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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 4 -International Convention 2117《紅白に集いし者》-
56/188

43.5 with others+M

 『能力階位ランク


 この時代、あらゆる人間がなにかしらの能力を持つ。

 そこには上下の互換性から、被ることのない特殊なものまで。

 ようは千差万別なのである。

 

 この数多の能力。

 中には想像を覆すようなものが稀に。

 圧倒的火力で殲滅を行う能力。

 科学では解けぬ死者を蘇らす法。

 世界を書き換える支配干渉の力。


 魔王との大戦もあった。

 よってそれ以降には平和維持のため、能力を管理統括しようという動きが。

 そしてその目的達成のために、国連主導で創設された機関がある。

 名を能力統括機関。

 通称『A・O・O』

 主な役割は、能力の格付け、及び能力者の管理統括である。


 所属するは世界中の研究者たち。

 彼らが現在の能力の定義を決めたといっても過言ではない。


 『能力が世界に、どれほどの影響力、どれほどの干渉力を持つか』


 これを大前提とし、更に独自の審査を交えランクを決定する。

 しかしこれには、その個人の性格、頭脳、私情は一切考慮されない。

 純粋なる力の見定め。

 それが今のランクの姿である。


 機関の長を務めるは『雷槍』ライザー・マルティネス。

 大戦活躍したアメリカの英雄。

 その功績あり国連より機関長に抜擢される。

 また毎年開催される『国際選抜戦』の委員長も務めるなど、世界でも未だ輝かしい存在である。


 そんな雷の英雄には頭を抱える大きな問題が目の前に。

 2117、何回目になるか大会の開催。

 今年は黄金世代とまで言われる、強力な能力を使う若人が集うとき。

 

 期待をしていた。

 楽しみにしていた。


 満を持して臨んだ開会式。

 しかしそこで出会うは、一癖も二癖もある者ばかり。

 

 怒号飛ばしても委縮するは観客と普通の学生代表のみ。

 S級、およびSS級、彼らには馬に念仏。

 まるで数十年前、共に戦ったあいつらと出会った時のよう、

 会場カムバック、過去のリターン。

 そう感じてしまった老いし英雄。


 去り際、声出すことも出来なく注視するのみ。

 背中が語る新たな英雄の誕生。

 この一二三ひふみ、思い出しから理解へシフト。

 分かってしまったのだ。

 この3世代が新たな英雄たちなのだと。

 

 ランク付けをした機関の長は思う。

 この連中は黄金などではない。

 闘魂宿し独尊。

 騒音響かせ世界の城門を破る。

 殺伐激越。

 修羅の世代であると感じ得た。















 『え、えー、こ、これにて開会式は終わり……?』

 

 あたふたする実況。

 騒めく観客。

 無言を貫くマルティネス委員長。


 「…………」


 俺は日本代表、稲村 光太郎。

 高校1年生ながら四苦八苦、ようやく手にした本選の切符一枚。

 今年が黄金世代、常識外れで強い連中が溢れてる。

 そして分かっているつもりだった、自分が『普通』であると。


 「なんだよこれ……」


 自分は普通という考えが打ち砕かれる。

 起きたばかりの光景、かの英雄の言葉に反論か無視、続々と去っていく。

 唖然とする。

 自分など怒号にビビッて思考が一旦停止していたというのに。

 考えていた普通は、もっとハードル高く、現実は非情であった。


 「こ、これどうするんだろうね……?」


 話しかけるは幼馴染の朱里。

 同じ小隊のチームメイトでもある。

 本来だったらここにもう1人、幼い頃からの繋がり、ユウが入るはずだった。


 「夕も、行っちまった……」

 「……」


 理由はわからない。

 ただ突然でイタリアへの編入。

 気付けばあの聖剣使い、『脳筋』エイラ・X・フォードの相棒になって、魔王討伐。

 まさかだった。

 驚きで目を疑った。


 (本当に遠くに行ったな)

 

 深夜ながら見たイタリア予選の中継、アイツの顔は、聖剣使いと共に戦っている表情は喜びで溢れていた。

 長らく見ていない本物の笑み、それを離れてから気付いた。

 嫉妬だろうか?

 幼馴染であるというのに、連絡よこさないことに?

