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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 4 -International Convention 2117《紅白に集いし者》-
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 「しっかしユウっち、決勝まであと1勝っすもんね」

 「今年は参加小隊が少なかったからなあ」

 

 ザックが今更のように。

 俺たちイタリアはフォード隊、そしてバレンデッリ隊の2小隊を選出した。

 だがすべての国が2つ出すというわけではない。

 1つの小隊に最大の戦力をつぎ込む。

 勝つための合理的手段をとるところも。


 (これから戦うフランスも、1チームしか出てきてないし)


 日は明けている。

 つまりはネクスト。

 準決勝当日、今はイタリア代表の専用ルームに。

 始まるまで結構時間がある。

 だからこうしてザックと腑抜けた会話をしている。


 (もう少し経ったらウォーミングアップしないと、なにせ今回の相手フランス、その中心といえば……)


 「————失礼しますわ」


 いくつかノック、応答しなくとも扉開ける。

 2つの訪問者。

 ドリルとまでは言わないが特徴的な髪型が表す。

 漂う気品のオーラ。


 「フランス代表、隊長マリー・エトワール。ご挨拶に伺いましたわ」

 

 (わざわざ対戦相手に挨拶、ずいぶん礼儀正しいというか、スポーツマンシップがあるというか)


 「まずはエイラ・X・フォード様、どうぞお手柔らかに」

 「よくわからんが宜しくだ!」


 軽くそして優雅に一礼を手始エイラに。

 ちなみに今はべリンダとの観光で爆買いしたお菓子を食べてる。

 エイラに対してはそれで終わり。

 俺も無難に返す、そのつもりなんだが。


 「————昨日はよくも騙してくれたな」

 「————オオ、シルヴィサンジャナイデスカー」


 お嬢様、もとい隊長の陰から現れる。

 短めの金白髪、張り付いたメイド服、研ぎ澄まされたその眼光。

 冥土に突き落とすS級能力者。

 そしてなにがどうしてか一緒に寿司を食べた人でもある。

 

 「あの後持って帰ったスシのことだ! いくら待っても一向に回らなかったぞ!」

 「そりゃ回転寿司ってのは、下のレールが運んでいるだけだし……」

 「確かに店ではそうだった! だが持ち帰りのものだけは特別製で具材が勝手に回ると————」


 説明する。

 少し調子に乗りすぎてしまった。

 昨日俺はシルヴィとラッパ寿司に、まあそこでいろいろあったわけだがそこは休題。

 腹は満たした時にはもう結構遅い時間だったんだ。

 これ以上付き合うんのはメンドくさ、いや明日に響きそうだったので————


 (持ち帰りの寿司だけは特別製、不思議な力でシャリも具材も勝手に回る、本当・・に回転する寿司だと伝えた)


 この苦しい言い分をシルヴィはまさかの信じる。

 帰ってから少し罪悪感にさいなまれた。

 ちょっと悪かったなとはホント思ってる。


 「ミスター変幻、随分とシルヴィを楽しませてくれたようね」

 「……いやあ滅相もない」

 「わたくしの従者、決して安くはなくてよ」

 「お嬢様の仰る通り! あの後私がどんな思いをしたか……!」


 どんな思いをしたのかは聞かないでおこう。

 そりゃ自信満々に持って行った寿司がタダの寿司。

 しかもクオリティーがそんなに高いわけでもない。

 きっと冷たいというか白い目で見られたのだろう。


 「この借りは試合で返すぞ!」


 どうやらメイドさんは気合十分のよう。

 だが意外、思っていたよりもお嬢様の方は『おーっほっほ』していない。

 イギリスのアーサーと話しているときの勢いはすごかったから、その印象が勝手な人物像を生み出したのかもしれない。

 まあ国柄以前に、アーサーとは馬が合わないんだろうけど。


 「それとこれは試合とは別ですが、ミスター変幻」

 「ミスター変幻は辞めてくれ。ユウでいい」

 「ユウ貴様! お嬢様にその————」

 「構いませんわ。ではユウ、少し質問よろしくて?」

 「答えられる範囲なら」


 試合とは別で聞きたいことがあるそう。

 悪いことはをしたのは……最近身に覚えはない。

 したと言えば頭が固いメイドさんを騙したくらいだ。


 「此方の調査だと、貴方に特定の契約者や企業はいないとのことでした。間違いないですか?」

 「クライアントってことか? 特にはいないけど」

 「未だにフリーであると……」


 大抵強い能力者にはスポンサーがつく。

 それは宣伝広告のためであったり、また任務を行ってもらいたいがために。

 理由は様々だ。

 例えばエイラも、特定のバックはいないが、政府から結構な金を貰って任務を引き受けている。

 実を言うと俺もいくつか話だけは貰っているんだが————


 (だけど結局めんどくさくて契約してないんだよなあ……)


 「何処かと契約する予定は?」

 「いやそれも特にはない」

 「本当にフリーですわね。むしろバックを付ける気が無いというこかしら」

 「そんなことはないけど、まあ気が向いたらってかんじ」

 「……なるほど、参考になりましたわ」


 そう言って一区切り。

 これで問いかけは終わったよう、どうやら後ろ盾の有無確認をしたかったようだ。

 

