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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 4 -International Convention 2117《紅白に集いし者》-
58/188

44.5 with Lucia 1-2

 私の名前はルチア・バレンデッリ。

 イタリアのセント・テレーネ学園、1年Aクラス所属。

 ランクはAA。


 小隊については、自分が小隊長となって結成した。

 思い返せばまだ中等部の時のことだ。


 私は自分の力を過信していた。

 自分は特別だと思っていた。

 それを突然来たばかりの男に挫かれた、打ち砕かれた。


 改新する。

 すると鼓膜が進化、仲間の心が肉声となって私に響き出した。

 悔しさバネに、皆と必死に取り組んだ数か月。

 だけど最終的には、及ばなかった。


 でもなんの因果か運命か、廻り廻って国際選抜戦への道開く。

 開けてみればトーナメント表すぐ隣、あの男いる小隊名が。

 一回戦、相手は日本だった。

 だけど私が望むのは同じ日本人でもこの人たちじゃない、もうひとつ先、2回戦。

 そこで待っている、青い光を持つ、その人のもとへ。


 運で掴んだこの切符。

 今度は自分たちの力で、もぎとってみせる。














 『さあ白熱の一回戦! 一試合目は大激闘でした!』


 観ていた。

 気付いたら過ぎていた時間。

 青と光、それと戦った天使たち。

 格が違う、覚悟足らず。

 やっぱり強い。

 そう思うと、思わないようにしてる心の柱、それが少しずつ削られる。

 同じイタリア代表、彼らと同じ場所に立つ資格があるのか、役不足、私は————


 「ルチアっち!」

 「まーた顔が怖くなってるよ」

 「……笑顔、です」

 「堅物は俺の専売特許だぞ」

 「みんな……」

 

 近頃みんなは私をよくバカにする。

 でも不快には感じない、血よりも鮮やか、映す出すキレイな紅色。

 顔を上げる。

 心持もみんなが支えてくれる。

 

 『では両小隊の入場です! まずはイタリア代表バレンデッリ小隊————!』


 お呼びがかかる。

 エイガー先生も言っていた、普通を恥じるなと。

 強きを認め、己も肯定。

 見ているかはわからない。

 だけど、イタリアの代表として、自分自身を誇るために。


 「みんな! 行くわよ!」

 「「「「応!」」」」


 夢だったゲートを潜る。

 そこの先には戦場が広がる。

 返上することはない。

 この切符は使い切る。

 既に周囲観客席、歓声上げるところは目一杯。

 これが噂に聞く日本式満員電車か。


 『そして相対するは日本代表! さかき小隊の入場です!』


 流石にホーム。

 私たち以上に声援送られている、気がする。

 そんなこと定かではない。

 冷静ではいられない。

 この両脚が震える。

 手が軋む。

 張り詰める。


 「まさか私がこの舞台に立てるなんてね……」

 「想像してなかった?」

 「ええ……」

 「俺もっすよ! 緊張で脚が震えるっす!」

 「……私は、……既にメンタルが」

 「まったく情けないぞ」


 四季折々。

 狂った歯車が会話で戻り出す。

 軽い、なにげないジョークが意識を正す。

 停滞から再びの進行へ。


 『では定位置にて待機を! 10カウントで始めます!』


 翻訳された言葉が入る。

 カウントが始まる。

 何度聞いたかこの刻時、何故かもらったこの好機。

 頭上を確認、歪みない青一色の空だ。

 絶対はいない。


 「————相手に常識外れの怪物はいない」


 試合の相手を注視する。

 三色に相対する日の丸じるしの入った戦闘服。

 表重装備の許可された帯刀。

 ただ私たちと同じ、そこにS級はいない。


 「緊張するっすけど、俺は大丈夫っす」

 「ハイルンは怪しいけど、私もいつも通り!」

 「……私も、準備万端」

 「同じく異常なし」


 隊員全員問題無し。

 

 「私も普通、いえ、絶好調よ!」


 自己の確認済ませる。

 これは基本。

 私たちがすべき第一のこと。

 その後向き直る。

 数秒があっという間、カウントは終わりを迎える。


 『————試合、開始です!!』














 