 いや違う、これは仲間心、俺たちではなく、聖剣使いを選んだということにだ。


 (そんなことで意地張って宣戦布告しちまったんだから……)


 意地張った。

 久しぶりの帰国を笑って迎えるはずだった。

 しかし大会前、一度会ってみれば隣には聖剣使いエイラ・X・フォード。

 土砂崩れ、張りぼての笑った口元が崩壊する。

 夕を突っぱねる。

 お前は敵だと。


 「残ってるは、私たちと同じ一般の代表ぐらいね」

 「ああ……」


 周りに残る小隊は俺たちと同じ普通組。

 ようはS級がいないチームのみ。

 強き者がいる小隊の隊員は、俺たちが持ち得ない、その覇気によって動かされる。

 数刻遅れでありながら、その象徴について行った。

 それがない連中は、同様に周りをキョロキョロ、次の行動悩みアタフタしてる。


 『や、やはりこれで開会式は終わりのようです! で、では皆様、一回戦開始まで少々お待ちください————』


 一回戦って、開会式に使うはずの時間あまりまくり。

 騒めく空間。

 観客はまだいい、俺たちになりに必死の努力積み、ようやく来たこの場所。

 しかし感じるのは優越感でもなんでもない。

 ただの場違い感。

 ライオン群がる檻に放り込まれた子犬の気持ち。

 送られてくる観客の視線も困惑交じりの同情さ。


 「光太郎、私たちも退場しましょ」

 「そうだな……」

 「夕に謝るなら付き合うわよ」

 

 朱里は当時現場にいなかった。

 幼馴染だからこそ付き合う。

 しかしここで折れていいものか?

 空気に飲まれ萎縮した俺の心臓、これはこのままでいいのか?

 遠く遠くに行った夕に追いつきたい。


 「……もう少し時間をくれ」

 「はあ、まったく男ってめんどくさいわね」

 「う、うっせーな」

 「まあいいわ。同じ小隊だし、とりあえずはアンタに付き合う」

 

 俺が敵対なら敵対。

 俺が友好なら友好。

 発表されたばかりのトーナメント表。

 夕と当たるとすれば2回戦だ。


 (俺は————)


 退場するこの足と身体。

 語るのは黄金と同じ自信ではい。

 路頭に迷う。

 鮮明ではない、色交ぜに失敗した濁り気味の色であった。















 「うっひゃあ! こりゃ上物の魂ばっかりだなあ!」

 「アガレス、興奮するのはいいけど、私の水晶に唾を飛ばさないで」

 

 ここは闇のどこか。

 様々な色が集まる中で、染まることのない、侵されることのないところ。

 

 「魔女の王は相変わらず冷めてるなあ」

 「冷めてるんじゃくてあなたが熱すぎるだけよ」

 「っくっくっく! そうかねえ!?」

 

 この混沌にそろうは混沌の王たち。

 かつて葬られた魔王たち、それに加わる新たな魔王たち。

 それが一堂に。

 そんな中で、魔女王が強大な水晶に映し出すは人間の催し。

 鮮明に描かれたのは日本、若き英雄の卵揃う会場であった。


 「アガレス様は楽しくて仕方ないようだ」

 「なに、我らでこの状況を楽しんでない者などおらんよ」

 「然りだ」

 「いやあこれは遣り甲斐がある」

 「……イエス」

 

 語り出す魔がつくナニカの王たち。

 水晶見つめ、それなりの見解を口々に。


 「逆に魔女ちゃんはさあ、誰か気になった子いないのお?」

 「私が……?」

 「そうそう! 俺は仕留めそこなった聖剣使い一択だぜえ」

 「私が気になる————」


 魔女の王は年齢感じさせぬ美しい肢体。

 流れる薄く紫がかった長い黒髪が魅惑を生み出す。

 だがその見た目に反して力は絶大。

 魔族的特徴は無い、感じ見るに人間そのもの。

 しかし彼女は、あらゆる魔法、魔術を使いこなす絶対の魔法使い。

 その実力、下級の魔王では話になりもしない程の。

 

 「————そうね。私は、この男の子かしら」


 魔女王の整った輪郭、それに伴った紫の瞳が見つめる。

 その先は黒い髪と、銀色に輝くまなこをもつ男だった。


 「おお! 聖剣使いの相棒!」

 「ええ。確か変幻だったかしら」

 

 魔女王は数多の魔法を網羅。

 その数、数千。

 人間でギリギリ張り合えたのは『賢者の書』と呼ばれた女ぐらいのものだった。

 しかして銀もつ男、その可能性は魔女王の眼を持ってしても完全解読不可能。


 (どこかの神が肩入れしているんだろうけど、やっぱり直接視ない限りはわからないわね————)


 人柱となったその身。

 しかも男はあらゆるモノを操り支配する能力を持つとか。

 それは魔女王に似て非なるもの。

 あらゆる魔法を使う、あらゆるものを操る。


 「聖剣使いと変幻はタッグだからねえ! 魔女ちゃんも俺と一緒にさあ……」

 「お断りよ」

 「ふっられたああああああああああああ」


 邪神の声、不甲斐ないことで響く。

 それには関わって連なる王たち。

 彼らは動き出している。

 ゆっくり、ゆっくりと。

 下級の魔王は死んで代替わり。

 弱い魔の王は淘汰されるのみ。

 魔力を溜め、真の王たちが日の出を見始める時が近づく。

 

 「さあ見せてもらいましょうか、新たな人間の希望を————」


 数十年前に味わった敗北、その苦渋を打ち消すために。

 聖戦魔戦。

 日の国にて始まる戦い、これを楽しむのは決して人類だけではなかった————



 

 

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