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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 3 -START AND START 《二色と闇影》-
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35.5 with Miko & Susano

 「————なんですかこれは!!」


 夏の近づき。

 暗闇の空も少しながら明るさを帯びる。

 時刻は深夜3時程。

 普段ならば夢の中滞在真っ最中。

 しかしながら、今日この時は寝ている場合ではなかった。

 

 「ひ、姫さま……?」

 

 極東、日の丸を背負った和の国。

 西の都たるここ京都では、1人の少女が時間と見た目に不相応な叫びをあげていた。


 「取り乱しました……」

 「わ、私は大丈夫ですけど」

 「まさか、ここまで見事な『神降ろし』を行えるとは————」


 自身に刻まれた心のペース。

 決められた感覚がドミノみたいに倒れる。 

 もはや粉砕されたといっても過言ではない。

 その倒れた心域もつ主、名を『星之宮ほしのみや 伊吹いぶき

 若くして日本が誇るS級能力者であり、巫女の性相成って『巫女姫』とまで呼ばれる存在だ。


 「四道よんみち ゆう————」


 姫の視線の先は和室に見合わぬ大型テレビ。

 映すのはここから遥か遠く、水の国イタリア。

 国際選抜小隊戦の予選中継。

 長い戦いのすえいよいよの決勝戦。

 精霊含め6対1と不利に追い込まれた四道 夕。

 いくらなんでも分が悪いと考え、戦術を変えた、しかし変化の行く末は————

 

 「私には型を変えたようにしか見えなかったのですが」

 「……あれは別物です」

 「はあ、私にはさっぱりです、すいませんダメな侍女で……」

 「いえ常人では視えませんから。花穂かほが視えないのは当然です」


 星之宮 伊吹の能力は『神の使い』

 ザックリな名だがこれが相応しい。

 神属性である光を操り、先を予見、邪を払い、人に癒しを与える。

 由緒ある巫女の家系に連なり、もっとも神に近しいとまで呼ばれさえする。

 世界からはそう呼ばれていたのだが————


 「何故これほどの人物が今まで世にでなかったのか、不思議でなりません」

 

 液晶に映るのは動き出した黒髪の少年。

 政府から神穿つ『魔槍』の担い手と聞く。

 使いと討伐者、巫女たる星之宮とは対極に位置する存在。

 神を殺す性、相容れるはずもなく、会おうものなら必ず衝突すると思っていた。

 だが、結果はどうだ。


 「画面越しからでも吹き荒れる神力が伝わります。資料を渡されたときは半信半疑でしたが……」

 「それは」

 「ええ。彼には確実に『神』が憑いています」


 『しかもただの神ってわけじゃあなさそうだな』


 これまたどこから。

 背後霊なみにヌルリと現る。

 霊などと呼ぶには失礼か。

 

 「スサノオ、また勝手に出てきて————」

 『いやいや勘弁してくれよ姫、こんなん見せられて黙ってられるはずがねえだろ』

 「はあ……」

 『しっかしどこの神だあ? まあまず俺たち旧神じゃないのは確かだが』

 

 この男、名を素戔嗚尊すさのおのみこと

 日本では誰しもが知る大神。

 星之宮が契約を結んだ神である。

 そして神の使いとまで呼ばれる所以の存在。


 「やはりそうですか。なら新神しんがみの……」

 『小僧の瞳は銀色だ、なら白銀系統に連なるどいつかってとこだな』


 100年前の変化。

 夢の現実化。

 それであられた数多の存在。

 その中にはスサノオのようにすでに歴史に刻まれていたものから、人類が確認していなかった新たな神々まで。

 認知されていた神と比べ、後者の神々は『新神』と呼ばれるカテゴリーだ。


 「姫様、この銀の瞳は能力によるものではないのですか?」

 「私も始めは疑いましたが、これは神の印と考えてよさそうです」

 『しかも普通の印じゃねえ。両眼差し出させる神ってのは戦武神ぐらいなもんだ』

 「おそらく私たちよりも重い契約ですね……」

 『大きい対価にはそれに応じた報酬が与えられる。この小僧、とんでもねえ隠し玉持ってるぞ————』


 神に力を借りる、その行為たる神降ろしには莫大な神力と触媒なる『もの』が必要だ。

 ものというのは普通はその神にまつわるもの。

 十字架であったり、巫女の使う大麻おおぬさや数珠であったり。

 普通は道具を神との接続触媒として使う。

 それなのにこの四道という男は、己が身体を差し出した。


 『たぶん両眼くり抜いたんだろうな。神たる俺が言うのもなんだが狂ってやがる』

 「く、くり抜いたですか……?」

 「肉体を代償に、これは決して捧げてはいけないものです。ですが————」

 『この小僧は痛みに耐えぬき、そして成就させた。末恐ろしいぜ』


 彼女らは知らない。

 これは四道 夕が望んだことではなく、とある自由奔放な神に半ば無理やりやられたと。

 それがどんな理由でかさえ。


 「そして相手は白銀系統の神様と……」

 「ゼルガノ、ヌアザ、カルテロ、思いつくには思いつくんですが————」

 『パッとしねえよなあ。いっそ闘神エレネーガだったりしてな!』

 「冗談が過ぎますよスサノオ」

 『だが仮にだ。百戦練磨の最恐の武神と呼ばれたエレネーガが小僧の契約相手だとしたら————』


 銀の神エレネーガ。

 カテゴリーは新神。 

 物理的攻撃力では神の中でもトップクラス。

 それこそ旧新合わせてもゼウスあたり連れてこなければ対処は不可能だろう。


 『いやふざけ過ぎた。ヤツは死んだって噂も俺たちの中じゃ有名だ』


 エレネーガはもはや伝説。

 それはそれは美しい少女だったという。

 だが昔の話、実在しないのだ。

 そして今思うのは直接見たいという巫女姫の心情。

 尋常ではない神力、光り輝く銀眼の中にはどんな神が潜むのか。

 

 「まずは確証したと政府に連絡をしておきますか、花穂」

 「はい。直ぐに一報を」

 「頼みます」


 男に神がいるのは確か。 

 継承ではない。

 確実に、奥底に、見えない柱が、大きく大きくそびえ立っている。

 イタリアの戦いは始まったばかり。

 その槍の技量は片鱗を見せたばかり。

 興味心、好奇心、恐怖心、さまざまが感情が入り組み、瞳孔を開かせる。


 「どうやら夜更かしになるのは避けられないようです————」


 巫女姫と同じ。

 世界中の若き猛者たちは四道 夕という男を見つめている。

 画面という一つの扉を通じ見ている。

 孤高の聖剣使いエイラ・X・フォードが認めた唯一の存在。

 その真価を見定めるために。


 『嫌な予感がするぜ————』

 

 若き人の子の気持ちいざ知らず。

 和の神スサノオもまた別角度。

 脳裏にチラつく銀髪持つ美しい少女。

 かつては自分たち神々を無差別に屠り、天界さえ敵に回した狂神。


 『頼むから強くても中堅クラスにしてくれよ————』


 一報入れた侍女。

 2人1柱が見つめる電子版。

 そこには槍が振りまく黒い風と、その担い手たる銀眼が際限なく猛威を振るっていた。

  

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