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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 4 -International Convention 2117《紅白に集いし者》-
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 『————皆様大変お待たせしました! これより1回戦、第1試合を行います!』

 「「「「「うおおおおおおおおお」」」」」

 『まずはイギリス代表! 穢祓者エクソシスト、アーサー・グリンドリィー率いる小隊の入場です!』


 破綻した開会式から1時間くらいか。

 ようやく第1試合スタート。

 1日かけての1回戦。

 参加は全16小隊だ。

 勝ち進めば4回、つまりはこの大会4日かけて行う。


 『イギリスはこのグリンドリィー小隊のみの参加! 既に実戦も経験済みとのこと! いやあ楽しみです!』


 イギリス男、相棒の印象はひょろひょろ男の。

 エイラとは少し違う金色の髪、隊員全員の身体を包むは十字入りの純白衣。

 女王より命名された現役の騎士である。

 魔を打ち滅ぼす、神聖の使い手。

 観客の歓声が反射する。


 『そして彼らと相対するは、歴史上初の2人組小隊! SS級の脳筋女! エイラ・X・フォード率いるフォード小隊だああああ!』


 大型電子版に電撃のように表示される俺たちの名。

 それに応える数多の群衆。

 身体にピッタリ張り付いた簡素な戦闘服。 

 心臓に張り付くは浮足たつこの気持ち。


 『魔王殺しの名は伊達じゃあない! いざ入場です!』


 (だいぶ持ち上げてくれるな)


 力を示せと言われば示そう。

 疑うならばお見せしよう。

 輝きの向こうへ。

 部分から総和、誇示する象徴、この場に登場。

 

 「「「「「おおおおおおおおおおおおおお」」」」」


 (このテンションの上がりよう、どこの国でも変わんないな)


 そりゃ観客の中には試合を観るために来た海外勢多し。

 わざわざ日本までフライトしてだ。

 

 「まさかひょろひょろと1試合目であたるとはな!」

 「……それはコッチのセリフ。そして俺の名はアーサー・グリンドリィーだ」

 「シーザードレッシング?」

 「アーサー・グリンドリィーだ!」


 どうやら名前を覚えていないよう。

 まあエイラだし仕方ない。


 「それで、お前は変幻プロミスだな」

 「ああ。よろしく穢祓者エクソシスト

 「このバカ女の相棒、思ったより頭は良さそうだ」

 「いやエイラ以上のバカはいないだろ普通」

 「……それもそうか」

 「なんの話だ!?」

 

 割り込み失礼。

 地滑りする会話。


 「……まあいい。これ以上は戦いで語るのみ」

 「そうだな」

 「その実力、俺が試してやろう————」

 

 どうやら俺たちを試すようだ。

 結構結構。

 そのスタンスは同じ。

 何世目かも知らぬ女王の騎士、この不勉強な俺に、バカな相棒に、どれほど楽しませてくれるのか。

 果たして脳に焼き付くか。

 それともオーバーヒート、脳爆発して負けるか。

 それともDNA輝く、勝利のビジョン見ることになるか。


 『それでは選手方たちは所定の位置に移動してください————!』


 脳裏の働きはここまで。

 戦闘モードに切り替わる。

 定位置に足固定。

 障害物無し、科学性のフィールド、天井と左右横は強力な結界によって観客保護済み。

 これほど真向から、これを戦場ではなく何と呼ぶか。

 

 『銀は使いどころを考えよ』

 「わかってる」

 『戦の基本は良し、さあておぬしらの世代、我も楽しませてもらおう』

 

 銀の力、エイラとの強化同調はギリギリまで使用禁止。

 ちょうどトーナメント反対にアメリカ、決勝までおそらく来る。


 (できればその時に使いたいんだけど、あれじゃあちょっと厳しいかな……)


 各国2軍は眼中無し。

 ただし1軍、例えば目の前のイギリス勢。

 S級アーサー・グリンドリィー、やつの放つオーラは質が違う。

 そしてそいつの仲間たちも。

 予選連中とは格が違う。

 こう言っちゃなんだがイタリアが弱すぎたようだ。


 『では10カウントで始めます!』

 

