大な神力、津波のように押しかかる。

 そして降臨する。

 銀と戦を体現する、美しき神が————

 

 『おいおいおい! 小僧待てや! そいつはマズい————』

 

 スサノオは焦り、驚異な言霊放つ。

 しかして私の感情は反響せず。

 喉を通ることなく頭のみにインプットされる。

 外に出るのは焦りの汗と、音無き驚愕の表情。

 そんなこと知るわけもなく、その美しき神は宣言する。

 己が真名とその心意気を。


 『————我が名はエレネーガ! 戦の大神! いざ降臨じゃ!』


 特別に設けられた観客席、少し強めの冷房。

 さっきまで肌寒いと感じていた体感温度が急上昇する。

 それこそ季節が、世界がひっくり返ったかのように。


 「スサノオ!」

 『……ありゃホンモンだ! 本当に銀神エレネーガが再臨しやがった!』

 

 ハイテンションで回転するスサノオの口と感情。

 気付く、悟る。

 彼に憑いていたのは純粋すぎる狂気だった。

 力の体現、輪廻りんね回転かいてん、死して去った者の再誕。

 そしてどうだ。

 神は変幻する。

 バッチリな日本刀、斬れぬものなどないと感じさせる出立へ。

 

 『っげ!』

 「スサノオ?」

 『エレネーガの奴、随分と小僧を気に入ってやがるな! 神刀まで渡すとは、相当だぞ!』

 「神刀……」

 『姫! 絶対に目を離すんじゃねえぞ! あれが『本物』の神降ろしだ!』


 刀握られるのも束の間、瞬く間に、あっという間に、世界を銀で染め上げる。

 季節は反転どころではない、頭から飲み込まれる。

 飲み込まれ改変する、世界の再構築、塗り替え。

 新たな世界が、日の出を浴びる。


 「世界浸食……!」

 『しかもただの浸食じゃねえ。神刀を用いた高純度で大規模な、更に上の絶対領域だ』

 「これが、これが神降ろしだと言うのですか……」


 私が行う神降ろしとはモノが違う。

 それは神に一部に力を借りるという概念だった。

 しかし目の前の男はなんだ、一部どころか全てを。

 信仰心、恐怖心、好奇心、崇拝に関することなどお構いなし。

 神へ繋がる条件と前提、常識を無視した、貪欲なまでの行い。

 彼の神降ろし、それは同化の新概念を形成する。


 (もはや神との一体化、そもそも神力量が人の領域を軽く超えています……!)


 『……そもそもありゃ覚悟が違う』

 「覚悟、ですか」

 『崇拝を越えた信頼と言ってもいい。神力の質も量も超一級品の輝きだ』


 目下で始まる次章の戦い。

 銀色を舞台とし、両国の選手がぶつかり合う。

 ここまではフランスの善戦だった、しかしこの世界革命がもたらすは————


 『こりゃ酷いなあ』

 「ええ……」

 

 繰り広げられるのは雪崩の如き力の応酬である。

 エイラ・X・フォードが強化し生み出す神速、戦場を駆け巡る、まるで流星のように。

 対照、四道 夕もまたその銀刀を振りかざす。

 地は銀の波となり人を襲う、巻き戻しの効かぬ一方通行。


 (フランスは大体の能力を封じられてしまった。この勝負、もう結果は見えましたね————)


 『だが妙でもある』

 「妙?」


 浮かぶはスサノオの疑問だ。

 

 『エレネーガからあの頃の圧倒的な神力を感じない』

 「……つまり、なにか深手を負っていると?」

 『そこまではわからん。ただ弱体化しているのは確かだ』


 (あれで弱体化しているなんて、全盛期ならとっくにここは吹き飛んでいましたね……)


 ならばこそ四道 夕は凄まじい。

 神降ろしは神のランク、強さによって難易度が大きく異なってくる。

 闘神エレネーガなど、そもそも神降ろしの対象にすら含まれないはず。


 (スサノオもかなり苦労しましたが、の神は別格も別格……)


 意識戻せば嫌というほど理解する。

 押して押して押しまくる。

 もはや聖剣使いは相手の武器ごと粉砕する。

 それに一歩下がりながらも合わさる匠の如き刀捌き。

 ここで垣間見える二者積み重ねた経験、叩き出される高めすぎた連携練度。

 よもやそこに台本は無いよう。

 1つ1つが未完成で、そして恐ろしい程の完成度を持つ。


 (一体どんな作戦を、鍛錬を積んだらあの動きが可能に……)


 『あの動きは考えなしだぞ』

 