 「————炎細剣グレムリン、囲め!」


 紅蓮が彩る。

 とっくに狼煙は打ち終え、戦到来。


 「巨岩砦ロック・ウォー!」

 

 今回の作戦は中央重視で行く。

 事前調査、相手に突出して強い能力者はいない。

 これはある意味小隊戦の正しい姿。

 正統と正統、目の前の小隊の動きも教科書のお手本のよう、読み合いと読み合いが重なる。


 (右翼から強めのプレッシャー! サリーをもう少し後方に、ザックは前に出てもらって————)


 めまぐるしく。

 脳の回転数が上昇していく。

 迷路のような思考、導き出す構図を仲間に伝える。


 「サリーは後退! ザック右に前進! アリエルはフォローしてあげて!」

 「了解っす!」

 「任せて!」


 派手なパンチはない。

 ただ、気を抜けば一瞬で崩れる。

 拮抗している。

 少しでも揺らせば負けるのだ。

 まるでコップぎりぎりに水が張り詰めているに等しい。

 

 「やるわね貴方! 夕の教えでも受けてるの!?」

 「ユウ? ユウ・ヨンミチのことですか……!?」


 私のレイピアは最前線に。

 目下刀と交戦中。

 担い手はおない年ぐらい、黒のショートカット持つ女の人だ。


 「ええ! 私は幼馴染なんでね!」

 「……なるほど! ただ何も教えは受けていません!」


 そう、今戦っているこの小隊に彼女、幼馴染がいることさえも。

 しかし語弊がある。

 自発的に教えを受けてはいないが、根底、大前提となる部分を戦いという形では叩き込まれた。

 模擬戦、予選決勝、味わった悔しさ、そして仲間の存在に気づかされた。


 「自己修復リカバリー!」

 「厄介な能力……!」

 「誉め言葉として受け取っておくよ!」


 この女性、私の剣が傷を生み、炎で焦がそうとも、治る。

 それが彼女の能力なのだろう。

 近接戦闘にはもってこいの能力だ。


 「なら……! 大地を喰らえ細炎剣グレムリン!」

 

 相手の能力を喰らう。

 地に這わせた炎が回復速度を遅延させる。

 足を焼く。

 その速度を括り付ける。

 

 「……やば!」

 

 初お目見え。

 私の能力は何も突っ込むだけじゃない。

 剣で捌き、隙を伺い、そこに突き刺す。

 そうして、今がある。


 「————もらったわ!」

 

 レイピア届く刹那の瞬間。

 一発、もう決まる。

 だがどうだ、どこからか機関車のような瞬発音響く。


 「朱里!」

 「……光太郎!」

 「っく! 防ぎますか!」

 

 あと寸でを新たな刀、黒い蒸気が弾き返す。

 

 「ルチアっち!」

 「ザック」

 「申し訳ない、彼を止めきれなかったっす」

 

 セーブ失敗。

 いやいや、私もつい周りへの意識を落とした。

 

 (隊長のさかきって男はガツガツ前に出てこないし、ほんとテンプレ通りの小隊ね……)


 自分で言うのもなんだが、定石通り。

 同じスタイル、だからこそ読みと体力の勝負になる。

 やっぱりこういう時、一点突破の能力者がいればと。

 いやいや、卑下はしない。

 辛い、ボクシングなら急所を守ったボディーの打ち合い。

 耐えに耐えた方が、勝つ。


 「でもまさか、ユウっちの幼馴染だとは思わなかったっす」

 「まああいつはペラペラお喋りするタイプじゃないからな」

 「え? そっちの方も……」

 「俺は光太郎って言う。朱里と同じ、夕の幼馴染だ」


 (幼馴染が2人もいるんなら流石に教えてくれてもいいじゃない……!)


 戦闘続行。

 交えて剣と刀、炎がザックによって拡大する。

 ジリジリと削る。

 

 「————あいつは変わってるだろ!」

 「————ええ! 変人も変人よ」

 

 火花散らして口を飛ばす。

 彼への悪口か、いや侮蔑は籠っていない。

 

 (なんとか砲台創るまで時間を稼ぐ)


 私とザックは此処から動くのは厳しい。

 周り、アリエルもベックも固定、サリーは出しどころが難しい。

 

 (せめてアリエルが盾の精霊を召喚出来たら……)


 曰く忙しいらしく欠席とのこと。

 どうしようもないらし。


 (私だったら即契約破棄するわ!)