 告げられる戦いまでの秒刻。

 伴う人の声、注視される、カメラが捉える。

 今に見る。

 世界中が見つめる。

 黄金鳴らす、修羅と修羅、祓う者と脳筋たち。

 歯車は一定に刻む、時を戻すことも止まることも無く、刻む。

 

 『————第1試合、開始です!』













 ゴングが鳴る。

 心臓が高鳴る。

 身体が輝く。


 「————強化ミラータ!」

 「————大気同調アトモス・シンクロ


 戦闘態勢準備万端刹那の間に。

 

 「Ⅲ・フライ


 脚は理解及ぶ前に既に前へと出ていた。

 相手5人もイタリア連中とは違う、超接近する動き。

 始まる、拳と拳の交わし合い、激戦の狼煙。


 「————Ⅴ・ソード展開、俺に続け」

 「「「「了解!」」」」


 その手に剣を。

 俺たちと同じ高速下で。

 目まぐるしく入れ替わる身体と身体。

 思考をかく乱する動きと動き。


 「エイラ!」

 「ああ!」

 「「突っ込む!」」


 今まで戦ってきた小隊とはレベルが違う。

 剣交わす間もなく理解、その正体。


 「行くぞ! 聖剣カリヴァーン解放!」

 「……バカの相手は俺がしよう!」

 

 そして激突。

 鋼の光剣と聖剣が衝突。

 

 「二重強化ダブル・ミラータ!」

 「Ⅲ・フライ

 

 火花が塵と混ざる。

 エイラの剣戟は流される。

 巨大な力が無空間を抉る。

 相対するはアーサーの高すぎると言える戦闘技術。

 確実に人を殺るための純度、降臨の能力がその輝きをさらに強めるよう。


 「————となれば俺は」


 あと4のエネミー。

 全員がおそらくAAA級。

 その一挙手一投足が素晴らしい。


 「「「「————抜刀」」」」


 標準設定の武器装備は許可されている。

 目の前の奴等は剣を抜く。

 わざわざ抜刀などと、えらく紳士的。

 どうせ予選で見せた、なら俺も紳士的に、ハッキリと言ってから出そう。


 「彼の王持ち得し力の暴風! 嵐が轟く! 嵐が轟く!」


 操る大気が逆風吹かせ相手を遅延化。

 その間に唱える。

 これが、俺が受け継いだ力の一片だ。


 「顕現しろ! 魔槍テンペスト!」


 暗黒と暴風渦巻この手に顕る。

 

 「————魔槍確認」

 「————やっぱ実物はすんげえな!」

 「————無駄口たたく暇はないぞ」

 「————そうだ。あとで隊長に怒られるぜ」


 白き衣纏いし戦士たちの言葉、風に流れ俺の耳に届く。


 (テンペストにビビってる様子は無し、と)


 「AAA級が4人、相手に不足無し、練習がてらいっちょやるか————」


 俺とてたかがS級。

 流石にAAA級4人の相手は骨が折れる。

 むしろ俺の能力はバレている中で、相手の能力は不明。

 客観的に見れば圧倒的不利、俺の負け筋も普通に立ってる。

 

 (エイラはエクソシストに手こずって支援は望めない。この状況正直独りは厳しいんで————)


 「経験同調エクス・シンクロ!」

 『我の出陣か!』


 俺の瞳、銀にギラリと輝く。

 乗り移るが如く、意識の同化。

 その刻まれた経験が俺に移植、肢体に宿る戦いの歴史たち。


 「加重!」

 

 接近、刃が進行形。

 相手方、1人の能力発動、身体が重くなる。

 

 「圧縮だ!」


 もう一方発動、大気が歪み動きが鈍る。


 「慣性違反、発動」


 3人目となれば、もはや常識の無視、流れるはずの身体が曲折を描く。

 フィギュアスケートか?