 「ではそろそろこの辺で」

 「はいお嬢様」

 「シルヴィも主がいるとしっかりメイドしてるんだなあ……」

 「なんだと!?」

 「やめなさいシルヴィ。この続きは戦にて語るとしましょう————」


 来た道反転す。

 ルール通りの歩き方、模範の映し身。


 「————フォード様、そしてユウ、愉快な試合になりそうですわ」


 颯爽と去っていく。

 言葉もまた風の如し。

 しかして直感する。

 深入り危険信号。

 彼女はただの箱入り娘ではない。

 なぜなら彼女のブルーの瞳、そこには果てなき貪欲さがあったから。















 『さあ国際選抜戦も今日で折り返し! 準決勝1試合目はイタリアのフォード隊、そしてフランスのエトワール隊の対決です!』


 穢祓者アーサー以来の正念場になるだろう。

 決勝までの鬼門。

 おそらくこの後の試合、ロシア対アメリカだが、無難に考えるならアメリカの勝ち。

 十中八九で決勝へと駒を進めるはず。

 ここを過ぎれば次はアメリカが相手となるわけだ。

 

 『さてまずはイタリア代表! ここまで勝ち上がり、まさに歴史に名を刻んだその小隊、いえ2人組————』


 反旗を翻すように。

 異色にして大会考えるならば異端の存在。

 小隊制の根本を崩す。

 伸びをする、グッとスイッチオン。

 身体は血流倍加速、エンジンは快調、その足は自信を物語る。


 『一蓮托生にして唯一無二! フォード小隊の入場だああああ!』


 何度も来たこの広いフィールド。

 やはり観客席は満員御礼、各国のカメラもそのレンズを反射、存在主張している。

 そんな舞台でだ。

 戦う相手はフランスの令嬢マリー・エトワール、そして彼女に従う————


 『さあさあそしてフランスからはこの小隊! 隊長はエトワール財団のご令嬢務めます! そしてそれに付き添うは屈強なメイドたち————』


 相手の構成は摩訶不思議。

 隊長は説明通りドリル女、そして後のメンバーは彼女の家来のみ。

 しかしてその家来が強い。

 炊事洗濯掃除を極め、そして守るための『殺し手』も覚えている、つまりは暗殺集団ともいえるメイドたち。

 女だからと一切気を抜くつもりはないし、なおかつ手を抜くつもりもない。

 侮るものならそれこそ冥土送りというものだ。


 (一番厄介なのはやっぱシルヴィなんだよなあ……)


 『美しい薔薇には棘がある! エトワール小隊の入場だああああ!』


 さあさあ怖いメイドさんたちのお出ましだ。

 目に宿すかねを超越した気品さ。

 それに付属するは危険すぎる、そして美しい女性たち。

 一点汚れ無しのメイド服が4着。

 大会だからといって服は変えない、感じ得るその不動のポリシーよ。


 「————改めて、よろしくお願いしますわ」

 「————宜しくだ!」

 「————ああ、よろしく」


 3人の言葉が交わされる。

 その他は無言。

 他のメイドはともかく、あのシルヴィが何も口出ししてこないとは。

 

 (完全に入ってるな。敵に向けるガチの殺しの眼だ)

 『このおなごも強いのう。して能力が厄介じゃな』

 (シンクロがどんくらい張り合えるかが未知だからなあ)

 『銀世界の準備も整っておる。いつでも発動可能じゃ』

 (了解。助かるよ)


 挨拶のため近づいた距離を戻していく。

 離れ離れ離れていく。

 仲違いではない、戦いの下準備、下ごしらえするかのように着々に、そして淡々と。


 『それでは国際選抜戦、準決勝を行います! 10カウントを開始します!』


 いつものプロセスを経て。

 観客もカウントに参加、一緒にダウンしていく。

 ダウンタウンみたいに熱気溢れる。


 「向こうに派手な技は無い気がするぞ」

 「確かに試合みた感じじゃ、防御型、いや持久型に近かったな」

 「うむ。大技ではなく、極めた細かい技の連続だった」

 「じゃあどうやって倒す?」

 「無論突撃、力で捻じ伏せるだけのこと。ただ冥土の方は頼んだぞユウ」

 「……まあ俺が行く前に、むしろシルヴィの方から来そうだからなあ」


 それは昨晩のことが原因。

 お嬢様の任務失敗、それで恥かかせたらしいから。

 ただ、そのことがあろうとなかろうと、どうせ戦うことになっていたはず。


 (さてさて俺の同調シンクロと、シルヴィの方向ベクトル、どんなことになるんだか————)


 俺とてS級、シルヴィもS級。

 客観的に、数字だけ見れば実力に違いは無い。

 ただそこに内包されたモノは大きく異なる。

 さらに加わる仲間の要素。

 気付けばカウント終局へ。

 エイラが聖剣を構える、俺も全身に力を回す、言葉は語らず前傾姿勢。

 俺たちと対峙するはメイド服をきた冥土さん、つまりは地獄そのものが目の前に。

 ただビビる必要無し。

 俺には、頼れる相棒が隣にいる。 


 『準決勝第1試合! 開始です————!!』



 

 


 

  

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