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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 3 -START AND START 《二色と闇影》-
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28

 鳴り響く。

 耳に侵入する歓声。

 完成し大成。

 聴衆に披露。

 声と興奮の足が会場を揺らす。


 「帰ってきてすぐ試合ってのもな……」

 「手っ取り早くて私はいいぞ!」


 嵐を払う。

 モーセの伝説のごとく道を開く。

 ゆっくり踏み出す一歩。

 会話をしながらもその足跡には軌跡が見える。

 圧倒的自信の表れ。

 俺たちは揺るがぬ惟信いしん


 「いや、試合の前にみんなと一度会っておきたかったんだよ」

 「ならばまずは試合で語るぞ!」

 「はあ……」


 話通じなくて一溜息。

 いろいろあった事情聴取。

 やっと解放されて飛んで来たイタリア。

 間に合うか胃がキリキリした。

 そしてのギリギリのセーフ。


 「して、相手は目の前の連中で良いのだよな?」

 「それ以外誰が相手だってんだよ」 

 「いや始まったというのに動かぬものだから————」


 数秒前の試合開始合図。

 興奮、静寂、興奮。

 なぜか静まりかえった観客は再び盛り上がり。

 会場のボルテージは上がってるというのに、エイラの言う通り目の前の相手は動いていない。

 不動の垂直。


 (もしかしてカウンター全狙いの奇策とか?)


 既に合図と同時俺とエイラの聖剣は起動した。

 俺たちの色彩は会場を飲み込んだ。

 まだ触り程度。

 こんなんでヘバッてもらっちゃ困る。


 (とりあえずはエイラを突っ込ませて、俺は一応様子見しとくか)


 「斬りこむぞユウ!」

 「やり過ぎないようにな」

 「うむ! 行くぞ!」


 エイラの白い手が聖剣の柄を握る。

 ハッとしたか。

 俺たちの声を聴いて動き出す、名も知らぬ相手小隊。

 動きは前進。

 見た目あやふや、飛び出してくる5人の人間。

 単調、まるでイノシシ。

 

 「……っと! とりあえず前に出るぞ!」


 (とりあえずって言っちゃってるし。カウンター狙いの予想は外れか————)


 俺は動かない。

 シンクロは必要ない。

 能力解除。

 聖剣垣間見える。

 一層光の粒子が輝き溢れる。

 

 「全員まとめて吹き飛ばす!」


 強化なし。

 エイラたぎる気合のオーラ。

 自力の聖剣。

 小細工なしの同じく単調。

 一本と一本。

 考え無しと考え無し。

 しかし、内包する意味合いは大きく違う。

 むしろ地球がひっくり変えるくらいに。


 「輝け聖剣カリヴァーン!」

 

 吸血王にさえ通じた聖剣。

 対物理、対能力に設計された強化フィールド。

 刹那に放たれた高速の光剣が、 大地を抉って進む。

 人理を押し潰す。

 才能、努力、すべてを超越し行きついた先。

 力の完全肯定。

  

 「うそだろ一回戦で————」


 (やっぱり当分はエイラひとりで十分だな)


 轟。

 勢い止まらぬ光の獣。

 会場さえも粉砕。

 防壁を貫き空へと消えゆく。

 残るは残骸、といっちゃなんだが焦げ付き地に伏した5人の相手。

 夢級パワーへの唖然。

 興奮が静寂へ。

 

 (イタリア人ってのは感情の浮き沈みが激しいな)


 「なんだと! 一撃で終わりなのか!? 私はちゃんと手加減したぞ!」

 「お前はチートってことを自覚しろ」

 「チート?」

 「要はすんごい強いってこと」

 「そうか! なら私はチートだな!」

 「まあ相手が弱すぎたってのもあるけどな……」

 

 ついつい口が滑る。

 まあいいか相手はダウンしちゃってるし。

 

 『え、ええーっと、しょ、勝者チームフォード! 二回戦進出です!」


 すぐさま白衣を来た教師たちがやってくる。

 倒れた5人を担架で運んでく。


 『ではこれにて一回戦午前の部は終了します……』


 しかしてなんかグダグダ。

 ひとりとして人動かず。

 矛盾してるか、動くのは担架を持つ救護人のみ。

 進行は思ったように進まない。

 でもま、次の駒へとは進んだ。

 

 「ユウ!」

 「なんだよ」

 「腹が減ったぞ!」 

 「……もう昼すぎか、そういや午前終了って言ってたな」

 