 4人の動きは捉えられない、練りに練られた極限の動きとなる。

 代わりに俺の動きは鈍らされる、2つの負荷。

 

 「能力同調アビリティ・シンクロ


 身体の負荷を軽減。

 突き進み槍を振るう。

 妖精のようにちょろちょろと、並みの人間では触れることはできない。

 洗練されもはや芸術にまで昇華している。

 しかし人ではない、戦の神ならば————


 「なかなかおもしろい!」


 まずは1つの動きを捉える。

 だがそれをカバー、すぐに4つの刃が牙を向く。


 「そらそらそら!」


 1つ、2つ、3つ、4つ。

 首元まで迫る、それを紙一重、弾く、弾く、弾く、弾く。

 常識外れは相手だけではない。

 向こうが芸術なのだというなら、俺はその先にある神秘の真実。


 「なんなんだよその戦闘技術!」

 「……1秒間に20槍は出たぞ」

 「人の領域じゃねーな」 

 「おい次来るぞ!」


 俺の腕は弾丸と化す。

 止まることない、早さでしなる鞭のように錯覚するほど。

 ここに1対4、不利を覆す神がかり的な構図が出来上がっていた。


 「やっぱこのレベルの4人相手は厳しいな……」


 考える間も無く槍を振るう。

 そりゃそうレネに任せて、俺はフィールドをプラスに変える。

 

 (戦況、動かすか————)

 

 「重力同調グラビティ・シンクロ

 「な! それ俺の……!」

 

 さっきの能力で思い付き、実行へシフト。

 そして理解成功する。


 「潰れろ」

 「……まじかよ!」


 とりあえず一番近い奴を潰す。

 地に這いつくばる。

 

 「クリス! いま助け————」


 轟と。

 言葉は破壊の音に遮られる。

 超高速の脚。

 まさに神の鉄槌、地に這いつくばり動けぬ男、その腹に不格好な風穴を開ける。

 飛び散る鮮血、内臓潰れ貫通、真っ赤な床が覗き見る。


 「クリス!!」

 「おいおいおい……!」

 

 殺しちゃいない、吐血、横たわり意識飛ぶ。

 俺の右脚を塗った赤色の液体。

 殺気を振りまく、銀眼と意思が迸る。


 「————まずは1人だ」

 

 相手はS級じゃない。

 動き速いが俺と、そしてレネの完全なる敵には成りはしない。

 どこからかこの現場を見て悲鳴が。

 観客ドン引きか?

 殺してはいない、ルール遂行、だからこそ違反の合図も出されていない。

 これは見世物ではない。

 これは試合ではない。

 俺にとってこれは死合いである。


 「どうした、動きが止まっているぞ」

 

 徐々に、距離を取られたところを埋めていく。

 一歩、一歩、相手に近づく。

 

 「どうするよマイケル!?」

 「脳筋の相棒、聞いていた以上に狂いまくってるぞ」

 「く……」


 風に流れる言葉。

 俺に筒抜け。

 その合間、意識を外へ、相棒へと傾ける。

 

 (思えばこれエイラと合流するチャンス————?)


 エクソシストの奴、良く気が配れている。

 仲間1人のリタイアに対し、自分たちの戦いを遠ざけようとしている。

 エイラをこちらに介入させたくないのだ。

 最初からそう、俺とエイラを一緒にさせたくない。

 予選のルチアたちの超上位互換。

 1と4で分散、おそらく片方倒した次第で合流する予定だったはずなんだろうが————

 

 「大気同調アトモス・シンクロ!」


 (ならその作戦、俺が根本からぶっ潰してやろう)


 「風、俺を運べ」


 大気が道を開く。

 一直線に。

 活路開拓。

 