 「自己回復リカバリー!」

 「適切行為オート!」

 

 回復の方はわかりやすい。

 ただ、男の、コウタロウと言ったか、私の剣に、ザックの動きに機会みたいに合わせてくる。

 一糸乱れぬ。

 まるでコンピューターの如し無駄の無さ。


 (要はよりいい結果の方に、身体が勝手に動いてくれるってことね……!)


 厄介な力だ。

 おそらくランクもAAからAAA級いくかいかないかの辺り。

 

 「巨岩砦ロック・ウォー!」

 

 間に岩窟が。

 挟みこむ、天高く、武骨な及び。


 「ベック!」

 「待たせたな」


 押していた。

 空気が変わりつつあった戦況の構図。

 ようやく1人倒したか、隙が生まれて支援行為に。

 

 (ベックの動きを見て向こうの隊長さんも合流気味、勝てる、これなら勝てる)


 アリエルとサリーが榊隊長とあと1人抑える。

 状況見れば3対2よ2対2に。

 優位に立つ。

 そびえ立った壁が少し薄く、小さく変わる。

 

 「っ! 朱里!」 

 「分かってるわよ!」


 不利をとっくに認知する。

 すぐさま形をオールマイティーに変化。

 岩を弾き躱し、この炎を踏まないように。

 

 「ザックそこから畳みかけて!」

 「岩形成はもっと集中させた位置に!」

 「「了解!」」


 囲い込んでいく。

 最後の主砲放つステージへと向かう。

 向こうも切羽詰まる、回復し適切ながらも追い込む焦燥に駆られているはず。


 (この2人を倒せば、あと2人、私たちが圧倒的優位に立てる)


 アリエルとサリーは必死に抑えてくれている。

 なら私たちは目の前のこの2人、彼の幼き頃の友人を倒すのみ。

 剣は閃光する。

 真っ赤な紅蓮が大気を燃やす。

 気温上昇、日本掃討まであと少し。

 あと少し。

 

 (超拡大火災砲レールガンに必要な分は溜まった! あとは砲台を造るだけ————)


 「仕方ねえ! 本当は夕にとっておくつもりだったんだぜ!」

 「無駄口叩いてる暇ない!」

 

 一瞬気が緩んだ。

 勝利目前にして、だからこそ。

 本当に、一瞬も一瞬だった。

 僅かな、炎が燃え広がる、砲台建設あと数秒、ステージからの退却向けての刹那の時。

 押し込めきれなかった、甘さ。


 「……ぬあ!」

 「っなにを!」

 

 その適切に動く男、刀を自らの腹に突き刺す。

 鮮血飛ぶ、自殺行為、思考停止してしまう。


 「適切行為オート死地デット・モード


 思考再会の催し。

 察す。

 機械から意志もつ機械へ。

 死を目前にした追い込み、人間の限界を超えた限界の動き。


 「————っ、細炎剣グレムリン!」

 「————遅いぜ!」


 生み出す速さは今までと比較ならず。

 空いたはずの数メートルが一気に詰められる。

 刀はすぐそこに、そして沈む。

 防刃使用の戦闘服、守られた腹部に刀がグッと捩じりこむ。


 「———ユウを倒すのは、俺だ!」


 痛みさえ感じぬ、意識の消失。

 刀の残像が目に。

 仲間の声の残響がこの耳に。

 固く結んだ決意はそうして散った。
















 『いやあ実に良い試合でした! どちらかと言うと玄人向け、今後の成長が————」


 意識が浮いてくる。

 顔には冷たいナニカが走る。


 「……チア! ルチア!」

 「あ、アリエル?」

 「意識戻ったっすね」

 「まったく心配したぞ」

 「負けたのね————」


 息をつく。

 

 「頑張りました」

 「そっす全力出したっす」

 「でも、私が油断して……」

 「「「「皆油断した」」」」

 