 促しアナウンス、及び上に設置されている大型電子版の対戦表を見る限り、どうやらこのある意味お粗末な試合は最終らしく、この後は午後まで少し時間が空いているっぽい。


 『ぐ~』


 そうこうしてるうち、静寂の会場にエイラの腹の音。


 (は、恥ずかしい……)


 「ご飯を食べに行くぞ!」

 「そうだな……」

 「そういえば久しくイエティの肉が食べたく————」

 「ならん」

 「はっはっは。冗談だ」


 何が冗談だ勘弁してくれ。

 恥ずかしいのもあって足早、そそくさと会場を出ていく。

 

 (俺たち以外誰も動かない……もしかしてまだ何かあるとかか? もしくはエイラの力に驚いているか、もしそうなら、この先はもっと驚くことになるだろうけど————)


 迷い込んだ不動の国。

 起伏の感情。

 ただいま停滞期。

 しかし観衆はまだエイラの力僅か一片しか見ていない、俺の能力含めレパートリーは山ほどある。


 (はたさて『本気』を出せる相手はいるんだか————)


 俺たちは強い。

 勝つために、死線を潜り抜けて鍛えた魂と技。

 最奥を見せる相手はいるか、それとも国際大会までお蔵入りか。

 やはりそんなこと考えてるうち、俺はエイラが傷痕残したゲートをくぐっていた。















 ユウたちが外へと出ていく。

 勝ったというのに誇ることも、ガッツポーズすることもしない、足早に去っていく。

 一瞬で到来。

 刹那で決着。

 脱兎に退場。

 この一連の流れはスターダストの速さ。


 「声が出ねえ……」

 「いやいや声出てるっすよ……」

 「そういう意味じゃなっての」


 隣のザックも調子不調。

 ユウたちのことだからとんでもない技で大勝利を決める。

 こんなコンセプトあった俺の脳内。

 でも、それは幻想。

 俺たちの予想と期待、すべてをねじ伏せた光の一撃。

 圧倒的パワー。

 対魔王レベル級に開発された強化演習場、認知の事実が目の前で一瞬に覆された。


 「フォード先輩の聖剣、えげつない威力っすね……!」

 「……人が使う能力の範疇じゃねーってのは確かだな」

 「しかもまだ全力じゃないはずっす。ユウっちなんて能力を途中で解除したっぽいっすし」

 「おいおい一体どうなるんだよ今回の予選……!」


 自分たちの予想の遥か先に、ユウたちは到達していた。

 よく考えればここにいる時点で『魔王討伐』からの生還、伝説を成し遂げていたことになる。

 討伐のニュースは流れていないし、噂でも聞かない。

 

 (でも死んでいってことは、おそらく————)


 「SS級の力、化物すぎんだろ……」

 「しかもまだ全力って感じじゃなかったよな!?」

 「あんなのに勝てるわけないじゃん……」

 「それに黒髪君の方は能力そもそも使わなかったよね」

 「隊長離してください! ぼくは棄権します! 死にたくありません!」


 主役の退場と共に徐々に騒ぎ出すベンチ席。

 ガヤガヤと渦を巻き、千差万別、さまざまな感情交じり大きな嵐となる。

 ビビッて声出せなかった俺たちの声が実体を纏う。

 熱い声感の中で、一定を刻む電子音、俺のポケットで揺れるバイブレーション。

 来ていたのは一通のメール。

 送り主は————


 『試合終わった。今から飯。学食に居るんだがエイラが動かない。暇だったら来れない?』


 (……ったく、待ってたのに呼び出すなんて、なんてヤロウだ)


 送り主はユウ・ヨンミチ。

 今奇跡を起こしたエイラ・X・フォードの相棒だ。

 来て早速の呼び出し。

 しかし食漢のフォード先輩相手じゃ学食から動けないのも無理ないか。

 

 「ザック」

 「なんすか?」

 「主役が学食で待ってるだってよ」

 

 届いたメールをザックに見せる。

 それでワケは納得だ。


 「まったく豪胆なやつだよ」

 「そういうところがユウっちらしいっすけどね」

 「まあ約束通り飯を奢ってもらおうぜ!」

 「そうするっす!」

 

 興奮冷めぬ場。

 俺の心臓もバクバクしてる。

 正直食欲なんて吹き飛んだんだが、 ようやくの再会。



 「2か月間のボイコットだ! たっぷりと武勇伝を聞いてやるぜ!


 



 

 

 

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