 「攻撃か!?」

 「次の防衛はどう……」

 「いや待て違う! すぐに変幻を止めろ! ヤツは————」


 流される。

 一時的な封鎖からの脱却姿勢。

 目的は変更された。

 俺たちは2人でさらに高みへ。

 ここらで魅せるとしよう、これが正しいものであると。


 「————手こずってるみたいだな」


 天上より現る。

 既にさっきの3人は見逃した。

 自分たちからまずは潰すと思っていたか。

 確かにそう。

 比較的雑魚から倒すつもりだった。

 しかしてこんな戦いもなかなか面白いのではないか。


 「ユウ!」

 「……変幻プロミス!」


 俺の到来、目の前2人、その剣戟を止め距離を取る。

 戦いの終わりではなくにらみ合いへ移行。

 感じ入る深層の考え。

 その後ついてくるは3人の戦士。

 追いつき加わる。


 「すいませんアーサー……」

 「クリスは?」

 「ぱっと見ですが、死んではいません」

 「そうか」

 「ただ、すぐにでも治療を行わないと————」


 (まああの傷じゃ長くは持たないだろうな)


 自分でやっておいてよく言う。

 別に恨みがあるのでもなんでもない、ただ真剣だっただけ。

 相手は強い、だからこそ。

 これは俺なりの賛辞に等しい。

 しかし流石、アーサーの顔は崩れないようだ。


 「こっからが本当の小隊戦だな」

 「……貴様」

 「はっはっは! さあ見せてやろうユウ! 私たちの戦いを!」

 

 この戦いは面白い。

 死合いなどと言っておきながら、どこか心の片隅に狂気がある。

 それが脳を支配、医科学的には実証されない、しかし確実に微かながら存在する。


 「お前ら、覚悟しておけ」 

 「「「……」」」

 「————殺す気で行くぞ」

 「「「了解」」」」


 向こうさんも形整える。

 一瞬のデコボコを一喝して整地する。

 高ぶった感情を冷静に、やはり実践を経験していると切り替えが早い。

 

 「ユウ、あれをやるか?」

 「いやまだいいだろ」

 「なら全力だけだな」

 「ああ全力だけだ」


 強化同調はまだとっておく。

 ここからは総力戦。

 むしろ小隊戦の正しい姿。

 思い返せばアーサー、俺たちを試すと最初に言っていた、もしかしたらこの形になることを予期していたのかもしれない。

 ただし、初手は削りに、勝ちが近くなる手法をまず選んだというところだろうか……


 (いや、考えることに意味なんてないか。薄く、最低限の情報が分かればそれでいい)


 敵が4人、使う能力はだいたい把握、それだけ。

 エイラほど安直ではないが、それなりに分かれば十分。

 心は熱く、表はクールに。

 あとはレネ、それから第六感がうまいこと働くだろう。


 「————女王の名のもとに。我ら王国の敵、全てを討ち滅ぼす力を」


 (いよいよか、6つのアクセス持つ、やつのS級として本領)


 「Ⅰ・エンジェル、発動」


 日輪が。

 天の輪。

 穢祓者エクソシスト、それは魔を刈り取る者の称号だ。

 ヤツは使う能力は『召喚』

 剣を、羽を、棺を、燭台を。

 天界より具現化、そして今、男の頭には天使の輪が召喚される。

 はたから見れば笑いもの?

 いやいや、この輪は幸せ故ではなく、殲滅するための輪。


 「————バカには救いを」

 

 言葉と消える。

 姿を失う。

 残るのは虹色の輝き。

 不可視なる天使の羽、人外————


 「……っな!」

 「ユウ!」


 気付く。

 俺の腹部、横蹴り、凄まじい速さで叩き込まれていた。

 そこには天使の残像か幻。

 意識が一瞬遠のく。

 鋭い痛みが後から追ってくる。

 何処からか昇ってくる真っ赤な血。

 かかとが浮く、宙に浮く、また気付く、俺の身体が転がると。


 『なるほど、天使の現身、これは珍しい』

 「……の、呑気なこと言ってんなよ」

 『すまぬ。つい見入って防御するのを忘れていた』

 「……それでも戦神か」

 『我ならこの程度余裕で耐えられるのでな、ユウの身体だと忘れていた』


 吐血する。

 久方ぶりに痛みという痛みを味わう。


 「やられたら、やり返す……」


 目には目を、歯には歯を。

 痛みには痛みを。


 「……レネ! 全開だ!」

 『応とも!』

 