 声を重ねてくる。

 私を否定する。


 「その掛け合い、流石に打ち合わせしたでしょ」

 「まあそっすけど、そう思ってるのはホントっす!」

 「俺ももっとカバーできたた」

 「私たちも早く片付けてればね」

 「粘れました……」

 「————だから気にすることないっすよ」

 

 みんないい笑顔で言う。

 

 (これじゃあ落ち込む私がバカみたいじゃない……)


 「来年また、来ましょう」

 「「「「応!」」」」

 

 今度はアドリブ。

 全員が頷く。

 すると改めて周囲を確認。

 ゲートの外、待機室にこの身はある。

 誰かが運んでくれたのか。

 しかし周りに散らばる小瓶の数、包帯の端くれ。

 気付く、いや気付かされる。


 「……っい!」

 「ははは。お腹痛いんでしょ」

 「まあ派手にぶち込まれたっすからね」

 「貴方たち、他人事だと思って……」


 痛い。

 刃は強力な戦闘服が通さなかったが、その鈍い痛みはしっかりと残っていた。

 

 「————おお! 目を覚ましたのか!」


 そこに聞き慣れた声が。

 鮮やかな金髪を揺らした、一点突破の豪傑。


 「フォード先輩……」

 「見事な試合だったぞ」

 「あ、ありがとうございます」

 

 褒められる、あのフォード先輩に。

 それは大分進歩したと受け取っていいのだろうか。


 「ルチアは元気かー」

 「……ユウ・ヨンミチ」

 「ユウでいいって」


 確かに私もルチアと呼べといった。

 だが初めてか。

 フォード先輩に続いて現れた。


 「————ほれ」


 ユウが横たわる私に小さい瓶を投げる。

 中は見えない、ラベルは英語で書かれている。


 「それ痛み止め、しかもイギリスの穢祓者エクソシストたちが使う特別仕様のだ」 

 「そ、そんなものいった何処で……」

 「アーサーの見舞いついでに貰ってきた。いやあイギリスは紳士的で助かる」

 「本当はぱくって来たん……」

 「はっはっは! エイラは可笑しなことを言うなあ!」


 そういいつつ、エイラ先輩の口を必死に抑えている。

 そしてすぐ後ろからザックが小声で。


 (ユウっち、盗んできたんすよ)

 (……なんで?)

 (そりゃ、いやたぶん、仲直りしたいんじゃないっすかね)

 (仲直り……)

 (あの模擬戦からちょっとギスギスしてたっすから、ユウっちも意外と不器用なんすよ)


 「まあ細かいことは気にするな」

 「え、ええ」

 「良い試合だったのは確か。誇っていいと思うぞ」

 「……ありがとう」


 この男は、戦いとなると冷たい。

 勝利に纏わりつく。

 でも、変な人。

 今はこうして笑ってるし、認める、フォード先輩を叱ってる。


 「それとだ」

 

 言葉は続く。

 何を投げる。

 疑問が浮かぶ。

 皆が耳を傾ける。


 「ルチア達の代わりってわけじゃないが————」


 代打ではない。

 独自の思考と考え。

 前を向く。

 彼と視線が交差する。

 放つのは宣言。

 

 「————日本連中は、俺とエイラがぶっ倒してやる」


 口が開く。

 解釈違い、彼は普通に勝利だけを見ていると思っていた。

 でも、僅かでも、私たちの影はその視界に入っているのだと。


 「そう」

 「意外と薄い反応だな」

 「そんなことない。なら貴方、いえユウに任せるわ」

 「私もいるぞ!」

 「す、すいませんフォード先輩にも任せます」

   

 委託する。

 この潰えたはずの運命を。


 「任しておけ! なあユウ!」 

 「ああ」

 「では早速……!」

 「おい、何処に行くつもりだ?」

 「もちろん日本勢を倒しに……」

 「試合は明日だろうが!」

 「そ、そうか! 明日、そう明日しっかり倒すぞ!」


 うんうんと頷くフォード先輩。

 痛いはずの神経が薄く、自然と笑ってしまう。

 この人もおっちょこちょいなんだ、そしてそれにツッコんでいるユウも、どっちも面白い。

 真夏の国際小隊選抜戦。

 一回戦で敗れた苦い思い出も、少しは甘いところもあるんだ、そう心に残った。 

 





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