 私の問いはパス通じてスサノオへ。

 自己への問いを回答する。


 「考えなしですか?」

 『作戦もへったくれもねえんだ。互いを信用してるだけ、あとは本能任せの動きだ』

 「あれを、なんの打ち合わせもなく生み出していると……」

 『どの時代も怪物ってのはいるもんだが、こいつらは更にける、それこそ歴史を揺るがす大英傑にな————』


 神は予言された。

 彼らは名を刻むと。

 この地球の歴史、あの変換点以上の衝撃を残すと。

 前へ前へ、もっと前へ。

 抵抗するものは、地に沈むだと言わんばかりに。


 『ここでけっちゃくうううううううう! エトワール小隊全滅だあああああああああ!』


 進んだ先には勝利の二文字が。

 展開された銀が華美を増す。

 神の祝福が2人の人間に。


 『凄まじいまでの力のごり押し! まさにパワー・オブ・パワー! しかし一体この銀の能力は————』


 (これは政府も頭を抱えますね。まさかイタリアに送り出したS級が、神の力を持って帰ってくるなど————)


 それも死んだとまで噂されていたの銀神なのだから。

 実況の方も、観客も、この能力をなにかの能力だと探っている。

 しかしそれは間違い。

 これはそもそも我々人類のモノではない。

 天上の存在が持つ『奇跡』の力に他ならない。


 (果たして決勝はどうなることか————)















 「ヤバい。ヤバい。すげーヤバい」

 「ユウ、お前ヤバいしか言ってないぞ」

 「身体が重いんだ。疲労感が凄まじくて……」

 『仕方あるまい、初の神刀じゃ。むしろ生きているだけマシじゃぞ』

 「え!? そんな危ない力だったのか!?」

 『当ったり前じゃ! 我が愛刀、我が銀ぞ! 人間が扱えるものでは無いわ!』


 身体すべてが鉛となったよう。

 水に沈められれば浮き上がることは叶わないほどに。

 しかしレネも恐ろしいことを言う。

 やっと現実へと姿を現し、なにかやるというので乗ってみればこのダメージ。

 

 (シルヴィにやられた傷は神力で軽くは塞がったけど……)


 「むしろこれ、明日の試合出れるか不安なん……」

 「ユウ!」


 足がふらつく。

 体勢バランス崩壊。

 前かがみに倒れそうな身体をエイラが支えてくれる。

 

 (ここがもうゲートで助かったな……)


 既に退場した。

 その帰り、逆戻りするのは入場の道。

 俺を視る者はエイラとレネしかいない。

 この姿はマイナス要素、弱ったところを相手、このあと決勝当たる奴等には見せれまい。


 『まったく情けないのう』

 「か、簡単に言うなよ……」

 『安心せい。神力を一気に使いすぎただけじゃ。明日には十分動けるようになる』

 「そ、そうか……」

 

 レネの話だと寝れば治るそう。

 神がそう言うならそうなのだろう。

 これに関しては信じるしかない。


 『ちなみにじゃが、明日は神刀・銀は使えんぞ』

 「まあこの消耗じゃな、察してはいた……」

 『次に使えるのはいつになるか。これは我もそれなりに消費するからのう、容易には打てぬ』

 「なんだ? どうかしたのか?」

 「いや、当分はこの力は使えないってさ」

 「……そうか。まあ仕方ないな!」


 (明日も初っ端からこの力が使えたら、『あれ』をやらなくて済んだのに————)


 脳裏過るはエイラの閃き、二回目となるある試み。

 レネの力が使えたら、これを回避できたのに。


 『刀はまず使えん。銀世界だけは、そうじゃな、1分持つか持たないかくらいかのう』

 「ギリギリ1分か……」

 『使う場面をよく選ぶんじゃな』


 刀は完全封印。

 レネ顕現無しの銀世界オンリーならわずかに使えると。

 ただ決勝で当たる相手さんは、俺が今日みたいに長い時間使えると思われているはず。

 まさか初っ端に使って、底を見せるわけにもいかない。

 本当は使いこなせないものであると。


 (となればエイラの言う通り、やっぱ最初はアレしかないな————)


 「さて、さっさと帰ってご飯にしよう」

 「お、おいエイラ、もうちょっと丁寧に運んで……」

 「今日は焼肉だとお母様が言っていたぞ!」

 「いや献立よりも、引きずられているん————」


 俺の脚は役目を終了。

 この後の試合はテレビがスマホの中継で観るとしよう。


 (アメリカもロシアも、大体の力量と能力は把握してるし、大きな問題は無いんだけども————)


 そんな思考動かしながらもモップを経験する。

 現在進行形でエイラが運んではくれているんだが、まあ酷い。

 フォームチェンジ。

 肩を貸すなんて生易しいものではなくなった。

 文字通りの引きずりだ。

 エイラの眼には肉しか見えていない。


 「エイラ! ケツが! ケツが擦れて痛い!」

 「牛タン、カルビ、ロース、ホルモン、ハンバーグ……」

 「おいハンバーグは焼肉じゃ————」


 何とか勝った準決勝。

 相手に送ったのはシンプルな腕っぷし。

 そして貰ったのは数多の傷ととてつもない疲労感。

 明日待ち受けるは何者か。

 冥土へと。

 擦れた俺のケツが火花を散らした。 


 

 

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