 何時までも停滞する気はない。

 既に天使はエイラへと行動を移す。

 やり逃げ、それは不甲斐ない。


 「……嵐を起こせ、神を穿て、その身に刻め」

 『銀神の加護を我が友に!』


 身体フュージョンアップ。

 経験が流れ込む。

 幾早々、積み重ねられた技の炸裂前。

 

 「ユウ! 早く手伝ってくれ!」


 ここでも4対1構図発生。

 エイラが天使と戦う、それに付随するそこそこ3人組。

 傷を負う、エイラが助けを求める、いやアイツの場合はまだまだ余裕。

 これは俺がレネに任せすぎて、自分疎かになっていただけ。

 反省すると共に、向き直る、相棒の隣へと。


 『————良い、良いぞ、とてつもない神力の荒ぶりじゃ』

 

 腹部を神力によって復元。

 原理不明ながら理をなす。

 そして天使に対抗、両脚に神侵入、人類史超越、タイムリープを巻き起こす。


 「お返しだ!」


 追いつく戦況。

 天使に数十叩き込む。

 

 「もう回復したのか」

 「……いろいろ便利な身体なんでな!」


 交わす。

 槍と剣、それに交える数多の能力。

 大地を揺るがし足を止め、操る風が敵を飲み込む。

 苛烈極める。

 めまぐるしく、大胆冷静。


 「四重強化クアトロ・ミラータ!」


 俺の顔すぐ真横を聖剣通過。

 直ぐに入れ替わる俺とエイラ。

 思考と目が追いつかぬスピードで重なり合う。

 これは止まることのない黄金の嵐、合わさる力の体現そのもの。


 「くっそ追いきれねえ!」

 「アーサーの邪魔をしない限りで動けって!」

 「んなこといっても————」

 

 3人が感じるは圧倒的なタイムラグ。

 時間という概念はどこへ吹っ飛ぶ。

 

 「おらよ!」

 

 槍は交わされた、しかし俺の左拳が天使のボディーをとらえる。

 逆に俺の顔面にはその後方より重力の逆風。

 生まれる隙。

 そこを逃すことなく迎撃する光の輪持つ剣さばき。

 しかしてそれを聖剣がガツンと押し返す


 「……聖剣使い!」

 「そう簡単にユウの首は獲らせん!」

 「簡単にどころかそもそも獲らせんな!」


 螺旋描く3つの力。

 ときたま介入するあと3つ。

 

 (相手の残した3人がいい働きしてる、めんどくさいことこの上ない)


 分をわきまえている。

 接近することは少なくとも、確実に弊害となって俺たちに。

 いざそれに身体動かせば。


 「Ⅳ・クラウ!」


 異変な盾現る。

 この男はオールマインド、技術兼ね備えた強き者。

 間違いない。

 しかし、少し、少しずつではあるが、俺たちが押し始めてる。


 (ジリジリ来てる、あと一押しで、この槍が届く)


 そうしている合間にもイナヅマの如く動く俺たち。

 まるで流星のように。

 縦横無尽にフィールドを駆け巡る。

  

 「Ⅱ・ライズ! Ⅲ・フライ!」

 「大地同調アビリティ・シンクロ!」


 大地を揺らし逆転槍。

 俺の苦手な相手だ。

 自己強化、これを止めるには相手の身体に同調をかける必要あり。

 しかし俺が生きた人間相手に同調できるのはエイラのみ。

 アーサーの自己は止められない。


 「加重!」

 「圧縮!」

 「慣性!」

 

 重なり合う三重奏。

 それは心地よいものでも何でもない。

 

 「脚が重い……」

 「気張れよエイラ!」


 俺たち蝕む有象無象。

 そして俺は少し前からレネは無し。

 この身ひとつで乗り込み。

 いかせん回復に神力を使いすぎてレネとの関係度を深めすぎ、これよりは意識を持って行かれるおそれがある。

 しかしだ、ジャンキー精神、もう少し神力は使える。


 「————レネ」

 『————使うのか?』


 これ以上の長引き。

 そろそろケリをつけたい。

 それに俺はこの相手を認めている。

 

 「全力じゃなくていい。軽くだ、めんどくさいあの3人を封じたい」

 『まったく、しかし天使の方はどうするのじゃ?』

 「そっちはエイラに任せる。俺は一瞬だけ、エイラに真っすぐなぶっとい道を創る」

 

 刹那の時だけ。

 全て振り絞るわけではなく、その一端を。

 俺の腕、切り裂かれ血が滴っている。

 なかなかない経験。

 エイラ自身も俺ほどではいながダメージそこそこ。

 

 「エイラ!」

 「ん!? なるほどわかったぞ!」

 

 語ることは必要なし。

 アイコンタクトでザックリ伝わる。

 簡単だ。

 今かかってる、シンクロでは取り除ききれない負荷、それを一瞬だが全て消し去る。

 その瞬間にエイラの全力をあのクソ天使に叩きこむ。


 「応えろ聖剣! 開闢強化カルマ・ミラータ!」

 「もう決め手を出すか、まだ時期尚早だ」

 「それを決めるのは私、そしてユウだ!」

 

 俺も未だに戦闘続行。

 シンクロで飛び回る、流れるスターダストの中に居る。

 アーサーに守られたウザい三銃士。

 そろそろ退場だ。

 エイラに莫大なオーラが回る。

 ゆっくりゆっくり、段々早く、回転数上昇、今でさえアーサーの剣、三銃士の剣触れ合えば爆破裂音鳴らす。

 それが更に高ぶる。

 隙を見せぬアーサー、さらに俺たちを縛り付ける複数。

 だがそのしがらみは俺が解き放つ。

 

 「————銀を愛す! 戦を愛す! 進むは王道!」


 俺の声が会場にこだまする。

 超高速の剣戟の中で叫ぶ。

 魂の昇華。

 

 「アーサーやばいの来るぞ!」

 「わかっている! お前たちは一旦……」


 俺たちと同じ、向こう方も余裕ないことは同じ。

 この言葉の意味を知ってか知らずか。

 危機察知、普通ではないオーラ、正確には銀に染まった神力の異常な漂い。


 「神の御業! 銀の誓いを今再び!」

 『ここに戦あり。ユウ、さあ見せようぞ』

 

 溢れ出る。

 その一端、見せすぎないようにうまく固める。

 一瞬に必要な分だけ、完全開放ではなく、部分で。

 だがその部分、それは神の業そのものである。


 「すべてを変えろ! 銀世界シルバー・レイ!」


 まるで氷が張り着くように。

 指定された目下。

 全ては変わる、変えさせられる。

 四季を侵し、美しい銀一色。


 「な、なんだこれ!?」

 「世界浸食……!」

 「嘘だろ!? このレベルはマジの神様か魔王クラスだぜ!?」

 

 三銃士覆う。

 フィールドは変わった。

 すべての能力魔法はその力を失う。

 

 「————変幻、貴様一体何者だ?」

 

 空いたとき、一瞬で停滞する時間。

 スローモーションのように寸でで聞かれる問。


 「世界の書き換えを行う、これは……」

 「神様みたいか? 安心しろ俺は人間だ」

 「ならば……」

 「そんなことは置いといて、まずはバカの方なんとかした方がいい」

 「っしま!」


 (重力同調グラビティ・シンクロ————!)


 習得したばかりの能力使う。

 重力90回転。

 戦場からの、エイラの射程からの強制離脱。

 強引に、骨が折れるんじゃないかって勢いで自分の身体を吹き飛ばす。


 「————いっくぞおおおおおおおおおおおおお」


 もう逃げられぬタイミング。

 

 「Ⅳ・棺!!」


 その幾度も防いだ天使の壁。

 はたや女王の盾。

 一点集中。

 研ぎに研がれた力の一振り。

 崩れ打ち砕く。


 「聖剣カリヴァーン!!」


 元居たとこへと帰還する。

 神より遣わし聖剣は、神の使徒を天へと召させるのだった。

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